第4週

 

生命の起源と生物進化

生物種、細胞の起原、生物進化

 

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概要

生物の共通性と多様性から生物進化をとらえることができます。これまで学習した内容を踏まえて、世代を経て変化するゲノムのようすを学びます。

 

 

授業内容(第4週)

○進化とは何だろうか?

一般社会でも「進化」がよく使われます。多くの場合、「進化」は複雑になったり、使いやすくなったり、性能が増したり、業績が上がったり、能力が増したりすることに使われます。

進化は進歩や成長と同義で使われることが多い。

 

生物進化にこれらの見出の意味を当てはめるとすると、

進化は生物がより複雑になったり、機能が増したり、能力が増したりする意味になります。

 

生物の進化は、複雑さや能力の強弱や良い・悪いの違いを含むのでしょうか?

生物学は、進化をどう定義しているのでしょうか?

 

生物進化にはこれらの見出しのような意味を持っていません。生物進化は、生物がより複雑になったり、機能が増したり、能力が増したりする意味で使うことはありません。

 

生物進化では、複雑さなどの基準や良い・悪いの価値観を抜きにして、変化する現象に使われます。

 

では、生物が形(モノ)を変えたり機能(コト)を変えたりすることが進化でしょうか?

進化は生物のモノゴトの変化でしょうか?

例えば、昆虫の変態は進化でしょうか?

 

○進化の教科書的な説明

 生物進化は

「生物の形質が世代を経て変化し、それが継続していく現象」

とされています。

ここで重要なのは「世代を経て」という点です。

昆虫の変態のように、ある個体の形質が変化しても進化にはなりません。

あるプロ野球選手(生物)の技術・能力が増すことも進化ではありません。

ある人(生物)が癌になる(形質の変化)、勉強して賢くなる現象も進化ではありません。

 

では、生物進化で、何が、どのように変化するのでしょうか?

  変化する モノ コト は何なのか?

何が、どのようにして世代を経て継続していくのでしょうか?

 

種内:種としての同一性を保ちながらも種内の多様性がある

種間:種に多様性がある 多様性を生む仕組みは?

 

ゲノム 遺伝情報 遺伝子 などでどのように説明できるか?

 

○生物種の分類

地球上に存在する生物を分類するためには、「生物種」をきちんと理解する必要があります。

生物の分類の最小単位は種(しゅ)です。

種は生物進化を考える上でも重要です。

生物はその特徴から界、門、綱、目、科、属、種と階層的に分類されます。さらに細かい階層もあります。

 

動物、植物、哺乳類、鳥類といった言葉は分類箱のようなもので、ライオン、ヒョウ、イヌなどは種の名前です。

 

種の厳密な定義はありませんが、種とは、一般に、

「自然状態で交配し、継続して子孫が残せる集団」

を指します。

子ができても、その子に生殖能力がなければ、その両親は別種となります。

ラバに生殖能力がないため、ロバとウマは別種。

 

数百種類の品種があるといわれるイヌは、すべて、人類がオオカミから人為選択で作った作品です。

イヌの品種同士でお互いに継続的に交配できるため、すべてのイヌの品種は同一種です。

キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツなどの野菜は共通の野生種から品種改良されたため、同一種です。

 

○種の起源

 種の多様性はどうやって生じたのでしょう?

 そもそも生物はどうやって誕生したのでしょうか?

 

原始地球では無機物から有機物が生じる化学進化を経て、現在生息するすべての生物の共通の祖先生物が誕生しました。これが多様な生物に進化しました。

 

地球上には多様な生物がいます。ヒトが生活できないような過酷と思われる環境にも多くの生物種が生きています。現在地球上に生きている生物の種類は正確にはわかりませんが、千万単位になることは間違いなさそうです。

 

地球上に生命が誕生してから38億年がたったといわれています。その間、多くの生物が誕生し、絶滅しています。地球生命の歴史で、絶滅した生物種の方が圧倒的に多い。

 

すべての生物は細胞を持っています。

生命の起源とは、つまり、細胞の起源とも言えます。

原初の細胞が現在の原核細胞や真核細胞に進化し、原核生物や真核生物が誕生しました。

 

細胞の中には遺伝物質としてのDNAが必ずあり、DNAの遺伝情報からタンパク質を合成するシステムが備わっています。

 

生物進化は種の起源ともいえます。

 

地球上のすべての生物種は、共通の祖先から進化により誕生したと考えられています。それは生物を構成する基本物質や遺伝子発現システムの共通性だけでなく、多くの進化に関わる理論でも証明できます。

 

生物進化は現在生きている生物の遺伝情報から分子レベルの証拠で推測できます。生物進化の道筋は、DNAの塩基配列や遺伝子の遺伝情報から作られるタンパク質のアミノ酸配列を解析することで、ある程度描けます。

配列情報の類似性は現生生物の分類の指標にもなります。

 

生物はどのようにして進化したのか?

進化の原動力は何なのか?

   遺伝子頻度の変化  自然選択(自然淘汰)

 

生物は遺伝情報を変化させながらその時々の環境に適応し、多様な種に変化しました。生物進化は、ある遺伝子の頻度や生物集団での遺伝情報の頻度が変化し、その変化が子孫に伝えられる過程で起こります。

生物進化には、突然変異、遺伝子流動、遺伝的浮動、自然選択など、いろんな要因があります。

 

個々の生物種にはゲノム(ヒトならヒトゲノム)があり、その中にそれぞれ固有の遺伝子群(ヒトなら2万数千種類)をもっています。

同一種内であってもゲノムの多様性(ヒトなら個人差)があり、遺伝子群の多様性もあります。

そのような多様性は遺伝情報の無作為な変異などで生じます。

 

生物が子孫を残すとき、程度の差こそあれ、必ず親とは異なるゲノムを伝えます。多様性の幅はその時々の環境要因な依存しています。

遺伝子頻度は同一種の中で多様な遺伝子の組み合わせのことで、その遺伝子頻度は種内である程度一定しています。しかし、遺伝子頻度は遺伝情報が次世代に伝えられる過程で大きく変わることがあります。

 

・遺伝的浮動

例えば、遺伝子頻度は集団が急激に小さくなったり、一部の集団が爆発的に増えたりすると、変化します。

他にも遺伝子頻度は断層などの地形の変化により、物理的に隔離が起きて変わる場合もあります。

このような遺伝子頻度の変化を遺伝的浮動といいます。

 

・遺伝子流動

同一種で地域的に別の集団があった場合、ある集団が別の集団に一部の固体が侵入することで、侵入を受けた集団の遺伝子頻度が変わることもあります。

これが遺伝子流動です。

 

進化は同一種内での遺伝子頻度が変化することであり、様々な要因で遺伝子頻度が大きく変わることで、新しい種の誕生に結びつくことがあります。遺伝子頻度の変化は無作為であり、環境や相互作用により、変動には幅があり、時間軸方向にも幅があります。

 

・自然選択と適応進化

生物進化は遺伝子頻度の変化だけでなく、自然選択も引き金になります。

生物進化は自然選択が必ずしも働くわけではなく、自然選択以外の要因による遺伝子頻度の変化だけでも起こりえます。

 

ある生物集団が子孫を残すとき、前述の通り必ず遺伝的情報が変化します。様々な形質をもつ子孫が生育する過程で、その自然環境に適した形質をもつ個体が次の子孫を残す、というようにある生物集団は環境に適応した形質をもつ集団に変化していきます。

これが自然選択による適応進化です。

 

・結局、生物進化とは何だろう?

ここまでの話をざっくりいうなら、生物進化は遺伝的に多様な子を多数生み出し、遺伝子頻度が変わり、あるいは、自然選択により適応してさらなる子孫を残していく過程で起こります。

遺伝子頻度の変化の多くは偶然であり、環境に依存しており、何かの目的に向かって進化するわけではありません。

また、環境要因に対して有利になろうと思ってその方向に進化するわけではなく、多様な遺伝子頻度の中で、子孫を残し得た個体が遺伝情報を伝えているだけで、結果として環境に適応した個体が生き延びているわけです。

 

親世代 → 子世代

 親は生存可能な個体数以上の子を作る

 多数の子同士の遺伝情報はすべて異なる(突然変異)

 種内の遺伝子頻度が変化する(遺伝的浮動、遺伝子流動、隔離など)

 自然選択による適応進化

 

○進化に関する誤解

「生きている化石」や「生きた化石」という言葉があります。これは数億年前の化石と同じ生物種が今も生きていると誤解されやすいため、あまりよい表現ではありません。

遺伝情報はあらゆるレベルで常に変化しており、生物進化は止まっていません。数億年の時間が経てば、その間進化は進んでいます。

 

現在のシーラカンスも複数種生息しており、化石種とは異なります。

どうしても「生きた化石」を使いたい場合は、化石の発見が先で、よく似た現生生物が後から見つかった場合に限定し、その逆の場合は使うべきでないという提案もあります。

 

自然選択(自然淘汰)はある決まった方向へ向かうわけではありません。

最も適した個体、最適者が生き残るわけでもありません。

ある目的に向かって進化するわけでもありません。

進化に固定的な目標もありません。

同一種内の遺伝子頻度は常に変化しており、生物進化に終着点はありません(いわゆる「生きた化石」もいません)。

進化は集団内の遺伝子頻度の変化で起こり、この速度は一定しておらず、変化の度合いはその時々の環境に依存しています。

 

現在生きているサルやヒトやあらゆる生物は、現時点で進化の最先端にいます。

ヒトが一番新しく生まれた生物でもありません。

生物は共通の祖先から枝分れしながら進化しています。

チンパンジーがヒトに進化したわけではなく、チンパンジーとヒトの共通の祖先からそれぞれ進化により誕生しています。

 

この絵は、それぞれの生物種の特徴をまとめただけで、左から右に進化したわけではありません。

ヒトは数多くの生物種のうちの1つであり、ヒトは生物進化で偶然誕生しただけで、ヒトを生むように進化したわけではありません。

 

ネアンデルタール人(かつては旧人といわれていた)はヒトの直接の祖先ではありません(交雑している証拠が見つかっている)。

ネアンデルタール人とヒトの共通の祖先からそれぞれ進化して生まれました。進化の過程で、ネアンデルタール人は絶滅しています。

 

・典型的な誤解

チンパンジーとヒトは700万年前の共通の祖先から進化した ->

700万年前からチンパンジーは進化していない

ヒトはチンパンジーより進化している

 

第1章の復習

すべての生物は共通の祖先から進化して誕生したことはかなりの確度で確かであり、そういう意味で、現存するすべての生物は進化のなれの果てといえます。

なれの果てというのが気に入らないなら、すべての現生生物は生物進化の頂点にいると言い換えてもよいでしょう。

ここで気をつけないといけないのは、「現存するすべての」生物が進化の頂点にいるのであって、例えば人間が高等生物で、大腸菌が下等生物というわけではない点です。

もし生物種に高等・下等や優劣があるというなら、それは人間の都合で勝手に決めた価値観に過ぎません。

また、現存するすべての生物は進化のなれの果てとはいっても、進化の頂点を極めたわけでありません。

現存するすべての生物は進化の途上にいて、これからも進化し続けていきます。いくつかの種はそのうち絶滅するでしょう。

 

 

第5週 第3週 表紙

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芦田嘉之 ashida@msi.biglobe.ne.jp

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