同様の記述が「やさしいバイオテクノロジー」(サイエンス・アイ新書)に書いてあります。

見やすいイラスト入りでわかりやすいです。参考にしてください。

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 2−2.遺伝子の基本

 

○遺伝子の説明をする前に

 

後述するように、20059月のScience誌に、「RNA新大陸発見」の論文が載りました。

この発見は、これまでの遺伝子の概念にたいして大きく変更を迫るものです。

このマウスでの発見が広く生物界に適応できるのであれば、すべての教科書を大幅に書き直す必要があります。

この「バイオテクノロジー」のテキストも例外ではありません。

 

しかし、いきなり最先端の話をしても理解するのが難しいでしょうから、以降の説明では特に断らない限り2005年夏までの古典的な理解で説明します。

ある程度理解が進めば、この「RNA新大陸発見」の論文の詳細を取りあげる予定です。

 

 #科学の他の分野と同じく、入門レベルの授業で述べられる内容はほとんどすべて反証されています。つまり正しくない、あるいは正確ではない!

 

 

 

○遺伝子はどこにあるのか

 

 次に、遺伝子はどこにあるのか見てみましょう。

遺伝子の物質としての本体はDNAです。

遺伝子というのはDNAのうちRNAと呼ばれる核酸に遺伝情報が写し取られる機能単位であり、DNAの一部です。

つまり、DNAがあるところに遺伝子はあります。では、細胞のどこにDNAがあるのか見てみましょう。

 

 まず、真核細胞の核の中および原核細胞の核様体の中にDNAがあります。

真核生物のDNAは「染色体」の形で存在します。

染色体はDNADNA結合タンパク質からなり構造物です。

ヒトの場合、ひとつの核の中に染色体は2346本あります。

1本の染色体には1分子のDNAがあります。

DNAは直鎖状であり、分岐や分断はしていません。

ヒトの場合、第1から第22までの「常染色体」とXまたはYの「性染色体」からなります。

1から第22までの常染色体は対になっており、加えて、女性はXX、男性はXYの性染色体を持っています。

対になっている染色体は、それぞれ母親から1セット父親から1セット受け継いでいます。

 

 真核細胞には細胞内小器官としてミトコンドリアと葉緑体を持ちます。

動物細胞と植物細胞のミトコンドリアにもDNAがあり、ひとつのミトコンドリアに1分子のDNAがあり、ひとつの細胞に多数のミトコンドリアがあります。

植物細胞の葉緑体にもDNAがあり、ひとつの葉緑体に1分子のDNAがあります。

ひとつの植物細胞に多数の葉緑体があります。

原核生物には「プラスミド」をもつものがあります。

その場合、通常ひとつの細菌に多数のプラスミドコピーがあります。

 

 ここに出てきたすべてのDNAの中に遺伝子があります。

 

 

 

○ゲノムとはなにか

 

 

 ゲノムとは、生物を構成するのに必要な遺伝情報のことで、塩基配列全体のことです。

ゲノムは、一般には核や核様体のDNAに対して使います。

ヒトの場合、22種の常染色体、XYの性染色体、合計24種の染色体のDNAの塩基配列全体の遺伝情報をヒトゲノムといい、30億塩基分の塩基配列に相当します。

これ以外に、ミトコンドリアゲノム、葉緑体ゲノム、ということもあります。

この場合、ひとつのミトコンドリアDNA分子あるいはひとつの葉緑体DNA分子の塩基配列全体の遺伝情報をさします。

 

 生物の基本的な遺伝情報を表すのがゲノムです。

したがって、ヒトゲノム、チンパンジーゲノム、大腸菌ゲノム、といった使い方をします。

それぞれの生物の持つDNAの塩基配列のすべてに相当します。

つまり、各生物種のちがいは、ゲノムのちがい、つまり塩基配列のちがいにのみ由来するといえます。

ヒトとチンパンジーのゲノムの遺伝情報のちがいは1%ぐらいと推定されています。

ヒトのゲノムの個人差は0.1%強とみられています。

 

 ウイルスにも核酸(DNARNA)が含まれています。

DNAウイルスとRNAウイルスがあり、いずれのウイルスもその核酸の塩基配列の情報全体がウイルスゲノムです。

 

 ゲノムの塩基配列を丸ごと読まれた生物種はたくさんあります。

2006年にはネアンデルタール人のゲノムプロジェクトが始まりました。

絶滅し、しかもヒトに一番近い生物のゲノムがあきらかにされる日も近く、生物としてのヒトの理解もさらに進歩するでしょう。

 

 アントニオ猪木率いる格闘技の「イノキ・ゲノム」、たぶん関係ありません。

 

 

 

 

○遺伝子に何が書いてあるのか

 

 遺伝子の塩基配列の情報って、一体どんな情報が隠されているのでしょうか。

DNAから「転写」という過程で合成されるRNAのうち、「メッセンジャーRNA」(mRNA)に転写される部分にはタンパク質の「アミノ酸配列」が書いてあります。

アミノ酸配列とは、アミノ酸の並ぶ順番と長さを表します。

遺伝子を構成する塩基配列にはさまざまの長さがあり、千塩基程度のものから数十万塩基におよぶ長いものもあります。

ヒトの場合、10万種類以上のタンパク質があるとみられています。

 

 タンパク質を合成するときに使われるアミノ酸は20種類です。

この20種類というのは地球上に存在する生物すべてに共通です。

アミノ酸配列のちがいにより、多種多様な構造と機能を持つタンパク質ができます。

生物が多様な形態と機能を持っているのは、その生物を構成するタンパク質の種類と量、分布のしかたに依存しているといっても言い過ぎではありません。

そのタンパク質の種類を決定しているのがゲノムの遺伝情報の中でも遺伝子の部分です。

ゲノムの中にどのような遺伝子セットを持つかによって生物の形態と機能は決定されるわけです。

 

 ウイルスに含まれる核酸にも遺伝子領域があります。

その遺伝子は真核生物や原核生物と同じように暗号化されており、ウイルスの遺伝子からもタンパク質が合成され、ウイルスを構成するタンパク質になります。

 

 

 

○どんな構造か

 

DNAの二重らせん構造は、ワトソンとクリックにより提唱され、1953年、Nature誌に発表された。

 

J. D. Watson, F. H. C. Crick,

Molecular structure of nucleic acids.

Nature, 174(4356), 737-738 (April 25, 1953)

 

DNAは4種の塩基(ヌクレオチド)のポリマーである。

DNAは二重らせん構造をしている。分岐構造は持たない。

 

DNAはヌクレオチドのポリマーである。

ヌクレオチドはデオキシリボースとリン酸、それに4種の塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)のうちどれかひとつからなる。

ヌクレオチドは4種類ある。

デオキシリボースとリン酸とアデニンからアデニンヌクレオチドができる。

同様にグアニン、シトシン、チミンからグアニンヌクレオチド、シトシンヌクレオチド、チミンヌクレオチドができる。

 

2つのヌクレオチドの結合は、ひとつのヌクレオチドのリン酸ともう一方のヌクレオチドのデオキシリボースのエステル結合による縮合である。

 

デオキシリボースの5’位の炭素にリン酸が結合している。DNAが合成されるとき、すでに存在するDNA鎖のデオキシリボースの3’位の水酸基に新しいヌクレオチドのリン酸基がエステル結合により結合する。この繰り返しでDNAは合成される。

 

したがって、合成されたDNA鎖のうち、5’位側は遊離のリン酸基があり、もう一方の3’位側は遊離の水酸基が残っている。

 

DNAはヌクレオチドのポリマーであるが、デオキシリボースとリン酸の骨格に塩基がつながったものであるから、ヌクレオチドのうち塩基の部分がつながったものとみなし、DNAは塩基の重合体とよび、DNAの構造は塩基配列で記載される。

 

DNAの塩基配列は 5AGCTAGCT 3’のように塩基の順番に表記する。この順番はDNA合成が起こる方向と同じである。

 

DNAは二重らせん構造をとっている。

2本のポリヌクレオチドのうち、両者の塩基は内側を向き、リン酸とデオキシリボースの鎖が外側にのびている。

 

内側を向いている塩基は相補的である。

すなわち、アデニンは必ずチミンと、シトシンは必ずグアニンと向かい合っている。

それぞれ、水素結合が2本および3本形成され、安定化している。

この性質により、1本の鎖の配列が決まればもう1本の配列は必然的に決まる。

 

2本の鎖の立体構造は逆向きである。

1本が5’から3’に向いているとき、他方は3’から5’に向いている。

上記の例のような塩基配列の場合、下記のような2本らせんになる。

 

5AGCTAGCT 3

3TCGATCGA 5

 

習慣的に、二本鎖を上下段に並べた場合、上段は5’から3’に、下段は3’から5’に左から右に配列を記載する。

その理由は後述するとおり、転写や翻訳のしかたにかかわっている。

 

1本鎖の分子を表すときは、特に断らない限り5->3’方向に書く。

たとえば、ACのジヌクレオチドのACCAは異なる化合物である。

 

 

ヒトの場合、細胞の数は約60兆個(6 x 10^13)、細胞の大きさは約10μm(1 x 10^-5 m)である。

ヒトゲノムの塩基数は約30億塩基対(3 x 10^9 bp)、遺伝子数は約2万(2 x 10^4)個である。

ヒトの細胞1個あたりのDNAの長さは約2 m200 cm)、ゲノム中の遺伝子の割合は約5%である。

 

 ヒトの場合

 遺伝子領域の合計塩基数     30bp x 5% = 1.5bp = 1.5 x 10^8 bp

 遺伝子と遺伝子の平均塩基数 30bp/2 = 3 x 10^9/2 x 10^4 bp = 1.5 x 10^5 bp = 15万塩基

 1遺伝子当たりの平均塩基数  1.5 bp/2 = 7500 bp

 遺伝子間領域の平均の塩基数 28.5 bp/2 = 14 bp

 

 ひとつの細胞のDNAを 2 m = 200 cm としてあらわしたら、

 遺伝子領域の合計の長さは 200 cm x 5% = 10 cm

 遺伝子と遺伝子の平均間隔 200 cm/2 = 1 x 10^-4 m = 0.1 mm = 100 μm

 1遺伝子当たりの平均長さ  10 cm/2 = 5 x 10^-4 cm = 0.005 mm = 5 μm

 遺伝子間領域の平均の長さ 190 cm/2 = 9.5 x 10^-3 cm = 0.095 mm = 95 μm

 

 ひとつの細胞のDNAを400 m であらわしたら

 遺伝子領域の合計の長さは 400 m x 5% = 20 m (JR車両)

 遺伝子と遺伝子の平均間隔 400 m/2 = 20 mm

 1遺伝子当たりの平均長さ  20 m/2 =  1 mm

 遺伝子間領域の平均の長さ 380 m/2 = 19 mm

 

 ヒトゲノムの塩基配列を1塩基あたり1mmの大きさで記載

 30bp = 3 x 10^9 bp -> 3 x 10^9 mm -> 3 x 10^3 km -> 3,000 km

 この答を日本の塵に当てはめてみると興味深い。

 1遺伝子当たりの距離や遺伝子間の距離を計算するとおもしろい結果が出る。

 

 

 

○DNAの複製 遺伝情報の伝わり方

 

細胞が分裂するとき、まずDNAの複製が行われ、DNAが2倍になる。

複製には相補性をうまく利用し、親と全く同じ2倍の娘分子ができあがる。

 

DNA複製のとき、まずDNAの2本鎖が離れて1本鎖となる。それぞれの鎖が鋳型となり、これに相補的な新しい鎖が合成されることにより、複製される(半保存的複製)。

相補鎖を利用することから、新しい2組の2本鎖の配列は親の2本鎖の配列と同じものである。

 

体細胞には細胞周期がある。

それは、DNA合成の準備期であるG1期、DNA合成期のS期、分裂準備期のG2期、および分裂期のM期からなる。

このうち、S期においてDNAが複製され、DNA量が正確に2倍になる。

すなわち、DNA分子が1分子から2分子になる。DNAの複製はS期だけで、1サイクルあたり1回だけ正確に起こる。

 

ヒトの場合の分裂のしかたをみてみる。

体細胞には23対46本の染色体がある。この状態を2nであらわす。体細胞は体細胞分裂で増える。

 

まず、核ゲノムに相当する染色体のなかのDNAがS期に正確に2倍になり、4nの状態になる。

細胞には核ゲノムの他にミトコンドリアゲノムもある。

M期で細胞が分裂するとき、核ゲノムは正確に二つの娘細胞に分配される。それぞれ親と同じ2nの核ゲノムを持つようになる。

ミトコンドリアゲノムはそれぞれの娘細胞に分配される。

 

 

DNAが複製される仕組みをもう少し詳しくみてみよう。

 

DNAは二重らせん構造をとっている。二本のDNAの向き合っている塩基は相補的である。

すなわち、アデニンとチミン、グアニンとチミンはそれぞれ2本と3本の水素結合によって安定的な構造を保っている。

この相補性ゆえに同じ塩基配列のコピーをとることができる。

DNAが直鎖状であっても環状であっても、細胞が増殖するときにはDNA分子は正確に2倍になる。

 

原核生物と真核生物ではDNAの複製のしかたが異なる。

 

DNAは二本鎖のままでは複製できない。まず、二本鎖のDNAをほどく酵素の働きにより、部分的に二本鎖の部分が巻き戻しながら離れ、一本鎖の状態になる。

 

そこに短いRNAからなるプライマーが相補的な場所に結合し、これを頭にしてDNA依存性DNAポリメラーゼの働きにより、鋳型に対して相補的なヌクレオチドが順次重合することで娘鎖が合成される。

 

DNA合成は必ず5’から3’の方向に伸長する。DNAの二本らせんは逆向きであることから、ひとつのDNAとポリメラーゼによって両方の鎖を同時に伸長させることはできない。ひとつのDNAポリメラーゼが伸長反応を行えるのは二本鎖のうちの一本だけである。

 

二本らせんのうち、部分的に一本鎖にほどかれたところから、DNA複製は一方方向にしか進まない。

そうすると、複製の始まっている鎖とは反対の鎖はそのままでは同じ方向に複製できない。

反対側の鎖は、一本鎖にほどかれたところの下流側にプライマーがアニーリングし、ほどかれた起点に向かってDNA合成が行われる。

この合成が伸長するには、さらにほどかれた下流に再びプライマーがアニーリングし、最初のプライマーがアニーリングした付近まで戻りながら伸長反応が起きる。

このように、断片的に逆向きに合成が起こる。

このような複製の仕組みを発見したのは日本人の岡崎令治、恒子夫妻らである。発見者の名前にちなんで岡崎フラグメントと呼ばれる。

この岡崎フラグメント間がDNAリガーゼで結合することで複製は完了する。

 

DNA複製の時、鋳型の鎖に相補的なヌクレオチドが順次結合し伸長するが、時折ミスを犯すことがある。複製ミスが起こったとき、そのミスを監視、発見し、修復する複雑なシステムがある。

この修復するシステムにより、100万倍ほど精度が上がり、最終的には10の10乗塩基に1回ぐらいの割合にまでミスが減少する。

DNAの伸長反応速度は原核生物で1秒間に千塩基ぐらい、真核生物で1秒間に百塩基ぐらいである。

 

RNAウイルスのゲノムRNAを複製する酵素はRNAレプリカーゼと呼ばれている。

RNA依存性RNAポリメラーゼである。

この酵素は校正機能を持っていないため、千〜1万塩基に1回のエラーを起こす。

したがって、ウイルス感染した後ウイルスが増殖するとき、親と全く同じ塩基配列ではなく、かなりの割合で変異を起こしている。

この変異を起こしやすさがウイルスの進化の原動力にもなっており、また、その変異によりウイルスを構成するタンパク質のアミノ酸配列も変化することから、抗原でもあるウイルス表面タンパク質に対する抗体などのワクチンがなかなか作りにくい原因にもなっている。

 

 

 

○生殖細胞

 

親から子へと伝わる遺伝情報は染色体DNAで伝えられる。

 

ヒトの卵子や精子のような生殖細胞は23本の染色体をもち、nであらわす。減数分裂により生じる。

卵子と精子で減数分裂する過程は異なるが、結果的には生殖細胞の親となる2nの細胞から対になっている染色体が分離してnの生殖細胞になる。

 

染色体セットの構成は、卵子には1番から22番までの常染色体とX染色体がそれぞれ1本ずつ、計23本の染色体が含まれる。

精子には2種類の染色体セットがあって、卵子と同じ1番から22番までの常染色体とX染色体がそれぞれ1本ずつ、計23本の染色体をふくむものと、X染色体のかわりにY染色体を持つものがある。

 

体細胞の対になっている染色体の遺伝情報はほとんど同じであるが、母親と父親由来のセットであるから、当然遺伝情報の個人差がある。先にみたように、その塩基配列には0.1から0.4%のちがいがある。

したがって、減数分裂するとき、どちらの染色体が選ばれるかによって異なる遺伝情報を持った生殖細胞ができる。

 

生殖細胞の種類は、その核ゲノムに染色体が1対だけならば2通り、2対の染色体であれば2^2=4通りの組合せができる。

ヒトの場合、染色体は23対あるので、減数分裂時に生殖細胞に分配される染色体セットの組合せは、2^23通りとなり、約800万種類の卵子または精子ができることになる。

 

減数分裂のとき、交叉(教科書では組換え)という現象が起こる。

後に詳しく述べるように、対になっている染色体同士が相同的な部分で、染色体レベルによる組換えが起こり、母親と父親由来の染色体がモザイク状になった新しい染色体セットができる。この交叉はランダムに起こる。

しかし必ず交叉は起こるので、結果的に卵子や精子の種類は膨大な種類作ることができる。

 

しかも、受精によって子ができるわけであるから、多様な卵子と精子の組合せで受精し、結果的に膨大な種類の子の産まれる可能性があることがわかるであろう。

 

あるヒトの染色体にはどのような種類の染色体が含まれているのであろうか。

そのヒトの両親の染色体セットを受け継ぐわけであるが、両親の染色体も当然その両親(祖父母)から受け継いでいる。

たとえば母親がもつ染色体はその祖父母の染色体のセットが合体したものである。

その母親の卵子の染色体は祖父母の染色体が交叉に染色体単位で入り交じり、さらに祖父母のうちのどちらかの染色体を選び取ったセットである。単なる祖父母の染色体から選び取ったセットではない。

父親の精子の染色体も同様である。

この母親の卵子と父親の精子に含まれる染色体が合体したのが当該ヒトの染色体になる。

その中に含まれる染色体は4人の祖父母の染色体単位のモザイクであるだけでなく、染色体の内部でもそれぞれ2人の祖父母の染色体のモザイクになっている。

このように複雑な組合せを持った染色体を持つ子が産まれるわけである。

 

 

 

○受精

 

受精とはnの卵子とnの精子が細胞融合し、2nの受精卵になる現象である。

この時ミトコンドリアゲノムは卵子由来のもののみが残る。

この受精卵が卵割し、さらに分化し、個体が誕生する。

 

多様な生殖細胞を作る仕組みにより、兄弟の間でも異なるゲノムを持つことになる。

兄弟は似ているが異なるゲノムを持つ理由がここにある。

偶然同じゲノムセットの子が時間差で産まれてくることは確率的にあり得ない。

 

ひとりの個体の中にあるすべての体細胞は、受精卵が分裂してできたものであるから、受精卵と60兆個の体細胞は基本的にすべて同じゲノムつまり同じ塩基配列の遺伝情報を持つことになる。

#例外はいくつかある。血液中のある種の細胞、すべての細胞のテロメア、多くの細胞に

#みられる複製ミス、突然変異など。

#詳細は後述する。

 

ちなみに、クローンとは同じ遺伝情報を持つものどうしに対して使う。

個体なら、お互いに正確に同一ゲノムを持つ場合、クローンである。一卵性双生児がこれに該当する。

細胞なら、分裂した細胞やその親細胞はお互いに同一のゲノムを持つためクローンである。

遺伝子なら、同じ塩基配列を持っているDNA分子の集まりはクローンである。

植物の場合、挿し木や取り木、チューリップのような球根、タマネギのような鱗茎、ジャガイモのような塊茎、山芋のようなムカゴなどで増やした場合、いずれも体細胞であるためお互いにクローンである。

植物でも種から増やした場合はクローンではない。

多くの野菜や果物、桜の木などはクローン個体である。

 

60兆個の体細胞は基本的には受精卵のクローン細胞である。

 

 

 

○セントラルドグマ

 

分子生物学のセントラルドグマというのがある。

親から子への遺伝はゲノムの遺伝情報として伝えられる。

ある個体のゲノムの遺伝情報はDNAの塩基配列として保存されている。

細胞や個体が複製されるときはDNA複製されることで遺伝情報が伝えられる。

DNAのうち、遺伝子の部分がRNA転写され、そのRNAの塩基配列からタンパク質への翻訳がおこなわれる。

このようにDNAからRNAへ、そしてタンパク質へと情報が伝達し、発現していく。

その流れは一方方向である。タンパク質の情報が核酸に戻されることはない。

ただし、RNAからDNAへ逆転写することで遺伝情報が伝えられるレトロウイルスが見つかっている。

このような遺伝情報の一連の流れをセントラルドグマという。

 

次に、転写と翻訳のしくみをもう少し詳しくみていこう。

 

 

 

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無断転載を禁じます。 ashida@msi.biglobe.ne.jp・芦田嘉之

2007221() 更新

 

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