バイオインフォマティクス 第2

 基礎分子生物学1 セントラルドグマ

 

資 料

講義で使うPPファイル(pdfファイル)

印刷して配付する資料(pdfファイル)印刷不可

 

課 題

1.DNA、遺伝子、ゲノムの違いを簡潔に述べよ。

2.遺伝子に書いてある[情報]とは何なのか?

3.a.「私」がユニークな存在なのはなぜか?「私」と「隣の人」との違いは?

.「私」がなぜヒトなのか なぜチンパンジーでないのか?

.「私」とヒトの間で生まれて来る子供がヒトであるのはなぜか?

 

 

講義項目

生命情報学の基礎

・バイオインフォマティクス 生命情報学

 遺伝情報 ゲノム 遺伝子 分子系統樹

 分子レベルの「情報」

 DNAの塩基配列の「情報」

 タンパク質のアミノ酸配列の「情報」

 

生命科学の基礎

・細胞・代謝・自己複製

 

分子生物学のセントラルドグマ

DNA 遺伝子 ゲノム 染色体

DNARNAの構造

・アミノ酸とタンパク質の構造

DNAの複製

・転写 遺伝子の単位

・翻訳 コドンとtRNA

 

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講義内容

この講義で扱うさまざまな情報の基礎をまず解説します。

生物の特徴は何かを解説し、生物に特有の生体分子を解説します。

特にDNA、アミノ酸、タンパク質の構造と機能を中心に、DNAの複製、遺伝子の転写・翻訳機構を正確に理解することにつとめます。

また、DNA、遺伝子、ゲノムといった基本用語をきちんと理解することを目指します。

 

生命における情報 塩基配列とアミノ酸配列

「バイオインフォマティクス」で扱う情報は多岐にわたっているが、しばらくは狭義の情報といえる遺伝情報に注目します。

生殖による親から子へ、あるいは、細胞分裂による細胞から細胞へ伝えられる情報は、遺伝情報がメインです。

ここで言うところの遺伝情報とは、核酸、つまり、DNARNAの塩基配列とタンパク質のアミノ酸配列のことを指しています。

 

講義日程

先週(第1回)のガイダンスでも説明がありましたが、この講義は前半と後半に分かれており、私は前半を担当します。

前半の5回(第2回〜第6回)はこの教室での講義で、残り2回(第7回、第8回)はメディアセンターでの演習です。

その後、後半の講義と演習があります。

 

専用Webサイトと参考Webサイト

この講義には専用Webサイトがあります。

その表紙のコピーを配付しました。

配付した「専用Webサイトの表紙」を見ながら説明します。

講義内容や講義で使う資料が置いてあります。

予習、講義中、復習に活用するように。

PDFフィアルを開くためにはパスワードが必要です。

第2回から第6回の講義内容は、それぞれのリンク先に文章化してあります。

講義内容は、講義中、スマートフォンなどで、参照できます。

講義は板書をせず、すべてパワーポイントファイルで説明します。

そのパワーポイントファイルはPDFファイルにして、各講義内容ページや「ファイル一覧」のリンク先からダウンロードできます。

「講義ファイル」は講義中にパソコン等で表示させて参照してもよいが、そうでない場合、第4回以降の「資料」や「演習マニュアル」のPDFファイルの内容は必ず講義前に印刷しておくように。

「講義ファイル」は印刷できません。

今回(第2回)は特別にパワーポイントファイルの一部を印刷して配布します。

 

主要教科書 電子書籍版あり

講義前半の内容は「やさしいバイオテクノロジー カラー版」と

「カラー図解でわかる高校生物超入門」に書いてあります。

両著とも電子書籍版もあります。

 

第2回 課題

毎回、講義中に簡単な課題に答えてもらいます。

今回の課題は3つあります。

それぞれ理解したことをまとめるように。

用語を正確に使うことポイントになります。

講義終了後、解答した課題は回収します。

 

生命「情報」とは何か?

「バイオインフォマティクス」は生命情報学とも言います。

前半の授業で扱う情報は分子レベルでの遺伝情報で、特にDNAの塩基配列やタンパク質のアミノ酸配列を扱います。

これらの遺伝情報の理解のためには、DNA,ゲノム、遺伝子などの基本用語の理解が必要です。

また、演習では分子系統樹を作成することにより、遺伝情報と進化との関係も学びます。

 

基本用語の概説 遺伝子 ゲノム タンパク質

これは基本用語の簡単な用語集です。

今日の授業はこれらの用語を自分なりの表現で説明できるようになるのが目標です。

以下、それぞれの用語について解説します。

 

生物の3大特徴 細胞・代謝・自己複製

生物や生命の定義はできませんが、地球上に生息する多種多様な生物に共通する特徴は説明できます。

共通する生体物質を部品としてもち、細胞、代謝機能、自己複製機能を持っています。

まず、細胞について簡単に説明します。

 

スライドの右肩の数字は教科書の該当ページを表しています。

黄色の網掛けは「やさしいバイオテクノロジー」、

水色の網掛けは「カラー図解でわかる高校生物超入門」です。

 

細胞から見た生物の分類

すべての生物は、細胞を持っています。

生物は「核」を持たない「原核生物」と「核」を持つ「真核生物」に分類できます。

原核生物は単細胞で、細菌やラン藻類(シアノバクテリア)などがその仲間です。

動物や植物は真核生物の仲間です。

 

植物や動物の細胞には細胞核などの細胞内小器官があります。

細胞核には遺伝物質としてのDNA(モノ)があり、小胞体やリボソームはタンパク質合成に、ミトコンドリアはエネルギー物質の生産に関わっています。

次に生物に共通する物質について簡単に説明します。

 

細胞を構成する化学物質

細胞を構成する化学物質のうち、原核生物でも真核生物でも水が7割を占めています。

残り3割のうち、7割から8割はタンパク質や核酸、多糖類などの高分子の化合物です。

その中でもタンパク質の割合が高いことがわかります。

この授業では核酸としてのDNARNA、タンパク質について取り上げます。

 

巨大分子とその構成単位

タンパク質や核酸アドの高分子量の化合物はすべて構成単位となる物質が重合して作られます。

どのような化合物を作るかは遺伝情報に書いてあり、その遺伝情報に従って細胞自身が合成しています。

 

第2回課題の確認

ここで、課題を確認しておきます。

これらの問いに対して、「DNA」や「遺伝子」と解答する場合が多い。

しかし、それらは正確ではありません。「ゲノム」という便利な言葉があります。

DNA、遺伝子、ゲノムを使い分けることで的確に説明できます。

 

遺伝子があるところ

遺伝子は細胞の中のどこにあるのでしょうか?

実は、遺伝子はモノではありません。

遺伝子の化学的な本体がDNAという化学物質です。

モノとしてのDNAは細胞の中にあります。

真核生物の場合、DNAは細胞核やミトコンドリアの中にあります。

植物細胞にある葉緑体にもDNAは含まれています。

 

DNAの構造と表記

すべての生物は遺伝物質としてDNAというモノを持っています。これには例外がありません。

DNAはデオキシリボースとリン酸のバックボーンの内側に4種類の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)が結合した化合物の名前です。

DNAを構成する4種塩基はすべての生物で共通しています。

DNAには塩基の並ぶ順番、塩基配列があります。

この塩基配列が遺伝情報に相当します。

遺伝情報の中でもタンパク質の合成方法が書かれている部分が遺伝子です。

DNAには方向があり、表記法にある程度のルールがあります。

DNAの向きはデオキシリボースの5’位のリン酸から3’位の水酸基の方向です。

これはDNAの合成方向と同じです。

この方向に並んでいる塩基の順番が塩基配列です。

DNAは二重らせん構造をとり、2本の鎖は逆向きに向かい合っています。

DNAの塩基には相補性という特徴があります。

塩基はアデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)の2組とのみ向かい合っています。

この相補性は、DNAの複製、転写、翻訳のときに関与しています。

 

分子生物学のセントラルドグマ

次に細胞内で起こっているDNAの複製、遺伝子のRNAへの転写、タンパク質への翻訳過程を見ていきます。

まずは、DNAの複製から。

 

遺伝情報の細胞内での複製

細胞内のDNAは核内に留まっています。従って、DNAの複製は核内で起こります。

2本鎖のDNAは塩基の相補性により相補的な塩基が向かい合っています。

細胞分裂をするとき、DNAは正確にコピーされます。

2本鎖のDNAがほどけ、その鎖に対して、相補的な塩基を含むヌクレオチドが1つずつつながることで新しい鎖ができます。

塩基の相補性により、できあがったDNAは元のDNAと同じ塩基配列を持っています。

次は転写と転写です。

 

細胞内でのタンパク質の合成

遺伝子領域から、2本鎖のDNAのうち、いずれか一方が鋳型となり、それに相補的な鎖として新たにRNAが合成されます。

そのRNAの遺伝情報に従って、タンパク質が合成されます。

この一連の反応を遺伝子発現といい、転写と翻訳に分けられます。

転写と翻訳のしくみは後ほど詳しく説明します。

 

遺伝子発現のときに細胞内で起こっていること

細胞内にはDNARNA合成に必要なヌクレオチドがあらかじめ用意されています。

DNAの複製やRNAへの転写の時、鋳型となる鎖に対して相補的となるヌクレオチドが使われます。

ある塩基に対して、4種類のヌクレオチドのうち1つのみが正解なわけですが、試行錯誤の上で正解となった場合だけ次のヌクレオチド結合に進みます。

膨大な試行錯誤がわずかな時間で進行しているわけです。

 

タンパク質 アミノ酸との関係

タンパク質合成に使われるアミノ酸について説明します。

タンパク質はアミノ酸の重合体です。

タンパク質の合成に関わるアミノ酸は20種類あります。

生体に内にアミノ酸は多数存在しますが、タンパク質合成に使われるのはその中でも20種類だけで、この選択はすべての生物で共通しています。

グリシン以外のアミノ酸の中心炭素には光学異性体がありますが、タンパク質合成にはそのうちの1種類だけが使われており、どちらを使うかという選択もすべての生物で共通しています。

ただし、タンパク質合成に使われないアミノ酸には例外が見つかっています。

 

アミノ酸の略記

アミノ酸は通常3文字のアルファベットで表記されますが、遺伝情報としてアミノ酸配列を表すときは1文字表記されることが多い。

演習で使うデータベースに登録されているアミノ酸配列はすべて1文字表記です。

次に転写や翻訳に関わるRNAやタンパク質の構造について、若干説明しておきます。

 

RNAの構造と転写

RNADNAとよく似た構造をしていますが、5単糖の部分がDNAの場合はデオキシリボースで、RNAの場合はリボースです。

塩基の種類も異なり、RNAの場合はチミンの代わりにウラシル(U)が使われています。

主なRNAは3種類。

アミノ酸配列を暗号化しているmRNA、アミノ酸の運搬役の

tRNA、リボソームの構成因子の1つであるrRNAです。

 

いずれのRNADNAが鋳型となって、その相補鎖へ転写される形で作られます。

その転写が起こる場所が遺伝子です。

DNAは相補鎖が逆向きに向かい合う2本鎖ですが、

RNAは1本鎖です。

RNAは分子内で相補的な場所で結合した立体的な構造を取ることがあります。

 

tRNAはアミノ酸の運び役です。tRNAは図のように立体的に折りたたまれた形をしており、アミノ酸が1つ結合しています。

ヒトのtRNAは数百種類ありますが、tRNAの種類ごとに運んでくるアミノ酸は1つだけです。

 

コドンと翻訳

翻訳はmRNAの3塩基の組単位で起こります。

この3塩基の組をコドンと言います。

RNAを構成している塩基は4種類あることから、コドンは4x4x4=64通りあります。

64種類のコドンのうち、3通りは翻訳の終了に使われており、残り61通りのコドンに相補的に結合するtRNAが決まっています。

そのtRNAが持っているアミノ酸が順次結合することでタンパク質が合成されます。

 

転写と翻訳の起こる場所

真核生物の場合、DNAは細胞核の中にあり、RNA合成(転写)は核内で起こります。

合成されたRNAは細胞質のリボソームに結合し、タンパク質合成(翻訳)が行われます。

DNAは細胞内に1分子だけあり、常時核内に留まっています。

必要なときに必要なだけ転写が起こり、タンパク質が作られます。

次に転写と翻訳を具体的に見ていきます。

 

遺伝子領域の遺伝情報の流れ

転写では、2本鎖DNAのうち、下段の鎖が鋳型となり、鋳型に相補的なRNA合成が起こります。

塩基の相補性は、DNAがA・G・C・Tの場合、対応するRNAはそれぞれU・C・G・Aです。

 

翻訳は必ず開始コドンから始まります。開始コドンはAUGで、このコドンに対応するtRNAはメチオニンを持っています。

この図の場合、次のコドンはAGGでこのコドンに対応するtRNAはR(アルギニン)を持っています。

このように、順次コドンが読み解かれ、3種の終止コドンのうちどれか1つ(この図の場合UAA)が来ると、翻訳は終了します。

 

セントラルドグマの意味

塩基対の相補性という純粋な化学的な相互作用により、DNAの複製、転写、翻訳が行われています。

tRNAのどのアンチコドンにどのアミノ酸を運んでくるかは、地球上のすべての生物で基本的には共通しています。

 

タンパク質の構造と働き

翻訳時に、アミノ酸とアミノ酸は水分子が1分子はずれる縮合反応で結合(ペプチド結合)していきます。

どのアミノ酸を繋いでいくかは遺伝子の遺伝情報(塩基配列)に書いてあります。

生体内のすべてのタンパク質は遺伝子の遺伝情報にしたがって細胞が合成します。

合成されたタンパク質は他のタンパク質などの助けをかりて、ある程度決まった立体的な構造を取ります。

タンパク質はその立体構造に特異的な機能を発揮します。

生命現象の多くは、タンパク質の相互作用などで説明できます。

 

ゲノムとは何だろうか?

基本用語のうち「ゲノム」以外は説明しました。

では、ゲノムとは何でしょうか?

遺伝子にはタンパク質の作り方が書いてあります。

つまり、遺伝子にはタンパク質のアミノ酸配列が書いてあります。

ゲノムには数万の「遺伝子」が含まれています。

 

ヒトの染色体とゲノム

核内のDNAは染色体の形で格納されています。

1本の染色体には1分子のDNAが含まれています。

ヒトの染色体には第1から第22までの常染色体と、XYの性染色体があります。

ヒトゲノムは24本の染色体に含まれるDNAの塩基配列全体で、約30億塩基分の遺伝情報になります。

 

ゲノムを使いこなそう

DNAは4種類の塩基が直線的に連なった分子であるため、塩基の並ぶ順番「塩基配列」があります。

DNA分子の中で転写や翻訳が起こる場所が遺伝子です。

ヒトの遺伝子はゲノム全体に2万数千カ所あります。

タンパク質のアミノ酸配列を決めている部分はヒトゲノム全体の1〜2%くらいです。

 

地球上には多種多様な生物が生きていますが、すべての生物は細胞からなり、DNAを遺伝物質としてもっています。

それぞれの生物種(しゅ)に特徴的なゲノムをもっています。

細胞から細胞へ、親から子へ伝えられる情報は、基本的にはゲノムのみ。

生物種の違いはゲノムの多様性のみ。

同一種の中での多様性(ヒトなら個人差)もゲノムの多様性のみ。

 

遺伝子になにが書いてあるのか?

すべての生物は遺伝物質としてDNAを持っています。

DNAの中にタンパク質の合成方法(アミノ酸配列)が書いてある遺伝子があります。

遺伝子の遺伝情報により、タンパク質の構造が決まります。

ヒトの場合、2万数千個の遺伝子をもちます。

ヒトがもつすべてのタンパク質の作り方がゲノムに書いてあります。

ヒトがもつ10万種類ほどのタンパク質の働きにより、細胞や個体の構造や働きが決まります。

ヒトの個人差はヒトゲノムの多様性で説明できます。

ヒトはヒトゲノムをもつが、個人間でわずかに違いがあります。

ヒトゲノムは30億塩基分の塩基配列からなるが、そのうち0.1%くらいの違いがあります。

この個人間の多様性を込みでヒトゲノムといいます。

つまり、ゲノムにも共通性と多様性があります。

 

第2回課題について 再掲

DNA」や「遺伝子」と解答する場合が多い。

しかし、それらは正確ではありません。「ゲノム」という便利な言葉があります。

DNA、遺伝子、ゲノムを使い分けることで的確に説明できます。

 

地球上の生物の共通性と多様性

地球上には多種多様な生物が生きていますが、すべての生物は細胞からなり、DNAを遺伝物質としてもっています。

それぞれの生物種(しゅ)に特徴的なゲノムをもっています。

  細胞から細胞へ、親から子へ伝えられる情報は、基本的にはゲノムのみ。

  生物種の違いはゲノムの多様性のみ。

  同一種の中での多様性(ヒトなら個人差)もゲノムの多様性のみ。

 

ゲノムには遺伝子が含まれており、各々の遺伝子はタンパク質の作り方が書いてあります。つまりどんなタンパク質を作るかで生物種が決まり、個人差も現れます。

  地球上のすべての生物がもつDNAは4種類の塩基を使って合成される。

  塩基は多数あるが、DNAを作る塩基は4種類のみ。

  この選択はすべての生物で共通。

 

地球上のすべての生物がもつタンパク質は20種類のアミノ酸を使って合成されます。

  生体内にアミノ酸は多数ありますが、タンパク質

  合成に使われるアミノ酸は20種類のみ。

  この選択はすべての生物で共通である。

  光学異性体の選択も共通。

生物の多様性はDNAの塩基配列によってほぼ決まっており、その情報から作られるタンパク質の働きに大きく依存しています。

 

DNAやタンパク質が単独で存在しているわけではなく、細胞という装置に含まれています。

細胞の中のDNAが遺伝物質として働き、細胞の中で遺伝子の遺伝情報が読み解かれてタンパク質が合成されます。

親から子へゲノムが継承されるときも、細胞という装置が使われています。

細胞を介して行われる一連の化学反応が代謝です。

 

次回の講義

次回は遺伝情報の伝達について講義します。多細胞生物の場合、体細胞と生殖細胞があり、それぞれ体細胞分裂と減数分裂で生じます。

これらの分裂時に生じる遺伝情報の伝達のしくみを学びます。

 

 

説明: 説明: 説明: 説明: hr-green

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