保険代理店の情報化―今やらなければ明日はないー

13 中規模代理店の経営 新GNP経営(5)

―家業から企業へ―

生き残る代理店は,一匹狼の個業タイプと組織で動く企業タイプに2極化し,数人で経営している家業タイプの多くは,いずれかになるよう選択を迫られると述べた。家業から企業に如何に脱皮するかグランドデザイン(G)を描く必要がある。

この家業タイプの代理店は,大部分は特級資格を保有する業界ではトップクラスの代理店である。個性と営業力で上り詰めた経営者でプライドと自負心が高い方々が多い。過去の成功体験を捨てて次の一手が打てるかが明暗を分けそうである。

企業とは具体的にいえば,経営者が突然いなくなっても何事もなかったように継続して存在する,つまり仕組みで動く組織をいう。これから内務事務の合理化と営業力の強化が生き残りの必須条件であり,そのためには組織を仕組みで動かしていく必要がある。

先ず内務要員の営業戦力化が課題となる。現在過渡期の混乱から内務事務が増えているが,これを過ぎると急速に事務が無くなって行く。早めの教育訓練と処遇の改善,また,営業に向かない要員は止めて頂くことも必要になろう。

このような企業化は,独立独歩の代理店経営者にはかなりの意識改革となる。場合によっては,一匹狼の個業へ転換するという選択も出てくる。その場合,早めの戦略的転換が望ましい。固定費を抱えた代理店経営は,手をこまねくと大変厳しいことになる。

―チームで営業する―

企業化に向けて,内部のネットワーキング(N)を強化する,特にチームで営業出来る体制整備が急務となっている。トップクラスの代理店として保険会社より様々な働きかけがあろうが,浮かれることなく内部体制の充実に努めることが肝要である。

このクラスの代理店では乗合が一般的であろう。保険会社の選択にあたっては,自社のグランドデザイン,つまり,どのような顧客に,どのような商品を,どのような仕組みで提供するかに合わせて,いたずらに保険会社を広げずに絞り込んで行く必要がある。

また,保険代理店の転廃業がこれから大きく増えて行くにつれ,顧客基盤を引き受けてくれとの要請も色々あろう。しかしながら,顧客基盤の評価に現状リスクが高く,検討に多くの時間を取られる等問題があり,当面慎重に対処する必要がある。

チームで営業するためには様々な活動を,計画し実行し評価しなければならない。営業戦略をたて,それに合わせ,先に述べた内務要員の転換や新たな採用を行う。トレーニングを行い戦力配備をする。営業プロセスを設計し,それにそって営業を分担する。

また,営業の結果を評価して次回の営業に役立てるためには,その前提としてデータの整備が不可欠となる。自社で顧客データベースを立上げ,情報を共有化することで,初めてチームでの営業が可能となる。

―イントラネット―

チームで営業するためのプロセスイノベーション(P)の基本にLAN(社内の情報ネットワーク)の整備がある。その上に営業を支援するためのソフトウエアとしてSFA(セールス フォース オートメーション)やDB(データ ベース)を乗っける。

代理店オンラインシステムは,現在VANがベースとなっているが,最近インターネットとの併用が始まった。いずれこれらはインターネットへ統合されて行こう。LANはそれにあわせてイントラネットとしてインターネット対応型にしておく必要がある。

営業マンは20%のトップ,60%のそこそこ,20%のだめで構成されるといわれるが,SFAは60%のそこそこをトップセールスマンにする武器と言われている。トップセールスマンはSFAが無くてもやれるが,SFAは全体の底上げを目指す。

この営業支援システムがうまく機能するには,顧客データベースの整備が不可欠である。ただ,乗合代理店としては保険会社ごとにシステムが分断されておりそのままでは使えない。独自に開発せざるを得ないことが悩みの種となる。

顧客データの質と量が,結局,これからの代理店の究極的強みとなる。そこで面倒でも保険会社毎にデータを収集して,それを統合する努力が欠かせない。この点で,保険会社の選択の基準に契約データ等をデジタルの形で入手出来るかも重要な要素となる。