汎用大型計算機の時代
1969年に、私は会社より経済企画庁に派遣され、経済白書の執筆にあたることとなった。ここで初めてコンピュータと出会うこととなる。経済構造を方程式化し、それを解くことにより経済予測を行う、いわゆる計量経済モデルの計算に必要となったためである。
大型コンピュータのリース料は非常に高価であったので、民間では3交代で昼夜を問わず稼動させていたが、企画庁は当時夕方5時でオペレーターが退庁する状態であった。夜は,簡単な教育を受ければ、各自が自由に利用できる体制となっていたので、これで大いにコンピュータを勉強できた。
電子計算機の先駆的導入は、1953年小野田セメントに始まったが、1960年代に入り爆発的拡大にむかった。1964年に光文社より出版されベストセラーになった南沢宣郎著「経営を革新する電子計算機」に当時の事情が詳しく載っている。
本書によれば、単純大量の事務処理にとどまらず、ポーラ化粧品本舗が、販売管理業務に電子計算機を導入した例が載っている。また、1960年に当時の国鉄が、試験的にリヤルタイム方式の座席予約を開始するなど、汎用大型計算機の利用に関するプロトタイプは、1960年代にほぼ出尽くしている。
このように、新技術の導入期には様々な先駆的試みがなされ、それが実用化されていく。現在に置き換えれば、前回述べたように、コンピュータが新たな時代に向けて、大きく変化を始めている時期である。すなわち、インターネットという新技術の導入期にあたる。インターネットによる先駆的試みを、よく観察することが将来をみるために重要であろう。