2 2001年の情報システム 情報化の実践(1)

99年1月現在、保険代理店のオーナー経営者が、パソコンを使いこなしている例はまだ少ないが、2001年には多くの代理店経営者が、日常的にパソコンを使いこなしていると思われる。これを保険会社も含む大企業の95年以降の動向からまず考えてみたい。主にホワイトカラーの生産性向上を目的として、多くの大企業では、95年頃から3、4年で、パソコンとネットワークによる電子コミュニケーション環境が導入され、オフィス環境が一変した。現在では経営層から担当者まで、コミュニケーションと意思決定には、まずパソコンで相手にメールするのが普通である。電話の使用は減り、紙の文書の回覧も、書類の山との格闘もない。この環境を活用すれば、ホワイトカラー業務のスピードと生産性が格段に向上すると考えられる。実はこれと並行して、経営管理層全体に、人員削減と階層のフラット化が急速に進んだ。

大企業では、このように設備と組織体制の両面で、オフィス環境が激変している。しかし、保険代理店業界ではそれが99年からわずか2年間で起こり、しかも大企業のオフィス環境の変革より、はるかに重大な意味と内容を持つと考えられる。実は、2001年の代理店情報システムの誕生は、1960年頃に始まり現在に至る、企業の情報システム40年の全歴史を、わずか2年間に圧縮して一気に実現する、情報システムの「ビッグバン」(宇宙の起源の大爆発)と呼ぶにふさわしい。

この事情を損害保険業界の動向から考える。損害保険業界は、手数料率の自由化、異業種や外資の参入などで競争が一層激化すると予想される。そこで損害保険各社は顧客サービスの向上、新商品投入力の強化、高コストの是正を代理店も含めたチャネル全体で行うことが求められている。一方、損害保険会社は全国各地に多数の代理店を持つため、代理店の業務をシステム化して、代理店との取引を電子化すれば、これらの課題が解決可能である。具体的には、@顧客対応全般のスピードアップ、A代理店支援の拡充を通じた新商品投入の円滑化、B事務処理コストの削減、C郵送料など文書類の輸送費用の削減などが期待できる。損害保険各社の今後の動向は、現在まだ不透明だが、2000年までには手数料体系の大きな変化が予想される。情報化を積極的に推進する代理店を、保険会社が重点的に優遇する事態も、すでに見え始めている。

保険代理店はこうした状況をプラスに変えるために、システム化を進める必要がある。その成否が、保険代理店の明暗をも分けると考える。また、保険代理店業には、異業種の大手企業や、保険会社の直販も競合先として登場している。このような背景から、「保険代理店のシステムのビッグバン」は避けられない。その内容は、代理店事務全体の、「鉛筆と紙と手作業で行う段階」から現在考えられている最新のコンピュータシステムへの大変革である。

2001年までに保険会社は、代理店向け情報提供と代理店からの契約入力の、インターネット(Web)による仕組みを完成すると思われる。「代理店システム」は、パソコンにメールソフトとWebのブラウザー(照会検索ソフト)を置き、見積り作成などの営業支援機能と契約入力機能を持つ。「代理店システム」はネットワークを通じ、提携代理店と共有の「インターフェースシステム」に接続する。「インターフェースシステム」は、@SFA(営業支援)とEDI(電子取引)のためのデータ処理を行う。営業支援では結果を代理店側に見積り等として返し、代理店入力の契約データは保険会社の代理店支援システムに送信する。A代理店側で標準化した共通の画面から、異なる保険会社の契約の入力を可能にし、B異なる会社の契約の契約者での名寄せも可能。C各代理店は顧客の情報をここで一元管理し、D提携する代理店が顧客基盤を相互に交換する媒体ともなる。商品情報は保険会社の「代理店支援システム」のデータベースからWebで取り出せる。お客様との連絡の一部や保険会社との業務上の連絡や問合せはメールで、提携する代理店との連絡も当然メールで行う。こうしたシステムを確立し、オーナー経営者もパソコンを駆使して営業に当たるのが、私達の考える2001年の代理店システムの利用イメージである。(滝中 英一)

 

グループ OASIS 中小企業診断士、システムコンサルタント

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