保険代理店の情報化―今やらなければ明日はないー

10 小規模代理店の経営 新GNP経営(4)

―絞りこみ戦略―

個人あるいは配偶者との二人三脚といった小規模代理店(個業)のグランドデザイン(G:基本戦略)を考えてみたい。筆者グループでは代理店の数は,いずれ3分の1程度になると考えており,個業には,これから厳しい選別の圧力がかかることになる。

これらの圧力を跳ね返し,生き残るためのキーワードは絞り込みである。そのためには,自分の弱みをどうカバーするか考えるよりは,先ず,自分の強みを認識し,それを徹底的に活かす方法を考えることが先決である。

自分の強みを良く考えて確認し,その強みを活かす事の出来る顧客はどのようなタイプかを考える。即ち,個人か法人か,単独か団体か,既存顧客の深堀か新規顧客の開拓か,商圏をどう設定するか等を検討して顧客の絞り込みを行う。

それと並行して,自分の強みを生かして,どのような商品やサービスを,絞り込んだ顧客に提供するかを決めて行く。この上で自分の契約保険会社が,将来に向かって,これらに適切に対応できるか判断する。

保険会社を出発点にするのではなく,あくまで顧客が出発点である。その結果,困難であっても契約保険会社を変えることも必要となるかもしれない。また,場合によっては,廃業という選択も出てくる。その場合,早めの戦略的廃業が望ましい。

―専属の弱みを補完する―

個業としては複数の保険会社と契約する,いわいる乗合は,一般的には今後難しくなる。規模による手数料率の優遇と一定規模に満たない代理店の選別が今後進むこと,代理店オンラインなどの情報化コストがかさむことなどが理由である。

専属化を進め,契約保険会社と戦略を共有して,良好な関係を確立することが当面重要となる。特に,今後保険会社の手数料体系が,その会社の戦略と連動することになり,戦略の共有が代理店サイドの収入に直結するようになる。

ここでの専属化は,当然契約保険会社の子会社や提携生損保会社を含んだものであるが,やはり,デメリットとして顧客に提供出来る商品が制約される。特に,特徴ある新商品が今後次々に生まれる状況で,顧客のニーズに充分対応出来ない点は痛い。

その弱みをネットワーキングで解決してはどうであろうか?保険代理店同士で提携して,他社契約を交換するといったことをネットワークによって行う。インターネット上にメーリングリスト(電子メールによる会議)を開設すれば,インフラ整備はできる。

メーリングリストによるオンラインの情報交換を基礎に,節目にはフェースツーフェーズのコミュニケーションを重ねることで,後に述べる,個業代理店の提携,米国のクラスターのような組織への展開も期待出来る。

―オンラインの徹底活用―

これから代理店支援オンラインシステムにより,内務事務の生産性が劇的に改善される。だだし,現状のオンラインシステムは,まだまだ扱いにくく,難しいのも事実である。大企業のシステム部門が開発すると,どうしても網羅的で奥が深いシステムになる。

しかしながら,難しいと不満をいう前に,使いこなして行くことが得策である。今後,情報化への対応能力により,代理店に対する選別が進む。反面,的確に対応した代理店に対しては,経過的には,かなりのインセンティブが提供される可能性が強い。

内務事務の合理化と合わせて,営業を効果的に支援するツールが,代理店支援システムに組み込まれ初めている。顧客を識別し,その顧客に対してより深いサービスを、パソコンとネットワークを駆使して行うことためのものである。

具体的には,生損保クロス販売や法人総合リスク管理等のコンサルティングシステム,世帯総合管理にむけた顧客データベース整備とそれによる販売促進,営業スケジュール管理,事故処理状況報告,各種プレゼンテーションツール等がある。

この営業支援システムがうまく機能するには,顧客データベースの整備が不可欠である。保険会社が行うキャンペーンなど,様々な顧客との接触機会を利用して,顧客データを収集する。この収集の質と量が,結局,これからの代理店の究極的強みとなる。