ケーススタディ−米国先進事例

 

 既に金融の自由化を経験している米国は、保険の流通市場においても、昨年の米国大手ブローカー、マーシュ&マクレナンの英国大手ブローカーセジウィック社の買収に見られるような大手保険ブローカーの国境を越えた大型合併、1970年代に著しく増大し、現在では米国内で250にも達する中小規模の代理店によるクラスターの設立等、生き残りをかけた激しい再編劇が繰り広げられている。さらにインターネット等のネットワークと情報技術を利用した新しいチャネルの開拓等、各方面で流通改革が進んでいる。

一方日本国内の保険業界においても、ビッグバンの進行に伴い、料率の本格的な自由化、外資の攻勢等により保険会社自体が厳しい競争環境に置かれることとなり、それに伴って保険代理店の選別もますます厳しさを増している。こうした環境の変化に対応し生き残るためには、先行して保険流通の変革が進む米国の先進事例を参考にし、優れたところはどんどん見習うべきであろう。次の項よりインターネットを利用した情報システムを活用して保険流通サービスを展開している米国の最新2事例を紹介する。

これらのサービスに共通しているのは、あくまでも消費者の側に立って顧客の必要とする保険の購買代理店というスタンスをとっているという点である。顧客はこれらのしくみにより、1ヶ所で多くの保険会社の商品情報を取得し、比較購入が可能となるのである。

 

まず最初に紹介するのは、インターネット上で保険の見積サービスを展開するNetQuote/Insurance Shopperである。約5000の保険代理店と100の保険会社の参加する同サイトでは、顧客が自分の希望する保険の種類と個人情報他必要な情報を入力、送信することによって、顧客の提示した条件にあった最適な保険商品の見積を提示してくれる。もちろん見積をもらうのに費用はかからない。取り扱っている保険の種類は、自動車保険、住宅保険、生命保険、団体医療保険など多岐に渡っている。 

具体的な見積のプロセスは次のようになる。まずあなたは、希望する保険の種類をブラウザの画面より選択する。するとそれぞれの保険の見積に必要な項目を入力する画面が表示される。この画面から必要な情報を入力してボタンを押す。あとは見積が届くのを待つだけである。

NetQuoteのコンピュータは、インターネットを通じて受け取ったあなたの見積依頼の条件に従い、最適な保険料率の商品を扱う保険会社を選び出す。そして選ばれた保険会社と契約しているあなたの住まいの近くの保険代理店にあなたの見積依頼データを転送する。それから遅くとも営業日で2日後には、4ないし6種類の見積書が代理店からあなたのもとにFAX、E−Mail、電話等で届けられるのである。

 

次に紹介するのはQuickQuoteである。同サイトはネバダで保険のブローカーを営んでいたDan Wagerが、ワンストップショッピングをコンセプトに1995年にサービスを開始した。生命保険、年金を中心に、現在35以上の保険会社の1,500を超える商品を取り扱っている。

先に紹介したNetQuoteと比較して優れている点は、見積がリアルタイムに提示され、比較できるところにある。見積のプロセスはNetQuoteとほぼ同じであるが、条件入力後すぐに5つほどの保険商品の見積の比較表が画面表示される。表示内容は保険会社、商品名、年間保険料、保険期間トータルの払い込み保険料である。さらに詳細の比較表を表示することも可能である。

また自分がどの程度の金額の保険に入るべきかよくわからないという人のために、Estimatorという機能も備えている。ここでは家族構成や家計の資産、負債の状況の入力により保険の必要保障額の分析を行ってくれる。各入力画面にはSSLの暗号通信を採用しており、利用者が入力した個人情報はすべてガードされる。

以上のしくみはデータベースを利用した情報システムにより実現されており、このために同社では保険の専門家だけでなく、特にデータベース開発に強い情報システムの専門家を、スタッフとして雇用して対応しているのである。

QuickQuotehttp://www.quickquote.com