摩擦力

操作法と解説

 床の上に物体があります。仮想の手を動かすことで,つるまきばねを介して,この物体には水平方向に引いたり押したりする力を加えることができます。さっそく,手を右に動かして物体に引く力を加えてみましょう。初めは動きませんでしたが,力がある大きさを越えると突然動き出します。そこで,右上の青いボタンをクリックしてみましょう。ボタンが緑色になり,引いていた手とつるまきばねが消えます。物体は引く力が消えても慣性によって動き続けますが,いずれは摩擦力のため静止します。このように,日常の物体の運動では,摩擦力というものを無視できません。それではもう一度初めの状態に戻し,摩擦力について詳しく学びましょう。右上の水色のボタンをクリックして,初めの状態に戻ってください。

 それでは始めましょう。まず,ゆっくりと手を右に動かすと,ばねが物体に加える力(青いベクトル)が生じます。すると,床との接触面に赤いベクトルで表された力が現れます。このように摩擦力が働きます。初めは,引く力と摩擦力がつり合っていて,物体は静止し続けます。このときに働く摩擦力は特に「静止摩擦力」と呼ばれます。静止摩擦力は引く力に応じて,大きさを変え,引く力と常につり合っていることに注意しましょう。

 引く力を大きくしていくと,あるところで物体は動き出します。このことから何がわかるでしょう。そう,静止摩擦力には限りがあるということがわかります。引く力が,その上限をl越えると力のつり合いがこわれ,物体は引く力の方向に動き出すことになります。この静止摩擦力の上限は「最大摩擦力」呼ばれ,この大きさは,日常生活でしばしば重要な意味を持ちます。たとえば,自動車がスリップしないで走行できる力の範囲は,この最大摩擦力よりも小さい範囲ということになります。
 いったん滑りだすと,最大摩擦力よりも小さな摩擦力が物体には働くようになります。この摩擦力は「動摩擦力」または「運動摩擦力」と呼ばれます。動摩擦力は運動の速さにあまり影響されず,ほぼ一定の値となります。

 さて,もうすこし摩擦力を量的にあつかいましょう。まず,最大摩擦力ですが,この大きさは垂直抗力とよばれる床面が物体を押す力(紫のベクトル)の大きさに比例することが実験的に知られています。また物体と床面の材質によっても変わり,その滑りにくさの程度を,最大摩擦力が垂直抗力の何倍になっているかという値で表し,「静止摩擦係数」と呼びます。最大摩擦力は,接している面の面積やかたちにはあまり関係しないことも知られています。最大摩擦力を式で表すと,次のようになります。

最大摩擦力 = 静止摩擦係数×垂直抗力

 静止摩擦係数の値は,左下の薄茶色の棒の端を動かすことで変えることができます。また,物体の上端をあげたり下げたりすることで,物体の重量を変えることができ,その結果,垂直抗力の大きさを変えることもできます。

 次に,物体が動き出してからの摩擦力,すなわち動摩擦力についてみてみます。動摩擦力も,実験的に垂直抗力に比例することが知られています。また,物体と床面の材質によっても変わり,その滑りにくさの程度を,動摩擦力が垂直抗力の何倍になっているかという値で表し,その値を「動摩擦係数」または「運動摩擦係数」呼びます。動摩擦力は接している面の面積やかたち,さらに運動している速さにあまり関係しないことも知られています。動摩擦力を式で表すと,次のようになります。

動摩擦力 = 動摩擦係数×垂直抗力

通常の摩擦では,動摩擦力は最大摩擦力よりも小さく,このことから動摩擦係数も静止摩擦係数よりも小さな値となります。動摩擦係数の値は,左下のこげ茶色の棒の端を動かすことで変えることができます。

 以上のようにして,最大摩擦力や動摩擦力を変えてみて,物体にあれこれと力を加えてみましょう。そして,摩擦力の性質を感覚的に学んでみましょう。

 最後に(だいぶ長くなりましたが),慣性の法則についてもみてみましょう。日常では,摩擦力が多かれ少なかれあるために,物体が運動を続けるためには,押したり引いたりする力が常に働いていなければならないという感覚が強くあります。しかし,慣性の法則(運動の第1法則)は,「物体に力が働かないか,またはつり合っていれば,はじめ静止している物体は静止し続け,運動している物体は初めの速度を変えずに運動しつづける。」といっています。したがって,例えば,摩擦力を2つの摩擦係数を0にすることで,完全に働かないようにして,物体を滑らせてみましょう。また,動摩擦力と同じ大きさの引く力を加えてみて,等速度運動を行うかなどもみてみましょう。


制作:加藤徳善

(2003.11.2)


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