ローマ字教育の効用

我が国のローマ字教育は、和魂洋才の典型であろう。アルファベットによる日本語表示は、室町時代の外国人宣教師により持ち込まれた。爾来、連綿として我が国に定着している。

学校でローマ字を習ったとき、いったい何に役に立つのだろうかと疑問に思った。社会に出て、しばらくは確かに殆ど無用であった。

始めてローマ字の効用を感じたのは、産油国として我が国と深い関係にあるアブダビに、仕事の関係で、しばしば出張することになってからである。現地から東京にテレックスを打つことになった。第二次オイルショックのまえで、海外との間でファックスはいまだ普及しておらず、テレックスでローマ字をキーボードから打った。

その後、手書きで送れるファックスが導入されキーボードから開放されることとなる。日本人にとってファックスの便利さは想像を超える。逆に言うと、ファックスが日本の情報化を遅らせているともいえる。

しかしながら、昨今のパソコンの普及は、多くの日本人がキーボードに向かうこととなっている。ローマ字教育が思わぬところで役に立っている。

日本語の漢字変換には、ご存知のようにローマ字かな漢字変換とかなを直接打ち込むかな漢字変換がある。かなを直接打ち込む方が効率的と考え挑戦する向きがあるが、ビジネスでまともに使っている例を知らない。24文字ですむアルファベットで打ち込む方が楽だということである。

中高年がパソコンで優位に立つためにブラインドタッチ(キーボードを見ないで入力すること)をマスターすべきとの説がある。カチャカチャカチャと早く打って若者にやるなと思わせようということである。