MSC(32)

アジアの代表的指導者の1人に、マレーシアのマハティール首相がいる。70歳という高齢にもかかわらず、自らパソコンを操り、インターネット上にホームページを持っている。特別顧問をしている大前研一氏によると、訪日のたび秋葉原を訪れているとのことである。秋葉原は、IT(インフォメーション・テクノロジー)の生きたショウルームで、私も月に1度は見てまわる。

マハティール首相は、昨年の8月1日、IT関係者にとっては歴史的ともいえるスピーチを行った(詳細はhttp://www.smpke.jpm.my/mmedia.html)。クアラルンプールの南に幅15km、長さ50kmのITを駆使した大規模な開発を行う、マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)構想である。

南端には1998年に完成する国際空港、北端には450mの現在世界最高の高さを誇るKLタワーを配し、センターに2つのメガ・プロジェクト、新行政都市プトラジャヤとITシティが生まれる。地域全体に光ファイバーによるデジタルネットワークが整備され、直接世界各国と繋がれる。この特別地域は、マハティール首相のリーダーシップで、様々な課題に関するグローバルな「テスト・ベッド」となろうとしている。新しく「サイバー法」を制定し、政府と企業あるいは企業間の協調を図り、放送、娯楽、教育、医療、新技術の適用など、新しいITに関するメッカにしようという構想である。

MSCの目標年次は2020年である。マハティール首相は70歳、2020年には95歳になる。この数年で、後戻りできない段階までプランを進めることが成功の鍵を握ると思う。ただ、過去いくつかの大型都市開発のプランニングに携わった私の経験からいえば、20年や30年で人を引き付ける都市の魅力は生まれない。そこに福岡などがつけいるスキがある。