虹の成因のシミュレーションと過剰虹について
9年ほど前に,生徒たちと虹について研究したことがあります。その際,水滴による光の散乱のコンピュータシミュレーションも行ってみました。その結果を簡単に紹介します。原理はとにかく,光線の道筋を計算するということで,通常の反射,屈折の法則を用い,反射率は次式を使用しました。
反射率=(cosθ-(n*n-sinθ*sinθ)^1/2)/(cosθ+(n*n-sinθ*sinθ)^1/2)
(ここでnは相対屈折率,θは入射及び反射角)
また水の絶対屈折率として,赤:1.3428,緑:1.3311,青:1.3581を用いました。さらに光の強度について3次元の補正を加え,水滴を出たときの強度を光線の長さで表しました。
図1
図2
図1,図2は水滴内外の光線追跡の結果です。図1は水滴の端の方に入射した光の束の光線追跡の結果です。入射位置が端に行くに従い,一回反射2回屈折の光(主虹をつくる光)の太陽方向に対する角度が,最大になった後小さい方向に折り返していることが分かります。
図2は入射光が水滴の中心付近から端の方に行く場合の光線追跡の結果で,一回反射2回屈折の光が折り返す前の部分です。色による特異性が生じないため虹の形成には関与しない部分です。しかし,後半で述べる過剰虹に,折り返す直前の部分が関係すると考えられます。なお図では入射光が平行ではないように見えていますが,これは2次元の計算を3次元化する際に入射光に補正を加えたためで,入射光は横軸に平行です。
このような光線追跡を無数の光線について計算し,強度の角度分布を求めたのが図3です。虹ができているのが分かります。
図3
さらに,1回反射,2回屈折の光を除いてやると,図4のようになります。第3の虹(3回反射2回屈折の光による虹)も見えています。
図4
次に,第一の虹(主虹)の内側にできる過剰虹の発生するメカニズムを図にしました。この図は,上のパソコンでの光線追跡の結果を参考にし,理科教育メーリングリストでの宗像さん,長島さん,柴田さんなどからの貴重な情報をもとに描いてみました。折り返す前の平面波に近い波と,折り返した後の球面波に近い波の干渉によって縞模様が生じ過剰虹が生じると考えられます。
下の絵は,Mathmaticaで平面波と球面波の干渉を計算したものです。水滴などは手で 描き入れました。
なお,霧のように小さな水滴では幅の広い白い虹が生じます。霧の夜に自動車のヘッドライトを用いて白い虹を見たことがあります。どうぞ霧の夜に試してみて下さい。
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1996,7,1更新