保険代理店の情報化―今やらなければ明日はないー

22 おわりにーインターネットは保険を変えるー

―インターネットEDI―

アメリカ自動車ビッグ3のインターネット技術を活用した共同購買網,オートモーティブ・ネットワーク・エクスチェンジ(ANX)が動き始めている。取引先5000社が参加するANXの節約効果は,年間180億ドル(約2兆円)に達すると見込まれている。

顧客との関係では熾烈な競争をしているビッグ3が,取引先との関係では,戦略的同盟を結んでコストと時間を一気に削減する。今まで個々の取引先とそれぞれ専用線で結ばれていた互換性のない取引が,インターネットにより統合されるメリットは計り知れない。

我が国でも,保険取引について意外に早くインターネットによる標準化の動きが始まった。日立製作所が幹事となり,大手生損保10社が参加して,実地検証が来春から始まる。前に述べた新しい言語,XMLを活用した電子取引がこれにより実現しそうである。

我が国では業界標準化がうまく行かないケースも多い。特に,保険会社がそれぞれ独自の代理店オンラインで囲い込みを進めている現状を見るとその感が強い。乗合代理店の間では,どんどん進む多端末化について,あきらめが支配しているようにも見える。

ただ,このインターネットによる標準化は,ANXにみるように莫大なメリットが生まれるだけでなく,合意が出来たところから実施ができる特徴がある。各社とも動きに乗り遅れると大きなデメリットを被る。曲折はあるものの,この動きは止められまい。

―限りなくコンサルタントに―

現在一部で始まった代理店直接計上は,結局,データ入力の場所を保険会社から,より顧客に近い代理店に移す作業である。これにより,保険会社・代理店双方に大きなメリットが得られる。インターネットによる標準化はその動きを加速する。

その先は,データ入力の接点が代理店から顧客に移る。既に始まっているインターネット通販といった形だけでなく,連載1回目でご紹介した顧客別にカスタマイズされたWEBで,心行くまで各種のシミュレーションを顧客自身がするといったことも行われよう。

ビルゲイツは近著「思考スピードの経営」で,インターネットは買い手と売り手を直接接触させ,双方に相手に対する多くの情報を提供するようになる。つまり,中間業者が生き残るには,結局,新たな付加価値をつけなければならないとしている。

代理店が生き残るには,デジタル情報ツールで武装し,顧客とのコミュニケーションや関係強化に活用すると共に,顧客を上回る知識と能力によりアドバイスをする,つまり,限りなくコンサルタントになることが必要となる。

申込書の運び屋と化して,顧客に対して義理・人情・プレゼント(GNP)で営業するといったやり方は,これから急速に通用しなくなる。まさに,情報化は「今やらなければ明日はない」といったところに来ている。

―2001年の代理店システム―

以上述べたインターネットEDIを中心にした保険電子取引の標準化が達成されれば,別図の通りの代理店システムが可能となる。これが,連載1回目の「2001年ある日の代理店」で想定したシステムのアウトラインである。

顧客は営業員,電話,郵便,インターネット等様々な接点を通じて代理店と繋がり,これらはデータベースを介在して,インターネットEDIにより,保険会社,修理工場等サービス事業者,あるいは金融機関とシームレスに繋がる。

営業員支援のSFA,電話でのCTI,郵送によるDM,また,電子メールによるコミュニケーションやパーソナルWEBによる情報提供等を有機的に組み合わせて,代理店サイドが限りなくコンサルタントになることを助ける。

現在の紙とボールペンが支配する保険の事務が,このようになるとは,想像がつかない夢物語かと考えられるかもしれない。しかしながら,これから数年のインターネットのよる企業取引に対するインパクトは,想像を超えるものになりそうである。

筆者グループは,ここに述べた2001年の代理店システムを,これを機会に様々なコラボレーションを通じて実現できればと考えている。また,連載中は貴重なご意見や取材に応じていただき有り難うございました。紙面をお借りしてお礼申し上げます。

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