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 2−6.細胞学の基礎知識

 

○生殖と発生 生殖細胞系列と個体発生

 

多細胞生物である動物や植物は体細胞と生殖細胞からなる。

 

体細胞の染色体は通常2倍体であり、体細胞分裂により増殖する。

ヒトの体細胞はその性質から200種類ほどあると考えられている。

細胞の形、大きさや機能は非常に多様である。

化学的に見ると、これまでにも見てきたように多くの共通物質が含まれている。

 

生殖細胞の染色体はその半数体であり、そのもとになる細胞から減数分裂により作られる。

 

動物から体細胞の半分の染色体しか持たない細胞が見つかったのは1883年のことである。回虫で観察された。

この発見以降、減数分裂、受精の知識が増大した。

 

減数分裂の第一分裂のとき、まず、体細胞分裂の時と同じように染色体が倍加する。倍加した染色体を姉妹染色分体という。

体細胞分裂ではそれぞれの倍加した姉妹染色分体が中央面に集合して、姉妹染色分体が離れることで体細胞分裂が進行し、娘染色体を持った新しい細胞ができる。

ヒトでは46本の染色体がそれぞれ複製して倍加し、46本すべてで姉妹染色分体がつくられ、92本になる。

この46本の姉妹染色分体が2つの娘細胞に分配されるので、結果的に親細胞と同じ46本の染色体を持った2倍体細胞が2つできることになる。

 

一方、減数分裂では姉妹染色分体の相同染色体が対合する。すなわち相同な4本の染色体が集まった状態になり、この複合体が細胞の中央面に集合する。

4本の染色体のうち、2本は母方由来の姉妹染色分体、2本は父方由来の姉妹染色分体である。

この4本の染色体が横並びに結合する。このとき、母方由来1本と父方由来1本が交差して結合する。この結合部分をキアズマという。キアズマは染色体1対あたり少なくとも1個はでき、平均して2、3個できる。このキアズマによって倍加した4本の染色体は離れずに結合している。

減数分裂の第二分裂により、組換えられた倍加した母方由来染色体と父方由来染色体が分かれる。この時点で相同染色体が分離しているが、それぞれの染色体は姉妹染色分体として存在している。染色体数としては46本ある。

その後減数分裂の第二分裂がおこり、倍加した染色体が分離し、nの新しい細胞ができる。

結果的に2nの細胞から4つのnの細胞が生じるが、生じた4つの細胞の染色体は遺伝的にすべて異なることになる。

母方由来の染色体と同一、父方由来の染色体と同一、および母方由来と父方由来のモザイクになった2種の染色体、計4種の染色体を持つ細胞が減数分裂により誕生する。

このような交叉はヒトの場合22対すべての常染色体上で起こる。

ヒトの女性の場合、性染色体であるX染色体も常染色体と同様に交叉が起こる。

ヒトの男性の場合、X染色体とY染色体はわずかに相同な部分があり、その狭い相同な部分が目印になって対になる。

 

ちなみに体細胞分裂では2nの細胞から遺伝的に同一の2nの細胞が2個できる。

また、体細胞分裂と減数分裂の第二分裂は、通常数時間以内に終わるが、減数分裂の第一分裂はかなり時間がかかり、性によって異なるが、数日、数ヶ月、あるいは数年かかることがある。

 

減数分裂のしくみからわかるように、減数分裂の初期の細胞には23対が倍加しているため92本の染色体が含まれている。この多数の染色体から組合せを間違えないように4等分して4つの細胞を作るのが減数分裂である。

通常、正確に4等分されるが、ときおり相同染色体を分離するときに間違え、「不分離」をおこすことがまれにある。

 

例えば、第21染色体が減数分裂の第二分裂のときに分離されなければ、第21染色体を2本持つ細胞(24本の染色体)と第21染色体を持たない細胞(22本の染色体)ができる。

第21染色体を2本持つ配偶子と正常な配偶子が受精すると、できた胚には第21染色体が3本含まれることになる。他の染色体対は正常であるため、この胚は47本の染色体を持つことになる。これをトリソミーと呼んでいる。

第21染色体上にある遺伝子は通常より多いため、この遺伝子由来のタンパク質は通常よりたくさん合成されることになり、このような原因から胚の発生がうまく行かないことが知られている。これが重度の精神遅滞を特徴とするダウン症候群の遺伝的な説明である。

 

このような「不分離」、すなわちヒトの生殖細胞でおこる染色体分離の異常は女性に多く見られ、1割ぐらいの卵子で不分離が起こっていると見られている。不分離の卵子が使われて場合は、多くの場合は妊娠初期で流産する。短い染色体である第21染色体のトリソミーでは妊娠が継続する。

ちなみに特定の染色体が1コピーしかない場合はモノソミーと呼んでいる。X染色体が1個で常染色体は正常な45本の染色体を持つ場合、Xモノソミーといい、ターナー症候群として知られている。

 

ダウン症は常染色体のトリソミーでる。ダウン症以外にも常染色体トリソミーやモノソミーはあるが、いずれも重篤な症状が現れる。

多くの常染色体モノソミーは胚の段階で致死性である。常染色体トリソミーでもほとんど胚致死または胎児致死である。13番染色体トリソミーと18番染色体トリソミーが出産にいたることがある。21番染色体トリソミーであるダウン症の場合は生殖年齢以上まで生存することがある。

この3種の染色体の共通の特徴は、他の染色体に比べて遺伝子の数が少ないことである。遺伝子数が少ないことから比較的影響が少ないのかもしれない。

いずれの例も、染色体単位で見れば、なんら異常はないにもかかわらず、正常な染色体の数が多かったり少なかったりするだけである。このことから、対になっている常染色体の対立遺伝子間の機能やその発現の量的な関係が重要であることがわかる。

 

一方、性染色体の数が異常な染色体異常の例も見られるが、常染色体の数の異常のときほど深刻な影響はない。

たとえば、XXX、XXY、XYYの性染色体過剰の場合、比較的問題は見られず寿命も平均的である。

Xモノソミーはほとんど流産するが、まれに生存する場合、知能や身体的機能に大きな異常はない。ただし、生殖能はないといわれている。

Yモノソミーは生存できない。

 

Y染色体にある遺伝子数は少なく、男性の性決定にかんする遺伝子がある程度であるため、Y染色体を複数持っていても異常は少ないのかもしれない。

 

X染色体は、正常な場合でも男性は1本、女性は2本ある。このことから、X染色体上の遺伝子の発現に男女間で違いが出そうであるが、実際にはX染色体の遺伝子は巧妙に制御されており、女性では2本のX染色体の対立遺伝子のうち1本だけが発現し、男性と同じ発現量になるように制御されている。

すなわち、正常な女性のもつ2本のX染色体のうち、1本は不活性化して働かず、1本のみ機能するシステムがある。

このような仕組みにより、X染色体の数が多い性染色体過剰でもほぼ正常であると考えられている。

ターナー症候群として知られているXモノソミーはX染色体の不活性化という理由で、かろうじて生存するのであろう。

YモノソミーはX染色体を全く持たないので生存できない。

 

X染色体の不活性化の一番わかりやすい例は三毛猫である。三毛猫になるのは雌のネコだけである。

ネコの毛を決定している遺伝子がX染色体上にあり、X染色体をふたつ持っている雌のネコにのみモザイク状に該当遺伝子が発現するため、三毛猫になる。

雄のネコはX染色体をひとつしか持っていないので、三毛猫にはならない。

このようにはっきりと表現型が表に出なくても、X染色体上にある遺伝子の発現はモザイク状になる。

 

X染色体の不活性化は、実はそれほど単純ではないことが分かっている。

X染色体にはY染色体の一部と相同な部分がわずかにある。このわずかに相同な部分はXX、XYにかかわらず対立遺伝子がある。したがって、この領域は不活性化する必要がなく、実際不活性化が起こっていないらしい。

つまり、XXの場合、1本のXが丸ごと不活性化しているわけではなく、ごく一部発現している領域がある。

Xモノソミーで異変が見られるのは、不活性化の不完全さだけでなく、このYと共有している領域の発現にも関わっていると推測されている。

 

 

卵子と精子の受精では、半数体の細胞どうしの融合で2倍体の受精卵が生じる。

卵子にも精子にもミトコンドリアがある。しかし、卵子と精子が融合したとき、それぞれの染色体はすべて受精卵に残るが、ミトコンドリアは卵子由来のみの受精卵に残る。精子由来のミトコンドリアは受精の過程で排除される。

 

したがって、受精卵のゲノム構成は、卵子の核ゲノムと精子の核ゲノム、それに卵子由来のミトコンドリアゲノムの融合体である。

このように、ミトコンドリアゲノムは母性遺伝する。家族の中で、母親と子らは同じミトコンドリアゲノムを持つ。父親のミトコンドリアゲノムは子孫には受け継がれない。

 

卵子と精子が融合したとき、それぞれの染色体がただちに対になるのではなく、それぞれの染色体がまず二倍に複製され、4nの状態になる。その後、最初の卵割のとき、二個の細胞にそれぞれの染色体が分配される。

 

体細胞の核の中で対になっている染色体は、卵子由来か精子由来かどちらかである。遺伝子によっては両者の区別がある。区別の目印にはメチル化が使われる。

このメチル化は発生初期に特に重要であり、卵子由来ゲノムと精子由来ゲノムの役割分担がなされている。これをインプリンティングという。体細胞クローンや単為生殖を行うのが難しいのは、この現象のためである。

 

受精卵には卵子由来の細胞質がすべて使われる。精子由来ものとしては染色体以外の細胞質の何が使われているのか長らく不明であった。

2004年5月13日号のNatureの論文によれば、精子由来のmRNA6種類が受精卵に持ち込まれ、このmRNAの機能がその後の卵割に必要であるらしい証拠が報告された。詳細な機能はまだ不明であるが、精子にも染色体以外の役割があることが示された。

この現象が詳しく解明されれば、体細胞クローンの成功率が増すことが期待される。

 

G. Charles Ostermeier, et al.,

Reproductive biology:  Delivering spermatozoan RNA to the oocyte

Nature 429, 154 (13 May 2004)

 

 

 

○生殖はなぜ必要か?

 

減数分裂のとき、染色体のシャッフルだけでなく交叉までおこり、かなり多種類の配偶子ができる。

両親共にこのシャッフルが起こり、そのうちのひとつどうしのみが選ばれて受精する。

 

なぜこのような「性」のしくみが進化してきたのだろうか?

 

進化のキーワードのひとつに「多産と、より多く生き残る」というのがある。適応である。

その時々の環境で生き残るのに有利な個体が生き残る。

親は常に生き残る可能性のある個体数以上の子を産む。

その中で、染色体シャッフルにより偶然その環境に適した個体が生き残る。

その生き残った個体が、再びシャッフルし、さらに適した個体が生き残る。

 

性が無ければ、染色体シャッフルはない。

無性生殖の場合、生まれてくる個体は通常親のクローンである。

その個体が環境変化に適していなければ、絶滅するしかない。実際には変異しやすいため、あるいは修復をわざとしないような仕組みのため、すべての子は親の完全なクローンではないため、すこしは自然選択が働く。

 

有性生殖のメリットは染色体をシャッフルするため、すべての子は親と異なるゲノムを持つことになり、多様な子を作ることである。

親のクローンが生まれてくることはない。

したがって、環境が激変しても、生き残る個体が生まれる可能性は有性生殖のほうが大きいことになる。

 

進化のキーワードのひとつに「突然変異」がある。

変異は中立でランダムに起こる。

環境変化とは独立に確率的に起こる。

その結果、それぞれの環境に適した変異のみが生き残る。

環境が生き残るということを基準に選択することになる。

変異が、ある方向性をもっておこるわけではない。変異や進化の方向に目的はない。

 

性も同じである。

減数分裂による染色体シャッフルや、受精の偶然は、いずれもランダムに起こる。

その結果生まれてきた個体が、個体の生活している環境に適していれば生き残るし、適していなければ生き残れない。

 

性は種が効率よく存続するために選んだ最良の戦略といえる。

したがって、無性生殖しかもたない生物種とは比べものにならないくらい多様な有性生殖生物が進化し、さらに大型化した。

大型生物はすべて有性生殖のしくみを採用している。

 

性・生物の基本は女性でありメスである。男性やオスはその補助産物に過ぎない。

女性の排卵数は少ないが子を育む。男性は毎日億単位の精子、つまり多様なゲノムをつくる。

男性・オスは単なるゲノムシャッフルのための機械であり、そのため、個体数は少なくてもすむ。

実際、メスに性比が偏った生物は多数存在する。必要なときだけオスが発生する生物もいる。

ヒトも生物学的に女性が基本で、ホルモンの働きにより補助的に男性が「つくられる」。

 

「性」が生まれたことにより、それにともなって「死」も生まれた。

無性生殖の場合、分裂によりクローンをつくることを繰り返すだけで、ゲノムレベルでは生命は連続している。そこに死の概念は考えにくい。

有性生殖の場合、性によってシャッフルされた遺伝子を持つ子をつくると、その親の役目は終わり、やがて死を迎えることになる。この死は不可避である。

 

このように考えると死と対立する概念は性であるといえる。

生は、はじめからある。

 

 

 

○細胞の多様性 同じゲノムなのになぜ多様な細胞があるのか

 

ヒトゲノムのDNAが無ければヒトは誕生しないが、ヒトゲノムのDNAだけでヒトが誕生するわけではない。

ヒトゲノムはヒトを作るための必要な情報であり、細胞から細胞へ、親から子へ伝える情報でもあるが、ヒトゲノムだけではヒトの細胞を作ることはできないし、発生から分化、細胞分裂もおこらない。ゲノムという情報を生かすには細胞というシステムが必要であり、細胞内や細胞間の複雑なネットワークの中でのみゲノムは有効である。

 

ヒトを構成する60兆個の細胞は基本的にはすべて同じゲノムを持っている。

したがって、ほとんどすべての細胞で同じ遺伝子のセットを持っていることになる。

このことがわかったのは、実はそれほど昔ではない。

 

多細胞生物では、通常、受精卵から発生が始まる。

たったひとつの細胞である受精卵が卵割、分化することで個体が発生する。

分化した細胞も受精卵と同じゲノムを持つという事実は、クローン動物を作る実験で証明された。

すなわち、分化した細胞あるいはその核を受精卵から核を除いた除核卵に移植する、いわゆる核移植を行い、発生を進行させると、正常な個体が生じることが示された。つまり、分化した細胞であっても、そのゲノムから個体を作ることができる。

このことから、分化した細胞も受精卵と同じゲノムを持つことがわかった。

 

個体を作る細胞には多くの種類があり、また、それぞれ形や大きさ、機能も異なる。

では、同じゲノムを持つにもかかわらず、どのようにして多様な細胞に分化するのであろうか。

 

実はすべての細胞ですべての遺伝子が発現しているわけではなく、それぞれの細胞種ごとに発現する遺伝子セットが異なり、またひとつの遺伝子に注目すると、細胞ごとにその遺伝子が発現しなかったり、発現してもその発現量が異なったりする。

したがって、細胞種ごとに合成するタンパク質の種類や量が異なり、その結果、多様な機能を持つ細胞になる。

どの遺伝子を発現するかもタンパク質性の因子により調節されており、そのタンパク質性因子の遺伝子も別のタンパク質性因子により調節されている。

 

このように機能や構造の異なる細胞に変化することを細胞の分化という。

分化してもゲノムは基本的には変化せず、ゲノムを包んでいる細胞システムが分化により変化する。

 

たとえばコラーゲンタンパク質の種類は20種類ぐらいあり、ゲノムにはそれぞれのコラーゲンタイプごとにその遺伝子がある。

すべての細胞はすべてのコラーゲン遺伝子を持つが、組織やその細胞ごとに発現するコラーゲン遺伝子が異なることにより、組織ごとに異なるタイプのコラーゲンが存在する。

 

また、ひとつの遺伝子から1種類だけのタンパク質を作るわけではなく、複数のタンパク質が作られることもある。

ある遺伝子がDNAからmRNAに転写された後、スプライシングにより成熟型のmRNAになる。その過程でイントロンが除去されるが、そのとき、選択されるエキソンの組合せが異なることがある。すなわち、ある時はエキソンとして残るが、別の時にはイントロンとして除去される領域がある。その場合、複数の成熟型mRNAが生成することから、ひとつの遺伝子から複数のタンパク質が作られることになる。

 

これを選択的スプライシングという。

 

この仕組みにより、ヒトの場合、2万数千の遺伝子しかなくても、遺伝子数以上にもっと多様なタンパク質を作ることができる。

実際、たとえば、同じ遺伝子から、ある臓器ではA型のタンパク質のみを作り別の臓器ではB型のタンパク質のみを作る、という現象がおこる。

 

その結果、分化した細胞ごとの多様性は、選ばれる遺伝子の種類だけでなく、同じ遺伝子であったとしても選択的スプライシングにより多様なタンパク質が作られることもあり、結果的により複雑な発現様式を示すことになる。

 

たとえばヒトとチンパンジーの間でのゲノムの違いは、単にゲノムの塩基配列から推定されるタンパク質のアミノ酸配列を比較しただけでは比べられないことになり、発現のネットワークも考えると、両者で少数の遺伝子しか違わなくても、発現様式の多様性から機能面で遺伝子のちがい以上に多様になっていることも考えられる。

 

 

 

○体細胞間で異なるゲノムの例

 

基本的にはすべての体細胞は受精卵と同じゲノムを持つが、いくつかの例外がある。

 

DNA複製時のミス、その修復ミスなどにより、塩基配列がかわる。

DNAの複製は非常に正確で、たとえ間違ってもその間違いを認識し、さらに修復する機構がある。進化にしたがってそのしくみが巧妙になっている。

それでも、100%確実にいっさいのミスもなく複製することはできない。

受精卵が最初の卵割をするところから、生命維持のために死ぬまで起こる体細胞分裂において、ゲノムDNAは必ず複製する。

全ての体細胞は受精卵の複製によってできるわけであるから、その複製ミスによる間違いがどうしても蓄積する。

 

環境因子などでひきおこされる突然変異により塩基配列がかわる。

たとえ複製が完璧であったとしても、DNA分子が化学物質や放射線などの化学的、物理的な影響を受けて、化学物質であるDNA分子に化学修飾が起こる。この化学修飾は避けることができない。

細胞にはDNAの化学修飾も見つけ次第修復する機構が備わっている。

しかし、これも完璧ではなく、修飾された塩基を正しく認識できないままに転写、翻訳されたり複製されたりすることが起こる。

実際、多くの遺伝子がかかわる病気はこの突然変異による悪い影響を受けた結果である。

突然変異には、塩基の置換、欠失、挿入などがある。1塩基単位から染色体単位まで幅広く変異の例が見つかっている。

 

染色体DNAの末端にあるテロメア領域が細胞分裂の回数に依存して短くなる。

染色体の末端部分は正しく複製することはできない。

複製にはその核となる頭にプライマが必要である。プライマが結合する部分より3’末端側しか複製することはできない。

したがって、一番5’側のある部分は複製されないことになる。

そのため、複製のたびに末端の配列が短くなる。

 

ウイルスなどの感染により、ゲノムに外来遺伝子が挿入される。

細胞分裂時には親細胞の遺伝情報しか伝達されないが、ときおり、ウイルスなどから外部の遺伝情報が紛れ込むことがある。

ウイルスはその生態から必ず宿主が必要である。ウイルスには宿主ゲノムに入り込む性質を持っている。

このウイルスの攻撃を受けると、当然ゲノムにウイルスゲノムが挿入されることになる。

 

ゲノム内を動く遺伝子であるトランスポゾンが環境因子などにより誘導されて動き回ることもある。

 

先に述べたように、抗体産生細胞など免疫に関与する細胞ではゲノムレベルで抗体産生遺伝子などの組換えがおこる。

 

このように、体細胞は受精卵のクローン細胞とはいえ、そのゲノムDNAは意外と満身創痍である。

 

 

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無断転載を禁じます。 ashida@msi.biglobe.ne.jp・芦田嘉之

2007119() 更新

 

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