14 中規模代理店 −−情報化の実践(5)
今回は中規模代理店(従業員3〜9人)について、2001年までの段階的システム導入案を検討してみよう。私達の考える中規模代理店の生き残りの基本戦略、「内務事務員を営業要員に育成し、組織で動く企業に脱皮する。チーム営業の仕組みを導入し、イントラネットにより情報共有する。」も念頭に置いて考えたい。
まず、平均的な中規模代理店のシステム機器構成の現状を振返ってみよう。そこには、例えば保険会社のオフィスと比べて著しく異なる特徴がある。それは、相乗り代理店ゆえの複数のオンライン端末と複数のパソコンが、外部とはVANやインターネットで結ばれていても、相互にはLAN接続されていないことである。これは、導入時期も機種もバラバラなパソコンが、それぞれ個別の目的で導入された経緯によると思われる。これらの複数のパソコンは、相互に接続されていないため、専ら内務事務用の帳票作成に使われ、すべての事務はそれらの帳票で行われている。
事務の現場では、データが一度紙に印刷されると、それ以降の加工は一般にその紙の上の手作業で行われるため、データの共有化も再利用も難しく、事務の生産性が低下する。再利用とは、帳票上の顧客データなどをある条件で抽出したり、並べ替えたりすることである。実は紙の上の手作業が事務処理、さらにはホワイトカラー業務の生産性を下げるとの判断から、証憑として保存すべき資料を除いては、紙をオフィスから徹底的になくすのが事務合理化の基本的な考え方であろう。最終アウトプットにもペーパーレス化の動きがある。まして業務の中間の帳票類は、作成後その内容に加工がありうる場合、印刷しないのが生産性向上の決め手であろう。
こうした事情を考え合わせると、現状中規模代理店のシステム機器構成に起因する問題は2つ考えられる。@多くの企業でLAN接続されたパソコンが、ホワイトカラー業務のペーパーレス化と生産性向上に寄与しているのに対し、中規模代理店のLAN接続されていないパソコンは、逆にペーパーワークを増やし、個々の社員を狭い事務範囲に閉じ込める傾向がある。A経営者の高い能力と豊富な実務経験を社員が共有して、組織全体の営業生産性を高めるためにはこれらのパソコンはほとんど寄与していない。
さらに、パソコンの用途が営業事務その他の後方管理事務中心で、直接売上げに寄与する営業支援でないことも、パソコンの利用に関する問題である。
2001年までに予想される、保険代理店を取り巻く事業環境と技術環境の変遷の要約と、中規模代理店のシステムニーズを以下の表にまとめた。これもふまえ、2001年を最終目標とする、中規模模代理店の段階的システム導入計画の要点を例示したい。
(1)99年の情報システム まず、営業チームを立ち上げ、安価なパソコンと簡単なLANを導入し、メール、ファイル共有によるチーム営業を試みるべきであろう。これがSFA導入への第一歩となる。複数の保険会社の自社顧客・契約リスト一元化する必要もある。これにより、ペーパーレス化のメリットをいち早く享受し、新規営業にも結び付けるべきである。
(2)2000年の情報システム 2001年までの中間地点であり、中規模保険代理店では事業領域及び組織の再構築が行われているべきであろう。LANを基盤とした顧客データ一元管理が完成し、それを中心とするSFAの仕組みがチーム営業の成果に結びつき、リストラ後の2001年の要員体制もほぼ固まっているべきであろう。この時点では、単なるファイル共有からさらに進んで、イントラネットによる情報共有を試みるべきであろう。イントラネット導入の利点は、2001年に予想される、Webによる次世代の代理店支援システムと相性が良いこと、社内社外向けに同じハード・ソフトが利用でき投資効率が良いと考えられることである。操作性の向上も期待できる。
(3)2001年の情報システム この時点で中規模代理店が小規模代理店としてあらたな活路を見出しているなら、すでに当連載で論じた、小規模代理店の場合に該当する。しかし、大規模代理店に転換しているなら、自ら保有するWeb中心の代理店システムを、他の代理店に協業の手段として提供することも可能である。
中小企業診断士 瀧中 英一
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