11 小規模代理店 −−情報化の実践(4)

 今回は小規模代理店(従業員1〜2人)について、2001年までの段階的システム導入案を検討してみよう。私達の考える小規模代理店の生き残りの基本的な戦略、「事業領域を得意分野に絞り込み、他の代理店との協業で商品の不足領域を補い、情報化によるプロセスイノベーションを起こす」ことも念頭に置いて考えたい。

 初めに、2001年までに予想される、保険代理店を取り巻く事業環境と技術環境の変遷を改めて要約し、代理店システムに共通なシステムニーズ(システムで解決すべき経営課題)を整理すると、以下の表のようになる。これをふまえ、2001年を最終目標とする、小規模代理店のシステム導入計画の全体像を例示したい。

 (1)99年の情報システム 
当面の経営課題である@商品の複雑化への対応、A手数料収入増 B同業の代理店との電子コミュニケーション環境構築から、99年のシステムは@事務処理の正確化、効率化 Aクロスセリング(損保契約者への生保商品成約)の支援 B同業代理店等とのインターネットによるコミュニケーション環境作りを目的とすべきであろう。
システムの構成は、パソコンを単独でOA用(ワープロ、表計算)・営業のプレゼンテーション用に用いる他、保険会社にオンライン接続して代理店支援システム端末とし、インターネットにも接続する。当面は表計算ソフト等の簡便な方法で顧客情報を一元管理し、それに基づいて提案型営業を進めることになる。

 (2)2000年の情報システム 
2001年までの中間地点であり、保険会社の代理店支援システムの拡充により、代理店からの契約の直接入力も始まり、事務の省力化と迅速化は実現していると考える。この時点で代理店は、継続業務の省力化と生保契約獲得にも成功し、手数料収入増を達成しているべきであろう。同業他社との連携も情報交換・情報共有からさらに進んで、協業を試行する段階であろう。
小規模代理店同士で、米国流のクラスター組織や事業共同組合を設立し、共同事務センターや共有の顧客データベースを構築することなどが考えられる。しかし、2000年における他社との協業は、まず電子コミュニケーション環境で同業他社と接続し、今後計画的に信頼関係を築いて初めて可能になると思われる。
そこで当面、同業他社との情報交換の量・質・スピードを、電子メールとWebを駆使して同時に上げることが効果的である。以上の予測に従うと、2000年のシステムは@事務の効率化 Aデータに基づく営業の支援 B同業の他社との連携試行 が目的となる。システム構成は、代理店が共同で保有する、顧客データベースのサーバーが中心となる。これに各代理店のパソコンをインターネットで接続し、契約の交換も行う。また、2001年の電子商取引の重要性から推測すると、2000年時点ではインターネットによる販促も、試行から実用の段階に達しているべきであろう。

(3)2001年の情報システム 
代理店システムは代理店同士の協業の手段になっているべきであろう。具体的には、共有するサーバーに設けた、Webを利用するインターフェースシステム(代理店の間をつなぐシステム)が、各保険会社の代理店支援システム(この時点ではWebに統合されていると推定される)とのつなぎの役も果しているべきであろう。
システムの目的としては、@代理店同士の協業の基盤 Aデータに基づく営業の支援 Bインターネット商取引への対応 が考えられる。1台のパソコンから、提携する代理店で共有するサーバーを経由して、Webで構築されている各保険会社の、複数の代理店支援システムが使えることが目標である。これは、現在の保険会社の専用システムによる「代理店の囲い込み」には逆行するが、わが国の外資系損保の例を見ても、専用システムを必ずしもパソコン側に必要としない、インターネット上のホームページによる代理店支援システムが、保険会社毎に個別で互換性のない代理店支援システムにとって代わる可能性が高い。

              中小企業診断士 瀧中 英一

  

保険代理店の事業環境と技術環境の予測(1999年〜2001年)

1999年末

2000年末

2001年末

事業環境

・保険料自由化で競争激化

・手数料体系の見直し

・完全自由化で生き残りをかけた

・売上減で効率化と売上増必須

・効率の高い代理店の選別

 様々な協業の活発化

・商品複雑化

・代理店からの契約入力

  

技術環境

・保険会社の代理店支援システム普及

・企業間取引へのインターネット

・インターネット人口の増加により

・代理店支援システムの問題点表面化

 利用技術普及(セキュリティー)

 電子商取引の普及

・保険会社の代理店支援システムの

Webへの統合

   

システムニーズ

・事務の正確化・効率化

・事務の効率化

・自社に適する協業の基盤の実現

・売上増のための営業支援

・データに基づく営業の支援

・データに基づく営業の支援

・同業他社との電子コミュニケーション

・同業他社とのシステムやデータ

・インターネット取引への対応

・将来のシステムの基盤の確立

 ベース共有も含む連携試行