平成21年度 定期試験問題

 

平成21年度 学年末試験問題 (第22講−第27講)

 

平成220219日(金) 9:2510:15 予定

 

0. 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「タンパク質」を理解しているか

1. DNAの遺伝情報をもとに作られるタンパク質の構造と機能の意味を理解しているか

2. 基礎的なバイオテクノロジーの技術を理解しているか

 

基礎的な科学用語を正しく使って解説できるかどうかを問う問題です。

すべて記述式です。簡潔に解説するように。

極端な誤答は減点することもあります。

 

 

予定問題概要

植物のバイオテクノロジーにかんする問題

  遺伝子組換え技術を中心に

   遺伝子組換え作物の作り方

   遺伝子組換え作物の安全性と環境への影響

   「遺伝子」と「ゲノム」

   「タンパク質」、「酵素」の機能

 

ゲノムと遺伝子にかんする基礎問題

  バイオインフォマティクスと進化

  ABO式血液型に関与する遺伝子を題材に

   遺伝子の転写と翻訳と翻訳後修飾

   獲得形質の遺伝

   分子系統樹と進化

  第27回の授業で配付した資料を参照するとわかりやすい

(試験の時には添付しない)

 

予定問題(変更することがあります)

平成22 219  925 1015

平成21年度 後期末試験問題 (第22講−第27講)

「バイオテクノロジー」

 

問題は2問ある。全て解答せよ。問題用紙(両面印刷:本紙)と解答用紙2枚を配布する。

解答スペースが不足した場合は、同じ解答用紙の裏面を使うこと。

所定の解答用紙を使っていれば、小問の解答順序は問わない。

 

1 遺伝子組換え技術にかんする次の問に答えよ(50点)

問 次の文章は、現代用語の基礎知識編「理科のおさらい 生物 (おとなの楽習)」(自由国民社・20102月刊)からの引用である。

『長い目でみた遺伝子組換え作物の「安全性」について、議論を重ねる必要はあるでしょう』という結論にいたる材料として1. から 6. の根拠をあげて説明している。それぞれ科学的に検証し、独自の「安全性」議論を展開せよ。

(従来の品種改良と「ゲノム」「遺伝子」のレベルで比較検討するとよい)

 

除草剤耐性や害虫抵抗性作物の作り方と特性

注:酵素=生体の化学反応を触媒するタンパク質

1.(略)

2.(略)

3.このトウモロコシを食べた害虫は腸が破れて死んでしまう、、、

 

人体への影響

4.(略)

 

環境への影響

5.生態系からみれば、遺伝子組換え作物はいわば外来生物に当たります

6.(略)

 

 

 

2 ゲノムと遺伝子にかんする次の問に答えよ(50点)

次の文章は、藤田紘一郎著「血液型の科学」(祥伝社新書・20102月刊)からの引用である。

問に答えよ。

 

本書ではヒトのABO式血液型を次のように解説している。

 

腸内細菌が持つA型物質やB型物質が、人間の体内に潜り込むことで遺伝子移入が起こったのではないかと考えています。このことは、胃や腸のなかに血液型物質がもっとも多く分布していることを考えても、納得のいく話です。

 

参考・著者の主張:(略:授業で紹介

 

問: この話に納得いくか納得いかないか意思表明し、その理由を次1.4.の観点からそれぞれ科学的に解説せよ。

1.血液型物質と遺伝子移入について(細胞内での転写・翻訳・翻訳後修飾・代謝)

2.(略)(体細胞と生殖細胞)

3.(略)(ヒト遺伝子構造は授業で配付した資料)

4.(略)(授業で配布したマルチプルアライメントの図参照)

 

 

 


実際の試験問題

平成21年度 学年末試験問題 (第22講−第27講)

 

1 遺伝子組換え技術にかんする次の問に答えよ (50点)

問 次の文章は、現代用語の基礎知識編「理科のおさらい 生物 (おとなの楽習)」(自由国民社・20102月刊)からの引用である。

長い目でみた遺伝子組換え作物の「安全性」について、議論を重ねる必要はあるでしょう』という結論にいたる材料として1. から 6. の根拠をあげて説明している。それぞれ科学的に検証し、独自の「安全性」議論を展開せよ(特に4.)。

(従来の品種改良と「ゲノム」「遺伝子」のレベルで比較検討するとよい)

 

「遺伝子組換え作物は本当に安全なの?」

 

除草剤耐性や害虫抵抗性作物の作り方と特性

1.     細菌から見つけてきた除草剤を分解する酵素の遺伝子が導入されたダイズには、自然のダイズに比べて、強い除草剤を使っても大丈夫になり、除草の手間を省くことができました。

2.     細菌の持つ殺虫性の酵素の遺伝子をトウモロコシに導入して、殺虫性の強い遺伝子組み換えトウモロコシも作られています(引用者注:原文のママ)。

3.     このトウモロコシを食べた害虫は腸が破れて死んでしまうので、農薬なしでも害虫の被害を抑えることができます。

 

人体への影響

4.     長年の間、除草剤に強い酵素あるいは殺虫性の物質(引用者注:2.の殺虫性の酵素と思われる)が、生体(引用者注:人体と思われる)に蓄積していったときの影響についてはまだ結論が出ていないのが現状です。

 

環境への影響

5.     生態系からみれば、遺伝子組換え作物はいわば外来生物に当たります。

6.     いったん生態系に放たれた遺伝子組換え作物に、万が一問題が見つかっても、そのときは生態系から回収するのはほぼ不可能と思われます。

 

 

2 ゲノムと遺伝子にかんする次の問に答えよ (50点)

次の文章は、藤田紘一郎著「血液型の科学」(祥伝社新書・20102月刊)からの引用である。

問に答えよ。

 

本書ではヒトのABO式血液型を次のように解説している。

 

腸内細菌が持つA型物質やB型物質が、人間の体内に潜り込むことで遺伝子移入が起こったのではないかと考えています。このことは、胃や腸のなかに血液型物質がもっとも多く分布していることを考えても、納得のいく話です。

参考・著者の主張:

a.      ヒトの腸内細菌に3種類(O型、A型、B型)の血液型物質がある

b.      血液型物質を持つ細菌は人類に進化する以前から腸内に棲んでいた

c.      植物はO型とAB型の血液型物質をもつのが多い

d.      動物にも3種類(O型、A型、B型)の血液型物質がある

e.      人類が誕生した頃、ヒトの血液型はすべてO型であった

f.       紀元前25000年から15000年頃、A型物質を持つ腸内細菌からA型の血液型遺伝子が遺伝子移入することで、ヒトはA型の血液型を獲得した

g.      さらに紀元前1万年頃、細菌からB型の血液型遺伝子が移入して、B型人間が誕生した

h.      1000年程前、A型人間とB型人間の混血により、AB型人間が誕生した

 

問: この話に納得いくか納得いかないか意思表明し、その理由を次1.4.の観点からそれぞれ科学的に解説せよ。

1.      血液型物質と遺伝子移入について(細胞内での転写・翻訳・翻訳後修飾・代謝)

2.      獲得形質の遺伝について(体細胞と生殖細胞、親から子への遺伝、遺伝情報の流れ)

3.      細菌とヒトの遺伝子構造の違いについて(ヒト遺伝子構造は授業で配付した資料)

4.      この説を検証、もしくは反証するためには、配列(核酸の塩基配列、タンパク質のアミノ酸配列)データベースから、どのようなデータを探せばよいか。また、見つからなければ、どのような実験をするのがよいか(授業で配布したマルチプルアライメントの図参照)

 

解答例(唯一の正解というわけではない)

 

1

遺伝子組換え作物は安全であると言い切る解答があった。

毎度のことであるが、安全性の話であって、リスク、危険性の話である。

安全であると断言できるわけではないし、断言するのは非科学的である。

 

除草剤耐性や害虫抵抗性作物の作り方と特性

1.      一般的な除草剤耐性遺伝子組換え作物には2種類ある。除草剤グリホサート耐性作物とグルホシネート耐性作物である。両方とも除草剤を分解する酵素の遺伝子を導入するわけではなく、除草剤の効果を打ち消す酵素の遺伝子を導入している。「細菌から見つけてきた除草剤を分解する酵素の遺伝子」は導入されていない。

グリホサートは汎用性のある除草剤で植物特有の芳香族アミノ酸を合成するある代謝経路を阻害し、芳香族アミノ酸やこれらを含むタンパク質などの合成を阻害する。その結果、ほとんどの植物が枯れる非選択的な除草剤である。アグロバクテリウム由来の同様の代謝酵素は上記と同様の芳香族アミノ酸合成を触媒するが、グリホサートによる阻害を受けない。その結果、この酵素の遺伝子を導入した作物はグリホサート耐性を獲得し、グリホサート存在下でも生育する。

一方、グルホシネートはほとんどの植物がもっているグルタミン合成酵素を阻害する。この酵素が阻害されると有害なアンモニアが蓄積し、植物は枯れる。グルホシネートをアセチル化する酵素が見つかっており、アセチル化されたグルホシネートはグルタミン酸合成酵素反応を阻害する働きを失う。このアセチル化酵素はグルホシネートに特異的であり、食品として安全性に問題がないことが確認されている。

「強い除草剤」ヒトなどに対しても悪影響を及ぼすと勘違いしそうな表現であるが、上記のように、植物に特有の代謝酵素を阻害する物質であり、ヒトなどの動物ではこの除草剤のターゲットとなる代謝経路はない。従って、「強い」というのは植物にとって非特異的に働くというだけであって、ヒトなどの動物にとってはほとんど効果かがみられない。実際、動物実験により急性毒性試験がなされており、たとえばグリホサートのLD505,000 mg/kg体重以上であり、食塩より急性毒性は低いとの結果が出ている。また、除草剤自身は土壌細菌などにより分解されやすいもののため、散布後蓄積する心配もない。

「自然のダイズ」自然のものを人工的に改悪するようなイメージを表現しようとしたのであろうが、残念ながら通常の品種改良されたダイズはとても「自然」と呼べるようなものではなく、ゲノムレベルで野生種からかなり改変されている。

 

2.      Bt毒素のことと思われる。これはタンパク質であるが酵素ではない。

殺虫性の強い」という表現にも作為がみられる。このBt毒素は鱗翅目の幼虫には効果があるが、ヒトなどの動物にとっては単なるタンパク質である。Bt毒素は古くから生物農薬として使われており、ヒトなどに対する安全性試験も多数ある。殺虫剤としては即効性がなく、それほど強いものでもない。

ヒトなどの動物の胃は酸性であるため、食べたタンパク質等はペプシンなどの酵素の作用を受け、ほとんど分解される。しかし、蝶や蛾の仲間は胃がアルカリ性であるため、胃ではあまりタンパク質が分解されず、腸へ到達する。腸細胞の表面にBtタンパク質に結合するレセプターがあり、このレセプターにBt毒素が結合すると腸細胞がダメージを受け、腸管からの栄養吸収が阻害され、餓死する。ヒトなどの腸には同様のレセプターがないため、さらにアミノ酸にまで分解されて栄養素として吸収される。

殺虫性があるからといってヒトにも毒性があるというわけではなく、生物農薬としての長い経験や理論や実験などから、Bt毒素の安全性試験がなされており、安全性が確かめられた物質の遺伝子が導入されることになる。

 

3.      このトウモロコシを食べた害虫は腸が破れて死んでしまうというが、2.で説明したとおり、腸が破れるわけではない。殺虫性のタンパク質に対するレセプターが腸細胞にあり、それと応答することで消化不良を起こす。腸が破れて死んでしまうと言うと、「強い殺虫剤」のイメージが高まり、さらにはヒトの腸にも悪影響を及ぼすかもと誤解を受けてしまう。

 

人体への影響

4.      著者が長い間摂取することで蓄積すると懸念しているもの(除草剤に強い酵素、殺虫性の物質)はタンパク質である。これらのタンパク質は食品として特別なものではなく、植物が作る数万種類あるタンパク質のうちの一つに過ぎない。他のタンパク質と同様、分解され吸収されるだけである。もし、食品に含まれるあるタンパク質が分解せずに食べたヒトの体内に蓄積するのであれば、確かに問題であろう。しかし、そのような影響について考えなければならない必然性はなく、当然のことながらその影響について調べる必要もない。ヒトに対する影響について結論が出ていないのは当たり前で、調べることができないし、調べる必要もないし、実際調べられていない。

 

環境への影響

5.      生態系からみれば、遺伝子組換え作物はいわば外来生物に当たりますというが、遺伝子組換えをすることで種は変わらず、外来生物になるわけではない。そもそも外来生物の認識がおかしい。さらに、もともと通常の品種改良によって作られている野菜類も多くは外来種である。

 

6.      そもそも遺伝子組換え作物は毒物ではなく、導入した遺伝子も特に毒物というわけではないため、生態系から回収しないといけないという論理そのものが不明である。「万一」何が起こるかと懸念しているかも不明。もし懸念したいのであれば、種が変化するほど改変された通常の品種改良作物のほうであろう。「今まで地球上に存在しなかった完璧に人工生物」であるため、生態系に与える影響も未知数のはずである。

 

 

2(要点のみ)

1.      ABO式血液型物質は血液型遺伝子由来の糖転移酵素によって作られる。その最終産物である血液型物質が万一細菌からヒトの細胞に移ったとしても、この最終産物を作る酵素はもちろん、その遺伝子が一緒に移るわけではない。

 

2.      胃や腸の中に血液型物質が多いからたとえば腸内細菌から遺伝子を受け取ったので血液型を獲得したというのであれば、腸細胞で獲得した遺伝子が子孫に遺伝する必要がある。親から子へ伝えられるゲノムは生殖細胞にある。体細胞の変化は基本的には子に伝わらない。

 

3.      細菌などの原核生物の遺伝子には一般的にイントロンがなく、真核生物の遺伝子には一般的にイントロンがある。真核生物であるヒトがもつABO式血液型に関与する遺伝子は7つのエキソンをもち、20068-bpの塩基配列をもつ。腸内細菌の血液型に関与する遺伝子は不明であるが、おそらくイントロンは含まない小さな遺伝子であろう。腸内細菌から遺伝子移入によりヒトが血液型を獲得したのであれば、細菌型のイントロンのない遺伝子をヒトが持っているはずである。

 

4.      ヒト以外の霊長類やほ乳類、脊椎動物などのオーソログ遺伝子を見つけてくるとよい。塩基配列やアミノ酸配列を比較することで分子系統樹を作成し、共通祖先が持っていたと思われる遺伝子を推測するとよい。また、腸内細菌の血液型に関与する遺伝子を見つけてくるとよい。著者が言う細菌の血液型物質とヒトの血液型物質が同じものかどうか、もし同じであれば、同じ酵素により作られるのかどうかも調べるとよい。

 

 


平成21年度 後期中間試験問題 (第14講−第21講)

 

平成211211日(金) 9:2510:15 予定

(当日学会出張の予定・代理の先生による監督になる可能性大)

 

0. 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「タンパク質」を理解しているか

1. DNAの遺伝情報をもとに作られるタンパク質の構造と機能の意味を理解しているか

2. 基礎的なバイオテクノロジーの技術を理解しているか

 

基礎的な科学用語を正しく使って解説できるかどうかを問う問題です。

すべて記述式です。簡潔に解説するように。

極端な誤答は減点することもあります。

 

 

予定問題概要

植物のバイオテクノロジーにかんする問題

   遺伝子組換え技術を中心に

 

動物とヒトのバイオテクノロジーにかんする問題

   クローン技術を中心に

 

 

予定問題(1120日・改訂しました)

問題用紙(本紙)と解答用紙3枚を配布する。問題は3問ある。3問とも解答せよ。

解答用紙のホッチキスをはがさないで解答すること。

極端な誤答は減点する。解答スペースが不足したときは、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

 

1 植物のバイオテクノロジーにかんする問題 その2 (20点)

次の文章は20090914日付朝日新聞の「環境早わかり93」からの抜粋である。

問に答えよ。

(以下略)

 

 

2 動物とヒトのクローン技術にかんする問題 その1 (30点)

次の技術でつくられた細胞について、相違点を簡潔に述べよ。

(以下略)

 

 

3 動物とヒトのクローン技術にかんする問題 その2 (20点)

次の文章は20090422日付インターネット版読売新聞の記事からの引用である。

クローン人間誕生?4人の子宮に「胚」移植…英高級紙

(中略)

この記事を受けて、次のような意見が投稿された(実際の意見を脚色した)。

科学的な根拠をあげて、「クローン胚」を使っていることに注目して意見を述べよ。

個別に解答しても、まとめて解答してもよい。まとめて解答するときは、全項目に触れること。

(以下略)

 

 

 

次の問題は試験前週の1204日(金・第21回)に小テストの形で解答してもらいます。

 

4 植物のバイオテクノロジーにかんする問題 その1 (30点)

ある集団に遺伝子組換え作物(いわゆる除草剤耐性・害虫抵抗性作物)とはどんなものかと問うたところ、次のような解答が得られた。科学的な根拠をあげ、基本用語を正しく使って解説せよ。

個別に解説しても、まとめて解説してもよい。まとめて解答するときは全項目に触れること。

 

1.     食品に「ある遺伝子」を加えて組み込むのではなく、元々存在している遺伝子を、食品を改良するために変化させている。

2.  ()

3.  ()

4.  ()

 

 

 


実際の試験問題

4 植物のバイオテクノロジーにかんする問題 その1

30点)

 

ある集団に遺伝子組換え作物(いわゆる除草剤耐性・害虫抵抗性作物)とはどんなものかと問うたところ、1.から4.のような解答が得られた。

また、20091124日付けの朝日新聞「あなたの安心/遺伝子組み換え食品って何?」で5. のような記述があった。

 

科学的な根拠をあげ、基本用語を正しく使って簡潔に解説せよ。

個別に解説しても、まとめて解説してもよい。まとめて解答するときは全項目に触れること。

 

1.     食品に「ある遺伝子」を加えて組み込むのではなく、元々存在している遺伝子を、食品を改良するために変化させている。

 

2.     遺伝子組換え操作とは、遺伝子の塩基配列を組み換えたもので、遺伝子というものを何かと交換したわけではない。

 

3.     他から取ってきた遺伝子を注入した作物という意味ではなく、通常のアミノ酸配列に手をかけて、配列を変え、新たなタンパク質にした作物のこと。

 

4.     遺伝子組換えとは、DNA配列を化学操作で別の塩基に置き換えたものである。

 

5.     GM(遺伝子組み換え)技術とは、ある生物の遺伝子に別の生物の遺伝子を入れ込むことだ。

 

 

 

1 植物のバイオテクノロジーにかんする問題 その2

20点)

次の文章は20090914日付朝日新聞の「環境早わかり93」からの抜粋である。

問に答えよ。

 

環境カウンセラー

「ゲストティーチャーとして、生物多様性について中学生の授業をさせて頂いたとき、鋭い質問があった。『遺伝子組み換え食品や生物は体や環境に悪いかもしれないのに、どうして売られるのですか』」

 

これに対して、著者は次の二つの答えを用意している

「答えの一つは買う人がいるから。買う人がいなくなったら仕事として成り立たないので、淘汰される」

「もう一つは買う人が知らない、あるいは知らされていないから買ってしまう。この知らない、知らされていない状況はとても重要な問題で、消費者の購買判断を誤らせてしまう」

 

この環境カウンセラー氏と質問した中学生に科学的な根拠をあげて『遺伝子組み換え食品や生物は体や環境に悪いかもしれないのに、どうして売られるのですか』という問いにアドバイスしてあげてください。

 

 

 

2 動物とヒトのクローン技術にかんする問題 その1

30点)

次の技術でつくられた細胞について、相違点を簡潔に述べよ。

 

1.     核移植技術を応用した受精卵クローンと体細胞クローン

 

2.     受精卵由来のES細胞とクローン胚由来のES細胞と体細胞由来のiPS細胞

 

 

 

3 動物とヒトのクローン技術にかんする問題 その2

20点)

 

次の文章は20090422日付インターネット版読売新聞の記事からの引用である。

参考URL:

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20090422-OYT1T00921.htm

http://www.yoronchousa.net/result/7488

 

クローン人間誕生?4人の子宮に「胚」移植…英高級紙

【ロンドン=大内佐紀】22日付英インデペンデント紙は1面トップで、米国人医師が14個の人間のクローン胚(はい)を作ることに成功し、このうち11個を4人の女性の子宮に移植、近くクローン人間が誕生する可能性が出てきたと伝えた。

(以下略)

この記事を受けて、次のような意見が投稿された(実際の意見を脚色した)。

科学的な根拠をあげて、「クローン胚」を使っていることに注目して意見を述べよ。

個別に解答しても、まとめて解答してもよい。まとめて解答するときは、全項目に触れること。

 

1.     クローン人間って違う人格なの? 人権はあるの? なんかややこしいよぉ。

 

2.     いよいよクローン人間が誕生するらしい。自分のコピーを欲しがる人なんているんだろうか?

 

3.     アインシュタインや大リーグ・マリナーズのイチロー選手のような天才を数百人複製する社会って異常です。コピー人間チームの野球なんか見たくありません。今現在、存在する人間すべてが困惑します。

 

4.     クローン人間をつくるお金があるのなら、もっと別の、たとえば、地球温暖化対策などに使うべきだ。

 

 

 

解答例とポイント

解答例であって、唯一の正解というわけではない。

 

1

基本的には、すべての例題に誤りがある。

すべて遺伝子組換え作物の作り方にかんする記述で、1.4.には共通した誤りが見られる。

問題文にもあるとおり、いわゆる除草剤耐性や害虫抵抗性の遺伝子組換え作物(植物)の作り方を問うているためこの技術にしぼって解答する。

 

1.     前半「食品に「ある遺伝子」を加えて組み込むのではなく、

「食品」ではなく「植物細胞に」であるが、除草剤耐性や害虫抵抗性の遺伝子組換え植物は植物細胞に細菌などから見つけた遺伝子を導入する技術で作られている。

後半「元々存在している遺伝子を、食品を改良するために変化させている

組換える前の細胞の特定の遺伝子を「変化」させたとあるが、特定の遺伝子を助増大耐性や害虫抵抗性を持たせるように「変化」させることはかなり難しい。

 

2.     前半「遺伝子組換え操作とは、遺伝子の塩基配列を組み換えたもので

植物ゲノムの中の特定の遺伝子をターゲットに絞り、その塩基配列を直接変化させることはかなり難しい。ベクターなどにクローン化した遺伝子の塩基配列を思うように変化させるのは容易である。

後半「遺伝子というものを何かと交換したわけではない

意味不明であるが、ある遺伝子を別の遺伝子と交換するという意味なら、正しい。

実際には、ゲノムに存在する特定の遺伝子を別の遺伝子に置き換えるのではなく、ゲノムに特定の遺伝子を導入して作られている。

 

3.     前半「他から取ってきた遺伝子を注入した作物という意味ではなく

実際に細菌から単離された遺伝子を植物細胞のゲノムに導入して作られている。

後半「通常のアミノ酸配列に手をかけて、配列を変え、新たなタンパク質にした作物のこと

通常の遺伝子組換え操作により、遺伝子導入さられた細胞内でその遺伝子が発言すると、ももとも存在しなかった特定のたんぱく質が増えることになる。

ベクターなどにクローン化された遺伝子の塩基配列を変化させることで、その遺伝子から合成されるタンパク質のアミノ酸配列を思うように変化させることはできる。

その変化させた遺伝子を導入すれば、思うようにデザインしたアミノ酸配列を持つタンパク質を作る植物細胞に変化させることはできる。

しかし、この文章のように、細胞内にあるタンパク質のアミノ酸配列を変化させることで新たなタンパク質なるようにしたとしても、そのアミノ酸配列を持つタンパク質を作る遺伝子の塩基配列をデザインしない限りその細胞のゲノムは変化しないため、仮に書いてある文章のことが可能だとしても、遺伝しないので、子孫にその変化を残すことはできない。

 

4.     DNA配列を化学操作で別の塩基に置き換えたものである

化学操作で直接塩基配列を変えることはかなり難しい。この場合、植物ゲノムが対象であるため、数億から数百億の塩基対を持つDNAがターゲットとなり、特定の遺伝子の特定の塩基配列を直接化学操作で別の塩基に置き換えることはほとんど不可能である。ランダムに塩基配列を変化させることは可能である。

5.     「遺伝子に遺伝子を導入する」という表現は新聞などでよく見かける。

除草剤耐性や害虫抵抗性の遺伝子組換え作物を作るときは、トウモロコシやダイズの細胞に特定の遺伝子を導入することで作られるため、植物のゲノムに外来の遺伝子を導入する形で作られる。

遺伝子に遺伝子を導入するというと、2回でてくる遺伝子の区別が付かず、誤解が生じる可能性が高い。この表現だと「トウモロコシの遺伝子に細菌の遺伝子を入れ込む」と同じことになり、トウモロコシと細菌が交雑した化け物ができると勘違いしてしまう。この引用文の後、種を越えて組換えが可能だと脅す文章が続く場合が多いが、実際には、トウモロコシのゲノムに細菌由来の特定の遺伝子が導入されるだけであり、トウモロコシが本来持っていた数万の遺伝子は基本的には変化しないため、トウモロコシのママ種が変化するわけではない。

 

1

この環境カウンセラーの答えでは、中学生はますます混乱してしまうであろう。

基本的に中学生も環境カウンセラー氏も遺伝子組換え食品は人体に危険な物で環境にとっても悪い物との認識で議論している。環境カウンセラー氏の答えもその前提で書かれている。

「買う人がいなくなったら」と答えているが、いくら中学生でもその論理は通用しないであろう。

細かいことではあるが、「淘汰」の意味が間違っている。一般に「淘汰」というと悪い物を排除する意味に使われ、この場合もその意味で使われる。しかし、本来は良いものを選び分けるという意味であり(砂と金が混じっているものの中から金を選び出す)、次善の意味で悪いものを除き良いものを残す、という意味である。一方的に悪いものを除くという意味ではない。

二つ目の答えの最後に「購買判断を誤らせてしまう」と結んでいることから、消費者の無知が原因で危険なものを買ってしまっていること憂いるのであろう。しかし、無知なのはこの環境カウンセラー氏のほうである。実際、人体への影響や環境への影響など、多くの情報が公開されている。それにもかかわらず、「知らされていない状況」があるというのなら、その情報を得ても単に理解できていないだけであり、理解できない情報はないのと同じことになる。情報を発信する側もわかりやすく説明することも重要であるが、受け手側も謙虚になる必要がある。少なくとも「理解できないから情報がないことにする」のでは答えとして適切ではない。

この中学生に対する答えとしては、まず「遺伝子組み換え食品や生物は体や環境に悪いかもしれない」という認識がどういった情報から得られたのかを聞き出すのが先であろう。その情報を吟味し、その上で、公開されている情報を紹介し、遺伝子組換え作物がどんなものであるか基本的なことから理解するように仕向けるのが適切であろう。そうすれば、自ずと「どうして売られるのですか」という問の答えに行き着くはずである。

 

2

両問の内容とも、授業で繰り返し解説した。表にして要点をまとめてあるので参考にするように。

1.     「核移植技術を応用した」2種類のクローン技術の比較である。核移植でない記述で説明する解答が多かった。

どちらも細胞核移植技術を使うため、除核卵を利用するが、この除核卵と融合させる細胞が2つの技術で異なる。すなわち、受精卵クローン技術では初期胚をバラバラにした細胞をそのまま利用し、体細胞クローン技術では、体細胞を細胞培養によって株化し、初期化した細胞を利用する。できた細胞は、受精卵クローン技術では初期胚と同じゲノムを持ち、体細胞クローン技術では使った体細胞と同じゲノムを持つ。前者の細胞はたまたま受精に利用した卵子と精子のゲノムを持つことになり、どんな性質のゲノムになるか予測が付きにくいのにたいし、後者の細胞は既に成体となっている個体の細胞を使うことから、できたクローン細胞のゲノムの性質がわかっている。

2.     受精卵由来のES細胞とクローン胚由来のES細胞と体細胞由来のiPS細胞

 

3

この記事で登場するクローン人間はクローン胚を利用して作ることから、体細胞クローン人間のことである。除核卵と初期化した体細胞を細胞融合させ、人工的に卵割を開始させてできた初期胚(胚盤胞まで成長する)、すなわちクローン胚から誕生した人間である。基本的には年の離れた一卵性双生児といえる。

体外受精により受精過程を人工的に行い、人工的に成長させた胚を利用し、多くの体外受精児が誕生している。この技術とクローン胚クローン人間との違いは、人工的に卵子と精子を融合させるか、除核卵と体細胞を融合させるかの違いだけであり、その後は全く同じである。クローン胚クローン人間とは言え、体外受精児と同じように胚発生し、子宮に着床させ、胎児が育ち、出産し、成長する。ゲノムの性格が異なるだけで、それ以外は同じである。従って、クローン人間にも人格はもちろんあり、人権もある。この点で、普通の人間と全く同じである。年の離れた双子に過ぎない。

一卵性の双子の研究から明らかにされているように、ゲノムで決まる性質と後天的に作られる性質があり、環境要因によって決まる事柄や経験、記憶などは独自に形成される。

一卵性の双子でも、ゲノムが全く同じというわけではなく、胚発生の過程や細胞分裂の間に、ダイナミックにゲノムが組換えられたりコピー数が変わったりすることが見つかっており、ゲノムで決定されることですら全く同じというわけではない。

クローン技術は、単なるクローン胚クローン人間を作るためだけに開発されたわけではなく、基礎研究や再生医療やヒト以外の生物の改良などに使われるものであり、単なるクローン胚クローン人間を作ることは需要のなさから言って、それほど使われないであろう。

人にとって問題になるのは、単なるクローンではなく、遺伝子改変のほうであろう。

 

 


 

平成21年度 前期末試験問題 (第7講−第13講)

平成210731日(金) 9:2510:15 予定

 

0. 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「タンパク質」を理解しているか

1. 遺伝子の構造と転写・翻訳の基本を理解しているか

2. 塩基の変異とアミノ酸配列の変化を理解しているか

3. DNAの遺伝情報をもとに作られるタンパク質の構造と機能の意味を理解しているか

4. 分子生物学的な系統樹と進化の意味を理解しているか

5. 基礎的なバイオテクノロジーの技術を理解しているか

 

 

問題のポイント(2問・それぞれに小問が多数ある)

1. A型インフルエンザウイルスのセグメント2遺伝子を題材にする問題(50点)

 遺伝子の構造

 塩基配列とアミノ酸配列の関係

 塩基の置換とアミノ酸の変化とタンパク質の構造・機能変化

 突然変異の進化学的理解

 

2. ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現に関する問題(50点)

 食物の消化と細胞による合成 代謝と輸送

 PCR法の原理

 PCR法を応用した、mRNAの定量

 基本的な実験手法の理解

 

 

予定問題

1 次の文章と遺伝情報をよく読んで、次ページの問に答えよ。

50点)

2009年に発生した新型インフルエンザウイルスInfluenza A virus (A/Mexico/4108/2009(H1N1))の起源と

考えられているInfluenza A virus (A/mallard duck/South Dakota/Sg-00125/2007(H3N2)) segment 2

塩基とアミノ酸の部分配列を示した(授業で配付した資料と基本的には同じ)。

1段目:Influenza A virus (A/mallard duck/South Dakota/Sg-00125/2007(H3N2)) segment 2の部分塩基配列

2段目:新型ヒトインフルエンザInfluenza A virus (A/Mexico/4108/2009(H1N1)) segment 2の部分塩基配列

トリインフルエンザと同じ塩基配列は「.」で表してある。

3段目:トリPB1-F1のアミノ酸配列(コドンの1塩基目にアミノ酸の1文字表記)

4段目:トリPB1-F2のアミノ酸配列(1列目にはない;コドンの1塩基目にアミノ酸の1文字表記)

このセグメント2遺伝子では、二つのフレームからPB1-F1タンパク質とPB1-F2タンパク質が合成される。

PB1-F2は全アミノ酸配列を示しているが、PB1-F1PB1-F2領域を含む部分配列を示した。

PB1-F1RNAポリメラーゼ活性を持つ酵素の一部である。

PB1-F2の詳しい機能はわかっていないが、発症者の重篤化に関わると考えられている。

(塩基配列には3塩基ごとにスペースが挿入してある。PB1-F1のコドンに対応)

PB1-F1のコドンは3で割って1余る塩基数から、PB1-F2のコドンは3で割って2余る塩基数から)

(たとえば、PB1-F1121塩基目からのacaTPB1-F2122塩基目からのcacH

 

  1 act cta ctt ttt cta aag gtt cca gcg caa aat gcc ata agc acc aca ttc cct tat act  トリ

  1 ... ... ... ..c ... ..a a.. ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ...  新型ヒト

  1 T   L   L   F   L   K   V   P   A   Q   N   A   I   S   T   T   F   P   Y   T   トリPB1-F1

 

 61 gga gat cct cca tac agc cat gga aca gga aca gga tac acc atg gac aca gtc aac aga  トリ

 61 ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ..a ... ...  新型ヒト

 21 G   D   P   P   Y   S   H   G   T   G   T   G   Y   T   M   D   T   V   N   R   トリPB1-F1

  1                          M   E   Q   E   Q   D   T   P   W   T   Q   S   T   E  トリPB1-F2

 

121 aca cac caa tat tca gaa aaa ggg aag tgg acg aca aac aca gag act ggg gca ccc cag  トリ

121 ... ... ... ..c ... ... ..g ..a ... ... ... ... ... ... ... ... ..t ... ... ...  新型ヒト

 41 T   H   Q   Y   S   E   K   G   K   W   T   T   N   T   E   T   G   A   P   Q    トリPB1-F1

 15  H   T   N   I   Q   K   K   G   S   G   R   Q   T   Q   R   L   G   H   P   S   トリPB1-F2

 

181 ctc aac ccg att gat gga cca cta cct gag gat aat gaa cca agt gga tat gca caa aca  トリ

181 ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ..g ... ... ... ...  新型ヒト

 61 L   N   P   I   D   G   P   L   P   E   D   N   E   P   S   G   Y   A   Q   T    トリPB1-F1

 35  S   T   R   L   M   D   H   Y   L   R   I   M   N   Q   V   D   M   H   K   Q   トリPB1-F2

 

241 gac tgt gtt ctg gag gcc atg gct ttc ctt gaa gaa tcc cac cca ggg ata ttt gag aat  トリ

241 ... ... ... ..a ... ..t ... ... ... ... ... ... ... ... ... ..a ... ... ... ...  新型ヒト

 81 D   C   V   L   E   A   M   A   F   L   E   E   S   H   P   G   I   F   E   N    トリPB1-F1

 55  T   V   F   W   R   P   W   L   S   L   K   N   P   T   Q   G   Y   L   R   I   トリPB1-F2

 

301 tca tgc ctt gaa aca atg gaa gtt gtt caa caa aca agg gtg gat aaa cta act caa ggt  トリ

301 ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ... ..a ... ... ... ... ... ...  新型ヒト

101 S   C   L   E   T   M   E   V   V   Q   Q   T   R   V   D   K   L   T   Q   G    トリPB1-F1

 75  H   A   L   K   Q   W   K   L   F   N   K   Q   G   W   I   N   *               トリPB1-F2

 

この遺伝子(トリインフルエンザウイルス由来1段目)と、

2009年に発生したヒト新型の豚インフルエンザウイルスのセグメント2遺伝子

2段目)を比較したところ次のようなことがわかった。

簡潔かつ論理的に解説せよ

 

1-1 PB1-F1について。

19番目の塩基をみると、トリインフルエンザウイルスではgのところ、

ヒト新型インフルエンザウイルスではaに置換している。

この付近のPB1-F1タンパク質のトリとヒトの違いを指摘せよ。

また、12番目の塩基と18番目の塩基もトリとヒトで置換している。

この2カ所で、PB1-F1タンパク質のトリとヒトの違いがあるか解説せよ。

 

1-2 PB1-F1について。

1-13カ所を含め、トリとヒトで比較した360個の塩基配列のうち、

塩基置換が13カ所ある(2段目に塩基で示されている)。

しかし、トリとヒトのPB1-F1アミノ酸配列の違いは問1-1で指摘した1カ所だけである。

置換場所のパターンを調べ、なぜアミノ酸置換数が少ないのか説明せよ。

 

1-3 PB1-F2について。

トリの114番目の塩基cがヒトではaに置換している。(以下略)

 

1-4 PB1-F2について。

塩基置換の場所は、問1-3の例を含めて10カ所ある。

該当塩基はアンダーラインで示してある。

(114132141144171228252258288342塩基目)

トリからヒト新型へどのようにアミノ酸が変化するか調べ、

この10カ所の変異パターンの特徴を解説せよ。

 

1-5 PB1-F2について。

突然変異により、ヒト新型インフルエンザウイルスに

114番目の塩基置換が起こり、a以外の塩基に置換したとすると、

どのような変化が起こるか推定せよ。

また、このウイルスに感染した患者はどうなるか推定せよ。

このとき、ウイルスタンパク質のうち、

PB1-F2タンパク質のみが発症者の重篤化に関与すると仮定し、

他のセグメント遺伝子には変異が起こっていないと仮定せよ。

 

1-6 (問1-4と問1-5の発展問題。PB1-F1PB1-F2の役割の違いを進化論的に推測)

 

 

 

2 次の文章をよく読んで、次ページの問に答えよ。

50点)

2009年、某学会で、健康食品としての低分子量ヒアルロン酸を経口摂取したときに現れる影響を調べた

結果が発表された。

 

<1> 目的

美肌や関節炎効果が期待できるとして、ヒアルロン酸配合食品が多く発売されているが、

その効能メカニズムに不明な点が多い。

ヒアルロン酸は高分子化合物であるため、腸管から吸収されにくい。

平均分子量2000(二糖単位が5個)の低分子量ヒアルロン酸なら効果が期待できるかもしれない。

 

<2> 方法と結果

1. 人工腸管膜透過試験

普通のヒアルロン酸と低分子量ヒアルロン酸で比較

低分子量ヒアルロン酸の濃度依存的に人工腸管膜を透過した

分子量が小さくなるに伴い透過性が顕著に向上した

 

2. 低分子量ヒアルロン酸のヒアルロン酸合成に対する効果

ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現に与える影響を検討

ヒト培養細胞の培地に低分子量ヒアルロン酸を直接投与

培養細胞のヒアルロン酸合成酵素遺伝子の転写が低分子量ヒアルロン酸の濃度依存的に増加した

(リアルタイムPCR法によるmRNAの定量)

 

<3> 考察

1.      低分子量ヒアルロン酸の効果の一つにヒアルロン酸合成酵素の発現を高め、ヒアルロン酸合成酵素の量が

増えることでヒアルロン酸合成が高まると予想できる。

2.      動物実験で、経口摂取した低分子量ヒアルロン酸の吸収の度合いは、調べることができなかった。

3.      動物実験で、低分子量ヒアルロン酸を経口摂取させたのち、組織を取り出し、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の

発現を調べたが、ばらつきが多くて結果が出せなかった。

4.      動物実験で、血液中のヒアルロン酸濃度は調べていない。

 

参考:ヒアルロン酸について

Ø  二糖(グルクロン酸とN-アセチルグルコサミン)のくり返し構造。

Ø  ヒアルロン酸は細胞膜にある酵素の触媒で二糖単位(2種の単糖が別々に)が付加する形で合成される。

Ø  ヒアルロン酸合成にグルクロン酸やN-アセチルグルコサミンがそのまま使われるわけではなく、

UDP-グルクロン酸やUDP- N-アセチルグルコサミンが使われる。

Ø  分子量は多様で、100万以上。1,000万のものもある。細胞間マトリックスなどに存在する。

Ø  細胞間マトリックスはコラーゲンやフィブロネクチンなどの接着タンパク質の他、多種類の糖タンパク質や多糖類が

立体的に網目構造をとることで機能している。

 

 

問題

次の疑問点について、簡潔かつ論理的に解説せよ

 

2-1    mRNAの定量について。

細胞からRNAを抽出し、RNA依存性DNAポリメラーゼにより

mRNAを逆転写によってDNAが合成される。

この合成されたDNAmRNAと元のゲノムDNAの関係を解説せよ。

 

2-2    2-1で示したDNAを鋳型としてPCR法を使うことにより、

特定のmRNA(ヒアルロン酸合成酵素)の発現量を定量することができる。

なぜか。

 

2-3    ヒトが低分子量ヒアルロン酸を経口摂取すると、この低分子量ヒアルロン酸はどうなるか。

 

2-4 2-3に関連した経口摂取の問題

 

2-5    ヒアルロン酸合成酵素遺伝子の発現増強について

培地中に加えた低分子量ヒアルロン酸が細胞核のゲノムDNAの特定の遺伝子

(ヒアルロン酸合成酵素遺伝子)に影響を与え、その転写を促進させるためには

どのようなことが起こる必要があるか。

 

2-6 (遺伝子発現増強の周辺細胞への影響の問題)

 

2-7    低分子量ヒアルロン酸を食べるだけで全身のヒアルロン酸合成が高まるのだとすると、

どのようなことが予想されるか。

 

 

 

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<<おまけ>>

次のブログ記事の最後に参考になるブログ記事のリンクが張ってあります。

○第13回(平成21年度)

http://yoshibero.at.webry.info/200907/article_28.html

 

 

最新の次の記事も参考に

○健康食品 ヒアルロン酸を食べることに効果はあるのか その5

 http://yoshibero.at.webry.info/200907/article_34.html

 

 

 

 

解答例と解説(唯一の正解というわけではない)

 

1

1-1

トリ

ttt cta aag gtt

F   L   K   V

 

ヒト

..c ... ..a a..

F   L   K   I

 

19番塩基はコドンの1塩基目であることから、この場所で変異があると翻訳されるアミノ酸が変化する。

この場合、VからIに変化する。

VIも脂肪族アミノ酸で性質がよく似ていることから、タンパク質としての構造や機能に致命的な影響を与えることは少ないと推測される。

 

12番塩基と18番塩基はコドンの3塩基目であることから、この場所で変異があっても翻訳されるアミノ酸に変化がない場合が多い。

この場合、両方ともFKのまま変化がない。

 

翻訳過程の説明に「アミノ酸が合成される」「合成されるアミノ酸」という記述がまだ見られる。翻訳過程でアミノ酸が合成されるわけではない。

 

 

 

1-2

変異のあった13カ所のうち問1-1で指摘した19番塩基はコドンの1塩基目であるが、残りの12カ所の変異のある場所はすべてコドンの3塩基目である。

コドンの1塩基目や2塩基目に変異があった場合、ロイシンとアルギニンおよび終止コドンの一部を除き異なるアミノ酸や終止コドンに変化する。

 

一方、コドンの3塩基目に変異があった場合、多くの場合、翻訳されるアミノ酸に変化がない。

例外は、1コドンしかないメチオニン、トリプトファンのコドンである。

2コドン、3コドン、4コドンある15種類のアミノ酸のコドンは、いずれもコドンの1塩基目と2塩基目が固定されていて、3塩基目の多様性で2コドン、3コドンあるいは4コドンの複数のコドンを持つ。

6コドンの3種類のアミノ酸は1コドン目と2コドン目の配列が2種類あり、それぞれに3コドン目の多様性を持つ。

これらのアミノ酸のコドンで、3塩基目に変異があっても他のアミノ酸に変異しない場合がある。

 

問題の12カ所の変異はすべてコドンの3塩基目であり、この場合、たまたま13カ所ともアミノ酸に変化がない塩基置換である。

 

コドンの3塩基目が変異するとき、アミノ酸に変化がないと断定する解答が多かった。

 

 

 

1-3

トリ

gtc aac a

V   N

 S   T

 

ヒト

gta aac a

V   N

 *  

 

114番塩基がトリcからヒトaに変異することにより、トリではSをコードしていたところ、ヒトでは終止コドンに変異する。

その結果、PB1-F2の翻訳はここでストップするため、11アミノ酸の短いペプチドしかできない。

このことから、ヒトインフルエンザには機能するPB1-F2タンパク質が存在しないことになる。

 

 

 

1-4

変異のある10カ所すべてコドンの2塩基目である。

そのため、すべてアミノ酸置換が起こっている。

 

変異のある塩基 114132141144171228252258288342

トリのアミノ酸  S    I    K    G    G    D    W    P    G    W

ヒトのアミノ酸  *    T    R    E    V    G    *    L    E    *

ただし * は終止コドンをさす。

 

 

 

1-5

114番塩基を含むコドンは

taa

である。この2塩基目が114番塩基である。

この2塩基目がa以外に置換すると

ttatca tga

の三種類で、それぞれ、

ロイシン、セリン、終止コドンである。

すなわち、114番塩基がgに変異した場合は同じ終止コドンのママで変化がないが、

tまたはcに変異した場合、アミノ酸を指定することから、ここで翻訳が途切れることはない。

その次の終止コドンに変異している場所は58アミノ酸目であることから、57アミノ酸のタンパク質が合成されることになる。

トリのPB1-F290アミノ酸のタンパク質であることから、ヒトで作られるタンパク質はその2/3の大きさである。

 

トリPB1-F2が発症者の重篤化に関与しているのであれば、もしこの2/3の大きさのタンパク質で、途中にアミノ酸置換があっても、トリのPB1-F2と同じような機能を持つのなら、114番塩基がtまたはcに変異するだけで重篤化するウイルスに変異することになる。もし、この57アミノ酸のタンパク質にトリのPB1-F2様の機能がないのであれば、この変異だけでは重篤化するウイルスに変異しないことになる。

 

 

 

1-6

PB1-F1はトリとヒトで大きなアミノ酸変異がないことから、トリとヒトで同じ機能を持つPB1-F1が作られると考えられる。

 

一方、PB1-F2はトリとヒトで大きな変異があり、特にヒトでは12コドン目が終止コドンに変異することから、機能するPB1-F2ができないと考えられる。

PB1-F1RNAポリメラーゼのサブユニットの一つで、インフルエンザウイルスの増殖にとって必須の酵素の一部である。そのため、この酵素の機能が失われる形の変異があった場合、淘汰されるが、機能を失わない程度の変異であれば保存されると考えられる。

 

一方、ヒトインフルエンザウイルスでは、PB1-F2の機能を持たないと予測されることから、インフルエンザウイルスにとって、PB1-F2は必須のタンパク質ではないと考えられる。

そのため、このフレームのタンパク質に変異がある場合でも淘汰されず変異が保存されたのであろう。

 

 

 

2

2-1

ヒアルロン酸合成酵素にイントロンが含まれるとすると、元のゲノムDNAにはイントロンが含まれる。

この遺伝子からmRNAに転写される。この配列は基本的にはゲノムDNAのセンス鎖と同じ配列であるが、イントロンを含まない。また、DNATmRNAではUに置き換わっている。

このmRNAを鋳型にして逆転写により合成されたDNAは、元のゲノムDNAのアンチセンス鎖の配列と基本的には同じである。ただし、イントロンを含まない。

また、この逆転写DNAを鋳型にしてDNAを合成すると、二本鎖のDNAができあがる。

この二本鎖DNAもゲノムDNAと同じ塩基配列(ただしイントロンを含まない)を持つ。

 

 

 

2-2

PCRに使う二つのプライマーの性質で説明できる。

ヒトゲノムの塩基数は30億個である。プライマーがある特定の領域のみにアニーリングするように設計するには、偶然一致することがない確率の長さにするとよい。

プライマーの長さが16塩基長であれば、その種類は30億以上になることから、16塩基長以上の既知配列からプライマーを設計すると、確率上アニーリングする所は目的の場所だけということになる。

RT-PCR方の鋳型はゲノムDNAではなくmRNAのため、その特異性は更に増す。

また、発現量、すなわちmRNAの量は、PCR反応の最初の鋳型の量と比例し、PCR反応により、反応断片は倍々に増えて行くことから、反応途中の増幅断片の濃度を調べることにより、元のDNA量、すなわちmRNA量を定量することができる。

 

 

 

2-3

ヒアルロン酸は2糖の単純な繰返し配列を持つ直鎖多糖類であることから、糖と糖を結ぶ結合を分解する酵素の働きにより、分解され、ヒアルロン酸としての特性を失う。

分子量が100万であろうと、2000であろうと、最終的には単糖にまで分解される。

更に単糖は吸収され、肝臓でグルコースに代謝され、他の代謝反応に使われたり排泄されたりする。

 

 

 

2-4

基本的には摂取した多糖類は、胃や腸の分解過程で単糖にまで分解され、腸管から吸収される。

低分子量とはいえ分子量200010個の糖からなる分子は、そのままでは吸収されることはないため、この分子が消化管を離れて膝にまで到達することはありえない。

 

 

 

2-5

2-4で述べたように、低分子量ヒアルロン酸が膝の細胞にまで到達することはない。

万一到達したとしても、この分子が細胞の中に入ることができず、細胞膜にレセプターがあるとの報告もないため、細胞核にあるDNAに直接働きかけることはできないと思われる。

低分子量ヒアルロン酸がヒアルロン酸合成酵素に働きかけるためには、これらの不可能な一連の現象が起こる必要がある。

 

 

 

2-6

ヒアルロン酸合成酵素によりヒアルロン酸の鎖は2糖単位で伸長する。

これは細胞膜付近にあるが、もしこの伸長途中の分子がさらにヒアルロン酸合成酵素に働きかけるのだとすると、この酵素が働くたびに酵素自身の合成も高まり、雪だるま式に酵素やヒアルロン酸自身が増えることになるであろう。

 

 

 

2-7

実際には不可能であるが、もし、食べて低分子量ヒアルロン酸がそのままの状態で膝に到達できるのであれば、その他の組織にも行く可能性がある。

そうであれば、低分子量ヒアルロン酸が移動した先の細胞でヒアルロン酸合成酵素の発現が増強され、ヒアルロン酸合成が活発化することになる。

その結果、全身でヒアルロン酸が活発に合成されることになり、全身結合組織だらけになることが予想される。

 

 

 

 


平成21年度 前期中間試験問題 (第1講−第6講)

平成210529日(金) 9:3510:25 予定

 

0. 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「染色体」、「タンパク質」を理解しているか

1. 細胞から細胞へ、親から子への遺伝方法の流れを理解しているか

2. DNAからタンパク質への遺伝情報の流れ=転写・翻訳=を理解しているか

3. DNAの遺伝情報をもとに作られるタンパク質の構造と機能を理解しているか

 

科学用語(DNA、遺伝子、ゲノム、遺伝情報、タンパク質など)を正確に使って解説できるかどうかを問う問題です。

込み入った難しい議論をするのが目的ではないため、基本的で常識的な判断力で答えられます。

すべて記述式です。簡潔に解説するように。

極端な誤答は減点することもあります。

 

 

 

予定問題(3問・それぞれに小問を34問)

1. 親から子、細胞から細胞への遺伝情報の流れ(30点)

 --- 日野原重明著「哲学的生命論は科学的生命論と合致する」より出題

   (「大法輪」20094月号p128に掲載)

   (授業で配付した資料から抜粋)

 --- ヒトの場合

 --- 基本用語「DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「染色体」の解説

 --- 体細胞分裂と減数分裂の違い

 ---DNA」、「遺伝子」、「ゲノム」、「染色体」がどのように伝わるか

 --- ヒト細胞に含まれる染色体の種類と数

 --- 細胞周期

 

 

1 親から子への遺伝情報の流れにかんする問題

30点)

次の文章は日野原重明氏(医学博士・聖路加国際病院理事長)の「哲学的生命論は

科学的生命論と合致する」(「大法輪」20094月号p128に掲載)からの引用である

(授業で配付した資料から抜粋)。

 

『私は医学を修めた科学者としてこう考えます。

 私たちは父と母からそれぞれ11千個の遺伝子を受け継ぎ、人間としてこの地上に

生まれる。(中略)その子どもたちも成長して大人となると孫が産まれ、孫は祖父母からの

遺伝子を受けて生活がはじまる』

 

次の問に対して簡潔に解説せよ。(30点)

 #ヒトの場合に限定して解説。

 #解答用紙に小問の番号を書くこと。小問の解答順序は問わない。

1-1

1-2

1-3

1-4

 日野原氏の文章を「ゲノム」を使い、「正しい遺伝子数」で解説し直せ

 

 

2. DNAからタンパク質への遺伝情報の流れ(40点)

 --- 山本善晴著「2遺伝と神話」(創元社・20090320日発売・p316)より出題

   (授業で配付した資料から抜粋。解答しやすいように改行を挿入し、

    行頭に番号を付した)

 --- 生物一般

 --- 転写の仕組み

 --- 翻訳の仕組み

 

 

2 細胞内での遺伝情報の流れにかんする問題

40点)

次の文章は、伊藤良子、角野善宏、大山泰宏編「京大心理臨床シリーズ 身体の病と心理臨床

 遺伝子の次元から考える」(創元社・20090320日発売)の第4章、山本善晴著「2遺伝

と神話」(p316)からの引用である(授業で配付した資料から抜粋。解答しやすいように改行

を挿入し、行頭に番号を付した)。

 

次の問に対して簡潔に解説せよ。(40点)

 #解答用紙に小問の番号を書くこと。小問の解答順序は問わない。

2-1

 @の文章について、間違いを指摘し、正しく直せ。

2-2

2-3

2-4

 Dの文章について、間違いを指摘し、「転写」と「翻訳」を簡潔に解説せよ。

 

 

3. 翻訳後修飾と食品中のタンパク質(30点)

 --- 「美肌への近道はコラーゲンだけじゃない」より出題

   http://news.livedoor.com/article/detail/4085719/

 --- ヒトの場合

 --- 転写・翻訳によって合成されるタンパク質

 --- 翻訳後修飾におけるタンパク質の構造と機能

 --- 食品に含まれるタンパク質

 --- 上記、それぞれのタンパク質の構造と機能の関係

 --- タンパク質合成に使われるアミノ酸における食品の役割

 

 

3 健康食品にかんする次の文章をよく読み、問いに答えよ。

30点)

次の文章は「美肌への近道はコラーゲンだけじゃない」からの引用である(解答しやすいように改行を挿入し、行頭に番号を付した)。

http://news.livedoor.com/article/detail/4085719/

参考:

動物のコラーゲンはそれぞれの細胞でそれぞれのゲノムの遺伝情報から合成される。

ヒトの場合、コラーゲン遺伝子は多数あり、それぞれ構造の異なるコラーゲンタンパク質が合成される。更に、独自の翻訳後修飾を受け、三本らせん構造をとって機能する。コラーゲン合成に使われるアミノ酸のうち、3割強はグリシン、約2割はプロリンである。

 

次の問に対して簡潔に解説せよ。(30点)

 #解答用紙に小問の番号を書くこと。小問の解答順序は問わない。

3-1

3-2

3-3

1. 2. の解説を踏まえて、コラーゲン摂取の意味を分子生物学的観点(タンパク質の構造と機能など)から、このベジフルビューティーアドバイザーにアドバイスしてあげてください。

 

 

 

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実際の試験問題

平成21529日(金) 9:3510:25

 

平成21年度 前期中間試験問題 (第1講−第6講)

 

問題用紙3枚(本紙を含む)と解答用紙3枚を配布する。問題は3問ある。3問とも解答せよ。

極端な誤答は減点する。解答スペースが不足したときは、同じ解答用紙の裏面を使ってもよい。

 

1 親から子への遺伝情報の流れにかんする問題

30点)

 

次の文章は日野原重明氏(医学博士・聖路加国際病院理事長)の「哲学的生命論は科学的生命論と合致する」(「大法輪」20094月号p128に掲載)からの引用である(授業で配付した資料から抜粋)。

 

『私は医学を修めた科学者としてこう考えます。

 私たちは父と母からそれぞれ11千個の遺伝子を受け継ぎ、人間としてこの地上に生まれる。(中略)その子どもたちも成長して大人となると孫が産まれ、孫は祖父母からの遺伝子を受けて生活がはじまる』

 

 

 

次の問に対して簡潔に解説せよ。

 #ヒトの場合に限定して解説。

 #解答用紙に小問の番号を書くこと。小問の解答順序は問わない。

 

1.       DNA合成期より後で、細胞分裂期までの細胞に含まれる染色体の種類と数

 

2.       1本の染色体に含まれるDNADNAに含まれる遺伝子とゲノムの関係

 

3.       ヒトゲノムの遺伝子数を22千とすると、体細胞分裂と減数分裂のそれぞれについて、遺伝子の数はどのように受け継がれるか

 

4.       日野原氏の文章を「ゲノム」を使い、「正しい遺伝子数」で解説し直せ

 

 

2 細胞内での遺伝情報の流れにかんする問題

40点)

 

次の文章は、伊藤良子、角野善宏、大山泰宏編「京大心理臨床シリーズ 身体の病と心理臨床 遺伝子の次元から考える」(創元社・20090320日発売)の第4章、山本善晴著「2遺伝と神話」(p316)からの引用である(授業で配付した資料から抜粋。解答しやすいように改行を挿入し、行頭に番号を付した)。

 

 

@    DNAでは三つごとの塩基配列の順序に対応して、合成されるアミノ酸の種類が決まっており、このアミノ酸が繋がって、さまざまな種類のタンパク質が作られる。

 

A    DNAの三つの塩基配列とアミノ酸合成との間にはRNA(正確にはメッセンジャーRNAと呼ばれる)が関わるが、DNAの三つの塩基配列ごとに転写してつくられるRNAの三つの塩基配列はコドンと呼ばれる。

 

B    コドンの配列と作られるアミノ酸の種類の対応は、生物の種によって異なるわけではなく、ほぼすべての生物で共通している。

 

C    つまり、DNAは種を超えて生物全体が共有するある種の符号として機能している。

このことからDNARNAをめぐる化学反応は言葉にたとえられてきた。

 

D    それは、メッセンジャーRNAをもとにアミノ酸が作られ、さらにタンパク質が合成される過程を「翻訳」と呼ぶ、生物学の名づけにも現れている。

 

 

 

次の問に対して簡潔に解説せよ。

 #解答用紙に小問の番号を書くこと。小問の解答順序は問わない。

 

1.     @の文章について、間違いを指摘し、正しく直せ。

 

2.     Aの文章について、間違いを指摘し、正しく直せ。

 

3.     Bの文章について、間違いを指摘し、正しく直せ。

 

4.     Dの文章について、間違いを指摘し、「転写」と「翻訳」を簡潔に解説せよ。

 

 

3 健康食品にかんする次の文章をよく読み、問いに答えよ。

30点)

 

次の文章は「美肌への近道はコラーゲンだけじゃない」からの引用である(解答しやすいように改行を挿入し、行頭に番号を付した)。http://news.livedoor.com/article/detail/4085719/

 

@   「コラーゲンを摂った次の日はお肌が全然違う」とよく言うが、その効果についてベジフルビューティーアドバイザーの霜村春菜先生にお話を伺った。

ベジフルビューティーアドバイザーとは、日本ベジタブル&フルーツマイスター協会が認定する資格。野菜や果物が内面から美をサポートする働きを理解し、それらが持つ栄養を活かした調理方法をアドバイスできる美と食のプロフェッショナルである。

 

A   「ハリのある肌にコラーゲンは欠かせないものです。

しかし、忘れてはいけないのは食べたものは消化、吸収、再合成、代謝、排泄という経路をたどるということです。

 

B   コラーゲンは体内に入ると分解、吸収されてお肌の再生材料の一部になりますが、その過程ではビタミンCや亜鉛が必要になるんです」 と、霜村先生。やはりコラーゲンを摂取するだけで美肌になるとは言えないようだ。

 

C   「鳥手羽とダイコンの煮物のようにコラーゲン再生のために必要な栄養素を一つのメニューでとれるものもあります。

一つのメニューでとろうと思うとなかなか大変です。コラーゲンの多いものを食べたら、野菜や果物も一緒に食べることを心がければ実践しやすいのではないでしょうか?

 

参考:

動物のコラーゲンはそれぞれの細胞でそれぞれのゲノムの遺伝情報から合成される。

ヒトの場合、コラーゲン遺伝子は多数あり、それぞれ構造の異なるコラーゲンタンパク質が合成される。更に、独自の翻訳後修飾を受け、三本らせん構造をとって機能する。コラーゲン合成に使われるアミノ酸のうち、3割強はグリシン、約2割はプロリンである。

 

 

次の問に対して簡潔に解説せよ。

 #解答用紙に小問の番号を書くこと。小問の解答順序は問わない。

 

1.       Bの文章に関連して、

1) 細胞内で合成されるタンパク質

2) 食品から摂取するタンパク質

に分けて、それぞれの違いと役割を解説せよ。

 

2.       Cの文章に関連して、

一般に、コラーゲンを食べることは、栄養学的に見てメリットがあるだろうか?

コラーゲンのアミノ酸組成から考察せよ。

 

3.       1. 2. の解説を踏まえて、コラーゲン摂取の意味を分子生物学的観点(タンパク質の構造と機能など)から、このベジフルビューティーアドバイザーにアドバイスしてあげてください。

 

 

解答例と解説

 

平成21年度 前期中間試験

平成21529日(金) 9:2510:25実施(10分追加)

 

解答例の要約

1-1

女性の体細胞の核には第1〜第22染色体とX染色体がそれぞれ2本ずつ、2346本含まれる。

DNA合成期によりDNAが複製され、染色体も複製される。

細胞分裂初期には複製された姉妹染色分体があり、4692本含まれる。

男性の場合、性染色体はX染色体とY染色体である。

 

 

1-2

1本の染色体には1分子のDNAが含まれる。

DNAに転写される領域として遺伝子領域がある。

遺伝子の塩基配列にはタンパク質のアミノ酸配列が書いてある。

染色体に含まれるDNA分子の塩基配列全体がゲノムである。

ゲノム(物質的本体はDNA)の中の一部に遺伝子が含まれている。

 

 

1-3

体細胞核に含まれる遺伝子は22ある。

体細胞分裂時にDNAが複製されるため、22千対の遺伝子がすべて複製される。

細胞分裂が終わり娘細胞になると、娘細胞内には分裂前と同じ22の遺伝子が含まれる。

減数分裂では、体細胞分裂時と同様DNAは複製され、その後第一分裂、第二分裂により半減し、最終的に22千個の遺伝子になる。

すなわち、22千ある対になっている遺伝子がそれぞれ離ればなれになって22千個の遺伝子になる。

 

減数分裂と受精を混同する解答が目立った。

 

 

1-4

私たちは父と母からそれぞれのゲノムを受け継ぎ「私のゲノム」となり、人間としてこの地上に生まれる。

父のゲノムには22千の遺伝子があり、母のゲノムにも22千の遺伝子がある。

それぞれの遺伝子が対をなして、すなわち、22の遺伝子を含む「私のゲノム」となる。

 

 

 

2-1

DNA

 <遺伝子>

 DNAには遺伝子領域と遺伝子間領域がある。転写が行われるのは遺伝子領域である。

 

「合成されるアミノ酸」

 <対応するアミノ酸>

 転写・翻訳時にアミノ酸が合成されるわけではない。

 翻訳に使われるアミノ酸はtRNAに結合し、細胞質に存在している。

 リボソーム上にあるmRNAのコドンに対応するtRNAのアンチコドンがアニーリングすることで、特異的な翻訳が進行する。

 このtRNA上のアミノ酸が順次ペプチド結合することでタンパク質が合成される。

 

 

2-2

DNAの三つの」

 <遺伝子>

 

「アミノ酸合成」

 <タンパク質合成>

 問2-1と同様アミノ酸が合成されるわけではない。

 

「メッセンジャーRNA

 <メッセンジャーRNAとトランスファーRNA

 アミノ酸を運ぶのはtRNAである。コドンはmRNAにある。

 

DNAの三つの塩基配列ごとに転写してつくられるRNAの三つの塩基配列はコドンと」

 <DNAの遺伝子領域を鋳型として合成されるRNAmRNAと呼ばれる>

 転写はDNA上の転写開始領域付近でコントロールされており、その調節にしたがってDNAを鋳型としてRNAが合成される。

 転写、すなわちRNA合成過程はコドンと関係なしに進行する。コドンが関与するのは翻訳過程である。

 

 

2-3

「コドンの配列」

 <コドン>

 通常「コドンの配列」という表現は使わない。コドンには配列の意味が含まれている。

 

「作られるアミノ酸の種類の対応は」

 <対応するアミノ酸の種類は>

 問2-1と同様アミノ酸が合成されるわけではない。

 

「生物の種によって異なるわけではなく、ほぼすべての生物」

 <ほぼすべての生物>

コドン表の例外はいくつかあり(授業で紹介した)、一部の原生生物の核や核様体のゲノムの一部のコドン、多くの生物種のミトコンドリアの一部のコドンで例外が見つかっている。

その点でBの後段の説明に誤りはないが、前段と後段のつながりに矛盾がある。

 

コドン表が生物ごとに異なるという解答があったが、一部の例外を除き基本的には全生物でコドン表は共通である。

 

 

2-4

「アミノ酸が作られ、さらに」

 <カット>

 問2-1と同様アミノ酸が合成されるわけではない。

 

「タンパク質が合成される」

 <mRNAのコドンに対応したアミノ酸が順次結合することでタンパク質が合成される>

著者は「転写」と「翻訳」を一気に説明しようとしたため、このような間違いを含む文章になったと思われる。

「転写」と「翻訳」はそれぞれ核内と細胞質のリボソーム上でおこることからもわかるように、全く別の過程である。

最終的に言語と生物学の「翻訳」のアナロジーを説明しようとしたのであろうが、いきなり「翻訳」の話をし始めるのではなく、「転写」と「翻訳」を分けで説明するとことで、誤解のない文章になったと思われる。

 

ということで、「転写」と「翻訳」を個別に簡潔に解説するとよい。

 

 

 

3-1

細胞内では遺伝子の情報(塩基配列)を元に転写・翻訳機構によって新たにタンパク質が合成される。

このタンパク質はあるユニークな構造をとり、その構造依存的な機能を発揮する。

合成されたタンパク質は、その内在するアミノ酸配列により、細胞外や細胞内小器官に輸送されたり、細胞質内にとどまったりする。

どの遺伝子をいつ、どのくらい発現(転写や翻訳)させるかを調節することで、合成されるタンパク質が決まっている。

 

一方、食品として食べたタンパク質は、胃や腸などでプロテアーゼによる分解により最終的にアミノ酸にまで分解され、吸収される。一部のアミノ酸は新しいタンパク質合成に使われる。

食べたタンパク質が消化管以外の組織に行くことはなく、食べたタンパク質の構造を保ったまま本来の機能を発揮することはほとんどあり得ない。

 

まとめると、生物の代謝や構造維持等に必要なたんぱく質は、すべて細胞内で遺伝子の塩基配列の情報にしたがって合成される。食べたタンパク質の一部は細胞内でのタンパク質合成の材料に使われるが、消化管以外の場所に配置され機能することはない。

 

 

3-2

コラーゲンのアミノ酸のうち、約半数がグリシンとプロリンである。グリシンとプロリンはともに非必須アミノ酸であり、どちらも細胞内で合成される。

タンパク質の栄養学的な価値の一つに必須アミノ酸の摂取がある。必須アミノ酸は細胞内で合成できない。

同量のタンパク質を摂取したとしてもコラーゲンは必須アミノ酸の割合が低いため、コラーゲンは栄養学的な価値が低い。

 

「コラーゲンは必須アミノ酸ではない」という解答があった。

福岡伸一著「動的平衡」(p86)に

「コラーゲンを食べても美肌に影響は」無いという説明に、

「非・必須アミノ酸は体内で製造できるものである。コラーゲンは非・必須アミノ酸なので、ヒトは体内で製造できる」

と書いているが、これは明らかに間違いである。

 

コラーゲン摂取を全く無意味と断言する解答があるが、そこまで言い切れない。

 

 

3-3

Aの文章は正しいです。食べたコラーゲンが消化、吸収、再合成されるという認識はお持ちのようです。

またコラーゲンの翻訳後修飾にビタミンCが必要なのも確かです。

にもかかわらず、どうしてBやCの考え方になったのでしょうか。

 

ヒトを構成するタンパク質はおそらく十万種類あります。

必要なタンパク質は、細胞内にある遺伝子の情報にしたがって細胞自身が合成しています。

その結果できたのが先の十万のタンパク質です。

そのタンパク質合成に食べたタンパク質から消化によってできた必須アミノ酸の一部が使われます。

そのことから、タンパク質を摂取することは重要です。

 

ヒトを構成するコラーゲンの量は多いですけど種類もたくさんあります。

たくさんあると言っても、ヒトを構成するタンパク質全体から見たら、コラーゲンの種類は極一部に過ぎません。

コラーゲン以外の十万種類のタンパク質もコラーゲンと同様、細胞の中でアミノ酸を一つ一つくっつけることで合成されます。

必要なときに必要な種類を必要な量だけつくり、いらなくなったら細胞内ですみやかに分解されるという巧妙な調節を受けています。

 

食べたコラーゲンのアミノ酸にはかつてコラーゲンであったという印がついているわけではありません。

コラーゲンをたくさん食べても、そのコラーゲンから消化によってできたアミノ酸が優先的に細胞内でのコラーゲンに使われるわけではありません。

おっしゃるように、食べるコラーゲンがコラーゲン再生に必要な栄養素なのであれば、優先的に使われる必要があります。

しかし、タンパク質を合成しようとしている細胞は、コラーゲン由来だろうと、圧倒的多数の他のタンパク質由来だろうと、細胞内で代謝で合成したのもであろうと、アミノ酸を区別することはできません。

 

注目している物質が重要で大きく見せたくなる気持ちはわかりますが、ここは冷静に考えましょう。

 

 

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