ホームページ探索 その1(33)

今や世界最大のデータベースとなったWWW(World Wide Web),いわゆるホームページの探索法を、私なりに保険業界を例にとって述べてみたい。

WWWの特徴は、生きた情報を世界中から机に座ったまま、好きな時にすくい取って来れることである。一方で、数が莫大でしかもそれが急速に増加しているため、自分に合った適切な情報を入手するため色々なテクニックが必要となる。

インターネット上の代表的検索方法にサーチエンジンがある。それには大きく分けて、キーワード検索を行う狭義のサーチエンジン、もう一つがカテゴリー別分類からたどっていくディレクトリー検索がある。最近では、メタサーチといって複数のエンジンに要求を出して結果をまとめて表示してくれるものも出てきている。

1月12日に保険をキーワードにして代表的サーチエンジンで検索してみた。日本での結果は、CSJインデックスが148件、NTT DIRECTORYが466件、infoNaviが699件であった。infoNaviはキーワードの追加による絞り込みが出来ることもあって使うことが多いが、ちなみに損害保険を加えて検索したところ42件に絞られた。

一方、アメリカの代表的サーチエンジンであるinfoseekにより、insuranceをキーワードで検索したところ、何と333,534件が引っかかった。保険業界に限ったことではないが、日米の情報化格差に唖然とする。

効率よく目的のホームページにたどり着くためには、一般的情報にはディレクトリー、専門的情報にはサーチをかけるといった方法が原則である。どちらにしても、最初の検索でイメージが合わなければ、迷路に入り込まないように引き返す方がよい。また、その場合、別なエンジンにサーチさせることも有効である。

ホームページ探索 その2(34)

前回サーチエンジンによりホームページを検索する方法を述べたが、自分の目的にあったリンク集を見つけることも有力な情報検索の手段である。リンク集とは、テーマにそって幅広くURL(ホームページのアドレス)を集めたホームページである。保険の分野では、稲葉幹雄氏が開設している保険の広場が出色である。次回ご紹介したい。

日経パソコン新春特別号(97-1-13)に「Web探しは俺に任せろ-サーチ屋稼業の検索テクニック」が掲載されている。PC WORLD誌からの転載記事で、アメリカの例であるが様々な検索テクニックや検索ツールの紹介がある。インターネット上での検索について大変有用な記事で一読をお勧めする。

いずれにしても、インターネット上で検索するには、ある程度試行錯誤が必要である。下手をすると、情報の海におぼれてしまう。そこで、有用なのは印刷媒体の情報によって、URLにたどり着く方法である。雑誌、新聞等で、ホームページの紹介が頻繁になされる。自分の興味にあったURLが見つかったらその場でメモを取る。

最近では、ホームページの紹介を専門とするイエローページも多く登場している。そのなかには、中央経済社「INTERNET ADDRESS BOOK」のようにミシュランの5段階評価を行っているものもある。

日本では、サーチエンジンへのホームページ登録がいまだ十分でないこともあって、印刷媒体からの情報入手の重要性が高い。逆から見ると、つまりホームページを皆に見てもらう立場にたてば、雑誌や新聞に働きかけて取り上げてもらうことが重要となる。

最後に一番手っ取り早い方法を1つ。その道の専門家に聞くことである。次回紹介する保険の広場を知ったのは、本紙編集長の中崎氏からである。

保険の広場(35)

稲葉幹雄氏が開設している「保険の広場」(http://www.mirai.or.jp/~inaba/index.htm/)がある。保険分野のホームページとしては、私の関心からみて一押しのサイトである。保険毎日新聞にもたびたび取り上げられており、ご存知の読者も多いことと思う。前回紹介した中央経済社のランキングでも4-STAR SITEと上位に位置している。

昨年の12月15日は、保険業界にとってビックバンが始まる歴史的一日となった。長い日米交渉の末、保険問題が決着した。日本側新聞各紙の論調は、日米の痛み分けとの論調が多かったが、どうも米側の見方は違うようだ。Business Weekには、この決着で、アメリカの保険会社は、3,400億ドルにのぼる日本の保険市場での大きな分け前にあずかれることとなったと書いている。

中小企業診断士の立場でこの事態を冷静にみると、やはり、最大のインパクトは、保険代理店、なかんずく、損保を主力としている代理店が受けることになる。外資系直販業者、生保系損保だけでなく、規制緩和業界の常として思わぬところからの異業種参入が予想される。これは、逆にみると意欲があり、能力のある代理店にとって千載一遇のチャンスである。

「保険の広場」は、1995年9月に、専業代理店としては始めて(有)オフィス・イナバの稲葉幹雄社長が開設した。本紙中崎編集長より紹介されて、時々拝見している。情報の更新も確実になされているだけでなく、リンクについても絞り込まれており、私としては、保険業界を深く知る上で大変貴重である。

「保険の広場」には、保険業界のビックバンに対する稲葉氏の考え方が現れ始めていると思うのは穿ちすぎだろうか。いずれにしても、一度お会いしてお話をお聞きできれば考えている。

保険屋さんのページ(36)

前回紹介した「保険の広場」の新サイトコーナーに「保険屋さんのページ」(http://www.nasuinfo.or.jp/FreeSpace/nasu/)が掲載されている。

このホームページは、現役プロ代理店が、契約者である皆さんの立場に立って「役に立つ」をモットーに、有益な情報を提供するページですとの文章で始まっている。

特徴として、生命保険無料診断、必要保証額無料試算、公的年金受取額無料試算がある。Web上に本人や配偶者のデータを記入、最後にアンケートと感想欄を埋めてボタンをおせば先方に届く。5日以内に電子メールで結果を知らせてくれることになっている。

最近インターネット上でのマーケティング方法に、インタラクティブあるいはワントウーワンという手法が着目されている。米国マーケティング協会が「メディアテクノロジーに裏付けられた直接的かつ対話的マーケティング手法」と定義している。

このホームページはインタラクティブマーケティングの実験サイトとも考えられる。ただ、ホームページ上からは誰がどのような目的で行っているのか今一つ判然としない。なぜなのか一度メールで問い合わせてみたい。いずれにしても、日本のホームページにはアメリカに比べ自己主張がない。アメリカ人の友人のホームページには、自分の経歴とどのようなことが出来るかが延々と書かれている。

保険屋さんのページは昨年の12月に開設され発展途上にある。先ほどのべた各種試算に以外にも業界最前線、事故の現場から、生命保険の現状といった項目がある。業界最前線に保険業界のGNPの話があり面白い。G(義理人情)N(泣き言泣き落とし)P(プレゼント)とある。ここで、保険ビッグバンを乗り越える新しいGNPを提案したい。G(グランドデザイン)N(ネットワーキング)P(プロセスイノベーション)である。

GNP(37)

冷戦崩壊後の大競争時代とは、一言でいえば、ビジネスの世界に、欧米流の考え方が、グローバルスタンダードとなって浸透していく過程である。日本流の集団主義とか相互扶助といった美徳を、ビジネスの世界に持ち込むことは大変困難になった。

今回の合意で、我国保険制度の根幹の1つである算定会制度の料率使用義務が撤廃され自由化される。算定会制度のなかで、ご存知のように、自動車保険での相互扶助の考え方がある。中年層がリスク以上の掛け金を払い、若年層に対し補助を行うことで、無保険車の増加防止を図る。保険料の中に一種の税金が含まれている。

保険は、リスクに応じて掛け金を払う私的契約といった欧米流の考え方から見たら、かなり異質であろう。善悪は別として、我国が経済的に生き残っていくためには、血が流れても、グローバルスタンダードに速やかに合せて行かざるを得ない。

今回の保険協議も、入り口はお決まりの外圧であった。米国の動機は、自国の権益擁護といった不純なものといえた。しかし、出口は橋本首相の日本版ビックバン構想による決着である。外圧による、あるいは、外圧を利用した改革から、自己改革のほのかな兆しが見える。保険業界として色々大変だが、前向きに捉えてほしいと思う。

保険業界では、今までG(義理人情)N(泣き言泣き落とし)P(プレゼント)というマーケティング戦略が取られた。これも合理的選択であった。規制により価格決定が制約されている業界では、当然非価格競争に走らざるを得ない。

図らずも金融ビックバンの先頭を走ることになった損保業界は、これから価格競争が行われる普通の業界となる。前に述べた、保険ビッグバンを乗り越えるG(グランドデザイン)N(ネットワーキング)P(プロセスイノベーション)が重要となる。

グランドデザイン(38)

金融ビックバンバンを乗り越え、企業を存続、発展させるには、先ず、各企業がグランドデザインを描くことが重要である。つまり、どのような顧客に対して、どのような満足を、どのような手段で提供するかである。コンサルタントの業界用語では、ドメイン(事業領域)の確定という。

自由化とはどのような事かを分かりやすく示した例に通信業界がある。電電公社時代の黒一色の電話機が、えらぶのに困るほどのバラエティーに富んだ様々な製品が出回りだした。また、通信サービスも多様化し、選択の幅が広がっている。自由化のテンポの遅い通信業界であるが、技術進歩の速さもあり変化が激しい。

保険業界と大蔵省との長い議論の末、徐々に自由化を行ういわいるソフトランディングで一旦は決まったが、今回の日米合意で一転ハードランディングというどんでんがいしとなった。これから、通信業界以上の変化が保険業界に訪れよう。

グランドデザインとは、変化に如何に的確に対応するかを決めることである。教科書的にいえば、外部環境の変化に適応して経営資源をアジャストするための指針である。

グランドデザインを考えるにあたって適切な本に、日本IBMの尾籠裕之氏著「21世紀の保険システム」保険毎日新聞刊がある。平成8年4月に発行されているのでソフトランディングのシナリオで書かれている。つまり、ここで述べられていることが、もっと前倒しでドラスティックに実現すると見てよかろう。

本書では、米国の成功事例が具体的に述べられており、結論で成功のための要素として@顧客の層別化、A顧客接点への情報と権限の集中、B顧客層にあわせた商品開発(契約者ごとに異なる商品)を上げている。まさに、先ほど述べたドメインの3要素である。

ネットワーキング(39)

保険ビックバンを乗り越えるための二つ目のキーワードとしてネットワーキングを挙げたい。

週間東洋経済の2月19日号は、損保経営についての臨時増刊号で、お読みになった読者も多いと思う。そのなかに損保プロ代理店の座談会が載っている。横のつながりを強化して情報共有等共同化を図りたいといった経営者と、そもその組識に縛られたくなくて代理店を始めた人が多いなかで組むというのも難しい、地域密着、独立独歩でやりたいとの経営者がおられる。

同じ座談会で、保険会社との交渉力等考えると、目標として10人のスタッフで10億円の収保を目標としたいとの代理店がおられる。2001年にむけて、大きく競争が激化していくなかで、代理店においては、一刻も早く、生業から企業へ脱皮する必要がある。

10億円が適切な規模かどうかは別として規模拡大が重要である。少なくとも、子どもが積極的に後を継ぎたいと思うレベルには達する必要があろう。そのために、中小企業は、特に、共同化、つまりネットワーキングを進めることが生き残りの1つの手段となる。

中小企業の経営強化策の定番に共同化があるものの、なかなかうまく行った例が少ないのも事実である。これは、今までの共同化は同質的仲間が集まって相互扶助的グループ、つまり日本的仲良しクラブが多かったためではなかったか。

これからの共同化は、アライアンスとかアウトソーシングとか言われるものが主流となろう。パートナーの方が早く安く旨くやれるもの、専門的能力がいるもの等は積極的に仲間にまかせ、自分は得意分野、つまり、コアコンピタンスに注力するパターンである。私は、これを7人の侍方式といっている。変化にすばやく対応するためには、ネットワーキングが必要となるということである。

プロセスイノベーション(40)

前にご紹介した尾籠裕之氏著「21世紀の保険システム」に、日本における成功している代理店の要因分析がなされている。成功要因として一番重要なものに顧客に関するリスク管理があげられている。保険でカバーされているものとカバーされていないものをつかみ、それにより保険選択を勧めるやり方で、適切に行うにはコンピュータシステムが必要不可欠と述べられている。

これからは顧客満足(CS)を高めるためには、顧客のリスクに応じて的確にコンサルティングしていく機能が重要となる。これまでのコミュニケーション重視型からコンサルティング重視型への脱皮が求められる。

90年にカール・ヤンソンの名著「真実の瞬間」が出て、日本でもCS(Customer Satisfaction )がブームになった。私が教えを受けている中小企業診断士の坂本力信先生は、日本でこのように重要な問題が、一過性のブームで終わったのは、CSにマネジメントが欠落したためで、CSからCSMへを唱えられ、実践的なコンサルティングを進めている。プロセスをCSの観点から徹底的に見直し、その結果でシステム化する、いわゆるプロセスイノベーションを行う必要がある。

ソニー生命に私の友人がいる。ご存知のように、各自が携帯パソコンを持ち、顧客の保険リスクを細かく管理し、コンサルティング営業を武器に伸びている。また、米国の退役軍人に顧客を絞り、自動車保険主体に業績を上げている会社にUSAA社がある。ここでは顧客からの照会には、原則1回で完了させているとのことである。

前にグランドデザインの重要性を述べた成功の第2法則、顧客接点への情報と権限の集中に関連する問題である。これらは、プロセスイノベーションが無ければ実現しない。

アジアのインターネット事情(41)

今年に入って日本のインターネットのホスト数は、イギリス、ドイツを抜いて世界第2位となった。ホストとはインターネット上での各種サービスを行うサーバーのことであり、これで普及の程度を一応判断できる。この調査はネットワークウィザード社が半年に一度行っており、インターネット上でデータ入手が可能である。昨年の7月から今年の1月にかけ、日本のホスト数は48%増加して73万4千となった。アジア地域はおしなべて高い伸びを示しており、マレーシアがこの半年で約3倍になったのを始め香港、インドネシア、中国あたりが倍増している。

確かにホスト数の絶対数では日本はアジアではトップであるが、実は人口当たりでみるとシンガポールや香港の後塵を拝している。もちろんこれらは人口が少ないことがあるものの、高い都市集積を活用した各種インターネット利用では日本を上回りつつある。

この1年のアジアにおけるインターネットの普及は目覚しいものがある。技術進歩の激しい技術の導入は、タイミングよく導入すると後発のメリットがある。特に、インターネット利用技術は昨年から今年にかけて旬になっており、それがアジア各地の高度成長と重なり合っている。日本以外のアジア地域は情報通信分野が未整備なことが幸いし、高い経済力を背景にインターネットの爆発的導入が始まりつつある。

これらの動きは、アジアでのコンピュータのプログラミング技術、WEB(ホームページ)制作技術やデザイン力等を大幅に高めている。特に、日本と中国を除けば、アジアは基本的に英語圏であり、アメリカ西海岸帰りの優秀な技術者が、母国で活躍しはじめた点も大きい。

アジア地域の変化が急激であることもあって、日本ではその辺の認識がうすい。依然として日本の技術をアジアに移転するといった考えを持っている行政や研究者も多い。実は、アジアと対等な関係でビジネスネットワーキングを組む時代に入った。

Look West(42)

3月28日小生が関係しているアジアビジネスセンターの主催で、マレーシアのマハティール首相を迎え、福岡で国際フォーラムが開催された。

特別記念講演「デジタル新世紀に向けて」のなかで、このコラムで紹介した最先端の情報技術(IT)を駆使した新都市開発、マルチメディアスーパーコリドー(MSC)について、利潤追求優先の欧米型でなく、多様な価値観が共存し人間中心のアジア型理念をここで実現したい述べた。

マハティール首相は、日本に学べといったLook East政策で有名である。しかし、最近の行動をみると、アメリカ西海岸の囲い込みに精力的に取組んでいる。Look Westである。

本年の1月13日首相は総勢100名を超えるミッションを引き連れロスアンジェルス入りした。14日ハリウッドに立ち寄った後15日より3日間シリコンバレーに滞在した。目的は、MSCの紹介と技術協力および投資の呼びかけである。

このミッションで首相はマイクロソフトのビル・ゲイツを始めサン、シリコングラフィックス、IBM、オラクル、アップル、コンパックといったグローバル企業のトップを取り込み、国際アドバイザー会議を組織することに成功した。

ビル・ゲイツはマハティール首相に対しその場でMSCにマイクロソフトのアジア統括本部を置くと言ったと伝えられている。

米国のインターネットホスト数の世界シェアは約60%である。第2位の日本が4%強からみると圧倒的強さである。これを見てもLook West政策の意味が分かる。西海岸抜きでは話が進まない状況である。

日本の伝統に和魂洋才がある。マハティール首相はMSCをアジア型理念で開発したいと述べているが、Look Eastとして和魂洋才を意識しているだろうか。

国家スマート計画(43)

アジア地域の国家情報化計画いわいる国家スマート計画の先達はシンガポールである。IT2000という計画を掲げ着々と情報化を進めてきている。シンガポール政府は現在国内全域に広帯域通信網を整備し、これを活用した各種マルティメディアサービスの提供を目指した「シンガポール・ワン計画」を進めている。

マレーシアのMSC(マルチメディアスーパーコリドー)は、シンガポールをライバルとして意識している。MSCで進められる具体的計画は、7つのフラグシップアプリケーションという形でまとめられている。

電子政府、多目的スマートカード、遠隔医療、遠隔教育、研究開発拠点、国際的遠隔製造網、国際的マーケティングセンターの7つであり、現在インターネットを始めとした先進的情報通信技術についてのメニューが包括的に用意されている。

この7つのアプリケーションを通じて国際的架け橋を構築する、つまり、ビジネスネットワーキングのハブ(結節点)にMSCをしようとの構想である。

MSC内に来年より首都移転が始まる。電子政府に向けての動きが本格化する。マハティール首相が福岡のフォーラムで冗談めかして電子政府の効用を述べた。「旅券はキオスクで発行したらいい。市民が役所に並ぶ必要もなるし、必要経費以外に机の下から余分なものを渡す必要もない」

電子政府による行政の透明性の確保とか、インターネットについての検閲は行わないといった政府公約を掲げ、自由がキーワードとなっている。シンガポールがインターネット上の有害情報の規制に走り出しているのにたいし、マレーシアのこの動きは本物であれば自由を尊ぶ先端技術者を惹きつけることになろう。

サイバー法(44)

現在、インターネットを始めとした電子ネットワークの拡大は、様々な新しく複雑な法的問題を生み出している。

これらの問題に対する各国政府の対応は、状況の変化が激しくかつ流動的なこと、従来の法律上の枠組みでは処理できない問題たとえば国境をたやすく越える電子ネットワークをどうするか等々、個別的対応を強いられており、処理が後追いにならざるをえなくなっている。我国での具体例では、電子マネーの実験プロジェクトで外貨との交換が発生した場合には両替商の免許が必要といった笑えぬ例がある。

先に述べたマレーシアでは、この分野でも一種のグローバルスタンダードを作ることで主導権を握ろうとしている。世界初のサーバー法である。

その具体的内容は、電子認証、マルチメディアについての知的所有権、コンピュータ犯罪、遠隔医療、電子政府等に関する複数の法律がパッケージになった包括的なものである。

この法律の直接的効果は、進出企業にとって法律的枠組みが与えられることで安心して進出ができることである。それに加え、間接的効果としてこの法律体系が事実上のグローバルスタンダードとなれば、それに合せて開発された製品やサービスが極めて強い国際競争力を持つことになることに留意する必要がある。

情報通信分野の競争は、誰が先に事実上の業界標準いわゆるデファクトスタンダードを握るかになってきている。マイクロソフト社によるWindowsといったソフトウエアやインテル社によるマイクロチップがデファクトスタンダードになることで大きな利益をもたらした。この分野は、収益逓増のメカニズムが働くと言われている。

これからデファクトスタンダードの争いの主戦場は、具体的なアプリケーションに移ろう。その法律的枠組みが日本が知らないところで決まっていくといったことにならないだろうか。

都市化する電網社会(45)

 「事実無根の中傷記事を書き込まれ名誉を傷付けられた」として、大手パソコン通信会社のニフティと電子会議室の管理者(シスオペ)、及び書き込みをした相手に対し損害賠償を求めていた女性会員に対して、東京地裁は5月26日、請求を認め3者に計50万円の支払いを命じる判決を下した。

 ニフティにはフォーラムと名づけられた電子会議室が約500ある。例えば、金融プロフェッショナルフォーラムからパチンコフォーラムまで幅広いテーマで活発な意見交換がなされている。今回の事件は現代思想フォーラム「フェミニズム会議」で、原告女性を繰り返し中傷するという皮肉なものであった。

 原告はニフティとシスオペに削除を要求したが、その後も問題発言が放置されたとして提訴した。この訴訟は提訴された当時より法律的にも社会的にも注目されていた。

 法律的には、通信役務を限定的に捉える立場の「限定説」と会議室の運営やホームページの管理等も通信役務として広く捕らえる立場の「包括説」との対立があった。今回の判決は限定説に立ち会議室に通信の秘密を認めず、運営側に管理責任を課した。

 今回の判決ではシスオペにも責任があるとしたのは、判決を見ていないので断言は出来ないが、ニフティの場合、シスオペに対して一定の報酬が支払われているためではないかと思う。

 電子ネットワークのコミュニティ、つまり、電網社会は今までは限られた人々による村のようなものであった。それが参加者の激増によって、いわば、急速な都市化が進んでいる。

 今回の訴訟騒ぎは個別の事情を抱えていたようだが、電網社会が都市化により参加者の顔が見えない、つまり、段々と匿名化する流れを象徴しているようにも見える。

電網社会の旧住民(46)

 電子ネットワークのコミュニティには、ネットワーカーといわれる住民が住みついている。ネットワーカーとは、電子ネットワークの草創期からその活動をやってきた人々である。

 パソコン通信の最大手ニフティは、今年の4月で10周年を迎えた。その間、大手パソコン通信だけではなく、草の根のパソコン通信が無数に活動を開始し、多くのネットワーカーが様々なコミュニティを作り出した。

 私を含め最近電網社会に加わった新住民と旧住民のネットワーカーとの間でコンフリクトや違和感が生まれつつあるように思う。前回、電網社会が都市化しつつあると述べたが、高度成長期に人口急増地域で、団地に入居した新住民と旧住民との間にコンフリクトが発生し、社会問題化したのに似ている。

 ネットワーカーは草創期を支えてきたという自負が強く、我々新住民からみるとなかなか近寄りがたい。オープンさを装いながら、クローズなコミュニティを形成しているケースも多い。

 また、ボランティア精神が活動の基本であり、電子コミュニティに商業取引を持ち込むことには拒否反応が強い。新住民とのトラブルはこの方面で目立つ。

 ネットワーカーのコミュニケーションの特徴として、感情を電子上で簡潔に伝える工夫をしている点がある。例えば、コンピュータで使用可能な限られた文字を駆使して笑顔マークを作ってそれを使っている。ビジネスの電子メールに笑顔マークが入ったりすると、新住民の私としては最初は戸惑った。

 電網社会の都市化に伴い、コミュニティの荒廃が生じつつあるのは事実である。新旧住民が協力して電子上での新しいクラブ組識が必要になってきている。

電網社会への参加(47)

読者の中でまだ電網社会を経験されてない方は、これを機会に参加されることをお勧めする。きっと、新しい世界が開けると思う。この経験は私生活だけでなく、これからのビジネスにも多いに役立つことになろう。

電子メールを使った電子ネットワークの仕組みには、自分で記事を読みに行くタイプと、電子メールで送られてくるものを読むタイプがある。マーケティング用語でいえば、プルのタイプとプッシュのタイプである。

読みに行くタイプには、パソコン通信が会員向けに運営している電子会議室やインターネット上にあるニューズグループがある。読みに行く手間はあるが、自分で読みたいものだけを選べる利点がある。

一方、送ってくるタイプには、メーリングリストの仕組みを使ったディスカッションメーリングリストがある。特定の宛先に電子メールを送ると、そのグループに登録してあるメンバー全員にその内容が送られることで擬似会議が開ける。

電子会議にしろメーリングリストにしろ、参加したらしばらく議論に参加せず、つまり、何も書き込まないでひたすら読むことが定石となっている。これをnetlurking(潜伏)と呼んでいる。

そのグループがどのような話題に集中しているか、また、どういうタイプの人々が集まっているのかといったグループの雰囲気をつかむ必要がある。個人的興味での参加の場合は、そのグループと意識の共有が出来るか、また、広報活動などビジネス目的の場合は、自社の顧客層とうまくマッチしているか等を判断してから議論に参加する。

 アメリカでは電網社会を活用したマーケティングで業績を伸ばした会社が輩出している。日本でもこれからこの活用が本格化していく。しかし、電網社会で成功するには、それなりの作法がいる。作法を知らないと大きなダメージを受けることもある。

電網社会の作法(48)

 インターネットの規制には慣習的に出来あがったAcceptable Use Policy,略してAUPがある。草創期のインターネットのAUPでは営利目的の利用を禁止していた。この規制は商用接続業者(プロバイダー)が現れることで無くなったものの、その雰囲気はインターネット上のコミュニティには依然色濃く残っている。

 インターネット上で遵守すべき行動規範は、ネチケット(ネットワーク上のエチケット)と呼ばれている。その中でも最も注意すべきは、相手が求めていない宣伝メールを送ってはならないというルールである。

 無差別に大量の宣伝メールを送り付けることは、スパミングと呼ばれ、好ましくない例の筆頭にあげられている。しかし、この方法は極めてローコストで多数の人々に宣伝できることから、その誘惑に勝てない人が時々現れる。 その古典的例で有名なのは、1994年に起こったアメリカ・アリゾナ州の弁護士、ローレンス・カンター夫妻の事件である。夫妻は、外国人永住権(グリーンカード)抽選の申込代行を行う旨のDMを、約6000のニューズグループ(NG)へいっせいに投稿した。

 その結果、カンター氏には2万を超える抗議の電子メール(アメリカではフレームと呼ばれる)を受け取るはめになった。そのうえ、DMを発送したNGにも抗議が殺到し、ついには、プロバイダーから契約違反による締め出しをくうこととなった。

この例は、電網社会の住民の行動様式を端的に現している。 インターネットの住民、特に旧住民は押し付けがましい広告には強い拒否反応を示すが、自分が必要とする情報には貪欲である。これをよく理解することがインターネットをマーケティングに利用するための第一歩である。

 また、この事件は3年前に既にアメリカでの電網社会がここまで進んでいたことを良く示している。彼我の落差に驚くとともに、アメリカを見ていれば電網社会の先が見えるともいえる。

ネットワーク組識(49)

約1年前、このコラムでホロンとインターネットという題で、人間組識のあり方がネットワーク型へと大きく変化している、つまりパラダイムシフトが起こっているのではないかと述べた。

 この1年間いくつかの組識にかかわって、私自身それを実感することが多い。一言で言えば「ヒエラルキー」から「ネットワーク」へのシフトである。このコラムのテーマが「ビジネスネットワーキング」であり、このへんでネットワーク組識について小生の狭い経験ではあるが、何回かに分けて述べてみたい。

ネットワーク組識は、国や地域、資本、企業、業種、企業規模を超えて、企業やグループまた個々人の間で形成される。典型的例として、国際企業や大企業間の戦略的業務提携がよくあげられる。

ハイテク企業がグループを形成し、技術リスクや資金リスクを分散しながら、デファクトスタンダードを目指してしのぎを削っている。また、コンビニとメーカーがPOSデータを共有して、売れ筋に絞った商品を、在庫ゼロで供給するといった製販同盟の例もある。

ネットワーク組識の特徴は、メンバーが機能的に結合しており、それぞれ対等で自立的であること、メンバーがバラバラにならないように、統合的価値いわいるドメインコンセンサスを共有していること、不確実性の高い環境へうまく適応でき、範囲の経済や速度の経済を志向すること、従って、効率性よりも創造性や革新性が重要視されるところにある。

この特徴から見て、ネットワーク組識は、まさに世紀末にかけて我国の企業組識を考える上でのキーワードの1つである。ネットワーク組識は、ネットワークであるがゆえに、最近のインターネットを始めとした電子ネットワークの急進展により、その基盤を確立しつつある。

電子ネットワークの急進展は、中小企業のネットワーク組識にも大きな変化をもたらしつつある。次回からそれを述べてみたい。

異業種交流グループ(50)

中小企業におけるネットワーク組識の代表に異業種交流グループがある。1970年に、大阪に始めて本格的な異業種グループが設立され、現在、約2900グループ、12万社が参加している。現在も増え続けており、中小企業事業団が把握している数字によると、96年度も約900グループ、4、600社の増加がみられた。

1980年代に国による本格的に取り組みが始まり、全国に急速に広がりはじめた。1988年にはその基本法である「融合化法」が施行され、1995年「中小企業創造活動促進法」にそれが引き継がれている。

この法律では、異業種交流は、交流段階、開発段階、事業化段階、市場展開段階の4段階を順に進むことを想定し、段階ごとに交流支援、補助金、貸付金、フェア開催といったような助成を政府が行っている。

ただ、大多数のグループは交流段階にとどまっており、国が想定したような成果は殆ど上がってないのが実態である。いくつかの異業種交流にかかわってみていえることは、殆どが勉強会でその後の飲ミュニケーシュンを楽しみにといったあんばいである。

我々中高年は、大義名分があれば気持ちよく飲めるといった悲しいサガがある。異業種交流が、表面的には成果をあげない中で、活発な理由の1つがこれではなかろうか?

ダイヤモンド社「ネットワーク組識の行動革新」に、組識がシナジーマキシマムへ向かうために、どう情報技術を導入し活用したら良いかが書かれている。それによると、情報共有・情報活用の前に意識共有が大切だとある。いくら仕組みを作っても、「自分たちは仲間だ」という意識共有がうまく行かなければだめだと述べられている。

異業種交流の意識共有のレベルは高い。電子ネットワークによる情報の共有化が効果を生む素地はある。それを目指して、小生はあるグループでネットワーク化のお手伝いをしている。

首都圏ビジネスコミュニティ(51)

小生が参加している異業種交流グループに、首都圏ビジネスクミュニティ(MBC)がある。95年秋に結成された、比較的新しいグループである。

会長の南出さんは、(株)オーパシステムエンジニアリングの社長であり、長年異業種交流活動にかかわってこられている。MBCは、南出さんが10数年前に作ったグループを解散して再出発して作られた。

再出発の動機は、時代が激しく揺れ動いているにもかかわらず、なかなか自ら行動しない他力本願の人々が多いことに、危機感を抱いてのことである。南出会長が10数年かかわっていたグループは、大半が中小企業、業種として製造業であり、地縁で結ばれていた典型的異業種交流グループであった。

MBCは、時代の閉息感を打破するために、今までの考え方ややり方を自ら否定し、再出発することになった。その最大の特徴は、中小企業・製造業・地縁という異業種交流のキーワードを捨てたところにある。

大企業の管理職が積極的に参加し、業種はソフトウエア、コンサルタント、流通等多彩であり、参加企業も首都圏へ広がっている。地域、立場、年齢、企業の大小を超えたところで、新たな価値を生み出す実験組識として作られている。

現在の活動としてMBCは、以下の3つを中心に進められている。

@通信ネットワークを利用した情報交流の場をつくることで、人的ネットワークの質的向上を目指す、ネットワーク活用実験、Aニュービジネスのコンセプト探し、具体的には、インターネットや環境関連ビジネスの検討、B中小企業経営者と大企業中高年ビジネスマンの知的融合実験、つまり、組識を離れ自由で対等な立場で、お互いの持てるスキルを発揮できれば面白いことが生まれるのではないか、といった3つのテーマに取組んでいる。

mbc-pnp(52)

前回紹介した異業種交流グループ、首都圏ビジネスコミュニティ(MBC)のネットワーク活用実験を、小生が世話役になって進めている。

現在40名のメンバーのうち、34名がE-mailのアドレスを持ち、これをメールリンクで結んでいる。80%以上のメンバーが電子化されたグループとして、異業種交流では異色の存在となっており、他のグループからの問い合わせも多い。

昨年の2月、MBCの電子ネットワーク化プロジェクト(mbc-pnp:MBCパソコンネットプロジェクト)を発足した。先ず、アンケートを実施したところ、17名が電子メールアドレスを保有していることがわかった。異業種交流グループとしては、大変高い保有率であり、意を強くして先へ進めることになった。

大きな問題は、中高年のパソコンアレルギーを、どう解消していくかであった。何回もの話し合いや電子メールの操作についての講習会等を行って、なんとか、昨年の5月13日、第一陣のメーリングリスト(ML)が16名の参加者で発足した。

その後、徐々にメンバーが増え、現在34名となり、今年中には全員参加も可能になってきている。電子ネットワークのメリットを最大限生かすには全員参加が望ましい。

企業組識の場合は強制的に全員参加が可能であるが、自由な参加がベースにある異業種交流のようなネットワーク組識ではそうはいかない。ただ、活動の過程で、付いて来れないメンバーが4名脱会する一方、電子ネットワークの将来性に期待して、新たに7名が入会するなど、新陳代謝が起こりはじめている点は期待できる。

MBCの活動については、もしご興味があれば、ホームページ(http://www.at-m.or.jp/~asami3/MBC/)をご覧いただければ幸いである。