【14th.Oct.'96 :(Rome→)Firenze1】

朝起きてエスプレッソなんぞをいただく.博士はバチチョコとの相性をことのほかお好み.彼の地のエスプレッソはなんか妙にうまかったっけ.なぜかニッポンでは好きになれず,浅炒りのコーヒーの酸味を楽しむ方向にバイアスがかかっていたのだが...ニッポンに帰ったらエスプレッソマシンを買おうと思わせるに十分な動機となった.
バスの停留所(Fermata)まで行き,そばのタバッキ(たばこ屋っちうかKIOSKに近いか)でバスのチケットを買う.75分間有効のやつだ.つまり,バスには会社にあるようなタイムカードマシンのごときしろものにこのチケットを差込むとその時間が打刻され,最初に打刻されてから75分間はフリーで乗り降りできるっていうものだ.おまけに地下鉄も同じように乗れてしまう.1,500Lit(120円くらい).ほかにも1日券とか,1週間有効とかもある.
博士と一緒にバスに乗り込む.15分くらいでRebippiaという地下鉄Bラインの駅(終点・始発)に到着.ここから博士はテルミニの2つ手前の駅で降りる.僕はテルミニまで行ってそこから国鉄でフィレンツェへ行く.いよいよひとりぼっちだ.^^;さっそくトラックへ行ってみる.乗りたい列車がどのトラックに入るのかまだ決まってない.電光掲示板を見ても空白だ.さて,こまった.どきどきしながら「ボ,ボ,ボンジュォールノォ,エスクゼ...」と切り出す.あとは英語だ^^;.駅員は東洋人と見るや,からかってるのかお愛想なのかニヤニヤ(にこにこ)しながら片言の英語で話し始める.聞き取りにくい.結局その駅員にはわからなかったらしい.違うヤツを捕まえる.「たぶん7番だ」.た,たぶん??@_@; だって僕が乗りたいのは11:00発の急行ミラノ行きなんだけど,今もうすでに7番には11:15発のナポリ行きが留まってるじゃないかぁー! しょうがないから,電光掲示板に表示されることを信じてその下で待つことに...定刻5分前に”トラックナンバーが表示された.6番だった.とりあえずオッケーだ.電車に乗り込んでコンパートメントに入る.しばらくして米語をしゃべるカップルが「ここ空いてるか?」って言うので「メイビー」と答える.話をしてみると彼らはコロラドから来たラブラブスキーヤー夫婦らしく,先週はフランスで滑って,今週はローマ,フィレンツェで観光だって.そのあとはアルプスに行くみたいだった.それにしてもアメリカ人,年齢不詳だよな.ま,奴らもおいらに対してそう思ったんだろうが..^^;

「どっからきた」攻撃にで口火が切られた会話で,「ニッポンだ.まずドイツのシュツッツガルトに行ってそこからは列車でローマに入った.13時間もかかったんだぜ」というと「Nice trip! How about Alps?」と予想通りの展開にいろいろと自慢した.おまけにQV10にも興味をしめしアメリカ人のくせに知らなかった.まだまだだな>アメリカ.^^; このカップルもフィレンツェに行くという.ヤンキー「何日フィレンツェに居るんだ?」.おいら「明日だけだ」.ヤンキー「短いな」.おず「Yeah....(腹の中では,”ほっといてくれ”).などとにこやかな国際親善をやってのけた.やっぱり戦争はイケナイ・^^;;

途中で切符のチェックがあった.見せると,車掌が「Do you speak English?」と聞く.「Yes」と答えると,「乗る前にちゃんと切符をチェッカーに差し込んでこい」と怒られた.そう,慌てていたのね.駅のトラックには,切符をチェックする小さな箱(ま,アナをあけるパンチマシンだな)があって,乗る前にそこに切符をとおさなくてはならない.いわゆる改札(自動改札も含めて)は無いのだ.いっけねぇー.^^;ま,事なきを得て約2時間ちょっとで花の都フィレンツェに到着だ.

昨日ローマに行く途中は夜中だったのでまったくわからなかったんだが,今日は昼間,しかも天気も良かったので田舎の田園風景が見えた.広々と美しい景色だ.イタリアは都会と田舎が妙にはっきりしていると感じた.もっともイタリア全土を見たわけではないので何とも言えないが..


さてフィレンツェ・SMN(Firenze Santa Maria Novella)駅に到着.とにかく歩き出そう.今日は月曜日なので大御所のウフィツィ美術館やアカデミア美術館は休館日である.従って,街の調査を中心として,ミケランジェロ広場や各休会などを探索,さらに,Mr.イタリア・柴山氏の教えにのっとって必ず行くべきお食事どころとジェラート屋のチェック,そしてメインのミッションであるPiazza Rupublicca の楽器屋でのEurope弾き倒し,というスケジュールだ.といっても考えることととやることが違うのが常の私であるから,どうなるかはサッパリわからない.とりあえず歩き始める.

おぉーーー!噂にたがわぬ花の都!!駅前からドゥオモも見える. 一人きりっという緊張もさることながらわくわく気分が先行し興奮状態は抗しがたい. とりあえず,bar で腹ごしらえだ.なんかこの bar で生ハムはさんだパンとミネラルだけでも1週間は暮らせるって感じでベッロ! なかでもモッツアレラスライス(直経7センチ)×2とトマトをはさんでオリーブオイルたっぷりかけたやつは美味だった.ピッツアはいまいちだった.はずれだったのかな.

街の探索も兼ねて,柴山氏レコメンデッドのトラットリアを探しにいざ出陣.ちゃんとみつけた.チブレオはむつかしかったけど,トラットリアza-za とジェラートのvivoliはすぐにわかった.でも,chibreo と vivoliは残念ながらお休みだったのでチェックは明日にまわす.za-zaは混んでて入れなかった.これも明日だ.いっぱい課題を残してしまった.まぁ,いい.今日は街の物理的な大きさを把握できたし.

全ての通りには名前が付いており,角の建物にはそのプレートがちゃんとあるので地図と照合すれば迷うことは無いのだが,「こっち方向に**がある」という標識は少ないので,そういう意味ぢゃ歩きにくい街かもしれない.けど,仮に迷ったとしても大して致命的な間違いにはならない(すぐリカバーできる)し,まー問題は無い.そもそも,”迷い込みたい”と思って歩いてるし.^^;

しかし,ほそーい道は一瞬不安がよぎるもののどうしても吸い込まれてしまう,というか”行ってみたい”欲求にかられるんだよね.そういう葛藤の結果,歩き続けてしまうということなのよ.あっちには何があるんだろう,もっと面白いところがあるかもしれない,もっと綺麗な場所かもしれない...とか思うともう歩いてる.足は痛いのに..

ウフィツィとアカデミアも月曜日はやすみなので明日.そんで歩いてミケランジェロ広場へ.これが距離はそれほど無いのだが,坂道が結構しんどかった.フィレンツェに着いた頃は曇りだったけど,ちょうど雲も切れて日差しも強くなってきたところだったし.. ただ,けっこう高台にあるので眺めはすばらしい! ほんとに美しい街だ.手前のアルノ川と遠くの山と,赤い屋根の町並みと,点在する聖堂,教会の高い屋根.”計算された”コントラストが絶妙の街だ.ここで”計算された”と書いたのには理由がある.聞きかじりだが,ベネチアなどは新しい建造物が建てられないような法律があるという.ようするに修復しながら使い続けるのだ.極めて細い路地が存在し,それがある種”隠れ家”的に機能して異人種(観光客とか)の流入を防ぎ,自分たちの快適な生活圏を守っているという.従って,観光客の作る活気ではなく,住民の生活熱が冷めてない(ニッポンのとある街,しかも「町並み保存」なんとかってところほどコマーシャライズされすぎて,人の気配がしないところが多いと思う).それに,ヨーロッパの街・都市はご存じの通り,基本的に広場・教会・広場へ続く放射状の道・城壁によって成り立っており,ある意味で極めて緻密に計算された街づくりをしている.フィレンツェももちろん例外ではなく細い道のずーーっと向こうに聖堂の屋根がちゃんと見えるとか,求心力が自然に注がれるようになっている.一見,迷路に見える小道もしっかりと役割を果たしている.従って,丘の上から見てもちゃんとそれがわかるんだなぁ,,と.

ポンテベッキオを渡って市中にもどる.うーむさすがに歩き疲れた.すでに5時間は歩いている.何しろ石畳.ひたすらイシだらけ.でも雰囲気はいいんだよね.道は狭く,比較的背の高い(軒並み5階だてくらいのアパート,ホテルが立ち並んでる)建物が多いので街の中は光が入りにくい.でも,その細い隙間に太陽の光が入ると,すばらしく美しい.思わずカロッツェリアのCMでアレジの乗るピッカピカのF40がそこの角から出てきそうな気さえする.でも実際はベコベコのチンクエチェントやPanda,Unoがほとんど.あとはプジョー,ルノー.そりゃそうだっつーか,あんなところフェラーリは走れないだろうな.ちょっと広い道に出れば居るのかもしれないけど..でも,ことのほかよく似合うんだよ,チンクエチェントが.あとはスクータだな,ぼろぼろのVespaはがんがん走ってる.ルノーのスクータも結構いた.
街の中は,西暦2000年に向けての改修工事がいたるところでやられてた.建物の立て替えとかにはずいぶん規制もあるんだろうな.
街の中にあるアパートの扉,取っ手のかたちとか,建物の壁なんかもいちいちかっこいい(というと軽い表現になっちゃうけど)っていうか.それがでも”ふつー”なんだよね.僕は専門家でもなんでもないから旨く表現できないけどあえて言うなら「地味派手」「堅牢・長持ちしそうだ」って感じか.実際,長持ちしているんだけどね.何百年も..^^;;
Piazza Rupuburiccaにもどり楽器屋もとりあえず場所の確認は出来た.でも疲労が...^^;;
いったんホテルにチェックインして,明日何時にテルミニに戻るか確認して博士に連絡しなくてはならないし.
とりあえず駅にもどって明日の帰りの時間を確認することにした.17:40くらいのがあるから,それでいいか..などと思いつつ,駅前のバスターミナルの前の階段に座ってこの後の作戦を練っていたら,後ろから声をかける人がいる.「Excuse me...」振り向くと,アジア系の女性だ.ドゥオモを背景に写真をとってくれという.「Sure」と快く引き受ける.香港から来たらしく一人旅とのこと.再び「どっからきたんだ」攻撃に適当に答える.コロラドのスキーヤーとの会話での経験則から,「ドイツからはアルプスを列車で越えてきた.ローマまで13時間もかかったんだ」って付け加えると大抵ウケることを知っていたので,そのとおり言うと,彼女は,「Wow,hard trip!」と私なら絶対そんなことしないわ.時間の無駄よ!って顔しながら笑っていた.別にいいじゃねぇーか>香港人.

続けて,「ホテルはどこだ?」「いくらか?」っていうから「この近くだ」「260Kリラだ」って言ったら,ただでさえ丸い黒目をさらに大きく見開き,「なんだってぇ? 260K??? 信じられなぁーい.なんでユースホステルに泊まらないんのぉ?」,おいら「・・・(心の中では,別にいいじゃねーか,金はらうのは俺だぞ)」..きゃつ「ふっ,まぁ,いいわ.じゃ良い旅を!」.おいら「You,too(腹の中では,そこで転けろ!)」なーんてやりとりもあってなんとなく旅のアクセントになるような小さなイベントもあったのだ.^^;

ホテルは駅のすぐそばだ.サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の広場の隣のブロックのクローチェ・デ・マルコ.後で聞いた話だと柴山さんがフィレンツェに最初に来た時に1週間ほど滞在したホテルだそうだ.僕には不釣り合いな三つ星.オートロックでもないホテルだったけど歴史の重みを感じる素敵なところだった.ダブルの部屋をあてがわれたのでゆったりできた.窓が大きくて気持ちよかった.部屋に入るなり,2時間くらい寝てしまった.^^;

目が覚めて,シャワーを浴びて,フロントで明日の電車の時間を確認して,博士に電話した.おなかも空いてたけどホテルのレストランはもう時間が遅いのでダメだと言われ,雨が降ってきたし,体も言うこと聞かないし,外に食べに行くのはちょっと怖かったし,まーいいやってんで寝ることにした.10時には寝た.死んだように寝た.

to be continued...