17 大規模代理店 −−情報化の実践(6)

今回は代理店で最も情報化の進んだ大規模代理店(従業員10人以上)を代表として想定し、2001年の代理店システムのイメージをもとに、EDI(Electronic Data Interchange電子データ交換)の側面から今後の情報化の指針を考えよう。キーワードはインターネットEDI、XML/EDIの2つである。

まず、すでに私達の検討した2001年の代理店システム案を振り返ってみたい。その要点は、@規制緩和、競争激化の環境のもとで、わが国の保険代理店は保険会社とともに顧客に至るチャネルの全体で事務の機械化・電子化を進め、コストを下げる必要がある。Aまたこのシステム化で引き合いから成約までも含め、顧客対応全般のスピードアップ、新商品投入の円滑化も期待できる。の2点であった。また、保険という商品の性格、多数の全国に散らばる代理店といったチャネルの特質の2つからみても、損害保険業界はEDIにふさわしく、実現すれば劇的な効果が期待できるにもかかわらず、EDIはほとんど導入されていない。この原因は主に2つ考えられる。@代理店チャネルのほぼ全体が中小企業・個人企業によって成り立っていること。A従来のEDIの仕組みではこうした中小企業にとって、作りやすくて使いやすいシステムを実現する手段がなかったこと。ある調査によると、従来のEDIの事例は従業員500名以上の大企業の企業間取引の、VAN(付加価値通信)によるオンラインシステムが中心である。その後、インターネットの普及により、EC(ElectronicCommerce 電子商取引)の代表であるWebによるインターネット通販が、企業と顧客の間で実現され、これがWeb利用のEDIの代表となっている。しかし本来、企業間のEDIではサーバ(データベース側)のプログラムとクライアント(パソコン側)のプログラムが直接データをやり取りできることが必要である。この組み合わせを順につなぐことで、複数の企業間でデータをオンラインで交換できるからである。しかし、従来の(HTMLによる)Webでの電子データ交換では、内部の仕組みの制約からパソコン側(クライアント)にデータを画面表示はできるが、パソコン側の別のデータ処理プログラムに、直接データとして渡すことが難しく、要するにデータベースと画面をつなぐまでしかできない。データベースと一般のデータ処理プログラムを直接インターネットで結ぶのが、インターネットEDIであるが、これを容易に実現する手段がなかったのである。さらに、画面の定義・画面と電文との対応の柔軟性なども不十分で、従来の(HTMLによる)Webでは企業間取引のEDIには機能も性能も十分ではなかった。

 そこに現れたのが、昨年来一躍脚光を浴び、すでに今後のインターネットEDIの本命と考えられている、XML(eXtensible Markup Language)によるインターネットEDI、XML/EDIである。これが、簡単にEDIをインターネットで実現する切り札になるのは、多くの理由からほとんど確実だと思われている。

 保険インターネットEDIの概念図を以下に示す。これはお客様と代理店は従来型のWeb、代理店と保険会社はXML/EDIで結んだ例である。大規模代理店は、EDIの世界でまさにこのXML/EDI活用の最初の成功事例になれるとも予想される。実は、「2001年の情報システム」で述べた、複数保険会社の代理店支援システムのWebによる代理店支援システムの画面(ホームページ)をつなぐ「インターフェースシステム」も、このXML/EDIを活用することで、技術的には比較的容易に実現できると考えられる。

 もちろんEDIは、相互に取引関係のある企業間での基本的な合意と、取引データの種類や内容についての綿密な取り決めによって初めて可能である。まずEDIの必要性を業界として合意し、電子取引の業界標準を、世界標準及び我が国の標準に合わせて決めることから始まる社会事業であり、実現は容易ではない。しかし、保険インターネットEDIは、技術的には今年中にも実現可能な段階に来ているのである。そこで、情報化でも他の代理店より優位に立っている大規模代理店は、2001年の保険インターネットEDIの実用化をにらんで、今から異業種のEDI事例の情報収集、インターネットEDIの技術調査、教育を進めておくべきであろう。 

              中小企業診断士 瀧中 英一

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