保険毎日新聞コラム「ビジネスネットワーキング」

100回目のコラム(100)

第一回のコラムの横に「最近の損保業界動向をみる」と題して記者座談会が載っている。ヘッドラインに「経営体質転換を迫られるー新規開拓,ハイブリット型展開もー」とある。顧客満足,事業費圧縮と代理店チャネルの再構築がテーマである。

ビル・ゲイツ氏が,最近の著書で「ビジネスは今後10年間に過去50年に経験してきた以上の大きな変革を遂げて行く」とインターネットのインパクトを述べている。3年前の記者座談会の話題が,まさに,現実のものになりはじめている。

パソコンと情報ネットワークの活用が,代理店生き残りのカギになる,今年は保険代理店情報化元年といった話を本コラムでした。また,今年は保険会社と代理店の間が,インターネットで繋がり始める。保険業界インターネット元年ともいえる。

保険業界に情報化の波が一気に押し寄せようとしている。次回以降,インターネットを中心に,ビジネスネットワーキングを支える近未来の技術や,その保険業界への適用といったテーマで,やや,まとまった形のお話をしてみたい。

 

 101

 iInsurance

 102

 BtoB

 103

 インターネットEDI

 104

 難しい,高い,バラバラ

 105

 損保VAN

 106

 インターネット サクセス

 107

 Bto

 108

 CRM

 109

 デジタルで顧客を知る

 110

 代理店SFA

 111

 MAX

 112

 BtoBtoC

 113

 iInsuranceのすすめ

 

iInsurance(101)

昨年末のクリスマス商戦で,米国では前年の3倍にあたる約32億ドルがインターネットで取引されたという。このような一般消費者と企業との取引をBusiness to Consumer(B to C)というが,米国では現在これが急速に拡大している。

一方,その陰に隠れて今まで余り注目されていなかった企業と企業の取引,つまり,Business to Business(B to B)へのインターネット活用についても,日経ビジネスが特集(3月1日号)を組むなど,最近にわかに注目を浴びている。

最近の米国企業が元気なのは,どうもインターネットを消費者や企業間の取引に積極的に活用し,効果的な顧客対応と効率的なマネージメントを達成しているためではないかとの認識が我が国でも生まれつつある。

事実,米国企業の情報化投資は,現在,前年比30%以上の増加を続けている。これを見て,我が国においてもB to CB to Bへのインターネット活用について,産業界での期待が高まっている。

インターネット活用のビジネスへの効果について,我が国の各産業別に,最近,通産省,慶応大,マッキンゼーが共同で調査を進めている。その結果をみると,特に金融分野が物流と並んで大変効果が大きく注目される。

全体としてインターネット活用が遅れている金融のなかでも保険分野の遅れは目立つ。ということは,反面活用すれば大きな効果が生まれる。保険に対するインターネット活用を,私はiInsuranceと名づけてこれから色々考えてみたい。

そこで,次回以降シリーズでややまとまった形で,iInsuranceについて,「B to B」,「B to C」,また,それを統合した形の「B to B to C」という切り口で,特に保険流通からみたインターネット活用を検討して見たい。

B to B (102)

日経ビジネス3月1日号に,「ビッグ3が“合併”を計画」という見出しで,アメリカ自動車ビッグ3のインターネット技術を活用した共同購買網,オートモーティブ・ネットワーク・エクスチェンジ(ANX)の解説記事が載っている。

顧客との関係(Business to ConsumerB to C)では熾烈な競争をしているビッグ3が,取引先との関係(Business to BusinessB to B)では,戦略的同盟を結んでコストと時間を一気に削減する。

ビッグ3の取引先である部品や原材料メーカー5000社が2000年までにANXに参加する。今まで個々の取引先とそれぞれ専用線で結ばれていた互換性のない取引が,インターネットにより統合されるメリットは計り知れない。

5000社参加の節約効果は,業界全体で年間180億ドル(約2兆円)に達すると見込まれている。電子ショッピングなどB to Cに注目が集まっているが,実は,インターネットをB to Bに活用する動きが米国では本年より本格化する。

我が国では,このようないわゆるサプライチェーンの標準化についてはなかなかうまく行ったケースが少ない。特に,それぞれの企業が情報システムの独自性を主張して,なかなか折り合わないことがネックとなる。

システム部門も年功序列であり,最近のめまぐるしいインターネットの変化についていけないこともそれに拍車をかけている。特殊言語を話す特殊部落ということで,経営陣も情報システムの重要性を理解しつつも,どうしてよいか扱いかねている。

欧米では情報技術の戦略的重要性をしっかり認識しており,情報システム担当役員(CIO)をおいている。我が国においても,情報技術をビジネスにどう結び付けるか,両方とも分かるトップが,これから企業生き残りのため不可欠な存在となる。

インターネットEDI(103)

前回,米国自動車ビッグ3の共同購買網(ANX)が業界全体で毎年約2兆円のメリットを生むと書いた。これを実現するための技術が,インターネットEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)といわれるものである。

EDIは,従来の口頭、文書、郵便,FAX等による方法に代えて、コンピュータ間の通信によって,電子的に受発注などを行う方法である。これをインターネット技術の活用によりすすめるのがインターネットEDIである。

卸売業の存在理由に取引数量最小化の原理というのがある。生産者と小売業者が複数存在した場合,その間に卸しが介在すると取引回数が減りコストが安くなる。ANXはインターネットが介在することで同様な効果が生まれている。

ANX以前は,各部品メーカーはそれぞれ専用線でビッグ3と個別に結ばれていたが,それがインターネットで統合される。通信費の節減という直接的効果だけでも短期間で投資が回収されるようである。総合的効果は計り知れない。

従来,EDIはその効果について期待されながら,なかなか普及しなかった。特に,通信を仲介するVAN(付加価値ネットワーク)の料金が高くしかも遅い,あるいはEDIの前提である標準規約が複雑すぎる等欠陥があった。

インターネットが登場することで,高い,遅いの問題が解決に向かうと共に,WEBを受発注等に使う,いわいるウエッブEDIにより,標準化問題をクリアー出来ることから,今後大きくEDIが普及する気配である。

インターネットEDIは,暗号化技術やXMLと呼ばれる意味を与えることのできる新しいインターネット言語等それを支える技術が次々と生まれている。大企業のものであったEDIが,中小企業にも身近なものになりそうである。

難しい,高い,バラバラ(104)

保険業界でのB to B,即ち,保険会社と代理店間をつなぐ代理店オンラインシステムが,事務効率化の決め手として,本格的に普及し始めている。ただ,筆者が見るところ「難しい,高い,バラバラ」という3重苦を代理店に強いているようだ。

筆者が関係した代理店に対するアンケートでは「保険会社の指導不十分」がオンラインシステムの不満のトップにあがっている。平均的代理店にとって大変難しいシステムといえる。保険会社の代理店担当でも,充分指導が出来ないケースが多い。

アンケートによる2番目の不満は導入コストの高さである。各保険会社がそれぞれ独自システムを開発しており、代理店側が多端末化による重複投資を余儀なくされている。また、VANのレスポンスが遅く,通信費用がかさむことを指摘している。

上で述べた多端末化は単なるコストアップだけでなく、商品選択に関する顧客ニーズへの対応という点で,大きな問題をはらんでいる。システムがバラバラで,相互に顧客データを統合できない多端末化は,効果的な顧客対応に大きな障害となる。

一部の大型代理店では、代理店独自の顧客管理システムを開発して、この問題に対応しようとしているが,契約データの入手やフォーマット転換等難問が山積している。結局,このままでは,乗合代理店は,支援システムの乱立に直面する。

代理店支援システムは、今まではあれば便利といったものであったが、これからは無ければ困る必需品となる。保険会社が代理店、顧客のトータルな流れの中でシステムの開発・導入・運用を行い、全体的なコスト削減を達成することが課題となる。

システムを武器に代理店を囲い込みたい保険会社からみて、この問題の解決は大変難しいが、顧客満足(CS)の達成から見ても避けられない課題である。前に述べた米国自動車ビッグ3のような戦略的対応が保険会社に期待される。

損保VAN(105)

損害保険業界には損保VANというEDI(Electronic Data Interchange:電子データ交換)システムがあり,大多数の損害保険会社が加入している。これにより,曲がりなりにも契約データ等を,電子的にやり取りすることが可能となっている。

だだ,従来の損保VANに基づく代理店オンラインシステムは,前回述べた「難しい,高い,バラバラ」であり,先進的代理店のいわばステイタスシンボルとして,床の間に飾られるといった風情の代物であったようである。

従って,契約データの入力接点は,保険会社にならざるを得ず,代理店をはさんで顧客までのルートが,原則的に手書きと紙のやり取りになる。ダブルチェックや誤りを訂正するための2重手間等保険業界が高コスト体質になる元凶がここにある。

現在,保険会社が精力的に代理店オンラインの導入を進めているのは,結局,契約データの入力接点を,代理店に持ってくるためである。これにより,単に事務の効率化だけでなく,すぐに契約書が届く等効果的な顧客対応も可能となる。

最新の代理店オンラインシステムは,各社とも色々工夫を凝らしたものになっており,確かに以前に比べて扱いやすくなっている。しかしながら,ユーザーである平均的代理店側から見ると依然「難しい,高い,バラバラ」である。

システムはユーザーが進んで使いたくなるようなものでなければ普及しない。筆者の結論からいえば,「難しい,高い,バラバラ」にはVAN固有の難点がかなり影響しており,インターネットEDIへの転換が不可避である。

この転換は,VANをベースに膨大な投資をしてきた各社のシステム部門にとって耐え難いことではあるが,徐々にインターネットへの転換が始まっている。代理店と保険会社間のインターネットへの取組みについて次回述べたい。

インターネット サクセス(106)

昨年夏以降,相次いで主要損害保険会社が,代理店向けのインターネットサービスを開始している。保険会社各社では社内のネットワーク(イントラネット)化が進んでおり,それを契約代理店に接続するエクストラネット化という動きである。

現在のサービスは,新商品情報等各種情報や販売支援ツールの提供,代理店との電子メール交換等にとどまっており,契約データなどいわいる基幹系データは,従来の代理店オンラインシステムで依然提供されている。

各社別の代理店オンラインシステムに,このような形でインターネットが新たに加わり,代理店サイドは両方別々に扱う必要に迫られている。結果的に「難しい,高い,バラバラ」の3重苦が加速されているのが現状である。

インターネットへの統合が急務と言える。この点でAIUの「インターネット サクセス」が注目される(保毎損保版H10.11.16参照)。本記事によれば,AIUが契約データも含めたインターネットへの一元化では我が国初とのことである。

新聞発表と異なり,現在のところ契約データのオンライン提供はなされていない。基幹系データとの直結については,セキュリティ確保のための条件整備が重要であり,それを進めているためであろう。

実は,我が国でも既に,スカンディア生命保険は,基幹系データを契約者にインターネット上で公開し,変額保険の運用結果を個人別にディスクローズしている。これを考えるとAIUにおいても,近々インターネットへの一元化が実現しよう。

効率的な保険事務と効果的な顧客対応のためには,米国自動車ビッグ3のような,インターネットEDIの実現が不可欠である。現在,システムを使った囲い込みという逆の流れが生まれているが,インターネットが流れを変えることを望みたい。

B to C(107)

企業間取引(Business to BusinessB to B)へのインターネット活用について述べてきたが,これからしばらく企業と一般消費者との取引(Business to ConsumerB to C)について考えてみたい。

B to Cの代表例としてインターネット上で世界最大の本屋となったアマゾン ドット コム(http://www.amazon.com )を取り上げて見たい。現在,アマゾンは本だけでなくCD,ビデオ,ギフト,オークションと手を広げてきている。

本での圧倒的地位を武器に,定石通りCD,ビデオ等のクロスセール(関連販売)に進出している。保険でつかんだ顧客に投信を販売するようなものである。購入の段階でも様々な仕掛けを使って関連販売を誘う。

先ず,既購入者がアマゾンのホームページにアクセスすると,Hello Tadashi Choと自分の名前が出てくる。前に本コラムでパーソナルWEBという言葉を紹介したが,そのプリミティブな形であり,パーソナリゼーションといって最近良く使われる。

次に,検索エンジンを使ってお目当ての本を探して買うと,その本を過去買った読者が,他にどのような本を買っているかが表示される。ついで買いを誘うしくみで,保険でいえば特約をつけるよう勧めるといったことであろうか。

何冊か買った後,注文用紙(レジ)のところにも仕掛けがある。買った本の構成を見て,同じような傾向を持ったお客がどのような本を買っているかというリストがでる。顧客の保険診断をして,カーバーしてない保険を勧めるようなものである。

その他,愛読者の声や本の評価,筆者のコメントも載っており,一人一人の顧客との関係を考え対応するCRM(Customer Relationship Management)の仕組みを,インターネット上に実現している点は大いに参考になる。

CRM(108)

B to CBusiness to Consumer)を支えるマネージメント技術であるCRM(Customer Relationship Management)を,世界最大のインターネット上の本屋,アマゾン・ドット・コムの例を通じて前回紹介した。

CRMは一言で言えば,顧客中心主義のマーケティングである。マスマーケティングから,リレーションシップマーケティングへ,市場シェア拡大から,優良顧客の識別と囲い込みを狙う顧客シェア拡大へである。

CRMが最近注目され始めている背景に,様々な顧客接点に対応した情報技術の進歩と低価格化がある。これら顧客接点の技術には,新しい接点としてインターネット,営業員を支援するSFA,電話でのCTI,店舗でのPOSなどがあげられる。

インターネットや電話は,最新のデータベース技術と結びついて,アマゾンのようなオンラインショッピングやアメリカンホームの保険ダイレクト販売等,事業者と消費者を直接つなぐB to Cに今後大いに使われだす。

説明のいらない単純な商品やサービスは,基本的にはこのルートに移ることになろう。この過程に人が介在する価値は,人でなければ提供出来ない付加価値にある。顧客の購買代理人として顧客の持つ様々なニーズを引き出せる能力が必要となる。

そのような付加価値をつけうる商品やサービスには,依然,顧客との接点に営業員が有効である。営業員がチームで営業する基盤を提供する情報システムが,SFA(Sales Force Automation)といわれ,様々な活用が行われ始めている。

保険代理店にとっても,CRMをささえるこれら技術をうまく組み合わせて,有効に活用して行くことが,生き残りにとって重要である。インターネット,電話,SFAついて,代理店にとってのベストミックスを早く見つけ出せれば強い。

デジタルで顧客を知る(109)―

保険業界の営業はGNPだと良く言われる。G(義理)N(人情)P(プレゼント)である。各社横並びで,同じ商品を同じ価格で販売せざるをえないとすると,義理と人情とプレゼントでお客様を攻める以外に手はなかったといえる。

保険会社にとっては,顧客ニーズに細かく対応する必要はなく,ただひたすら,代理店網など営業の接点を拡大することが営業戦略の柱になっていたことはご承知の通りである。それが今180度逆転した。

保険業界は,保険ビッグバンによる自由化で未曾有な構造変化が訪れた上に,平成大不況による保険市場の縮小が重なり対応に苦慮している。その突破口の大きな柱がCRM(Customer Relationship Management)である。

保険の世界は顧客との関係が決め手となる。GNP営業もその一つである。優秀な代理店主の持っている顧客情報の奥の深さに驚かされるが,問題は代理店主の頭の中にのみデータがあって,他人には窺い知れないことである。

これが,CRMを進める上で大きな障害となっているが,実は,全社横並びの商品を販売している場合は,これらデータは殆ど必要がなかった。その証拠に平均的損保代理店では,顧客の年齢すら充分捉まえていないのが実状でないだろうか?

保険代理店は今後,顧客の購買代理人,つまり文字どおりのエージェントとして,多様化し複雑化する保険商品のベストミックスを,顧客の立場で見つけ提案して行くことになる。その前提として,先ず,顧客情報の整備が重要となる。

また,保険会社もCRMを目指して顧客情報の収集に躍起になっている。商品別データを顧客ベースに組み替えるとともに,営業員や代理店との連携強化が課題となる。いずれにしても,超GNP営業の決め手は,顧客をデジタルで知ることである。

代理店SFA(110)

企業と一般消費者との取引(Business to ConsumerB to C)について保険について考えると,保険会社が消費者と直接結びつくB to Cと,保険会社と消費者との間に営業員や代理店が介在するB to B to Cに別れる。

説明のいらない単純な保険は,今後,電話やインターネットを通じた直接取引に相当部分が移行しよう。しかしながら,複雑化する保険商品のベストミックスを顧客に提供し,またフォローして行く機能は,依然,営業員や代理店の役割となろう。

そのためには,営業員や代理店を支援する以下述べるSFA(Sales Force Automation)を中心に,電話を活用したCTI(Computer Telephony Integration)や,インターネットによる電子メールやWEBをうまく組み合わせて行く必要がある。

代理店CRM(Customer Relationship Management)のため3点セットは,今後,営業員,電話,インターネットになって行く。いずれにしても,実現のポイントは,かなめになる顧客データベースの整備にあり,早急に取り掛る必要がある。

保険会社が代理店に提供する支援システムは、従来契約管理を主体としていたが、各社とも最近のバージョンでは一斉にSFAを組み込み始めた。内務事務を徹底的に効率化し、それで生まれた時間を営業に有効活用しようという考え方である。

具体的には、各種プレゼンテーションツール、生損保クロス販売や法人総合リスク管理等のコンサルティングシステム、世帯総合販売に向けた顧客データベース整備とそれによる販促、営業員スケジュール管理、事故処理状況の情報提供等がある。

代理店は,その将来像として,顧客データベースをSFA,CTI,電子メール,WEBに有機的に結びつけ,広義のSFAを確立することにあるが,第一歩として,先ず,保険会社が提供する支援システムを徹底的に活用すべきであろう。

MAX(111)

保険会社が提供する代理店支援システムにSFA(Sales Force Automation)が組み込まれ始めており,先ず,代理店としてはその徹底活用が,将来の電話やインターネットを組み込んだ広義の代理店SFA確立の第一歩と前回述べた。

保険会社の支援システムは,それぞれ各社の営業戦略を反映しながら特徴が生まれつつある。その中で,安田火災の代理店オンラインシステム,sonpomate MAX(Multipurpose Agent system for X(cross)-selling)をケースにSFAを見てみたい。

安田火災は,1980年損保業界初の代理店システムを発表するなど,先駆的取組みを行ってきている。今回のMAXには名前の通り,クロスセリングを目玉にした多機能なSFA機能が組み込まれている。

クロスセリングの内容は,提携先のアイ・エヌ・エイひまわり生命をシステム的にも取り入れて,生損保をフルラインでカバーしている。また,家族単位の名寄せを前提にした世帯総合販売を可能にしている。

SFAには,営業の計画→実行→検証のそれぞれを支援する機能が含まれるが,MAXは特に上流部分が充実している。顧客を家族単位で評価・層別化し営業戦略をたてる,その家族に対し死亡保障と生存保障を同時設計するなどに特徴がある。

一方,営業員のスケジュール管理等下流部門については,東京海上のシステムにあるような,更改や誕生日等イベント管理をカレンダー上で行う等工夫が求められる。いずれにしても,専属代理店にとっては,一応満足すべきレベルである。

今後の課題として,「難しい,高い,バラバラ」という代理店システムの欠点是正のためだけでなく,SFA,CTI,電子メール,WEBを有機的に結びつけ広義の代理店SFAを確立するためにも,MAXのインターネット化は不可欠であろう。

B to B to C(112)

今まで,保険会社と代理店のB to BBusiness to Business),代理店と顧客のB to CBusiness to Consumer)について述べてきたが,次に,保険会社,代理店,顧客が情報技術の活用により一層緊密に統合されるB to B to Cについて述べてみたい。

この点で,アメリカにおける旅行業界の歩んだ道が,先進事例として参考になる。現在,インターネットを活用したB to B to C,即ち,航空会社,ホテル,レンタカー等素材提供会社⇔旅行代理店⇔顧客を結んだ仕組みが出来上がりつつある。

経営書に良く例が出てくる戦略情報システム(SIS)に,アメリカン航空のCRS(Computerized Reservation System)がある。いち早くCRSを開発したアメリカン航空は,その端末を武器に代理店の囲い込みを進め大成功を収める。

その後,系列毎にCRSが開発され,それぞれが代理店に持ち込まれたため多端末現象を引き起こす。やむなくパソコンを利用して,自社開発のソフトで複数のCRSに接続する代理店が現れるが,航空会社は接続を公式には許可しなかった。

これに対して,米国運輸省は1992年,「一台のパソコンが他のCRSに接続されているとの理由で,自社のCRS接続を拒否してはならない」という規制を発動した。これにより代理店向けの様々なパソコンソフトが開発されるようになる。

その後,インターネットの普及に伴い,インターネット上で活動するオンライン旅行業者が大きなシェアを占め初めている。これに対抗して,旅行代理店サイドもインターネット活用して, B to B to Cを確立する動きに出ている。

代理店自身でCRSを構築するUSTAR(United States Travel Agency Registryhttp://www.ustar.com/ ),代理店を介在したオンラインショップITN(http://www.itn.net/などが参考になる。一度,WEBを訪ねて見て欲しい。

iInsuranceのすすめ(113)

過去12回にわたり,保険業界におけるインターネット利用を,先進事例を交えて見てきたが,今回は,一応のまとめとして,保険会社⇔代理店⇔顧客の間に,B to B to Cを確立するためにはどうすべきか考えてみたい。

前回見た米国旅行代理店と同様,現在,保険会社はオンラインを囲い込みの武器として,独自のシステムを代理店に持ち込んでおり多端末化が始まっている。これを統合するには,米国の経験から見ても,代理店サイドからの働きかけが必要である。

統合のためのコストや保険会社との交渉力を考えると,やはり,保険代理店の業界団体,協同組合や最近取組みが始まりつつあるいわゆるクラスター組織等の代理店協業組織,あるいは,大手機関代理店などが統合の担い手になろう。

コアとなる技術については今まで述べたように,保険会社と代理店の間にインターネットEDI,代理店と顧客の間に電話やインターネットと連携したSFA,また,代理店サイドにはEDIとSFAと有機的に結びついた顧客DBが必要となる。

ポイントとなるインターネットEDIについて,日立製作所を幹事とした業界標準化に向けての動きが始まった。米国自動車ビッグ3のケースで見たように,もし,統合出来れば,業界全体としてのメリットは非常に大きい。大いに期待したい。

これら技術は,おおむね,こなれてきており旬を迎えている。また,取りあえず合意出来る仲間で初めて,それを拡大して行くといった,インターネット技術のスケーラブルな特徴を生かせば,以前ほど合意形成に困難はないのではと思う。

3年以上にわたり本コラムをご愛読いただいたが,区切りを迎えたので今回で連載を終了することとなった。この間のインターネットの発展は目を見張るものがあり,執筆のお陰で曲がりなりにもその動きについて行くことができた。皆様に多謝!