ホメオティックと遺伝子重複


Q1 機能的制約ってなに?

 重要な、たとえばヘモグロビンを作るような遺伝子は、どんなに進化しても遺伝子はほとんど変化することはありません。変化はすぐに生存を困難にするためです。
 このように重要な遺伝子の突然変異の制御を機能的制約とか保守的置換と呼びます。

Q2 ホメオティック遺伝子ってなに?

 生物の形成を制御する遺伝子のこと。このホメオティック遺伝子に変異が起こりますと、通常では考えられないような、ハエの胸部が腹部になったり、体節が消失したり、重複したり、下唇が触角や肢になるといった大規模な形態の変化が現れます。
 有名なものとしてはショウジョウバエの触角の代わりに、脚が生えてしまった「アンテナペディア変異体」があります。
 これらのホメオティック遺伝子は共通したホメオボックス というDNAを含んでいます。ホメオボックスのホメオティック遺伝子は一列に並んでいて、順番に働いて、ほかの遺伝子の働きを制御します。
 ショウジョウバエで発見されたのとほとんど共通するホメオボックス が、プラナリアからウニ、線虫にいたるまでヒトを含む非常に多くの動物で発見されています。ハエの眼と哺乳類の眼は構造がまるで違うように見えますが、遺伝子は同じものです。解剖学的に全く異なる構造でも、形成を制御する遺伝子は同じであるわけです。


Q3 重複遺伝子説ってなに?

 遺伝子には数多くの重複があります。同じ遺伝子がいくつもあるのです。重要なものほど多く、この重複が突然変異の影響をなくす一つの方法です。
 しかしそれは同時に、機能を持った遺伝子はそのままにして新たな遺伝子を作り出すことを可能にします。このように遺伝子が重複を利用して進化するのが重複遺伝子説です。

Q4 重複遺伝子が形態になる方法ってなに?
 進化の際に、重複遺伝子であった場合、100万もの重複を持つものはともかく、ある程度の重複を持つ遺伝子が、一つでも進化方向に突然変異を起こすと、その突然変異を優先するようになることが考えられます。
 通常は合議制でも、異常事態にはリーダーがすべての権限を持つものです。生き残るのは、より進化した個体だという異常事態には日常のルールは適用できません。
 進化制御装置が解除されたときに、重複した遺伝子で、少数派が指導力を持つようになります。突然変異の遺伝子が上位遺伝子になります。時代の変革期に、しがない画家が世界を揺るがさせる独裁者になるように。
 進化の最中には通常では非常識な法則が成り立ちます。上位の遺伝子がこの方法で誕生する可能性は高いのです。
 これに大きな影響力を持つのがホメオボックスです。