第8週

 

答案返却・解答説明

生態系とバイオーム

生態系とバイオームから学べること

 

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概要

中間試験と課題用ノートの解説をします。

解答用紙は、今日の授業の後、回収します(5年間保管のため)。

解答内容の追加記述を認めます。削除は認めません。

文字色を変えるか囲みにするなど、書き加えた部分がわかるように書くように。

修正内容を考慮して、最終成績を付けます。

 

生態系は、生物的環境と非生物的環境を総合的にまとめたものです。生態系を理解するのには、その基本となる植生の理解が必要です。今回は、自然環境における植物の役割を説明し、地球にはどのようなバイオームがあるのか、また、植生は生態系とどのようなかかわりがあるのかを考えます。

 

課題(第8週)

「生態系とバイオームの特徴を対比させながらまとめよ」

 

生態系とバイオームは共にシステム。システムとしての生態系とバイオームを対比。

システム

 互いに関連する要素のまとまりある集合体

システムの要素:空間、機能、物質、生物など

システムで起こっていること:要素の相互作用、秩序を保つ、時間と共に変動、

システム外との入出力、開放系、物質の循環、エネルギーの流れ

 

参考書籍(第8週)

ピアス著、藤井留美訳

外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD

(草思社 \1,944 20160720日第1刷 初版)

 

トムソン著、屋代通子訳

 外来種のウソ・ホントを科学する

(築地書 \2,592 20170303日初版 初版)

 

授業内容(第8週)

○答案返却・解答説明

○生態系(エコシステム)とは何だろうか?

○バイオーム(生物群系)とは何だろうか?

○植生と遷移 植物(光合成の重要性)授業では省略

 

 

○答案返却・解答説明

試験について

解答用紙は、今日の授業の後、回収します(5年間保管のため)。

解答内容の追加記述を認めます。削除は認めません。

文字色を変えるか囲みにするなど、書き加えた部分がわかるように書くこと。

修正内容を考慮して、最終成績を付けます。

100点の人も不十分な点を書き加えるように。

100点をオーバーした分は最終成績を付けるときに利用。

成績=(中間試験+期末試験) x 0.8  + 課題用ノート x 0.2

 

試験も文章化した授業内容を読み、授業で再確認するだけで、満点が取れるはずです。

 

断片の切り貼りではなく、理解したことを自分なりの表現でまとめるように。

それぞれの用語の羅列だけでなく、それぞれどんな現象であり、どのような繋がりがあるかの論理をまとめるように。

結論のみはあまり重要ではありません。その結論に至った論理が大切です。なぜその様な結論になったのでしょう?

 

レポートや試験は、自分がこのように理解したと主張する場所です。他人の主張をコピーする場所ではありません。

評価してもらう先方のオリジナル文章をコピーして自分の主張とすることの意味を理解しましょう。

 

 

生態系 エコシステム

生物群系 バイオーム

 

10−1 生態系とはなにか?

日常生活ではエコポイントやエコカーなど、いろんなところで「エコ」が使われます。多くの場合、エコは自然にやさしくとか節約の意味で使われ、環境保全とセットで使われるようです。このエコの元は、これから説明する生態系(エコシステム)です。その学問が生態学(エコロジー)です。

バイオームも系(システム)で、バイオームは生物群系とも言います。

バイオームとは、ある空間に生息するすべての生物のまとまりです。

 

生態系とは?

生態系とは、「生物的環境と非生物的環境を一体としてとらえたもの」となっています。

 

生物的環境」にはそれぞれの環境に適した様々な生物種が生息しています(図ではA種、B種、C種の3種、生物の分類単位「種(しゅ)」)。

その生物的環境の中の同一種の集まりは「個体群」といい、個体群の中には群れや縄張りや順位制などの個体間の「相互作用」がみられます。

異種の個体群の集まりを「生物群集」といいます。その生物群集の中には「種間競争」や「捕食」や「共生」の関係が見られ、これらを「種間相互作用」といいます。

 

非生物的環境」としては、太陽、温度、湿度、大気、土壌、地形、気候などがあり、これらが生物的環境に「作用」したり、生物的環境から「環境形成作用」を受けたりします。

 

生態系の要素

一般的に、生態系の生物的環境には、光合成により無機物からエネルギー源となる有機物を合成する生産者、生産者が合成した有機物を消費する消費者、生産者や消費者を無機物にまで分解する分解者がおり、それぞれの生物がさまざまな物質を消費、生産しています。

 

生態系とエネルギー

生態系に使われるエネルギーの出発点は太陽エネルギーです。

この光エネルギーが植物などの光合成によって有機物などの化学的なエネルギー源(有機物、グルコースなど)になります。

植物のような生産者により作られたエネルギー源は生物群集の食物網の中で消費されます。

エネルギーは一方向に流れていくため、エネルギー供給が途絶えると、その生態系は終わってしまいます。

 

エネルギーは最終的には熱エネルギーとなって生態系の外に出て行きます。

物質の循環とエネルギーの流れの具体的な事例は次回の授業(第4章、8−3、10−8、地学図録、配付資料など)で詳しく説明します。

 

生態系のバランス

生態系にはある一定のバランスがあります。

生態系は自然環境の変化にともなって変化し、突発的な自然災害などに対しても自然に浄化され、平衡状態を保とうとします。

人類の生活が生態系に介入することもあり、人間生活の健全な継続のためには生態系を保全する必要性が出てきます。

 

一般に生態系は生物の種類が多く食物網が複雑になっているほど安定しています。

その場合は、小さな変化があったとしても修復する力が強く、バランスが保ちやすい状態といえます。

逆に、生物の種類が少ないと、生態系のバランスは危うくなります。

 

 

10−2 バイオーム(生物群系)とはなんだろう?

バイオームとは

生態系は「生物的環境と非生物的環境を一体としてとらえたもの」です。

バイオームは「ある空間に生息するすべての生物のまとまり」です。

生態系もバイオームもシステム(系)です。

バイオームは「生物群系」ともいいます。

となると、先ほど出て来た「生物群集」とどう違うのか、となります。

生物群集の中には「個体群」がいます。

 

バイオームの中で鍵となるのは植物群集で、ある地域の植物の育成状態を表す「植生」やその見た目の広がりである「相観」がバイオームを語る鍵になります。

バイオームは広い地域の生物群集を扱い、ある一定の気候に適応して育った植物の群系を基盤とした生物群集を地球規模でとらえ、その特徴で分類されます。

 

生態系とバイオーム

生態系は気候や相観で分類するのではなく、対象の環境や規模などの特徴で分類します。

生態系では、特徴ある地域の生物全体を調べ、土壌や気候などの非生物的環境も合わせて分析します。

植生は個別の生態系の生物的環境の鍵にもなります。

 

生態系やバイオームは共にその基本となるのは生体エネルギー源の生産者である植物です。植物は動けないことから、それぞれの環境に強く依存し、ある程度固定化されています。

生態系は河川や湖沼などの環境に適した生物群集による食物網だけでなく、生産者、消費者などの役割に注目しながら、物質の循環やエネルギーの流れなどを総合的に見ています。生態系の規模は大小様々で、生態系は実験室の小さな水槽から地球全体まで対象とします。

 

都市も生態系で、生態系は人間とのかかわりが比較的大きい。それぞれのバイオームの中にヒトはいますがあまり目立ちません。ヒト中心のバイオームというのはありません。

ヒトの集団を個体群としてとらえ、生態系やバイオームの生物群集にヒトの個体群が入ることはあります。

 

 

10−3 ○○オームとオミックス

生物系の用語には、オーム(-ome)を語尾につけた言葉が色々とあります。-omeは一般に全体の意味で使われます。

生物のBioに全体のomeがついた語がバイオームです。

Bio + ome = Biome)。

ゲノムは遺伝子のGeneに全体のomeがついています。

染色体や遺伝にオームが付いたという説もあります。

 

他にもタンパク質Proteinome が付くとプロテオーム(Protein + ome = Proteome)、転写物Transcriptomeが付くとトランスクリプトーム(Transcript + ome = Transcriptome)となります。

かつてはタンパク質や発現などの研究は個別にしていたのですが、それぞれ網羅的に研究することができるようになり、omeのついた用語も使われるようになりました。

 

メタボロームというのもあります。これは代謝を網羅的に研究する分野です。ちなみに肥満の意味で使われるメタボはメタボリズムからきています。

それぞれの学問分野がオミックスとなります。

ゲノミクスとかプロテオミクスとか呼ばれています。

 

 

10−4 植生は変化する(授業では省略)

植生とはなにか?

植生とその遷移はバイオームや生態系を考える上で基礎となります。

植物とその植生は生態系やバイオームを語る鍵です。

前項で述べたように、ある地域に生育する植物全体を「植生」といいます。

植物は光のエネルギーを利用して光合成を行っており、同時にエネルギーを得るため呼吸もしています。

 

森林の階層構造

植生は光環境の影響を強く受けます。

森林は高さがあり、その違いで階層を作っています。

森林の植物は、それぞれの環境により光の当たり方が異なるため、それぞれの光環境に合わせて葉の形などが異なり、育ち方が決まります。

草原には森林がほとんどなく、光合成の多様性も低くなります。

 

植生の遷移

植生はある程度固定化されていますが、地形や気候の変化などにより、長期的には変化しています。

このような時間とともに植生が変化することを「遷移」といいます。

大規模な噴火が起こると、植生のない裸地が生じます。

最初は植物が育ちにくい環境であっても、やがては新しい植生が形成され固定化されます。

遷移により、どのような植生ができるかは光環境と光合成が大きく関与し、窒素源など重要な栄養素の循環にも依存します。

 

これら裸地からの遷移は土壌の栄養状態などが悪いが光環境は強いところから始まります。

まず、その様な条件で育つ地衣類などが生長し、やがて窒素を固定する細菌や草花、低木などが育ち、腐葉土などで栄養状態が増します。

植物が多様で増えると光環境が悪くなり、その環境に適した森林が育っていきます。

 

実際には、同一火山の噴火が繰り返し、周辺に裸地が何度もできた場所の植生を観察することにより、森林の育ち方などが分かります。

 

湿性遷移

遷移は火山の噴火跡地や新たに生じた島などで起こり、湖沼などから始まる湿地遷移もあります。

 

二次遷移

一方で、すでにできあがっている植生が人為的な伐採、耕作地の放棄や大規模な自然災害がきっかけでも遷移が起こります。

これを「二次遷移」といいます。

二次遷移は元々存在した植生から人為的なきっかけなどで始まるため、栄養状態はよく、光環境も遷移前より変化していて、それらの環境に適応する植生の変化は早くなります。

人為介入が強ければ偏った植生になることもあります。

 

極相林におけるギャップ更新

ギャップ更新

倒木更新

樹木の老化や自然災害により、樹木が倒れる事があり、そこに「ギャップ」と呼ばれる空間が生じます。

ギャップの種類により、その後の「ギャップ更新」の様子が異なります。

 

 

10−5 どのようなバイオームがあるのか

さまざまなバイオーム

地球上には様々な環境があり、特にそれぞれの地域の気候に適応した生物が生きています。

バイオームは植生の相観、その中でも優占種で分類し、それぞれのバイオームに生息する動物や植物など生物全体を集団としてとらえて分析します。

具体的にどのようなバイオームあるのか見てみましょう。

バイオームはそれぞれの気候に適応した特徴ある生物の集まりです。

バイオームは大きく森林、草原、荒原に分類されます。

 

それぞれのバイオームに生息する個体群集の個体群は、環境に適応し、種間相互作用をもっています。

バイオームは気温や降水量といった気候の影響を強く受けるため、バイオームの種類と気候分布はほぼ同じになります。

 

森林は樹木が中心で、熱帯多雨林、照葉樹林、夏緑樹林、針葉樹林などそれぞれに特徴的な樹木で分類されます。

草原にはサバンナやステップがあり、熱帯や亜熱帯、あるいは乾燥した地域に広がっています。

荒原は植生がほとんどなく、ツンドラや砂漠などが含まれます。

 

日本列島は南北に長く、針葉樹林、落葉広葉樹林、常緑広葉樹林、亜熱帯多雨林などがみられ、それぞれの環境に適した動物たちが暮らしています。

 

水圏のバイオーム

バイオームは植生が基盤となるため、陸地が対象になりがちですが、海洋や湖沼にも光合成を行う生物がおり、海洋バイオームや湖沼バイオームがあります。

地球面積の7割は海です。海は陸に近い沿岸域と陸から遠い外洋域にわけられます。沿岸域は水深が浅く、固定化された珊瑚礁や海藻などを足がかりに、多様な生物群が暮らしています。

 

 

10−6 バイオームの形成

では、どうやってバイオームができあがるのでしょうか?

生物集団の中で、光合成を行っている植物が有機物を作り、その有機物を食べることで動物、菌類、細菌などが生きています。

これは個体群の集まりである生物群集内の種間相互作用です。

バイオームの決め手になるのは植物です。ある地域に生育する植物全体、すなわち植生が基本となります。そして、その植生を決めているのが気候です。植物は気候によりある一定の植生を作ります。

 

どんなバイオームができるかは、結局、気温と雨の量が決め手となります。

気温や降水量は基本的には太陽の日射量に依存しています。

また、日射量により地球規模の大気大循環が起こっており、これが地域の気候に大きな影響を与えています。

 

陸地や海洋の気候の多様性は地域の横の広がりのほか、標高や水深の違いでも生じます。

気温や水温は海面付近が一番高く、上空や海底に行くにしたがって下がります。

それぞれの気候に応じたバイオームを水平分布、垂直分布と呼ばれます。

この気候の水平分布や垂直分布に従って、特徴あるバイオームが分布しています。

 

固体地球圏、大気圏、水圏、生物圏の地球システム

 

バイオームの変遷

バイオームは短い期間で見るとはある程度一定しています。

しかし、長期間で見てみると、地球環境が常に変化していることにともないバイオームも常に変化しています。

地球上の生態系やバイオームを知るためには、地球そのものの歴史や現在の地球の動態も知る必要が出てきます。

例えば、海洋では地域規模の海水の循環が表層と深層で起こっています。

また、地球規模で海底の深層水が数千年単位で大循環しています。

 

 

10−7 どのような生態系があるのか?

陸地には大きく分けて、森林生態系、河川生態系、草原生態系、湖沼生態系、水田生態系、都市生態系などがあります。

それぞれ独立しているわけではなく、お互いに絡み合っています。

 

海洋にもそれぞれの環境に応じた生態系があります。

 

一番大きい生態系は、地球以外の生物が今のところ見つかっていませんから地球全体の生態系です。

小さい生態系は多様で、水草やプランクトン(生産者)と魚(消費者)と細菌(分解者)の入った水槽も生態系といえます。

 

生態系の構成要素と相互作用

生態系は生物群集の構成要因を分析し、種間相互作用や物質循環、エネルギーの流れを総合的とらえたシステムです。

ある地域に生息する生物群集は非生物的環境に「環境形成作用」を及ぼしており、逆に生物群集は非生物的環境から「作用」を受けています。

 

生物群集には、エネルギーや物質の生産者を基礎に動物や細菌などの消費者や分解者がおり、3者にはお互いに食べたり食べられたりという食物連鎖が見られます。

これは直線的ではなく、複雑に絡み合っていることから、「食物網」とも呼ばれます。

 

生物群集にはお互いに競合するだけでなく、共存したり共生したりしています。

種間関係に双方の利益をもたらすとき、特に相利共生といいます。

昆虫と細菌、植物と細菌、哺乳類と腸内細菌など、栄養分やすみかなどの利益をお互いにやり取りしています。

 

生態系では、物質循環が起こっており、物質ごと、事態ごと、個体群ごとなど細かく総合的に分析します。

生態系は、物質循環にともなうエネルギー収支やエネルギー効率も分析しています。

 

地球システム

固体地球圏、大気圏、水圏、生物圏

生態系、生物群系(バイオーム)の中にも地球システムが関与しています。

 

次回は今回詳しく説明しなかったシステム内での物質の循環とエネルギーの流れについて解説します(第4章、8−3、10−8、地学図録、配付資料など)。

 

 

10−9 10−10 10−11 応 用

今回は生態系とバイオームは異なる概念ですが、共にシステムという視点で説明しました。

後半の週では今回詳しく説明しなかったシステム内での物質の循環とエネルギーの流れについて解説します。

 

生態系やバイオームにはバランスがあります。自然災害などにより攪乱が起こっても、自然浄化します。

人為的な攪乱もあります。人間活動によって様々な物質が生産、排出され、生態系に影響を与えています。

水質汚染、酸性雨、地球温暖化などが問題視されています。

 

さらに、人間活動によって生物群集そのものにも影響を与えています。

森林の減少、外来生物、絶滅危惧種などが問題視されています。

これらの問題を「自然とは何か?」「里山の自然とはナニモノか?」などの視点で、今回学んだ生態系やバイオームの基礎から考えるとわかりやすい。

 

 

第9週 第7週 表紙

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芦田嘉之 ashida@msi.biglobe.ne.jp

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