第2週

 

生物の共通性と多様性の基礎

生物の特徴 細胞、代謝、自己複製
DNA
、遺伝子、ゲノム、タンパク質

 

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概要

地球上には多種多様の生物がいます。そして、生物には共通する特徴があります。今回は、生物の特徴をまとめ、多様性が生じる仕組みをいていきます。そのためには、生物の基本となる細胞やゲノムの知識が必要となります。

 

課題(第2週)

「生物の共通性の決め手になるのは何か?

生物の多様性を決めているのは何か?」

 

課題は欠席(公認欠席も)した場合も、教科書や本サイト、PDFファイルを参考にして、後日解答すること。出欠にかかわらず、白紙は0点。

課題の解答はアップデート可とします。最終的に理解することが大切です。各週に解答した内容と後から書き加えた内容が区別できるよう、色を変えるか囲みにして書くように。一度書いた内容は消さないことも大切です。

 

参考書籍(第2週)

ヴァースタイネン、ヴォイテック著、鬼澤忍訳 ゾンビでわかる神経科学

(太田出版 \2,160 20160802日第1刷)

 

 ワトソン他著、中村桂子監訳 ワトソン 遺伝子の分子生物学 第7版

(東京電機大学 \10,800 20170120日第7版1刷)

 

 布施英利著、人体 5億年の記憶 解剖学者・三木成夫の世界

(海鳴社 \2,160 20170325日第1刷)

 

 ビリングズ著、松井信彦訳 五〇億年の孤独 宇宙に生命を探す天文学者たち

(早川書房 \2,160 20170325日初版)

 

授業内容(第2週)

○生物の共通性と多様性

すべての生物は、細胞をもち共通する生体物質からなります。

すべての生物は遺伝物質をもち、子孫にその情報を伝えています。

すべての生物は共通する材料となる物質を使いながら、多様な形をもっています。

 

今回の授業のテーマは「生物の共通性と多様性」です。

 

生物や生命の定義はできませんが、地球上に生息する多種多様な生物に共通する特徴は説明できます。すべての生物は化学物質のかたまりであり、ある程度共通した構造をもつ生体物質からできています。いろんな生物がいるということは、当然違いもあるわけです。これを「生物の共通性と多様性」という重要なキーワードで説明していきます。

 

ヒトからはヒトが生まれ、同じように、イヌからはイヌが生まれ、どの個体もいずれは死にます。

分裂によって増える大腸菌のような単細胞の生物でも、分裂にともって新たな生物が誕生すると同時に、元の生物は死んだといえます。

「生物は生物から生まれ、必ず死ぬ」。例外はありません。では、親から子へ伝えられているモノゴトとは一体何なのでしょうか? 親から全く同じモノゴトをもった子が生まれるわけではありません。何か違いがあります。それでいて、ヒトからはヒトという属性=コトをもったモノが生まれ、イヌからはイヌが生まれます

生物もロボットや鉱物と同じように、化学物質のかたまり、モノです。親の生物個体から子の生物個体へ、母細胞から娘細胞へ伝えられるコトはモノを介しています。科学的な解析により、生物はどのようなモノを使ってどのようなコトを子孫に運んでいるのか、ある程度わかっています。伝わるモノゴトには「共通性と多様性」があるのです。

 

 

○生物の共通性

生物には共通する生体物質が含まれています。

 タンパク質(アミノ酸)、核酸(DNA、RNA) など

 

生物は3つの特徴がります。

 細胞をもつこと

 代謝機能をもつこと

 自己複製能をもつこと

 

言い換えると、

 共通する化学物質を部品として構成される。

 細胞膜で仕切られた細胞をもつ

 エネルギー代謝や物質代謝機能をもつ

 自身で自身の複製を作る機能をもつ

 

 

○生物の共通性 細胞 代謝 自己複製(第2章、第3章、第4章、第5章)

すべての生物は、共通となる基本的な生体物質をもっています。これらの共通する部品の組み合わせ方の違いにより、生物の多様性が生まれます。

 

すべての生物は「細胞」という基本単位をもっています。細胞は水に溶けない膜でできた袋といえます。生物は細胞のもつ特徴で分類できます。単細胞の生物はたった1つの細胞が個体となり、多細胞の生物は形や働きが多様な細胞が有機的に組み合わさってできた個体です。

 

細胞の内外では、様々な化学反応が起こっています。この反応を「代謝」といいます。代謝は生物がもつ物質によるエネルギーの出入りをともなう反応です。生物の代謝は体外の環境と上手に付き合いながら体内の環境を維持するために調節されています。

 

すべての生物は生体物質の中でも遺伝情報となる共通の物質をもっています。生物はこの遺伝情報を含む細胞単位で自分の複製を作ることができます。これを「自己複製」といいます。

 

細胞をもつ、代謝をする、自己複製ができることが地球上の生物の共通した特徴といえます

 

 

○生物をつくっている元素

生体物質

生物を構成する物質は、地球上に存在するありふれた元素からなります。

生体物質は比較的原子番号の小さな元素が使われています。

中心となる元素は、炭素、水素、酸素、窒素、リン、硫黄の他に種々の金属イオンが使われています。

 

細胞を構成する物質のうち、一番多いのは水です。

その次に多いのはタンパク質で、核酸や多糖類を含めると9割を超えます。

タンパク質、核酸、多糖類などの巨大分子は、それを構成する単位物質が一つ一つ結合することで細胞が合成しています。

巨大分子の中でも基本となる物質はタンパク質です。

タンパク質の種類と量により、細胞や生物個体の構造(モノ)と機能(コト)がほとんど決まります。

このタンパク質の構造(結果的に働き)を決めているのが遺伝子です。遺伝子は遺伝情報をもっており、その遺伝情報の物質としての本体が核酸の一種であるDNAです。

DNA上の遺伝子の部分の遺伝情報からRNAという仲介役の助けを借りてタンパク質が合成されます。親から子へ伝えられるのは、基本的にはDNAという生体物質の遺伝情報だけで、その遺伝情報には基本的にはタンパク質の作り方が書いてあるわけです。

核酸(DNAとRNA)やタンパク質自身を含む多種多様な生体物質はタンパク質の働きによって調節されています。

 

 

○タンパク質 アミノ酸との関係

アミノ酸は中心の炭素にアミノ基、カルボキシル基、水素の他にアミノ酸に特異的な構造をもつ側鎖からなります。

 

タンパク質はアミノ酸が連なった重合体です。

タンパク質の合成に関わるアミノ酸は20種類あります。

生体に内にアミノ酸は多数存在しますが、タンパク質合成に使われるのはその中でも20種類だけで、この選択はすべての生物で共通しています。

 

アミノ酸の中心炭素には4つの手があります。すべての手に異なる官能基がつくと鏡に映ったような立体的に構造が異なる2種類の分子になります。これを光学異性体といいます。

タンパク質合成に使われるアミノ酸はそのうちの1種類だけが使われており、どちらを使うかという選択もすべての生物で共通しています。ただし、タンパク質合成に使われないアミノ酸には例外が見つかっています。

 

アミノ酸とアミノ酸は水分子が1分子はずれる縮合反応で結合します。

どのアミノ酸を繋いでいくかは遺伝子の遺伝情報(塩基配列)に書いてあります。

生体内のすべてのタンパク質は遺伝子の遺伝情報にしたがって細胞が合成します。

 

 

○核酸 DNAとRNA

すべての生物は遺伝物質としてDNAというモノをもっています。

DNAは二重らせん構造をしており、デオキシリボースとリン酸のバックボーンの内側に4種類の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)が結合しています。

DNAを構成する4種塩基はすべての生物で共通しています。

DNAには塩基の並ぶ順番、塩基配列があります。

この塩基配列が遺伝情報に相当します。

遺伝情報の中でもタンパク質の合成方法が書かれている部分が遺伝子です。

 

 

○すべての生物は細胞をもつ

細胞とは

細胞とは、水に溶けない生体膜で囲われた構造体(モノ)です。

 

細胞の分類

生物は細胞核をもつ真核生物と細胞核をもたない原核生物に大きく分けられます(原核生物はさらに真正細菌と古細菌に分けられます)。

原核生物は単細胞で、細菌やラン藻類(シアノバクテリア)などがその仲間です。

動物や植物は真核生物の仲間です。

ゾウリムシのような単細胞のものから多細胞のモノまで大きさも機能も多彩です。

 

植物や動物の細胞には細胞核などの細胞内小器官があります。

細胞核には遺伝物質としてのDNA(モノ)があり、小胞体やリボソームはタンパク質合成に、ミトコンドリアはエネルギー物質の生産に関わっています。

 

 

○自己複製能をもつ

すべての生物は遺伝物質としてDNAをもちます。

DNAの中にタンパク質を合成方法が書いてある遺伝子が含まれています。

遺伝子の遺伝情報により、タンパク質の構造が決まります。

ヒトの場合、2万数千個の遺伝子をもちます。

 

遺伝子領域から、2本らせん構造をしているDNAのうち、いずれか一方が鋳型となり、それに相補的な鎖として新たにRNAが合成されます。

そのRNAの遺伝情報に従って、タンパク質が合成されます。

真核生物の場合、DNAは細胞核の中にあり、RNA合成は核内で起こります。

合成されたRNAは細胞質のリボソームに結合し、タンパク質合成が行われます。

この一連の反応を遺伝子発現といい、転写と翻訳に分けられます。

 

真核生物の場合、DNAは細胞核の中にあり、RNA合成(転写)は核内で起こります。

合成されたRNAは細胞質のリボソームに結合し、タンパク質合(翻訳)成が行われます。

 

 

ヒトゲノムとは

ヒトを構成するのに必要な遺伝情報(DNAの塩基配列)全体のこと。

30億塩基分の塩基配列に相当。

親から子へ、細胞から細胞へ伝えられる情報は基本的にはゲノムのみ。

 

ヒトとチンパンジーやゴリラとの違い

 ヒトはヒトから生まれ、チンパンジーはチンパンジーから生まれます。

 ヒトはヒトゲノムをもち、チンパンジーはチパンジーゲノムをもちます。

 ヒトがヒトであるのはヒトゲノムをもつから、といえます。

 

○生物種間の多様性

 ヒトゲノムとチンパンジーゲノムは1%ぐらいの違いがあります。

 

ヒトとかチンパンジーとかいった区別はどうやってつけているのか?

多様な生物種が誕生したのはどのような仕組みによるのか?

 

ヒトゲノムとは

 ヒトを構成するのに必要な遺伝情報全体

 30億塩基分の塩基配列

 

ヒトの場合、1つの細胞には2セット分のゲノムがあります。

ヒトの体細胞には卵子ゲノムと精子ゲノムが合体したゲノムがあります。

卵子ゲノム、精子ゲノムはヒトゲノムとほぼ同じです。

 

ゲノムにはすべてのタンパク質の作り方が書いてあります。

ヒトがもつ10万種類ほどのタンパク質の働きにより、細胞や個体の構造や働きが決まります。

ヒトがもつすべてのタンパク質の作り方がゲノムに書いてあります。

ヒトの個人差はヒトゲノムの多様性で説明できます。

ヒトはヒトゲノムをもつが、個人間でわずかに違いがあります。

ヒトゲノムは30億塩基分の塩基配列からなるが、そのうち0.1%くらいの違いがあります。

この個人間の多様性を込みでヒトゲノムといいます。

つまり、ゲノムにも共通性と多様性があります。

 

 

○まとめ

地球上には多種多様な生物が生きていますが、すべての生物は細胞からなり、DNAを遺伝情報としてもっています。

それぞれの生物種(しゅ)に特徴的なゲノムをもっています。

 

細胞から細胞へ、親から子へ伝えられる情報は、基本的にはゲノムのみ。

生物種の違いはゲノムの多様性のみ。

同一種の中での多様性(ヒトなら個人差)もゲノムの多様性のみ。

 

ゲノムには遺伝子が含まれており、各々の遺伝子はタンパク質の作り方が書いてある。つまりどんなタンパク質を作るかで生物種が決まり、個人差も現れます。

 

地球上のすべての生物がもつDNAは4種類の塩基を使って合成されます。

塩基は多数あるが、DNAを作る塩基は4種類のみ。この選択はすべての生物で共通です。

 

地球上のすべての生物がもつタンパク質は20種類のアミノ酸を使って合成されます。生体内にアミノ酸は多数ありますが、タンパク質合成に使われるアミノ酸は20種類のみ。この選択はすべての生物で共通です。

生物の多様性はDNAの塩基配列によってほぼ決まっており、その情報から作られるタンパク質の働きに大きく依存しています。

 

生物は嫌気呼吸、好気呼吸、発酵などで、エネルギーを得ています。呼吸や発酵により、グルコース、アミノ酸、脂肪酸などをエネルギー源として、エネルギー物質であるATPを合成します。

 

代謝に関わる酵素はタンパク質です(教科書第4章)。

全てのタンパク質の作り方は遺伝子に書いてあります。

すべての遺伝子の遺伝情報はゲノムに書いてあります。

 

ATPを利用する代謝

 基本的な反応は、すべての生物で共通している。

 どの代謝反応を選択するかが生物の多様性を決めている。

 どの代謝反応を選択するかはゲノムで規定されている。

 

これらの共通性と多様性は生物進化を考える上でも重要なカギになります。

 

 

第3週 第1週 表紙

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芦田嘉之 ashida@msi.biglobe.ne.jp

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