保険代理店の情報化―今やらなければ明日はないー

19 データに基づく経営(7)

今年の初め,「2001年ある日の代理店」と題して始まった本連載も,残すところ3回になった。この半年,保険業界もインターネット導入に向けて本格的に動き始めており,第1回に我々が想定して書いた代理店システムが,2001年には実現しそうである。

いよいよ,保険代理店は,データに基づく経営が不可欠となり,今後データベース(DB)の活用が命綱となる。そこで,経営におけるDBの意味,DBの構築,DBとリンクした顧客接点の構築についてこれから3回に分けて述べてみたい。

先ず,今回は「2001年ある日の代理店」で取り上げた仮想代理店(以下X代理店)をケースにして,データに基づく経営を考えてみたい。出来れば,本コラムの第1回を読み返して頂きたい。(バックナンバーは文末にあるホームページに掲載してある)

―Grand Design―

これからの代理店は,「総合保険センター」といったあれもこれもといった形では生き残れない。経営のGrand Design(経営の方針)として,どのような顧客に,どのような商品やサービスを,どのような方法で提供するか,的を絞って決めていく必要がある。

X代理店は,事業コンセプトに「ファミリーリスクマネージャー」を掲げ,優良個人顧客に的を絞り,保険診断による家計リスク管理を行うことで,生保をクロス販売し,家族ベースで保険の自社シェアを高めるとの経営方針をとっている。

これを進めるには,最低限,家族単位で契約が名寄せ出来ること,優良顧客識別のために購買履歴が分かっていること,また,生保を売るためには各人の年齢,所得,他社契約の状況が判明している必要がある。この実現にはDBによる顧客管理が欠かせない。

多くの保険代理店は,ただひたすらに,新規顧客を開拓し,契約件数を増やすことに注力してきた。そのため,契約者個々の状況を掴んでおらず,極端なケースでは顧客の年齢すら分からないという場合もある。DB整備に向かっての取組みが緊急課題となる。

―Networking―

ただし,DBの構築し,それを維持して行くには,特に乗合代理店では,複数の保険会社のデータ統合が必要なため,専門家の助けが不可欠である。一匹狼タイプの乗合代理店にとっては荷が重い。そこで,これらをNetworking(協同化)で解決していく。

X代理店は5社乗合であるが,参加している組合が構築したシステムにDB等事務処理をアウトソーシングして,自らは営業に専念できる体制をとっている。組合がDBの管理を含め,様々な事務管理を代行しているという想定である。

代理店の協同化には,このような事務の協同化から一歩進んで,今後,X代理店が模索したように,仕入の協同化,つまり,保険会社との契約を一本化する,いわゆるクラスターへの動きが活発化しよう。この場合より突っ込んだシステム化が必要となる。

協同化は単にコストセーブが狙いではない。参加代理店データの共有化でデータボリュームが拡大し,マーケティング,セールス,サービスの各段階で,例えばデータマイニング手法の活用等,より高度なDB活用が図れる点,大きなメリットが生まれる。

―Process Innovation―

最近, 顧客中心主義のマーケティングとしてCRM(Customer Relationship Management)が注目されている。CRMは,X代理店のように,優良顧客を識別し,その顧客との関係を管理して,顧客シェア拡大を図る活動をいう。

CRMが注目されている背景には,様々な顧客接点に対応したシステムのProcess Innovation(情報技術革新)と低価格化がある。営業員支援のSFA,電話でのCTI,郵送によるDM,最近ではインターネットなどが,DBと連動してCRMを支える。

X代理店では,組合が開発した資産管理用のパーソナルWEBサービスを活用していた。これからの代理店は,このような技術を活用し,顧客の購買代理人として,顧客の持つ様々なニーズを引き出す能力が必要となる。

保険代理店は,CRMをささえるこれら技術をうまく組み合わせて,有効に活用して行くことが,生き残りにとって重要である。SFA,電話,DM,インターネットついて,それぞれの代理店にとってのベストミックスを,早く見つけ出せれば強い。