ミドル破壊(22)

行動科学者のサイモンは、「コミュニケーションのないところに、組識は存在しえない」と述べている。企業に一人一台のパソコンが導入され、電子メールでつながり出すと、企業のコミュニケーションのありようが変わり出す。それが、組織を変える。伝統的組識論では、企業の管理階層は、トップ、ミドル、ローワーの三階層に分けられ、それぞれが、戦略的意思決定、管理的意思決定、業務的意思決定に関わるとしている。

「パソコンを自由自在に使えないような人は、社長の資格はないですね」と、日本マクドナルドの藤田社長いう。70歳ながら、自分でパソコンを操り、為替の予測、ハンバーガーの価格設定による売上・利益の見込み、出店計画等々をこなしている。また、1日平均10通の電子メールを読む。(日経ビジネス デジタル経営革命95)つまり、昔はミドルの仕事であった管理的意思決定までトップがこなし始めている。また、電子メールによる現場情報から、業務的意思決定まで一部こなしているかもしれない。このようなトップが要求する情報は、加工されたコメントでなく、なまのデータである。電子メールでつながったパソコンネットワークは、全員に生のデータを供給することが可能となる。

つまり、電子メールによる情報の共有化が進むと、ミドルの中抜きが進む。企業側から見た、電子メールの旨みはここにある。人員削減のメリットだけでなく、意思決定の迅速化と変化対応能力の向上が期待できる。

電子メールの企業への導入が急ピッチで進んでいる。これが、日本の企業組識を具体的にどう変えていくかは予測がむつかしい。ただ、次の景気後退期には、団塊世代のホワイトカラーに、失業が増えることだけは確かのようだ。