平成22年度 定期試験問題

 

平成22年度 学年末試験問題 (第22講−第27講)

 

平成230209日(水) 9:2510:15 予定

 

0. 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「タンパク質」を理解しているか

1. DNAの遺伝情報をもとに作られるタンパク質の構造と機能の意味を理解しているか

2. 基礎的なバイオテクノロジーの技術を理解しているか

 

基礎的な科学用語を正しく使って解説できるかどうかを問う問題です。

すべて記述式です。簡潔に解説するように。

極端な誤答は減点することもあります。

 

 

予定問題(変更することもあります)

1 遺伝子組換え技術にかんする次の問に答えよ

以下の文章は「やさしいバイオテクノロジー」p11からの抜粋である。

設問ごとに正しい(その通り)と思えば○、間違っている(違う)と思えば×で解答せよ。

また、その理由を科学的な根拠を示して簡潔に書け。

(以下略)

2 ゲノムと遺伝子にかんする次の問に答えよ

次の文章について、ゲノム、遺伝子、タンパク質、細胞等の用語を正しく使って科学的に解説せよ。

 「生物を構成する細胞の構造と機能は物理と化学の法則によって記述できる」

 

 

試験当日の注意事項:

・講義と同じ場所です。

 着席する順番は問いませんが、着席可能な場所は指定します(カンニング防止のため)。

 

・次の資料の持ち込みを認めます。

  教科書、副読本、配付資料、ノート

 

・次の機器の使用を禁止します。

  パソコン、電子辞書、ケータイなどの電子機器類

 

他人の文章を丸写ししないように。コピー解答は厳しく採点します。

 

・試験時間は50分。時間配分には十分に留意し、白紙解答がないよう

 全問題解答するように(選択問題はない)。

 

・教科書等の持ち込みを認めますので、ある程度人数がそろいしだい

 試験を開始します(朝一の試験でもあるため。10分程度)

 早めに出席するように。

 

・答案は配布した所定の解答用紙に書くこと。

解答スペースが不足した場合は、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

 

・試験開始後30分以上経過すれば途中退室を認めますが、

他の受験者の迷惑とならないよう静かに退室すること(特にドアの開閉)。

 

・試験終了後、解答用紙のみ回収します。

問題用紙は持ち帰ること。次回の解説で使います。

 


実際の試験問題

平成22年度 学年末試験問題 (第22講−第27講)

「バイオテクノロジー」

 

問題は2問ある。全て解答せよ。問題用紙(本紙)と解答用紙2枚を配布する。

解答スペースが不足した場合は、同じ解答用紙の裏面を使うこと。

所定の解答用紙を使っていれば、小問の解答順序は問わない。

 

1 遺伝子組換え技術にかんする次の問に答えよ(50点)

以下の文章は「やさしいバイオテクノロジー」p11からの抜粋である。

設問ごとに正しい(その通り)と思えば○、間違っている(違う)と思えば×で解答せよ。

また、その理由を科学的な根拠を示して簡潔に書け。

1.  遺伝子組換え食品には昆虫を殺す毒素(殺虫毒素)を作るものがある。この野菜を虫が食べると死んでしまうので、人間がこの毒素入り野菜を食べると、人間に害を与える。

2.  遺伝子組換え技術を使えば、どんな遺伝子でも組み込むことができる。例えば、動物の足を作る遺伝子を野菜に組み込めば、野菜に足が生えて畑から逃げ出すことがある。

3.  例えば、トマトの遺伝子にハエの遺伝子を入れ、腐りにくいトマトを作る。こんな、トマトを食べたいと思いますか?

4.  どんな植物でも枯らすことができる強力な除草剤に耐性の組換え野菜がある。つまり、強力な除草剤が残留した野菜を食べることになる。当然、この残留農薬が人間に害を与える。

5.  通常我々が食べている食品はリスク・ゼロの安全なものであるが、遺伝子組換え食品はリスク・ゼロではない。

6.  遺伝子組換え食品のように、自然でないものを食することは異常である。食品は自然のものがよい。

7.  遺伝子組換え食品は絶対に安全なものである。

 

 

2 ゲノムと遺伝子にかんする次の問に答えよ(50点)

次の文章について、ゲノム、遺伝子、タンパク質、細胞等の用語を正しく使って科学的に解説せよ。

「生物を構成する細胞の構造と機能は物理と化学の法則によって記述できる」

 

 


解答のポイントと解説

1基本的にはすべて×。その根拠

1.      この殺虫毒素はBt毒素のことであろう。もともとBt毒素は有機農薬として使われていたタンパク質である。この毒素の対象となる昆虫(鱗翅目など)に対しては有害であるが、ヒトや家畜などの動物では他の食物として食べるタンパク質と同様消化管でアミノ酸にまで分解されて栄養素となるだけで、有害性は確認されていない。

 

2.      遺伝子組換え技術で組み込むことができるのは遺伝子単位である。複数の遺伝子を組み込むことができるが、染色体レベルや多数の遺伝子を組換えるわけではない。種の壁を越えているという解答は間違い。遺伝子単位であれば種の壁は無関係。

 

3.      ハエの遺伝子が組み込まれたからといって、トマトがハエのようになるわけではない。また、この場合、トマトのゲノムにハエの遺伝子を導入するのであって、元々のトマトのゲノムが大きく変化するわけではなく、例えハエの遺伝子を導入してもトマトはトマトのママである。

 

4.      この除草剤はグリホサートやグリホシネートのことであろう。これらの除草剤のターゲットとなる代謝経路などは植物にはあるがヒトや家畜などの動物にはない。強力というのは植物に対して無差別に非特異的に作用するというだけであって、動物に対しては食塩よりリスクは低い。

 

5.      どんなことにもリスク・ゼロはあり得ない。遺伝子組換え作物がリスク・ゼロでないからといって、危険なわけではない。通常の食品にも有害物質が含まれており、それらが蓄積することによって発癌につながることもある。遺伝子組み換え食品のリスクは、組みかえる前に持っていたリスクと比較することで評価できる。遺伝子組換え作物に使われる遺伝子の産物の機能は既知である。組みかえた後の作物の性質がある程度予測できる。一方、通常の品種改良では、変異する遺伝子がランダムで、作られた作物の性質も予測しにくい。

 

6.      自然が無害というわけでない。自然の食品というのは実際にはほとんどなく、多くの場合はヒトが作物ゲノムに介入し、何らかの変異を起こしている。5の解答のように、自然の食品にも有害物質が含まれている。

 

7.      何事にも絶対安全というのはない。

 

 

2

「生物を構成する細胞の構造と機能は物理と化学の法則によって記述できる」

生物に特有の物質や力があるわけではない生物を構成する細胞は化学物質でできており、おのおのの化学物質特有の構造を持っており、その構造に時的な機能を発揮する。単独の物質が働くわけではなく、多くの種類の物質が強調して働いている。

現在生きている生物の細胞機能を調べてみると、すべての生物はゲノムを持っている。このゲノムの遺伝情報が細胞分裂や親から子への伝えられることで、生命が受け継がれている。ゲノムの化学的な本体はDNAであり、そのうち、mRNAに転写される単位が遺伝子である。また、mRNAの情報が小胞体で読み解かれ、タンパク質が新たに合成される。これらの複製・転写・翻訳の一連の反應は、おのおのの化学物質の持つ構造の機能により、働きが決まり、物理化学的特性により説明することができる。

生物の多様性も物理化学法則によって説明できる。

 

 

 


平成22年度 後期中間試験問題 (第14講−第21講)

平成221203日(金) 9:2510:15 予定

 

1. 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「タンパク質」を理解しているか

2. 基礎的なバイオテクノロジーの技術を理解しているか

 

基礎的な科学用語を正しく使って解説できるかどうかを問う問題です。

すべて記述式です。簡潔に解説するように。

極端な誤答は減点することもあります。

 

 

予定問題概要

植物のバイオテクノロジーにかんする問題

   遺伝子組換え技術を中心に

 

動物とヒトのバイオテクノロジーにかんする問題

   クローン技術を中心に

 

それぞれ、配付資料や授業で紹介した文章を中心に出題します。

 

 

質問等は電子メールで

☆わかりやすい件名(Subject)を必ずつけること

 Subjectのないメールは受け取れません(迷惑メール対策)

☆必ず名のること

24時間以内に返事します。

 返事か無ければ受け取っていない可能性が高いので

アドレスや件名を見直して再送して下さい。

☆試験前日の質問は、試験当日に回答します。

 

 

試験当日の注意事項:

・講義と同じ場所です。

 着席する順番は問いませんが、着席可能な場所は指定します(カンニング防止のため)。

 

・次の資料の持ち込みを認めます。

  教科書、副読本、配付資料、ノート

 

・次の機器の使用を禁止します。

  パソコン、電子辞書、ケータイなどの電子機器類

 

他人の文章を丸写ししないように。コピー解答は厳しく採点します。

 

・試験時間は50分。時間配分には十分に留意し、白紙解答がないよう

 全問題解答するように。

 

・教科書等の持ち込みを認めますので、ある程度人数がそろいしだい

 試験を開始します(朝一の試験でもあるため。10-15分程度)

 早めに出席するように。

 

・答案は配布した所定の解答用紙に記入すること。

解答スペースが不足した場合は、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

 

・試験開始後30分以上経過すれば途中退室を認めますが、

他の受験者の迷惑とならないよう静かに退室すること(特にドアの開閉)。

 

・試験終了後、解答用紙のみ回収します。

問題用紙は持ち帰ること。次回の解説で使います。

 

 


予定問題(試験前に公開します。変更することがあります)

平成22123日(金) 9:2510:15

平成22年度 後期中間試験問題 (第14講−第21講)

「バイオテクノロジー」

1 植物のバイオテクノロジーにかんする問題(40点)

1-1 授業で配付した文章より

1-2 21回の授業で紹介した書籍の文章より

 

2 動物とヒトのクローン技術にかんする問題(60点)

2-1 核移植技術とES細胞、iPS細胞の特長・相違点

2-2 実験手法より:iPS細胞を作るときに導入する遺伝子の絞り込み方法とノックアウトキメラマウスを作る方法の比較

2-3 21回の授業で紹介した書籍の文章より

 


実際の問題

平成22年度 後期中間試験問題 (第14講−第21講)

「バイオテクノロジー」

 

 

試験中、教科書、ノート、配付資料の持ち込みを認める。パソコン、電子辞書、ケータイなどの電子機器の使用は禁止する。

問題用紙2枚と解答用紙4枚を配布する。

問題は2問ある。2問とも解答せよ。解答は専用の解答用紙(問1用、問2用、各2枚)に書け。

解答用紙のホッチキスをはがさないで解答すること。解答スペースが不足した場合は、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

所定の解答用紙を使っていれば、小問の解答順序は問わない。

極端な誤答は減点する。

 

 

1 植物のバイオテクノロジーにかんする問題

40点)

1-1 次の文章はある消費者団体から農林水産大臣と文部科学大臣宛に送られた抗議文からの抜粋である。2項目とも科学的な視点で吟味し、間違いがあれば指摘し、正しく解説せよ。

 

1-1-1.このリーフレットの内容は、組み換え技術が品種改良の一つの手段であり、計画的に改良を進めるものだとそのメリットを強調します。しかしこの技術は生物の種の壁を無理に越えようとするものであり、例えばトウモロコシの遺伝子にBt菌の毒素産生遺伝子とそれを起動させるためにウイルスのプロモーター遺伝子を組み込む必要がありますし、遺伝子組み換えがうまくいったかどうかを見分けるために抗生物質耐性遺伝子を使います。これらが様々な悪影響を及ぼしますが、そのことを教えていません。

 

1-1-2 安全性についても、最近の動物実験で安全性に疑問を抱かせる世界の科学者の知見を紹介することもなく、DNAは主にタンパク質でできており、体内で消化されるから心配ない、などと解説しています。

 

 

 

1-2 次の文章は「美味しんぼ105巻」(小学館・201011月刊)からの引用である。

4項目から少なくとも2項目選択し、科学的な視点で吟味し、間違いがあれば指摘し、正しく解説せよ。

A:専門家、B:レギュラー登場人物など)

 

1-2-1A:人間が自然環境に与える影響の中で、遺伝子組換え作物の問題は無視しできません。植物や動物は同じ種(しゅ)のものどうしの間だけで交配し、遺伝子が変化するものです。しかし近年、例えばある菌の遺伝子の一部を取って、大豆の遺伝子に埋め込んで、除草剤に強い性質を持つ大豆を作るなどの技術が進んでいます。違う種のものの遺伝子を人工的に組み込んで、種の違いを超えた、これまでにない品種を作り出すものです。

 

1-2-2A:人体に対する安全性。例を二つあげます。1998年、イギリスのロウエット研究所で、害虫を殺す毒性を持つが、人間に害がないとされている遺伝子組換えジャガイモをラットに与えたところ、臓器への影響や、免疫力が低下し病気にかかりやすくなったという結果が発表された。B:ラットに害が出るということは、人間にも出るということですね。

 

1-2-3A:遺伝子組換えで、虫が食べたら死ぬ殺虫毒素を作る スターリンクというトウモロコシは、家畜用にだけ許可されたのが、間違って食用に回ってしまい、それを食べた人が、呼吸困難、血圧低下、最悪の場合、命に関わるアナフィラキシー・ショックと言われるアレルギー症状を引き起こした。

 

1-2-4A:さらに、自殺する種までアメリカの種子会社は作りました。遺伝子組換え作物を作って種を取り、それを翌年植えると、自殺機構が働いて、種は死んでしまうんです。種を取られては会社が儲からない。毎年、新しい種を買わせるためです。B:なんとあこぎな!A:結局、種子を押さえた者が、世界の食料を支配することになります。

 

2 動物とヒトのバイオテクノロジーにかんする問題

60点)

2-1 次の3種の細胞について、相違点を簡潔に述べよ。

a. 受精卵由来のES細胞  b. クローン胚由来のES細胞  c. 体細胞由来のiPS細胞

 

 

 

2-2 iPS細胞をつくるときに導入する4個の遺伝子は候補の24個の遺伝子から絞り込むことで見つけられた。このときに使われた方法とノックアウトキメラマウスを利用する意味とを比較し、簡潔に解説せよ。

 

2-3 次の文章は書籍からの引用である。5項目から少なくとも2項目選択し、科学的な視点で吟味し、間違いがあれば指摘し、正しく解説せよ。

 

引用書籍番号

1.             シェリー著、小林章夫訳「フランケンシュタイン」(光文社古典新訳文庫・201010月刊)

2.             FRIDAY BREAKファクトリー著「クローンベイビー〈1〉」(泰文堂・201011月刊)

3.             FRIDAY BREAKファクトリー著「クローンベイビー〈2〉」(泰文堂・201012月刊)

 

書籍1-1(訳者の解説より)

創造主である神に代わって生命を生み出す試みは、現代ではますます現実のものとなりつつあるのも事実だろう。いやそれどころか、すでにクローンが次々につくられている今日では、人間を人為的に生み出すことも夢ではなくなっている。

 

書籍2-1(高等学校の先生<元先進的研究施設の研究員>

人間とマウスの遺伝子は99%同じなの。見た目はあんなに違うのに、同じ遺伝子のちょっとした使い分けで、私たち人間、彼らはネズミと呼ばれる・・・。この二匹は100%同じ遺伝子を持ったクローンマウスでね・・・。

 

書籍3-1(著者による解説)

改めて「クローン人間」について簡単に説明する必要があるだろう。クローン人間とは、ある特定の人間と全く同じ遺伝情報を複製して生まれた人間のことを指す。技術的には、コピーしたい人間の体細胞から核(細胞の中心となる物質)を取り出して培養し、それを今度は核を取り除いた未受精卵に移植して(核移植)、電気刺激によって細胞融合を起こさせる。そうやって出来た「ヒトクローン胚」を、女性(代理母)の子宮に移植し、妊娠させる。そうやって生まれてきたのが、クローン人間(ヒトクローン個体)なのである。

 

書籍3-2(わかりやすいと評判の人気ニュースキャスターが書いた本より引用)

例えば、酒の飲み過ぎで肝臓を壊してしまった人がいるとする。この患者の体の別の部分の細胞を取り出しウイルスベクターという特殊な遺伝子を導入し培養すると、iPS細胞が出来上がる。iPS細胞の核を抜いた上で、自分の体細胞の核を移植して成長させれば、完全なヒトのクローンを作ることも夢ではないと言われている。

 

書籍3-3(優秀な検視官 監察医のセリフ)

DNAは正式名称をデオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid)といい、地球上のほぼ全ての生物の遺伝情報を担う「遺伝子」の中核となる物質である。遺伝子はある個人の絶対不変の要素であり、一生変わることはないし、また他人同士で同じ遺伝子を持っているということも有り得ない。

 

 

 

 


平成22年度 前期末試験問題 (第7講−第13講)

平成22730日(金) 9:2510:15 予定

 

0. 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「タンパク質」を理解しているか

1. 遺伝子の構造と転写・翻訳の基本を理解しているか

2. DNAの遺伝情報をもとに作られるタンパク質の機能の意味を理解しているか

3. 基礎的なバイオテクノロジーの技術を理解しているか

 

問題のポイント(3問・それぞれに小問がある・変更することがある)

1. 獲得形質の遺伝(30点)

 転写・翻訳・翻訳後修飾

 前期中間試験のできが悪かったため、同問題の再登場

 ただし、別の切り口で解答

 

2. 遺伝子の構造と機能 変異と病気(30点)

 コピー数多型(授業で配付した資料より出題)

 

3. PCR技術の理解(40点)

 転写・翻訳・RNAウイルスの逆転写

 PCRプライマーの設計

 

 

 

質問等は電子メールで

☆わかりやすい件名(Subject)を必ずつけること

 Subjectのないメールは受け取れません(迷惑メール対策)

☆必ず名のること

24時間以内に返事します。

 返事か無ければ受け取っていない可能性が高いので

アドレスや件名を見直して再送して下さい。

☆試験前日の質問は、試験当日に回答します。

 

 


試験当日の注意事項:

・講義と同じ場所です。

 着席する順番は問いませんが、着席可能な場所は指定します(カンニング防止のため)。

 

・次の資料の持ち込みを認めます。

  教科書、副読本、配付資料、ノート

 

・次の機器の使用を禁止します。

  パソコン、電子辞書、ケータイなどの電子機器類

 

他人の文章を丸写ししないように。コピー解答は厳しく採点します。

 

・試験時間は50分。時間配分には十分に留意し、白紙解答がないよう

 全問題解答するように(選択問題はない)。

 

・教科書等の持ち込みを認めますので、ある程度人数がそろいしだい

 試験を開始します(朝一の試験でもあるため。10-15分程度)

 早めに出席するように。

 

・解答用紙はホッチキスでとじてあります(カンニング防止のため)。

 ホッチキスをはがさないで解答すること。

 

・答案は配布した所定の解答用紙に書くこと。

解答スペースが不足した場合は、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

 

・試験開始後30分以上経過すれば途中退室を認めますが、

他の受験者の迷惑とならないよう静かに退室すること(特にドアの開閉)。

 

・試験終了後、解答用紙のみ回収します。

問題用紙は持ち帰ること。次回の解説で使います。

 

 


予定問題(変更することがあります)

平成22730日(金) 9:2510:15

平成22年度 前期末試験問題 (第7講−第13講)

「バイオテクノロジー」

問題用紙3枚(本紙を含む)と解答用紙3枚を配布する。問題は3問ある。3問とも解答せよ。

極端な誤答は減点する。解答スペースが不足したときは、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

 

1 次の文章をよく読んで、問に答えよ。(30点)

一般に、あるヒトが生きている間に獲得した形質(遺伝形質)や性質は、その子孫に伝わることはない。つまり、獲得形質は遺伝しない。

以下は藤田紘一郎氏のABO式血液型に関する著作からの引用である。

(引用略)

この仮説に対し、冒頭に記したように獲得形質が遺伝しないことを次の観点から解説せよ。

1-1 (略)

1-2 藤田説のように、血液型物質が細菌からヒトの腸細胞に移動することで、目的の遺伝子の移入(トランスフェクション)が起こるか?

1-3 問1-2.がもし可能だとすると、藤田説のように人類は細菌から血液型を獲得することができるか?あるいは、体細胞である腸細胞が獲得した遺伝形質は、遺伝するか?

 

2 次の文章をよく読んで、問に答えよ。(30点)

20100610日付の毎日新聞に次のような記事が載った(太字、下線は引用者)。

(引用略)

短い記事の中に、タイトルを含めて「コピーミス」が4回使われている。

ちなみに、ウィキペディアの『コピー数多型』の解説と比べると、よく似た記述が見られるが、「コピーミス」は出てこない。

(引用略)

2-1(略)

2-2 コピー数多型と一塩基多型との違いを簡潔に記せ。体細胞と生殖細胞、体細胞分裂と減数分裂などを比較しながら解説するとわかりやすい。

2-3 毎日新聞が言うところの「コピーミス」はいつ、どのように起こると考えられるか。その場合、「コピーミス」という表現は適切か?

 

3 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応法)技術について、次の問に答えよ。(40点)

塩基配列の方向が分かるように解答せよ。

その解答に至った理由も簡単に解説するように。

3-1 口蹄(こうてい)疫の感染源はRNAウイルスである。ウイルス感染の疑いがあるブタから試料を採取し、PCR法でウイルス感染の有無を確認することにした。

以下に、感染の疑いのあるRNAウイルスの塩基配列一部を示した。

このRNAは一本鎖で、塩基配列は左から右に5’から3’の方向で示してある。

(塩基配列略)

3-1-1 感染疑いのあるブタから核酸を抽出し、適切なプライマーと逆転写酵素により逆転写を行った。プライマーの存在は無視して、この領域が逆転写されたとすると、どのような塩基配列のDNAが合成されるか。その両端10塩基分の塩基配列を記せ。その解答に至った理由も解説せよ。

3-1-2 問3-1-1で得た1本鎖DNAを鋳型(いがた)にして、最も長いPCR増幅断片を合成することにした。「20 塩基長」で「3’末端がGC」のPCRプライマーを設計せよ。その解答に至った理由も解説せよ。

 

3-2 次のような推定塩基配列のDNA鎖をPCR法で増幅さることにした。下に記した推定塩基配列はmRNAと同じ方向の一本鎖のみ、左から右に5’から3’の方向で示してある。

(塩基配列略)

次のような条件のPCRプライマーを設計せよ。なぜそのような設計をしたかも簡潔に記せ。

3-2-1 下線の開始コドンと終止コドンを確認したい。増幅された断片の塩基配列を決定することで確認することにした。次の2条件も満たすプライマーを設計せよ。

a.  20 塩基長

b.  3’末端がGC

3-2-2 (略)

 


実際の問題

平成22730日(金) 9:2510:15

 

平成22年度 前期末試験問題 (第7講−第13講)

「バイオテクノロジー」

 

問題用紙3枚(本紙を含む)と解答用紙3枚を配布する。問題は3問ある。3問とも解答せよ。

極端な誤答は減点する。解答スペースが不足したときは、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

 

 

1 次の文章をよく読んで、問に答えよ。

30点)

 

一般に、あるヒトが生きている間に獲得した形質(遺伝形質)や性質は、その子孫に伝わることはない。つまり、獲得形質は遺伝しない。

 

以下は藤田紘一郎氏のABO式血液型に関する著作からの引用である。

腸内細菌が持つ遺伝子が体内に潜り込む「遺伝子移入」をトランスフェクションという。

ABO血液型物質をもつ細菌類は、人類に進化する以前に腸内に棲んでいた。

その腸内細菌がもつA型物質やB型物質が、人間の体内に潜り込むことで遺伝子移入が起こった。

それは、胃や腸のなかに血液型物質がもっとも多く分布していることからも納得できる。

 

紀元前3万年頃  人類全てO型 クロマニョン人がアフリカから世界各地に移動

 世界各地の先住民族のほとんどがO型だから

紀元前2万5千年から1万5千年頃  アジア大陸でA型人間(新モンゴロイド)誕生

 A型物質を持つ腸内細菌の遺伝子移入によって

紀元前1万年頃  インド、ウラル地方でB型人間誕生

 腸内細菌の遺伝子が遺伝子移入したから

1000年前  AB型人間誕生

 A型人間とB型人間が混血したから

 

著書の説は上記のように非常に混乱しているが、一応、次の仮説だとする。

 

腸内細菌が血液型物質をもっている→腸内細菌の血液型物質(または腸内細菌自身)がヒトの腸細胞に移入→腸内細菌の遺伝子(具体的にどの遺伝子かは不明)がヒトの腸細胞に移入→ヒトが血液型を獲得→獲得した血液型が子孫に遺伝

 

 

この仮説に対し、冒頭に記したように獲得形質が遺伝しないことを次の観点から解説せよ。

問1-1      抗原である血液型物質は、ヒトの細胞でどのように合成されるか。転写・翻訳・酵素反応などの用語を使って簡潔に記せ。

問1-2      藤田説のように、血液型物質が細菌からヒトの腸細胞に移動することで、目的の遺伝子の移入(トランスフェクション)が起こるか?

問1-3      1-2.がもし可能だとすると、藤田説のように人類は細菌から血液型を獲得することができるか?あるいは、体細胞である腸細胞が獲得した遺伝形質は、遺伝するか?

 

 

2 次の文章をよく読んで、問に答えよ。

30点)

20100610日付の毎日新聞に次のような記事が載った(太字、下線は引用者)。

自閉症:複数の遺伝子のコピーミスから起きる可能性

毎日新聞 2010610日 200分(最終更新 610日 337分)

http://mainichi.jp/select/science/news/20100610k0000m040155000c.html

 略

 

 

短い記事の中に、タイトルを含めて「コピーミス」が4回使われている。

ちなみに、ウィキペディアの『コピー数多型』の解説と比べると、よく似た記述が見られるが、「コピーミス」は出てこない。

 

コピー数多型』(抜粋、引用文献省略)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC%E6%95%B0%E5%A4%9A%E5%9E%8B

 

 

2-1  発がん性の化学物質による体細胞のDNAの変異にはどのような例があるか。その変異は遺伝するか?

2-2  コピー数多型と一塩基多型との違いを簡潔に記せ。体細胞と生殖細胞、体細胞分裂と減数分裂などを比較しながら解説するとわかりやすい。

2-3  毎日新聞が言うところの「コピーミス」はいつ、どのように起こると考えられるか。その場合、「コピーミス」という表現は適切か?

 

 

3  PCR(ポリメラーゼ連鎖反応法)技術について、次の問に答えよ。

40点)

塩基配列の方向が分かるように解答せよ。

その解答に至った理由も簡単に解説するように。

3-1

 口蹄(こうてい)疫の感染源はRNAウイルスである。ウイルス感染の疑いがあるブタから試料を採取し、PCR法でウイルス感染の有無を確認することにした。

以下に、感染の疑いのあるRNAウイルスの塩基配列一部を示した。

このRNAは一本鎖で、塩基配列は左から右に5’から3’の方向で示してある。

Foot-and-mouth disease virus - type O genomic RNA, strain: O/JPN/2000, S-fragment.

 1 uugaaagggg gcguuagggu cucaucccua acaugccaac gacagcuccu gcgcugcacu

61  ccacacucac gucugugugu guguggggac cgcugacuac cguccaccca cuuacggcug

 

問3-1-1         感染疑いのあるブタから核酸を抽出し、適切なプライマーと逆転写酵素により逆転写を行った。プライマーの存在は無視して、上記の領域が逆転写されたとすると、どのような塩基配列のDNAが合成されるか。その両端10塩基分の塩基配列を記せ。その解答に至った理由も解説せよ。

問3-1-2         3-1-1で得た1本鎖DNAを鋳型(いがた)にして、最も長いPCR増幅断片を合成することにした。「20 塩基長」で「3’末端がGC」のPCRプライマーを設計せよ。その解答に至った理由も解説せよ。

 

3-2

 次のような推定塩基配列のDNA鎖をPCR法で増幅さることにした。下に記した推定塩基配列はmRNAと同じ方向の一本鎖のみ、左から右に5’から3’の方向で示してある。

 1 ttatgcatga cgactaagtg caggtatgcc atcgattagc tactaccatc gtactagcga actagcatgc atcgatcgaa

81 tagcagtaaa tcgcgtacta gctagtatgc tatccggcat gctagcatgc tactagctac tagcattcgt agcattgcat

 

次のような条件のPCRプライマーを設計せよ。なぜそのような設計をしたかも簡潔に記せ。

問3-2-1            下線の開始コドンと終止コドンを確認したい。増幅された断片の塩基配列を決定することで確認することにした。次の2条件も満たすプライマーを設計せよ。

a.     20 塩基長

b.     3’末端がGC

問3-2-2            130塩基目のc(太字+下線)gに置換している一塩基多型が見つかっている。どちらのタイプの塩基配列を持っているか確認したい。次の2条件も満たすプライマーを設計せよ。

a.  20 塩基長

b.  3’末端がGC

 

 


解説(解答例ではありません)

1-1

ABO式の血液型物質は、H抗原に糖転移酵素が触媒して作られる。糖転移酵素には2種類あり、すなわち、関連する遺伝子も2種類ある。遺伝子の化学的本体はDNAで核内にあり、この遺伝子から核内で起こる転写・細胞質のリボソームで起こる翻訳により合成されたタンパク質である酵素の触媒による化学反応により抗原が合成される。

 

1-2

1-1で述べたように、ヒトの遺伝子の本体はDNAであり、細胞核にある。また、血液型物質は酵素反応により合成されることから、できあがった抗原と酵素の遺伝子とは直接つながっているわけではない。藤田説のように、たとえ抗原が細菌からヒトの細胞に移ったとしても、その抗原を合成する酵素の遺伝子まで一緒にくっついて細胞移入するとは考えにくい。抗原は自身の合成に関与しているタンパク質がゲノム内のどの遺伝子と関与しているか認識することができない。

 

1-3

血液型物質の移入はともかくとして、もし目的の酵素の遺伝子が細菌からヒトの細胞に移入したとすると、その場所は腸だと想定されているため、体細胞が舞台である。万一、藤田説のような遺伝子移入が起こったとしても、さらに腸細胞の遺伝子が生殖細胞に遺伝子移入しない限り遺伝することはない。

 

原核生物にはイントロンがなく、ヒトにはイントロンがある。ヒトに見られる問題の糖転移酵素の遺伝子にイントロンが含まれることから、遺伝子移入しないとの解答が多くあったが(過去問なら正解)、今回の問題の解答とはならない。

 

この問は(問題文にもあるように)、

1.  細菌の血液型物質(抗原)がヒトの腸細胞に移入する

2. (同時に?)細菌の血液型遺伝子がヒトの腸細胞に移入する

3. その結果、ヒトが新しい血液型を獲得する

4. 獲得した血液型が遺伝する

 

という説に焦点を搾っている。

1. 2. がセットで起こるとするナンセンスさ、それが体細胞で起こるにもかかわらず、遺伝するとするナンセンスさを問うている。

 

万一、細菌の遺伝子が遺伝子単位でヒトのゲノムに移入した場合、その遺伝子にイントロンがなくても、その遺伝子が発現してその遺伝子由来のタンパク質が合成されることはあり得る。但し、転写される部分の配列だけで発現が起こるわけではなく、転写や翻訳などを調節する部分の配列が必要で、細菌とヒトではその調節機構が異なるため(その部分言い結合するタンパク質などの種類が異なるなど)、細菌の調節部分がそのままヒトに移入したとしても、正常に機能するとは限らない。万一発現するとしても、それは遺伝子移入の起こった体細胞由来の娘細胞群に限られ、それ以外の細胞では発現しない。「血液型」をどのように定義するかによるが、それが赤血球表面の抗原の種類に限るなら、腸細胞が赤血球の表面タンパク質の修飾に関わっていない限り、血液型を獲得したとは言えない。もちろん、体細胞が舞台であるため、遺伝もしない。万一、ある個体が細菌から血液型を獲得したとしても遺伝しないので、人類が血液型を獲得したとは言えない。

 

ABO式血液型を決めている遺伝子の産物が血液型物質であるとの解答がいくつかあった。この場合、遺伝子産物は糖転移酵素で、その酵素の触媒によって血液型物質がつくられる。遺伝子産物が直接血液型物質であったとしても(この場合血液型物質がタンパク質と想定)、そのタンパク質が細菌からヒト細胞に移入したとしても、そのタンパク質の遺伝子が一緒に付いてくるわけではない。まして、問題の場合、遺伝子産物の触媒によって合成された抗原(この抗原のもとになるH抗原も多くの酵素の触媒によって合成される)が細菌からヒト細胞に移入したとしても、それに伴って、最終的に働いた酵素の遺伝子が一緒に移入するという考えがナンセンスである。

 

 

2-1

発癌物質などにより起こるDNAの化学的な修飾やDNA複製時のミスは主に体細胞で起こり、生殖細胞でも起こる。その結果は主に一塩基多型となる。

 

発がん性の化学物質により、DNAを直接、化学的に修飾することがある。たとえば、塩基の部分の加水分解、シトシンのアミノ基の加水分解(脱アミノ化)、4種の塩基のメチル化、アデニンやデオキシリボースの酸化などである。これらの修飾により、塩基がなくなったり塩基の構造が変化したりする。

DNA複製時に変異したDNA鎖が鋳型となった場合、新しく合成される鎖の配列が元の配列とは異なったり(置換)1塩基欠落(欠失)したりする。一度この変異が起こり、修復されなかったなら、この細胞が分裂してできた全ての娘細胞に変異が保存される。この変異した領域が遺伝子の翻訳領域であれば、そこから合成されるアミノ酸に変異が起こることがあり、本来とは異なった構造を持つタンパク質を作ることがある。直接変異が起こった細胞でも、その変異が起こったDNA鎖が転写の鋳型となったり、転写や翻訳の調節領域であったりすると、異常な転写・翻訳に結びつくこともありえる。

 

このような変異は、全ての細胞で起こりえる。ヒトの細胞は、体細胞と生殖系列細胞に分けられる。発生の初期にこの二つの細胞は分離・独立し、以降交わることはない。

体細胞で起こったのなら、この変異した細胞由来の娘細胞に変異が保存されるだけで、この個体が死ねばなくなるため、遺伝しない。生殖細胞で変異が起これば、変異した染色体を含む配偶子が使われれば遺伝する。

 

 

2-2

一塩基多型とコピー数多型の比較

両者とも突然変異に起因し、種内での多様性を現している。

両者とも、ある個体で突然変異により生じたり、親から変異を受け継いだりすることで獲得する。

 

2-1で述べたように、一塩基多型は塩基単位での変異で、細胞分裂によりつたわる。

コピー数多型は減数分裂のときの軽微な不等交叉などで生じ、遺伝子単位などで起こる。不等交叉が原因であれば、生殖細胞の減数分裂時に限られることから、体細胞では起こらないことになる。

 

この他に、染色体単位の数の多様性もある。第21染色体が3本あるダウン症(トリソミー)やX染色体が1本のターナー症候群(Y染色体もない)など、本来対になっているはずの染色体が多かったり少なかったりする多様性が数多く見つかっている。また、染色体内の数遺伝子単位の不等交叉ではなく、大がかりな交叉の失敗や転座なども見つかっている。

性染色体の一つX染色体は男性では1本、女性では2本ある。これも染色体単位の多型と言えそうであるが、女性ではライオニゼーションという現象が起こっており、2本のX染色体の内1本は不活性化し、その染色体は発現しない。この現象により、男女ともにX染色体由来の遺伝子産物が同数になるように調節されている。

トリソミーやモノソミーは、問題の染色体にのっている全ての遺伝子のコピー数が異なることになる。トリソミーやモノソミーで異常が生じることから、遺伝子の数が多くても少なくてもその遺伝子由来のタンパク質の量が問題となって異常が生じることが考えられる。

コピー数多型はここの遺伝子の単位であるが、一つあるいはグループの遺伝子でコピー数多型が見られると、発現するタンパク質の量などの違いから、発症したりクスリの効き方が違ったりするのだろうと想像されている。

 

軽微な不等交叉によるコピー数多型

コピー数多型は主に減数分裂のときの交叉のミスで生じる。

相同染色体間で同じ位置で交叉が起これば、遺伝子数が同じ配偶子ができるが、交叉がずれると(不等交叉)新しくできた染色体上の遺伝子の数が異なることになる。

次のような遺伝子が7つある染色体を想定する。

A-B-C-D-E-F-G

a-b-c-d-e-f-g

相同染色体に7つの対立遺伝子があって、

減数分裂時にcdの間で交叉が起これば、

A-B-C-d-e-f-g 

a-b-c-D-E-F-G

という染色体をもつ配偶子ができる。7つの対立遺伝子すべて1コピーずつで、同様の配偶子と受精すれば、7つの対立遺伝子すべて2コピーになる。

 

たとえば、CDの間とdeの間で不等交叉が起こると、

A-B-C-e-f-g 

a-b-c-d-D-E-F-G

の配偶子ができる。ひとつはDd対立遺伝子のない配偶子、Ddがゼロコピー配偶子、もうひとつはDd対立遺伝子を2コピー持つ配偶子になる。

 

ゼロコピーの配偶子と通常の1コピーの配偶子が受精すると1コピー

2コピーの配偶子と通常の1コピーの配偶子が受精すると3コピー

となる。

普通は1コピーずつの配偶子が受精するので2コピーとなる。

Dd対立遺伝子だけに注目すると、1コピー、2コピー、3コピーの3通りの体細胞を持つ人間がいることになる。Dd対立遺伝子外の6つの対立遺伝子は全て2コピー。

このように、ある特定の対立遺伝子のコピー数が違う個体の関係をコピー数多型という。

一般的に、体細胞はゲノムを2セット持っていることから、全ての対立遺伝子も2コピーのハズだが、1コピーや3コピーになっている遺伝子がかなりあり、全体の1割強の遺伝子で見つかっている。頻度から、コピー数多型になりやすい遺伝子やなりにくい遺伝子がわかっている。普通の2コピーの遺伝子は9割近くとなる。

 

コピー数多型には、遺伝子のコピー数多型と遺伝子以外のコピー数多型がある。

 

遺伝子の長さは千差万別で、交叉が遺伝子と遺伝子の間だけで起こるわけではなく、遺伝子の中でも起こりえる。この場合、遺伝子が分断されるため、交叉の結果、その遺伝子を失う可能性が高くなる。

 

 

2-3

毎日新聞の記事では、

○タイトル「自閉症:複数の遺伝子のコピーミスから起きる可能性」

○「「自閉症スペクトラム」が、複数の遺伝子のコピーミスから起きる可能性がある」

○「父と母から一つずつ受け継ぐべき遺伝子が一つ足りなかったり、三つになるコピーミス

○「コピーミスは「コピー数多型(たけい)」と呼ばれ」

○「チームは、鍵となる遺伝子の複数のコピーミス発症につながるとみている」

と「コピーミス」をタイトルで1回本文で4回使っている。

 

問題文に引用したウイキペディアには「コピーミス」は出てこない。記事とよく似た表現があることから、記者はこのウイキペディアを参照したと思われるが、書かれていない部分を想像で書いたことから、違和感のある記事になってしまったと推測される。記者のいうところの「コピーミス」がいつ、どのように起こるのか、記者が「コピーミス」と表現したのは「コピー数多型」をどのように理解して書いたのかを考えると、違和感が解けるかもしれない。

その意味で、問2-1と問2-2を作った。

実際、記者が「コピーミス」を具体的のどんな現象をさして使っているのか、いつ起こると考えているのかは不明。

 

結論から言えば、「コピー数多型」という言葉に含まれる「数」が取れ、「コピー」だけが印象に残り「コピー」を重視することから「コピーミス」という認識に至ったのではないかと推測できる。記者は「コピーミスは「コピー数多型(たけい)」と呼ばれ」といっているが、「コピー数多型」は「コピーミス」ではない。コピー数多型は、ある特定の注目している遺伝子のゲノム内での数が多い少ないという多様性を表しているだけで、コピーミスとは直接関係がない。コピー数多型は「コピー」という現象ではなく、結果としての数、遺伝子の数、遺伝子のコピー数の多様性のことで、コピー数の「コピー」はこの場合あまり重要ではなく、「数」が重要なのである。その認識であれば、「コピーミス」という表現も概念もないはずである。

 

「コピー数」は遺伝学で使われる用語である。その用語の定義を無視して、一般用語の語感から来る「コピー」を想像したための悲劇であろう。

 

記事に見られる「コピーミス」は次の3つに分類できる。

コピーミスは「コピー数多型(たけい)」と呼ばれ」

 

「父と母から一つずつ受け継ぐべき遺伝子が一つ足りなかったり、三つになるコピーミス

 

「「自閉症スペクトラム」が、複数の遺伝子のコピーミスから起きる可能性がある」

「チームは、鍵となる遺伝子の複数のコピーミス発症につながるとみている」

 

それぞれ、具体的に検証していくと、この記事全体から来る違和感が解けるであろう。

 

 

コピー数多型はどのように獲得するのか?

ウイキペディアや研究者らによる一般向けの解説には書かれていない。

 

結果的にコピー数多型となる個体が産まれるには、少なくともその個体のもとになった配偶子のいずれか、または両方にコピー数多型が見られるはずである。そのことから、ウイキペディアではここから説明が始まっている。従って、その異常な配偶子がどのようにしてできるかの説明がない。

 

記者は「コピーミスは「コピー数多型(たけい)」と呼ばれ」と言っているように、コピー数多型の本質はコピーミスだと考えているらしく、「父と母から一つずつ受け継ぐべき遺伝子が一つ足りなかったり、三つになるコピーミス」と言っているように、異常な配偶子を受け取ることを「コピーミス」と考えているように見える。しかし、先に見たように、遺伝子のコピー数異常は減数分裂時に起こると考えられることから、この過程があえて言うなら「ミス」である。

 

1. もともとコピー数多型を持っている親から遺伝する

  その個体の配偶子にコピー数多型が見られ(正常な減数分裂であっても)、

それが使われる

2. ある個体が減数分裂するときに新たに生じる

  コピー数多型の見られる配偶子が使われる

 

1. の場合、親から子へ遺伝するように見える。しかし、必ずしも遺伝するとは限らない。1個体に遺伝子のコピー数多型がどの程度あるのか不明であるが(1割強という数字は人類全体)、おそらく、全ての個体で複数のコピー数多型を抱えているものと思われる。仮に全ての相同染色体に1コピーと2コピー、計3コピーの遺伝子が1コずつあるとすると(相同染色体は23対(女性)ある)、減数分裂が正常であっても、それぞれの遺伝子で、正常なコピー数の配偶子(1コピー)と遺伝子が2コピーの配偶子ができることになる。どの遺伝子が2コピーになるかは、減数分裂のときにどちらの染色体が使われるかで決まり、23コの遺伝子の内、全て1コピーのものや全て2コピーのものもできる。該当する遺伝子がたった23コしかなくても、膨大な遺伝子の組み合わせ(ゲノム)ができる。実際、減数分裂時には交叉が起こるので(正常な交叉であっても)、もっと複雑である。

 

さらに、2.のように、親の体細胞に特定の遺伝子にコピー数多型がなくても、減数分裂時に新たに生じることもある。これらのことを考えると、ゲノムに含まれる3万近い遺伝子の内、9割近くの遺伝子は正常な1コピーであるが、残り1割強の遺伝子の中に2コピーであったり0コピーであったりし、どの遺伝子がそれに該当するかは一人の個体が作る配偶子であっても千差万別である。そのうち、偶然選ばれた一つが遺伝する。

 

さて、この過程で、「コピーミス」はいつ起こるのだろうか?

コピー数多型は「コピーミス」だろうか?

 

「「自閉症スペクトラム」が、複数の遺伝子のコピーミスから起きる可能性がある」

「チームは、鍵となる遺伝子の複数のコピーミス発症につながるとみている」

という表現は適切だろうか?

 

 

3-1-1

このRNAウイルスのゲノムは1本鎖RNAである。

問題文に記載の配列は、下記のように 5’から3’の方向で示されている。

5’- uugaaagggg –--途中略--- cuuacggcug -3’

 

このRNAを鋳型にしてRNA依存性DNAポリメラーゼにより逆転写すると、相補鎖のDNAが合成される。合成されるのはDNAのため、uの相補鎖はaである。

プライマーを無視して、上記の配列が逆転写されるとすると、

5’- uugaaagggg –--途中略--- cuuacggcug -3’

3’- aactttcccc –--途中略--- gaatgccgac -5’

という、RNA-DNAハイブリッド二本鎖ができる。

 

逆転写されたDNA5’から3’の方向で示すと、

5’- cagccgtaag –--途中略--- cccctttcaa -3’

となる。

 

 

3-1-2

3-1-1で示したように逆転写によってできた1本鎖DNAの塩基配列は

5’- cagccgtaag –--途中略--- cccctttcaa -3’

である。

この両末端の20塩基長分のプライマーを作ればよい。ただし、3’末端がgcという条件があるため、最末端でこの条件に合わないのなら、合うまで内側にずらせばよい。

5’側のプライマーは、上記1本鎖DNA5’末端側と同じ配列で浴、20塩基目がgのため、5’側の20塩基分がプライマーの配列となる。

5’- cagccgtaagtgggtggacg -3’

 

3’側のプライマーは上記DNAが鋳型となるため、その相補鎖側の配列がプライマーとなる(元の1本鎖RNAの記載された塩基配列の方向がそれに相当する)。

20塩基目がt21塩基目がcのため、2塩基目から始まる20塩基長のプライマーを設計すればよい。

5’- tgaaagggggcgttagggtc -3’

となる。

問題の口蹄疫ウイルスに感染しているブタ試料から抽出した核酸を鋳型とし、設計したプライマーでPCRを行うと、119塩基対のDNA断片が増幅されるはずである。

 

 

3-2-1

問題文の塩基配列は、mRNAと同じ方向の一本鎖のみ、左から右に5’から3’の方向で示してある。

増幅されたDNA断片の塩基配列を決定することで目的の開始コドンと終止コドンを確認するためには、目的の開始コドンと終止コドンを含まず、その外側の配列でプライマーを作ればよい。この条件に合い、さらに20塩基長で3’末端がgcのプライマーを設計であればよい。

たとえば、5’側のプライマーは、表記の5’末端側の20塩基分がこの条件を見たいしている。

5’- ttatgcatga cgactaagtg -3’

となる。

3’末端側は表記の配列が鋳型となるため、その相補鎖側の配列でプライマーを設計すればよい。相補鎖の20塩基目がa21塩基目がgのため、2塩基目から20塩基分の配列でプライマーを作ればよい。

5’- tgcaatgcta cgaatgctag -3’

となる。

 

 

3-2-2

130塩基目の一塩基多型を確認するためには、該当塩基で終わるプライマーを設計すればよい。110塩基目から20塩基長のプライマーを作ることもできるが、その場合、最大50塩基対の増幅断片しかできない。電気泳動で確認するには短すぎるため、一塩基多型のある部分を3’側プライマーとする。

その場合、表記の配列の5’末端側の配列が5’側プライマーとなる。

20塩基目がgのため、5’末端側20塩基分が5’側プライマーとなる。

5’- ttatgcatga cgactaagtg -3’

 

一塩基多型の見られる部分の塩基配列は次のようである。この5’末端のcが一塩基多型の部分である。

5’- ctactagcta ctagcattcg -3’

 

この部分の相補鎖が3’末端側のプライマーである。

cgに変異している一塩基多型を考慮すると、次のような2種類のプライマーとなる。

A: 5’- cgaatgctag tagctagtag -3’

B: 5’- cgaatgctag tagctagtac -3’

 

5’末端側とAプライマー、5’末端側とBプライマーの組み合わせでPCRを行うとよい。

a: をプライマーにしてPCR増幅したのなら、表記の配列が、

b: をプライマーにしてPCR増幅したのなら、cgに変異した配列を持つことがわかる。ただし、表記の塩基配列は1つのエキソンの一部であることが前提である。


平成22年度 前期中間試験問題(第1講−第6講)

平成220528日(金) 9:2510:15 予定

 

最初の試験ですので、基礎的な用語の意味を理解しているかを問う問題です。

 

0. 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「染色体」、「タンパク質」を理解しているか

1. 細胞から細胞へ、親から子への遺伝情報の流れを理解しているか

2. DNAからタンパク質への遺伝情報の流れ=転写・翻訳=を理解しているか

 

 

科学用語(DNA、遺伝子、ゲノム、遺伝情報、タンパク質など)を正確に使って解説できるかどうかを問う問題です。

すべて記述式です。簡潔に解説するように。

箇条書きやメモは採点しません。

図示してもかまいませんが、必ず解説文をつけること(図のみは採点しません)。

極端な誤答は減点することもあります。

 

 

予定問題(大きく2問。それぞれの問に小問があります)

1:細胞から細胞へ、親から子への遺伝情報の流れにかんする問題(50点)

 基本用語の理解

 体細胞分裂と減数分裂

 

2:細胞内での遺伝情報の流れにかんする問題(50点)

 DNA鎖の方向性

 転写と翻訳の基本

 獲得形質の遺伝

 

 


質問等は電子メールで

☆わかりやすい件名(Subject)を必ずつけること

 Subjectのないメールは受け取れません(迷惑メール対策)

☆必ず名のること

24時間以内に返事します。

 返事か無ければ受け取っていない可能性が高い。

 

 

試験当日の注意事項:

・講義と同じ場所です。

 着席する順番は問いませんが、着席可能な場所は指定します(カンニング防止のため)。

 

・次の資料の持ち込みを認めます。

  教科書、副読本、配付資料、ノート

 

・次の機器の使用を禁止します。

  パソコン、電子辞書、ケータイなどの電子機器類

 

他人の文章を丸写ししないように。コピー解答は厳しく採点します。

 

・試験時間は50分。時間配分には十分に留意し、白紙解答がないよう

 全問題解答するように(選択問題はない)。

 

・教科書等の持ち込みを認めますので、ある程度人数がそろいしだい

 試験を開始します(朝一の試験でもあるため。10-15分程度)

 早めに出席するように。

 

・解答用紙はホッチキスでとじてあります(カンニング防止のため)。

 ホッチキスをはがさないで解答すること。

 

・答案は配布した所定の解答用紙に書くこと。

解答スペースが不足した場合は、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

 

・途中退出を認めますが、他の受験者の迷惑とならないよう静かに

退室すること(特にドアの開閉)。

 

・試験終了後、解答用紙のみ回収します。

問題用紙は持ち帰ること。次回の解説で使います。

 


予定問題(変更することがあります)

平成22年度 前期中間試験問題 (第1講−第6講)

「バイオテクノロジー」

 

問題用紙2枚(本紙を含む)と解答用紙3枚を配布する。問題は2問ある。2問とも解答せよ。

解答は所定の解答用紙を使用し、解答スペースが不足したときは、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

小問の解答順序は問わない。極端な誤答は減点することがある。

 

1 細胞から細胞へ、親から子への遺伝情報の流れにかんする問題(50点)

当初予定していた1-2を削除しました3問です。)

 

1-1 基本用語の理解(問題文略)

参考:

○両生類で初、カエルのゲノム解読 奈良先端大准教授ら

 43039分配信 産経新聞

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100430-00000503-san-soci

○カエルのゲノム解読=水から陸へ進化解明に手掛かり−

 再生医療にも貢献・国際チーム 43034分配信 時事通信

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100430-00000016-jij-soci

○カエルのゲノム解読 - 魚から四足動物 進化の謎解明へ

 2010430日 奈良新聞

 http://www.nara-np.co.jp/20100430162830.html

 

1-2 同じ両親から生まれた複数の子供達のゲノムは、両親のそれぞれのゲノムと異なる。

そのことを次のような表現で解説した書籍があった。(以下略)

 

1-3 ウマとロバは交雑可能で、生まれてくるラバは成長可能であるが、ラバに生殖能力はない。

その理由を、「染色体」、「体細胞分裂」、「減数分裂」を使って簡潔に説明せよ。

 

 

2 細胞内での遺伝情報の流れにかんする問題(50点)

2-1 DNAの構造と転写・翻訳機構の理解の問題(問題文略)

a.      ()

b.      ()

c.      このDNAをもつ人がタバコを吸って、元のDNA鎖の16番目の塩基対が欠落したとする。

その結果、合成されるペプチドはどのように変化するか。また、この人はどのような影響を受けると予想されるか。簡潔に記せ。

 

2-2一般に、あるヒトが生きている間に獲得した形質(遺伝形質)や性質は、その子孫に伝わることはない。つまり、獲得形質は遺伝しない。なぜか?次の項目を参考に、簡潔に解説せよ。

 

・遺伝情報の化学的な本体とその細胞内での局在化

・遺伝情報に書かれている内容

・体細胞と生殖系列細胞の違い

 


実際の問題

平成22528日(金) 9:2510:15

平成22年度 前期中間試験問題 (第1講−第6講)

「バイオテクノロジー」

 

問題用紙2枚(本紙を含む)と解答用紙3枚を配布する。問題は2問ある。2問とも解答せよ。

解答は所定の解答用紙を使用し、解答スペースが不足したときは、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

小問の解答順序は問わない。極端な誤答は減点することがある。

 

1 細胞から細胞へ、親から子への遺伝情報の流れにかんする問題

50点)

1-1 「ゲノム解読」の新聞記事で、ゲノムを次のように表現していた。

 

A紙: ゲノム(全遺伝子情報)

B紙: ゲノム(全遺伝情報)

C紙: ゲノム(遺伝情報)

 

「ゲノム」を説明するのに、より適切な表現はどれか?根拠をあげて簡潔に解説せよ。

 

 

1-2 同じ両親から生まれた複数の子供達のゲノムは、両親のそれぞれのゲノムと異なる。

そのことを次のような表現で解説した書籍があった。

 

a.      「子は親の持つ遺伝子の半分を受け継ぐ」

b.     「子は親の持つゲノムの半分を受け継ぐ」

 

それぞれ不備を指摘しながら、同性のきょうだいでも、互いに異なるゲノムをもつことを「遺伝子」、「ゲノム」、「染色体」、「DNAを使って簡潔に解説せよ。

 

 

1-3 ウマとロバは交雑可能で、生まれてくるラバは成長可能であるが、ラバに生殖能力はない。

 

その理由を、「染色体」、「体細胞分裂」、「減数分裂」を使って簡潔に説明せよ。

 

 

2 細胞内での遺伝情報の流れにかんする問題

50点)

2-1 ある二本鎖DNAから以下に示す3本の二本鎖DNAが生じたとする。問に答えよ。

 

5’-ACGTATCGTATGAAGC  GTCTCTATGT  AGATCGTACCTAAGCTGG-3’

3’-TGCATAGCATACTTCG  CAGAGATACA  TCTAGCATGGATTCGACC-5’

 

細胞からDNAを回収する過程で、空白のある2カ所でDNAが切断され、中央の鎖だけが反転したとする。

3本のDNA鎖の表記方向は同じで、上段の鎖の方向性は左から右へ 5’から3’である。

 

a.      切断される前のDNAから合成されるmRNAの塩基配列を記せ。

また、その理由も記せ。

上記鎖の全領域が下段の鎖が鋳型となって転写され、イントロンはないものとする。

 

b.     a.mRNAが翻訳されペプチド(タンパク質)が生じたとすると、そのペプチドのアミノ酸は何個か。また、そのペプチドの2番目と5番目のアミノ酸は何か。その理由も記せ。

最初の開始コドンから翻訳が始まるものとする。

 

c.      このDNAをもつ人がタバコを吸って、元のDNA鎖の16番目の塩基対が欠落したとする。

その結果、合成されるペプチドはどのように変化するか。また、この人はどのような影響を受けると予想されるか。簡潔に記せ。

 

  コドン表

M Met AUG           I Ile AUU AUC AUA

W Trp UGG           A Ala GCU GCG GCC GCA

C Cys UGU UGC       G Gly GGU GGG GGC GGA

D Asp GAU GAC       P Pro CCU CCG CCC CCA

F Phe UUU UUC       T Thr ACU ACG ACC ACA

H His CAU CAC      V Val GUU GUG GUC GUA

N Asn AAU AAC      L Leu CUU CUG CUC CUA UUG UUA

Y Tyr UAU UAC      R Arg CGU CGG CGC CGA AGG AGA

E Glu GAG GAA      S Ser UCU UCG UCC UCA AGU AGC

K Lys AAG AAA

Q Gln CAG CAA       終止    UGA UAG UAA

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2-2 一般に、あるヒトが生きている間に獲得した形質(遺伝形質)や性質は、その子孫に伝わることはない。つまり、獲得形質は遺伝しない。なぜか?

次の項目を参考に、簡潔に解説せよ。

 

・遺伝情報の化学的な本体とその細胞内での局在化

・遺伝情報に書かれている内容

・体細胞と生殖系列細胞の違い

 


解答例・解説(唯一の正解というわけではない)

1

1-1(正解率83%

この中で一番適切なのは、B紙の「ゲノム(全遺伝情報)」である。

ゲノムは、ある生物を構成する基本遺伝情報(DNAの塩基配列)すべてである。ヒトの場合、第1〜第22XYの計24種の染色体に含まれるDNAの全塩基配列である。

その中に遺伝子が含まれ、遺伝子以外の遺伝情報も含まれる。

従って、A紙の全遺伝子情報ではゲノムを表すのに不十分であり、C紙の単なる遺伝情報も不十分である。

 

 

1-2(正解率89%

ヒトの体細胞では染色体は対になっている。対になっている染色体のうち、1本は母親(卵子)から、1本は父親(精子)から受け取っている。ヒトのゲノムの多様性は0.1%ぐらいと見積もられている。すなわち、対になっている染色体に含まれるDNAの塩基配列を比べると、99.9%は一致するが、0.1%は異なっている。

減数分裂のとき、対になっている染色体のうち、どちらかが残る。ヒトの場合、染色体は23対あるため、223乗通りの配偶子ができることになる。減数分裂のとき、対になっている染色体間で交叉が起こるため、配偶子の多様性は更に増す。これらの多様な配偶子同士が受精して子のゲノムとなるため、同性のきょうだいでも異なるゲノムを持つ。

ヒトの場合、ゲノムには2万数千の遺伝子が含まれる。

減数分裂は、2セットあるゲノムのうち、1セット分が残る過程である。

1セットのゲノムに含まれる遺伝子の数が2万数千で、2セットのゲノムに2万数千対の遺伝子が含まれることになる。

子は母親の2万数千の遺伝子と父親の2万数千の遺伝子を受け継ぎ、母親の1セットのゲノムと父親の1セットのゲノムを引き継ぐ。

aのように、遺伝子の半数を受け継ぐ、というと、半数のいうのは1万数千との誤解が生じるし、bの表現だと、半ゲノム+半ゲノム=1ゲノムとの誤解が生じると思われる。

実際には、体細胞の2ゲノムが減数分裂により1ゲノムとなり、母親の1ゲノムと父親の1ゲノムから2ゲノムの子が誕生する。

同様に、遺伝子においても、2万数千ある体細胞の遺伝子が、減数分裂により2万数千の遺伝子となり、母親の2万数千の遺伝子と父親の2万数千の遺伝子から2万数千の子が誕生する。

 

 

1-3(正解率77%

体細胞分裂のとき、凝集した染色体が集まる必要があるが、対になっている相同染色外が会合する必要はなく、複製された姉妹染色分体がそれぞれの娘細胞に分配される。ウマとロバのように染色体構成が異なっていても、種が近い場合は交雑することもあり、体細胞分裂が可能なら、成長することもある。

しかし、減数分裂をするときは、第一分裂時に対になっている相同染色体が会合する必要がある。交叉などの後、姉妹染色分体ごと第一分裂で分配され、第二分裂で姉妹染色分体が分離する。

ウマとロバの場合、染色体構成が異なるため、相同染色体の会合が起こらないことから、減数分裂がうまくいかず、配偶子が形成されないと考えられる。

 

 

2

2-1(正解率61%

2-1 a

中央の鎖は次のような方向性である。

5’-GTCTCTATGT-3’

3’-CAGAGATACA-5’

 

この鎖の反転の仕方には、上下、左右、回転の3通りある。これらのうち、上下と左右の反転では上段の鎖の方向性が3’-から-5’となるため、逆向きになる。

5’-から-3’の方向性で反転するのは回転のみである。

他の2本の断片と同じ方向で書くと

5’-ACATAGAGAC-3’

3’-TGTATCTCTG-5’

となる。

3本の鎖をつなぎ、イントロンのない下段が鋳型となって転写されるmRNAの配列は、

5’-ACGUAUCGUAUGAAGCACAUAGAGACAGAUCGUACCUAAGCUGG-3’

となる。

 

2-1 b

5’-ACGUAUCGU AUG AAG CAC AUA GAG ACA GAU CGU ACC UAA GCUGG-3’

a. mRNAのうち、下線のAUGが開始コドンである。それ以降の読み枠がわかりやすいように、コドン単位でスペースを入れてmRNAを表示した。開始コドンを含めて10コドン目に終止コドンのUAAが来るので、翻訳されるペプチドのアミノ酸の数は9個である。

2番目のコドンはAAG5番目のコドンは GAGのため、それぞれ翻訳されるアミノ酸はリジン、グルタミン酸である。

 

2-1 c

元のDNA差の16番目の塩基対が欠落すると、mRNAの塩基配列は次のようになり、

5’-ACGUAUCGU AUG AAG ACA UAG AGACAGAUCGUACCUAAGCUGG-3’

4番目のコドンが終止コドンとなる。従って、合成されるペプチドのアミノ酸数は3個である。

この人が癌になるとの解答があったが、必ずしも癌になるわけではないし、病気になるわけでもない。

この変異により、元のアミノ酸9個のペプチドが消失し、3個のペプチドを新たに持つようになることから、9個のペプチドの機能を失い、3個のペプチドの機能を得ることになる。

9個のペプチドの性質等により、そのペプチドを失うことによる影響が出るかもしれないが、何も変化しないかもしれない。同様に、新たに生じた3個のペプチドも、影響が出るかどうか分からない。

この変異はある特定の体細胞にのみ起こったと考えられることから、全身の体細胞全てに同様の変異が起こったわけではない。この変異が起こった細胞とその細胞が分裂により生じた細胞群に限定しての話である。それ以外の細胞は9個のペプチドを作り続けているはずである。

細胞には、どんな遺伝子も基本的には対になって存在している。この変異は対になっている遺伝子のうちの一つにのみ起ったと考えられるため、もう一方の遺伝子は変異せず残っているはずである。すなわち、変異を起こさなかったほうの染色体からは、9個のペプチドを作る能力を失っていない。

 

 

2-2(正解率35%

獲得した遺伝形質は体細胞の遺伝子が変異したり遺伝子発現調節が変化したりして生じた表現型である。子孫に伝わるのは生殖系列細胞が持つゲノムだけである。

遺伝情報の化学的な本体はDNAで、ヒトの場合、核内とミトコンドリア内に局在している。

核のDNAは細胞分裂の際に複製されるが、それ以外、核内にとどまっている。

遺伝情報に書かれている情報は、遺伝子領域にタンパク質の構造を決めるアミノ酸配列である。このタンパク質の機能により、細胞や個体の構造や機能が決まる。

獲得した遺伝形質というのは、生きている過程で、DNAの遺伝情報の変化を伴い、その結果生じるタンパク質の構造や機能の変化に依存している。この変化が体細胞で起こった時、その細胞や、その細胞が分裂してできた細胞群で構造や機能に変化が生じる。

しかし、その変化は、その個体に限られ、子孫には伝わらない。

なぜなら、子孫に伝えられるゲノムは生殖系列細胞のゲノムであり、体細胞のゲノムは伝えられることはないからである。生殖系列細胞はそれ以外の細胞と発生の初期で分離され、独自に分化する。

このように、生殖系列細胞はそれ以外の体細胞と明確に区別されていることから、体細胞に生じた変異、それによって獲得した遺伝形質、遺伝子間の相互作用、あるいは、細胞間の相互作用などは、その個体限りのものであり、生殖系列細胞のゲノムに生じた変異のみが遺伝し、次世代へと伝えられる。

記憶や学習成果、鍛え上げた筋肉なども体細胞の変化やその働きとして生じたものであるため、遺伝しない。

 

 

 

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