ケーススタディ−代理店支援システム

 

金融の自由化の進行による競争激化に伴い、料率の自由化に基く保険商品の多様化・複雑化、外資系を中心としたコンサルティングセールスの導入等、保険代理店を取り巻く業務はますます複雑になっている。したがって代理店は、保険会社からも顧客からも高度な情報活用能力と同時に高い事務生産性が要求されるようになる。すなわち代理店支援システムやインターネットの活用なしには、よほどの差別化要素を持たない限り、生存競争を勝ち抜けないことを意味している。

損保代理店はこれまで、契約・入金等の各種事務手続きに多大な労力を費やしてきた。だが代理店支援システムはこれらの事務処理を軽減すべく代理店からの契約・入金等のダイレクト計上の機能を取り込みつつある。また顧客検索機能等のマーケティング機能も充実させてきている。さらに系列生保のシステムもメニューに加えてきている。ただ各社とも工夫を凝らしたシステムを提供してはいるが、十分に使いこなしている代理店は少ないのが現状である。

厳しい競争環境は同時に大きなチャンスでもある。今後は事務処理負担の軽減により増える営業活動時間と、システムから提供されるデータを有効活用して営業力を強化し、自社と顧客の関係を深めてニーズに沿った多種目化、生保商品のクロスセリング等を実施し、いかに顧客内シェアを高め、顧客基盤を安定させられるかが生き残りのためのポイントとなろう。以下に2つの事例を紹介する。

 

90年代後半から損保各社は、機能も操作性も大幅に向上した新しい代理店支援システムの開発・導入を進めてきた。各社とも従来の契約事務支援に加えて、顧客情報管理・販売支援、保険料試算、営業活動管理、生保営業支援といった機能を備えてきている。

例えば、顧客属性(家族構成、資産負債状況等)をあらかじめ登録しておき、豊富な検索機能を使って新商品販売のための重点顧客のターゲット設定を行ったり、更改時により顧客のニーズにあった商品の試算を提示したり、生命保険の設計書を作成してクロスセルを試みたり、といったことが可能となるのである。またマウスによる操作、ビジュアルな画面等により操作性も格段に向上している。

利用者にはハードソフトすべてセットで業者が来て設置してくれ、月1回程度CD−ROMにて新しいソフトが送られてくる。また操作方法の研修等も行われているが、普段あまりパソコンに慣れ親しんでいない代理店にとっては、必ずしも充分なサポートとはなっていないケースが多いようである。代理店自身の自助努力も不可欠となろう。導入コストは5年リースの場合、通信費含め月額約4〜6万円程度である。

1年ほど前から続々とインターネットでホームページや電子メールを利用して情報提供、代理店とのコミュニケーション等を行う保険会社も出始めており、今後代理店支援システム、インターネットの活用は避けて通れない課題となる。

カタカナ生保や損保系の生保のような代理店をチャネルとする生命保険会社では、主としてコンサルティング(ファイナンシャルプランニング)能力のある営業職員と営業支援ツールによる営業展開をはかっている。この営業スタイルに不可欠なのが、ノートパソコンで動く営業支援ツールである。ソニー生命などがこれらツールを武器として国内生保の牙城を切り崩していることは周知の事実であるが、最近では多くの生保が同様のツールを用意してきている。

多くは顧客の家族構成、年収、ローン残債、将来の予定、夢など100を超えるインタビュー項目の入力をもとに、生涯のライフプランに基づくキャッシュフローをシミュレートし、資金の過不足の分析をベースに顧客に最適な自社の保険商品を提案するというスタイルをとっている。さらに万が一の場合の必要補償額をカラーのグラフにして視覚に訴える等の工夫も凝らされている。また保険設計書、提案書等の印刷も可能となっており、ノートパソコンと携帯型の小型プリンタを持ち歩けば、顧客からの情報を入力し、その場で顧客に提案書を提示することも可能である。

これらツールを有償/無償で貸与し、代理店の保険設計、コンサルティング業務を支援するのである。また損保系の生命保険会社は、損保代理店支援システムのメニューにこれらツールを組み込んで損保とのクロスセルを狙っており、生保商品を扱う損保プロ代理店も徐々に増えてきている。