8 さあ今すぐ始めよう −−情報化の実践(3)

 当連載ですでに述べているが、情報化により効率化と規模拡大を図るか、徹底した省力化と高い情報化で個業に止まりながら高い手数料収入を目指す以外には、保険代理店の生残りは難かしい。情報化の実践(2)では、2001年の代理店システムの導入に向けて、すぐに実行すべき情報化の項目を、情報化度チェックリストとして10項目示した。2001年に新しい代理店システムを確立するために、これらは遅くとも今年中に全て実現すべきだと私達は考える。しかしある調査結果から推測すると、10項目全部を満たす代理店はまだ10%程度かもしれない。では、条件を満たしていない代理店は、何を優先し、逆に、全条件を満たしている代理店は、次に何をすべきだろうか。具体的にどの様な情報化を行うべきか考えてみたい。

 すでに当連載4 まったなしの情報化 新GNP経営(2)でも述べた通り、私達は保険代理店を、個業(手数料収入1000万円、従業員なし)、家業(5000万円、5人)、企業(1億円、10人)に区分している。これと情報化度のマトリックスで代理店を分類する。縦軸に情報化度、横軸に従業員数をとり、情報化度6、8、従業員数5人、10人を境に、以上、未満で9つに区分する。経営規模は経営者も含む従業員数とする。次に、マーケティングで著名なコトラーの分類に従い、従業員数を経営資源力(量)、情報化度を経営資源独自性(質)とみなし、量の大小・質の高低で、リーダー、チャレンジャー、ニッチャー、フォロワーに区分してみる。この4つの区分とすでに述べた9つの区分を重ねて図のような分類を考えよう。各代理店は円で表し、中心をその情報化度と経営規模に合わせ、直径を年間手数料収入に比例させる。今回提示するマトリックスは実データではなくモデルであるが、これを参考に以下、各区分を代表する代理店の現状を推定し、各区分ですぐ行うべき情報化の内容を、代理店業務に即した形で要約してみたい。

(1)リーダー このグループの代表は、従業員5人以上で情報化に積極的なプロ代理店である。「年間手数料収入が5000万円以上。損害保険に加え生命保険も扱い、手数料収入の約10%は生保。しかしこの1年は損保手数料収入の減少を、生保の新規の手数料で補い横這いを維持。」といった状況と推定する。経営課題は損保の顧客に生保商品を成約し、手数料収入の減少を補い、顧客の安定化も図ることである。そこで、現有の内務事務員を営業マンに養成しながら、多数の営業案件をチームで効果的にこなす必要がある。経営者以下全員による、チーム営業の総力戦である。これには、各営業マンのパソコンをLANやインターネットで結び、個々の案件の進捗状況(PDCA)を経営者が常時把握し、支援するためのシステムが効果的である。さらに、現有の顧客データを用いる、データ中心のマーケティングの手順も必要となる。

(2)ニッチャー このグループは少人数でありながら、比較的高い手数料収入(年間1000万〜3000万円)を得ていて、情報化にも積極的なグループである。継続処理の省力化や生保の新規営業にも恐らく成功している。情報化の課題はリーダー同様である。ただし、規模拡大を求めず徹底した効率化を追求する点が異なる。となれば、同業他社との連携のためメールを多用し、代理店のメーリングリストに加入する事などが必須であろう。

(3)チャレンジャー このグループは保険業に成功し、複数要員を抱えるが、情報化には遅れ、従業員が求められる技能に欠けている可能性が高い。必要なのは保険営業マンと利用者の立場で情報化を推進できる、システムアドミニストレータである。情報化では代理店支援システムを導入し、継続事務の省力化を図り、さらにチーム営業を支援する環境を作る。これはリーダーと同様である。また経営者自ら、インターネットユーザとなってメールとWebを利用して情報収集すべきである。今後は「リーダー」を目指す。

(4)フォロワー 多くは個業である。情報化はまず代理店支援システムを導入し、複雑な手数料計算も簡単にでき、複雑な新商品を容易に販売できる状態にすべきである。保険会社の最新の代理店支援システムはインターネット接続機能も持つため、インターネットの利用も可能となる。最終的には、継続処理の省力化、生保への取り組みを経て、ニッチャーを目指す。さて、貴社は以上4つのどれに最も近いだろうか。

 

              中小企業診断士 瀧中 英一

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