5 情報化度チェックリスト −−情報化の実践(2)
保険代理店が21世紀に勝ち残るために、新しい代理店システムの導入は不可欠であると私達は考えている。2001年の代理店システムの背景・目的、システムのモデルについては、すでに2001年の情報システム−情報化の実践(1)でもその概要を述べた。今回は、2001年の情報システムとして私達の案を想定し、それを実現するために今すぐ実行すべき情報化の項目を洗い出して、情報化度チェックリストとして提示したい。
一般に企業が情報化を推進するためには、次の4つが前提条件であろう。(1)経営者のリーダシップ:経営者が情報化の具体的目的・目標を持ちその達成に意欲的であること。(2)人材:情報化推進担当の人材がいること。(3)機器:必要なハードウェア・ソフトウェアが導入されていること。(4)知識・技能:システムを使いこなすための知識・技能があること。さらに、私達が考える2001年の代理店システムでは、パソコンとインターネットを導入していて、電子メールとホームページ(Web)を利用できることが前提である。以上述べた条件から、特に緊急を要すると思われる項目を抽出して、2001年の情報システム実現に向けての情報化度チェックリストを作成した。なお、代理店システムの2001年に向けた段階的導入案については、代理店の経営規模別に、当連載で今後説明する予定である。
情報化度チェックリストに挙げた10の条件のうち、特に今後の情報化の計画、その中でも情報化の目的と、インターネットの利用について、その意味をさらに掘り下げて考えてみたい。
まず情報化の目的について考える。自社の顧客データ、契約データを重要な経営資源と位置づけ、これを活用して既存顧客深耕や新規顧客開拓を積極的に行っている代理店はまだ少ないかもしれない。恐らく、歴史ある多くの代理店では、「新規契約は、長年培った人脈から口コミで得られるし、既存の契約は従来ほぼ確実に継続されたから。」というのがその理由であろう。
また、個人経営の保険代理店の労働時間は週平均60から70時間で、その約70%で契約の更改処理を、残りの約30%で事故処理、事務処理、新規開拓を行っているという説もある。この報告例からは、契約更改の対応に忙殺される保険代理店像は窺えるが、「提案型営業」で計画的に事業を展開してゆく姿勢はあまり感じられない。しかし、保険会社・代理店・契約者の関係が、3者それぞれの立場や思惑から急速に流動化しそうな状況では、リピートオーダーに強く依存する経営状態は、代理店にとって大変危険である。
そこでまず代理店の情報化の目的には、(1)提案型営業のために、自社の顧客データを活用した営業を計画的に展開することを第一に挙げるべきである。また、(2)業界情報はタイムリーに入手でき、(3)保険会社の代理店支援策を優先的に受けるため、代理店支援システムは積極活用すること。などがこれに続くべきであろう。
次に、インターネットについて考えてみよう。インターネットの導入と電子メール利用の定着は、2001年の情報システムの導入のためばかりではなく、先進的な同業他社との交流を可能にする点で重要である。これにより同業他社の情報化の事例やノウハウに加え、保険ビジネスの最新情報と成功事例も得られるからである。
現在、わが国でもインターネット利用者は、すでに人口の約10%に達し、今後はさらに急速な増加が予想される。そこで、近い将来、自社の重要顧客の大半が電子メールの利用者となる可能性がある。
一般的な販促手段としてのFAXやDM(ダイレクトメール)のヒット率は、通常1〜3%程度とかなり低い。しかし、電子メールのヒット率は5%程度になるとの情報がある。両者の差には、電子メールの件数がまだDMに比べ少ないため、比較的丁寧に読んでもらえるという、現在の一時的な状況も反映していると考えられる。それにしても電子メールは、FAXやDMに比べコストが格段に安く、しかも十分に効果的な販促の手段なのである。
そこで、電子メールを利用すれば代理店は、個人情報を活用した効果的なone to oneマーケティングを容易に実践でき、顧客深耕で競争優位に立つことが可能となる。
しかし、保険代理店が21世紀に勝ち残るために最も重要なのは、お客様との親密な関係以上に、場所が離れていても相互に支援できる、同業のパートナー企業との信頼関係であろう。それには、まず自分のパソコンをインターネットに接続し、電子メールを利用できるようにしてから、保険代理店の特定のメーリングリスト(メールで結ばれたグループ)に加入するのが、最初の一歩である。
情報化度チェックリスト |
1.経営者が情報化の必要性を理解し、自らパソコン利用も進めていること。 |
2.システム導入を順次進めていて、今後の計画が定まっていること。 |
3.パソコンで表計算、ワープロ、電子メール、Webが使える要員がいること。 |
4.保険会社の代理店支援システムを使える要員がいること。 |
5.パソコン、プリンタがあること。 |
6.パソコンはインターネットに接続していること。 |
7.パソコンにメールソフト、Web ブラウザが導入されていること。 |
8.保険会社の代理店支援システムを導入していること。 |
9.顧客向けにパソコンでプレゼンテーションしていること。 |
10.同業他社との電子メール交換による情報交換組織(メーリングリスト)に加入していること |
中小企業診断士 瀧中 英一
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