xDSL(77)

前回,高速インターネットサービスを受けるために筆者がCATVを導入した旨お話したが,アメリカでは既存の電話線(銅線の加入者電話回線)で高速インターネットサービスを提供するADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)が実用段階に入っている。

「Asymmetric」とはご存知のように非対称という意味であるが,電話局から利用者に向けた下り方向では最大12Mbps程度,逆に上り方向では最大2Mbps程度のデータ転送を非対称に行うことから名づけられている。個人ないしSOHOなどの一般的Internetアクセスでは,下り方向の通信量が圧倒的に多いことを活用している。

最近では,両方向で同じ通信速度を持つHDSLや,さらに高速なVDSLなどの規格も決められつつあり,これらを総称してxDSLと呼んでいる。

ITジャーナリストの小池良次氏によれば,99年は米国でADSLがブームになりそうで,一般家庭や事務所で月5〜60ドルぐらい払えば、256kや389kbpsが使え,2〜300ドルも出せばフルADSLで8Mbpsぐらいまで使えるとのことである。詳しいサービス内容が分からないものの,この料金は我が国の数十分の一となる。

我が国では,NTTがファイバーツーホームというスローガンで,21世紀初頭までに全国の家庭に光ファイバーを導入する計画を推進中である。我が国はアメリカより光ファイバーの普及が進んでおりそれが足かせとなって,xDSLについては細々と実験が進められている程度で,この面でもアメリカと大差がつき始めている。

NHKが巨費を投じて開発したハイビジョン技術(高品位テレビ)は最先端を走っていたものの,テレビ放送デジタル化の波に呑まれてしまったことを思い出させる。

 

S/N比(78)

最近筆者が参加しているメーリングリストで,相次いで「個人的メッセージが多いのではないか」との批判がおこって,それをめぐり議論が活発に行われた。結論として個人的メールはメーリングリストに発信せずに個人宛てにするという原則を確認することになったが,電子メールがコミュニケーションの一般的手段になりつつあることの反映であろう。

1年前までは電子メールがまだ珍しく,平均的ユーザーでは一日数通のメールをやり取りする程度であった。この程度であれば,情報のやり取り自体を楽しむといった風情で,役に立たないメールが混じっていてもあまり問題は起きない。

しかしながら,これだけ電子メールが仕事などで不可欠のツールとなるとそうは行かなくなりつつある。一日数十通を受け取るヘビーユーザーもかなりの数にのぼっており,この場合,受け取るメールの情報の質が問題になる。

筆者の場合,この一週間で受け取ったメールの数は130通であり,一日あたり約20通となる。たまたま,この一種間旅行に出ていたが,パソコンは携帯したものの最後の3日間地方ホテル滞在ということで,メールの送受信が出来ず数十通のメールが溜まってしまいチェックが結構大変であった。

一方で,あまり情報の質にとらわれていると肝心な情報を見落とす恐れが出る。最初に述べたメーリングリストの議論の中で,前にこのコラムでご紹介したASIA NETWORK RESEARCHの会津泉さんが以下のように述べている。

私は、金やダイヤモンドと同様に、「価値ある情報」というのはある程度の「ゴミ」のなかから自分で見つけるものだと思っています。信号・雑音比(いわゆるS/N比)を低くすることは、努力はするけど、そればかりに気をとられていると、案外大事な情報を見落とすように思えるのです。ここの兼ね合いが難しいですね。

早慶戦(79)

早稲田大学232対慶応義塾大学51,早稲田の圧勝。これは,7月11日に検索エンジンyahoo JAPANでホームページを検索したヒット件数である。友人がある大学の経営学部で教えており,その友人から特別講義を依頼された。本コラムのテーマである「ビジネスネットワーキング」という題で,電子メディアとビジネスの関係やビジネスにおける電子メールの使い方などについて講義をした。

せっかくの機会なので,講義の中で,学生にアンケートをお願いした。電子メール,携帯電話,パソコン,ホームページの保有率といくつかのコミュニケーションの場面を想定して,メールと携帯のいずれかを使うかといった簡単なアンケートをとった。アンケート結果は,その場でエクセルを使って集計,それをプレゼンして議論した。

アンケート結果では,予想以上に学生の電子メールの普及が低かった。そこで,大学の情報化について相当バラツキが有りそうな感じがしたので少し調べてみた。その結果の一つが,始めにお話した早慶戦である。

筆者の息子が早稲田大学に在学中で,その話によると,早稲田では入学と同時に,各自に電子メールのアドレスを渡しているそうである。それに加え,伝統的に早稲田の校風として目立ちたがりが多いといったことも幸いして,ホームページによる情報発信数が,東京6大学で堂々トップを占めたのではないか。

一方,慶応義塾大学は,早稲田,東大,明治に次いで4位に甘んじている。慶応は,大学の電脳化には極めて熱心とのイメージがあったので意外な感じがする。中でも慶応藤沢キャンバス(KFC)は,教育システムのユニークさとともに,インターネットの活用では群を抜いているとの評判がある。大学が笛を吹けど,学生踊らずといったところか?

エージェント(80)

「たびCAN」http://www.tabican.ne.jpというホームページがある。いい旅発見!探せて,選べて,予約も出来る!というキャッチフレーズでインターネットを使ったツアーと航空券の予約システムで注目のサイトである。

WEBにアクセスして行き先,旅の目的,期間,出発日,出発地,エアライン,予算を記入すると,この組織に参加している旅行業者のパッケージツアーの中から条件にあったものを抽出して表示してくれるので,そこで予約を入れられる。

本システムはIBMで開発されたAgletsという移動エージェントシステム が使われている。エージェントとはその名の通り,利用者の代理をするプログラムであり,「たびCAN」にアクセスし条件を入れると作られる。

ちょっとわかりにくいのでIBMの説明を引用すると,あなた用のエージェント(代理人)が「たびCan」サイト内に作られます。このエージェントはあなたの指示に従い、商品検索や新着情報のウォッチを行ないますとある。

このシステムに参加可能な商品にはいくつかの特徴がある。一つはこのツアーパッケージのように商品選択の理由が価格だけでないこと,もう一つは参加する企業間にある程度相互補完関係があることが条件になる。

最近,筆者はパソコンをある大手メーカーが開設しているインターネット上のアウトレットモール(在庫処分の直販店)より購入した。ただ,パソコンの場合,価格は店にとって最大機密で,このような特殊なケースしか公開されない。

仮にパソコンをこの「たびCAN」のようなシステムで販売したらどうなるか?価格が決め手の商品なので,止めどもない価格競争が行われることになる。したがって,そのような商品はこのシステムになじまない。

ところで,保険という商品はどうか,次回考えてみたい。

NetQuote(81)

アメリカに,4000を超える保険代理店と100を超える保険会社が参加して,インターネット上で保険の見積もりサービス(insurance quote service)を行う,NetQuoteというWEB(http://www.netquote.com/)がある。

NetQuoteの説明によると,1989年に設立されたアメリカで最も古く,また,最も大きい保険見積もり会社で,WEBにアクセスして所定のフォーマットに記入すると,3,4時間以内に3ないし6の見積もりが届けられるとある。

詳細なフォーマットが,自動車,住宅,生命,医療,企業といった保険種目ごとに用意され,NetQuoteでは,それを利用者から受け取って仕分けし,保険代理店等に流す。代理店等は,見積もりを電子メール,FAX等でお客に回答する。

このWEBのコンセプトは,FAST,FREE,EASYで,既に100万件以上サービスしたとある。これから見ると,前回「たびCAN」でお話した,エージェントといったソフトがNetQuoteで使われるのもすぐそこといった感じがする。

アメリカでは,保険の通信販売が急速に伸びており,生保の新規契約では主要チャネルの代理店と肩を並べるところに来ている。また,通信販売のうち以上のような見積もりサービスの割合は,10〜20%に達しているもようである。

たびCANでは旅行業者,NetQuoteでは保険代理店等がスポンサーとなっており,インターネット上のこのような情報仲介サービスは,今のところ既存のチャネルとの共存共栄を図るところも多い。

この様なシステムは,様々な条件で様々な価格の商品サービスが存在することが条件である。その点でこの様な保険見積もりサービスが,我が国ですぐ登場するとは考えにくい。しかし,今回の東京海上の新しい自動車保険などをきっかけに,多様化が色々進めば意外と早く登場するかもしれない。

Win98(82)

7月25日,マイクロソフトの最新パソコン用OSウィンドウズ98日本語版が発売となった。30日新幹線に乗っていたら,電光ニュースで,2日間で発売本数が25万本に達したというIDCジャパンの調査結果を報じていた。

米国の販売も好調で,マイクロソフト自体も,今回の98はウインドウズ95の機能アップにとどまるので95の時のようなブームにはならないと踏んでいたようで,95を上回る売れ行きはうれしい誤算のようだ。

3年前の11月23日,95発売は社会現象となり,秋葉原の大変な熱気がテレビ中継されたほどだった。当時,95の前版であるWin3.1搭載パソコンは約5百万台に留まっていた。それが今,95搭載のパソコンが2千万台に上っている。

これがうれしい誤算の背景のようだ。パソコンが思いのほか家庭に浸透して,かなりのユーザーが今回バージョンアップに走ったようだ。これに関連して,友人の東京マルチメディアサービス浅見一郎氏より以下の注意を戴いた。

発売前のアナウンスではインストール作業はウィザードで簡単と言われていました。しかし,当社の18台のマシンでは12機はウィザードでOKでしたが、6機は手作業を余儀なくされました。結論として、電算機本体より周辺機器(ビルトイン、後付け共)に大きく影響されるようです。これから、アップグレードを予定されている場合は下調べをしっかりやっておいた方が良さそうです。

今回もとりあえず不完全なまま発売し,ユーザーとのやり取りの中で,段々ブラッシュアップしていくというウィンドウズ一流のやり方が踏襲されているようだ。ウィンドウズについて,様々な辛口のパロディを多数掲載したWEBがあるように,ユーザの不満もかなり高い。

これらを踏まえて,98を何時導入すべきは次回考えたい。

アップグレード(83)

ウィンドウズ98を前版の95に上書きする、いわゆるアップグレードに悪戦苦闘している個人ユーザーが多い。私の友人の場合も、最初は快調に98が動いていたものの突如動かなくなるという例もあり、一筋縄では行かないようだ。

この友人は、マイクロソフトの初代OS(MS-DOS)からのヘビーユーザーで、MS-DOSの知識を駆使して何とか動くようになった。95になって始めてパソコンに触ったユーザーには、こうなったらにっちもさっちもいかなくなる。

さて、普通の工業製品でこのようなことが起こったらどうなるであろうか?クレームがメーカーに殺到して、下手をするとそのメーカーは倒産してしまうといった事態も考えられよう。パソコンソフトはどこが違うのだろうか?

パソコンソフトは、一応完成したら取りあえず公開して、ユーザーのフィードバックでブラッシュアップしていくという文化がある。マニアが宝捜しをするといった風情で、楽しみながらバグ(ソフトの欠陥)を見つけていく。

どうもマイクロソフトは、この文化に甘えているのでは無いかと思う。一部のマニアのものから、家庭にもビジネスにも必需品なりつつあるウインドウズソフトが、このようなことでは、ユーザーの立場から考えると大変困る。

私自身はビジネスユーザーであるので、最初のヴァージョンには、自衛上、絶対手をつけないことを原則にしている。バージョンアップを皆がして、ファイルのやり取りに色々不都合が出てくる時まで待つぐらいが正解ではないか?

パソコンは、98の発売やスリムで高性能な携帯型サブノートの新製品ラッシュを見ると、ビジネスユースを考えた場合、一つの到達点に達したように思う。状況をもう少し見極めて、半年後ぐらいに、ウインドウズ98がプレインストールされたスリムノートを買うつもりである。

 

 

 

 

Money (84)

マイクロソフトより個人資産管理ソフト「Money」がWindows98と同時発売された。明治生命が無料の45日間体験版を配布しているので,早速当社ホームページを通じ申込,入手して使ってみた。

マイクロソフトの説明を引用すると「マイクロソフトマネーは,毎日の収支から将来のライフプラン作成まで個人の資産管理に必要なすべての機能を装備した,全く新しいパーソナルファイナンスソフトです」とある。

明治生命は,とりあえず体験版を無料配布し,9月より明治生命版「Money」を有料配布する。三菱銀行もほぼ同様の動きをしており,保険,銀行,証券等入り乱れて顧客囲い込みの有力手段として,マイクロソフトとの共同開発が進みそうである。

明治生命はオリジナル機能として1.保険相談「保険設計」、「ライフプランシミュレーション」、「相続税診断」、「損害保険のお得な入り方」など 2.投資相談3.明治生命オリジナル介護シミュレーションシステム 「ケアマネくん」の紹介が入る。

Moneyは,アメリカではユーザー2200万人といわれ,個人資産管理ソフトのスタンダードになりつつある。アメリカでの普及は,我が国では個人所得税が源泉徴収であるのに対し,申告制であるため家計の管理が必須となっていることが大きい。

筆者が使ってみた感じでは,特に家計の資産・負債をもれなく拾い上げ,立上げるのが大変で,我が国では上に述べた事情も考えると普及がそう一気に進むまい。ただ,我が国には独自の家計簿文化があり,そこを攻めればうまく行くかもしれない。

保険業界の活用方法としては,代理店組織で代理店版をつくり,有力顧客に配るといったことが考えられる。面倒なソフトの立上げを代理店のファイナンシャルプランナーが支援することで,顧客情報の入手と囲い込みを図る。

ポータル(85)

検索サービスをインターネット上で提供しいる米Yahoo!は,最近オンラインコミュニティサービス「Yahoo! CLUBS」を開始した。これは,登録すれば無料で,インターネット上に掲示板やチャットなど仲間内のコミュニティを形成できる。

その直前に世界最大のYahoo!を2番手で追っている米Exciteが同様なサービス「Excite Community」のβ版(テスト版)を公開した。それに先立つ8月11日,同じく検索大手のLycosがコミュニティ関連会社の大型買収を発表している。

WEBページ構築や電子メールサービスを提供してコミュニティサイトを運営しているWho Whereを1億3000万ドルで買収したものである。Who Whereは1000万人以上の会員を擁しており,Lycosはその顧客の囲い込みを目指す。

本コラム(70回)でご紹介したICQを開発したMirabills社も,AOL(アメリカンオンライン)に2億8700万ドルで買収されるなど,このところアメリカでは顧客囲い込みを狙ったコミュニティ関連企業の買収劇が相次いでいる。

最近インターネット界ではポータル(Portal 表門)がキーワードの一つとなっている。インターネットのホームページにアクセスするときの入り口という意味で,以上のべた動きはポータルを狙っての様々な動きの一部である。

広告収入をベースに情報サービスをインターネット上で行うためには,そのサイトがポータルになることが必須の条件となっている。莫大な投資を回収するためには,数百万人では足りず,数千万人のユーザーを獲得することが必要となる。

利用者の立場から見ると,膨大になった情報が整理されるというメリットだけでなく,無料で様々なサービスが利用できるメリットがある。次回はこれら無料サービスの中心であるコミュニティサービスを具体的に見てみたい。

コミュニティサービス(86)

多くのポータルサイトで様々なオンライン無料サービスが登場している。前回説明したように,ポータルとはインターネットの玄関口を目指すサイトで,その集客の手段として,電子メール,ホームページ,掲示板,チャット等を無料で提供する。

その中で,それらを統合してグループウエアとして提供するコミュニティサービスが最近提供され始めた。8月17日,米Exciteが「Excite Community」がβ版(テスト版)を提供,それに続き米Yahoo!の「Yahoo! CLUBS」が始まった。

大企業では情報の伝達や共有化,スケジュールやワークフローの管理等を目的にグループウェアの導入が進んでいる。代表的なソフトウェアにNOTESがあげられるが,その導入にはかなりのコストと手間暇がかかる。これが無料で提供される。

外国をふくめバラバラに別れた家族が絆を強めるとか,同好会の連絡や議論に使うなど個人的使い方だけでなく,ビジネス用にも使えそうである。特に,SOHO系のビジネスや臨時のプロジェクトチームには一種のイントラネットとして活用できる。

「Excite Community」でその内容を見てみたい。先ずリーダーが自分のサイトを公開するかしないか決め登録する。入り口になる「Welcome Page」が立ち上がる。このホームページはカスタマイズが可能で個性を出せる。

サービス内容は「Discussions」「Calendar」「Attachments」「Bookmarks」「Contact List」等で,グループのセットアップについても工夫がされている。NOTES等本格的なグループウェアと比較しても遜色がない。

このサービスは現在テスト版なので正式版が出たら,筆者のコンサルティンググループでも使ってみたい。ただ,本サービスではセキュリティレベルには不安がないわけでないので,重要なやり取りは避ける必要があると思われるがーー

 

 

ネット株取引(87)

インターネット上で株取引が出来る,証券取引仲介サービスが相次いで立ち上がっている。8月31日,岡三證券,新日本証券,和光証券がホームトレードサービスを開始したが,システムを共通化してコスト削減を図ったところに特徴がある。

日本興業銀行と3証券が共同出資するコンピュータ開発運用会社がシステムを立上げ共同利用する。インターネット上の決済プロトコルであるSECE(Secure Electronic Commerce Environment)を証券業界で初めて採用し安全性を確保した。

岡三が「在宅三昧」(http://www.okasan.co.jp/),新日本が「新日本ネットトレード」(http://www.shinnihon.co.jp) ,和光が「和光証券ホームトレード」(http://wako-sec.co.jp/)となっており,当面無料でサービスを提供している。

サービス内容は,WEBにアクセスして,売り買いの注文,注文・約定照会,時価・チャート,会社四季報等の情報提供,取引の履歴,預かり資産の明細・資産評価の他,投資信託やMMFの取引もネット上で実施する。

6月には,ソフトバンク(株)はオンライン証券取引サービス会社大手の米E*TRADE社と合弁会社を設立するなど,異業種による参入も始まっている。99年からの株式売買手数料完全自由化をうけ,当面,手数料半額を当社は目指すようだ。

ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は「インターネットと金融サービスは親和性が高い」とし,物流が不要な情報サービスであること、情報収集力が必要であること、商品が多様で検索の必要性が高いことなどを理由に挙げたとのことである。

筆者は,証券営業マンとのやり取りは時間の無駄と考え,プッシュホンによるホームトレードの愛用者であったが,手数料が変わらないのは納得が行かなかった。やっと,自己責任によるネット取引には安い手数料という合理的体系が実現する。

 

 

e-busines(88)

9月中旬,日本IBMによる幕張メッセで行われた展示会「IBM総合フェア'98」をたずねた。パートナー企業220社も参加し、ハード・ソフト、業種別ソリューションといったIBMの提供するサービスが一堂に会している大規模なものである。

最近のIBMは,「e-busines」をキーワードにキャンペーンを行っている。「e-busines」とは,「インターネットを仕事の媒体として価値を引き出す方法」あるいは「デジタルネットワークを活用して行なわれるモダンな業務や商取引」と定義する。

IBMの会長兼CEO Gerstner氏は,インターネットが社会を急速に変えて行く状況は,「人生において1度あるか無いかの千載一遇のチャンスだ」と述べ「e-business」を通してネットワークコンピューティングがもたらす変革を語った。

展示会のコンファレンスがあり,「ニューイングランドフィナンシャルにおける保険e-busines」に参加した。同社はアメリカの大手生命保険では初めて,本格的にインターネットを活用したビジネス展開を始めている。

顧客はカスタマイズされた資産管理ソフトである「e-navigator」をインターネットと接続して使う。多忙で時間のない消費者を支援するというコンセプトで,自分の財務を開示して電子メールによる専門家のアドバイスも得られる。

保険だけでなく株式,投信,年金,クレジット,銀行等の会社がプロバイダーとして戦略的同盟を結んでおり,金融サービスのワンストップショップを目指している。金融サービスと「e-busines」ドッキングの好事例といえる。

「e-navigator」は大変複雑で高機能のソフトで,アメリカではセルフサービスでこの様なソフトを顧客が使うとは驚異的である。自己責任社会の厳しさを垣間見た感じがする。日本での普及にはかなりの工夫が求められそうである。

 

 

電子マネー実験(89)

渋谷で,電子マネー「VISAキャッシュ」を利用した実用化実験が始まっている。筆者は住まいが井の頭線沿線なので,週に何回は渋谷を歩いているが,世界最大規模と鳴り物入りの割にはなかなか実験現場に遭遇しない。

7月中旬より実験が開始されたと全国紙にも地元ミニコミ紙にもPRされているが,不思議なことに電子マネーを入手する具体的方法が触れられていない。やむなく,VISAのWEBにアクセスし入手方法を調べた。

統一された窓口はなく,それぞれの参加会社がそれぞれの形で参加しているようでなかなかわかりにくい。そのなかの西武百貨店にあるセゾンカウンターを訪れ,申込用紙に記入し,3000円の使い捨て型の「VISAキャッシュ」をやっと入手した。

窓口の女性担当者によると,実験開始直後は相当売れて,9月末で数百枚が発行されており,一応順調との説明があった。ただ,西武百貨店では使えませんがと窓口の女性がすまなそうに渡してくれたのが印象に残った。

カードにはICが埋め込まれており,使い捨て型と何度も現金が補給できるリローダブル型があるが,本命は,クレジットカードや銀行のキャッシュカードと一体になったカードである。現金の補給は専用のキャッシュ入金機で行う。

セゾンでもらった加盟店ガイドブックをたよりに,早速ドトールコーヒーに入った。ところがそのお店では端末がまだ設置されておらず,結局現金で払うはめになった。個人的な感想としては,ちぐはぐが目立つ実験という感が否めない。

やむなく,ガイドブックに載っているお店のいくつかに電話して確認,やっと,ケンタッキーフライドチキンにたどり着き使うことが出来た。次回は,電子マネーの使い方とその全体像をお話して見たい。

 

 

電子マネー(90)

前回、渋谷の「VISAキャッシュ」電子マネー実験についてお話をしたが、その続きをしてみたい。実際の使い方であるが、レジでカードを提示すると店員が端末に差し込み購入額と残高を表示、私が確認ボタンを押すことでOKである。

ただ、レジと端末が実験ということで連動しておらず、店員にとっては2度手間で客も待たされることになる。現金を持たないで済むというメリットだけで、こんなカードが使われるだろうかとちょっと疑いたくなる。

ところが、電子マネーの将来像を見据えると、様々なグループが、一見すると本当に役立つのか疑問に思える電子マネーに,血道をあげる理由が見えてくる。電子マネーのデファクトスタンダードを押さえた者が、電子商取引のインフラを押さえる。

電子マネーには「VISAキャッシュ」のように実際の店舗で使う実店舗型、インターネット上での仮想店舗で使う仮想店舗型、どちらもOKの混合型がある。また、マネーの流れから転々流通するオープン型と預金にその都度もどるクローズド型がある。

これらは、現在、多機能型ICカードに収斂しつつある。ICカードには、カードのためのOS(基本ソフト)が組み込まれ様々な機能を果たす。OSではVISAの「JAVAカード」とMondexの「MULTOSカード」がしのぎをけずっている。

OSが組み込まれることで、複数のソフトウエアや大量の個人情報がカードに格納できる。この動きと平行して電子決済の標準化、携帯電話の標準化、各種端末の仕様の統一、暗号の標準化等が急速に進んでおり、これらがICカードに統合される。

最近、金融業とコンビニ等流通業が急接近している。多機能ICカードをベースに、個人情報を両者が共有するとどうなるか考えてほしい。保険業界も大きな波が押し寄せつつあることが実感できると思う。

 

 

デビッドカード(91)

東京海上がデビッドカードシステムに参入することで注目されている。たまたま電子マネーの話題がこのコラムで続いているので,電子マネーの当面の好敵手,デビッドカードについて考えて見たい。

デビッドカードは別名銀行POSというように,銀行や郵便局のキャッシュカードで買い物ができる。殆どの人が持っているキャッシュカードで決済できることから,大変注目を浴びている。

業界では,高額商品はクレジットカード,小額決済は前回触れた電子マネー,その中間がデビッドカードといった棲みわけ進むのではないかと言われている。ただ,デビッドカードは口座の残高が利用限度額になり,中間の利用に留まる保証はない。

小売業者側にとってクレジットカードとの比較でのメリットは,入金の速さと手数料の安さである。消費者のとっては先ほど述べたように,カードを作成しなくてもよく,また,預金残高さえあれば利用限度額がない。

普及の課題は,カードを読み取る端末をどこが負担するか,既存のPOSをカードシステムと連動させるためにコストがかかること,残高照会に時間がかからないように高速な通信回線を用意しなければならない点等がある。

私自身はまだ現地で確認はしていないが,本年9月より京都で河原町を始め主要12商店街が参加して,大規模なデビッドカードの実験が始まっている。日本デビッドカード協議会では来年秋の本格展開にむけ準備をすすめている。

東京海上は,先ず,代理店からの集金業務に活用し,将来的には顧客からの集金にも活用したいとしている。損保各社は来年に向けて,代理店清算業務の廃止について取り組みを始めており,その決め手の1つになりそうである。

 

 

ホームページ(92)

「ホームページには,私のホームページのホームページを配置しています」ホームページという言葉が色々の意味で使われている。最初の用法が本来の意味,2番目が「和製英語」,3番目が最近の欧米の用法である。

最近その点を解説した「ウェブページ推進運動のページ」http://village.infoweb.ne.jp/~roadist/webpage.htmを発見したので,それを参考にこの際正確に「ホームページ」の用法を確認しておきたい。

その冒頭を引用すると「現在、日本人が『ホームページ』という言葉を使う時、本来の「home page」と違った意味で使われることが多いです。あなたが見ているこのような画面は、本来は『ウェブページ』というものです」とある。

「ホームページ」の本来の意味は,ブラウザ(閲覧ソフト)をたち上げたときに最初に表示されるページを表していた。ただし,この用法は世界的にも最近あまり使われなくなっている。ブラウザのツールバーに家のマークがあるがその意味である。

最近欧米では,通常,トップメニューや目次が表示されている表紙のページを「home page」といっている。それが,日本では最近ページ全体をホームページと呼ぶようになってきた。「やさしいホームページの作り方」といった用法である。

私としては,いわいるホームページに言及するときに,一般向きの文章には「ホームページ」,専門家向けには「ウェブページまたはweb」を使っているが,これだけ「ホームページ」が定着すると,この使い分けはあまり意味がないかもしれない。

「マンション」という言葉がある。外国の友人を自宅に招待して,さすがすごい邸宅にお住まいと驚かれ,実はその一角をマンションと称していることに2度驚かれたという話がある。ホームページも外国人との間では用法に気をつけるべきだろう。

 

 

 

パーソナルWEB(93)

インターネットのWEBサイトは,長らく不特定多数を相手にした新聞やテレビのようなマスメディアと考えられてきた。これに対してWEBを各人向けにカスタマイズして提供することが今注目されている。

私にも,購読している雑誌社やエントリーした展示会から「長 忠様専用のホームページを開設いたしましたのでぜひご覧ください」といったメールが届くことがある。内容は事前のアンケートなどに基づき,私の興味にあわせてアレンジされている。

アメリカではオンラインショップでの各人の好みに合わせてカスタマイズされたWEB,航空会社が優良顧客向けに提供するWEBといった会社と個人顧客との間だけでなく,会社間での取引にも利用され始めている。

事前のアンケート,WEBでの購買履歴等を参考に,多くは自動的に生成される。マーケティングの主流がデータベースに基づくワンツーワンマーケティングに向かいつつあり,まだ技術的には不完全であるが,今後これは注目の技術である。

スカンディア生命保険は,インターネット上で変額保険(アセットチョイス)の運用結果を個人別にディスクローズしている。各契約者はホームページにアクセスし,ID,パスワードで契約内容の変化を確認できる。

また,ある保険見積りサービスのサイトでは,法人顧客向けにカスタマイズされたWEBの提供を計画している。各法人顧客の条件にあった団体保険のシミュレーションを目玉にしたもので,代理店営業と組み合わせるよう設計されている。

アメリカでは相当数のこの様なパーソナルWEBが立ち上がっており成功例も出始めている。我が国では緒についたばかりであるが,以上見たように,保険業界でも初期的適用例が生まれており興味深い。

 

 

 

オンライン証券(94)

12月2日の日経新聞に東京海上が,米チャールズ・シュワブ社と合弁で証券業に参入と報じられた。シュワブ社は格安の手数料で株式などの売買を仲介するディスカウントブローカーの最大手で,インターネット取引では約3割のシェアを持つ。

その直後に大和総研より「オンライン証券取引サービスの動向」と題した詳細なレポートがWWW上で公開された。( http://www.dir.co.jp/kj/online_bkr/toc.html )大変時宜をえたレポートで一読をお勧めする。

インターネット上でオンライン証券取引サービスを行っている国内企業を対象にしたアンケート調査を主体に,アメリカとの対比で我が国の今後の動向を占っている。参入企業は既に19社に達しており,その内16社がアンケートに回答している。

低コスト,リアルタイム,随時性,情報処理能力の高さ,双方向性といったインターネットの強みを生かして,アメリカでは急速にオンライン取引のシェアが拡大,リテール取引では97年の17%から98年には27%に達すると予測されている。

日米の金融資産構成の違いやインターネット普及率の低さから,我が国では急速な拡大は望めないものの,今後株式手数料がオンライン取引の影響を受け急激に下がり,既存証券会社の経営に大きな影響が出るとしている。

東京海上も当初は電話センターを設け株式や投信などの通信販売を手がけ,その後インターネット取引を手がけるようである。オンライン取引をたち上げるには,資本を先行的に投下する必要があり,当初の資本金も百数十億円を予定している。

既存証券会社,インターネットを武器に生き残りをはかる中小証券そして東京海上,ソフトバンク・E*Tradeといった異業種参入組の三つ巴戦が始まっている。ブランド力の強化が顧客獲得のカギとレポートでは述べている。興味深々である。

 

 

 

パソコン減税(95)

今回の税制改正で,本年の4月1日より、100万円未満のパソコン等の情報通信機器を購入した場合、その全額を費用として計上できることとなった。政府はSOHO・テレワーク、電子商取引の促進や2000年問題への対応を狙っている。

情報通信機器即時償却制度の創設で,対象は個人事業者又は法人,対象となる設備として電子計算機(通信制御装置等の周辺機器を含む。)、ファクシミリ、デジタル構内交換設備、デジタルボタン電話設備等8設備である。

今までは取得価額が20万円未満の資産については、事業の用に供した事業年度において全額損金参入できることとなっていた。これが昨年増税となり,その限度額が10万円に引き下げられてしまった。

パソコンの価格低下から企業向けについては10万円から20万円が主要価格帯になり,そこが狙い撃ちされる結果となった。パソコンは技術進歩が早い事実上の消耗品であり,実際は減価償却にはなじまないものである。

10万円への限度額引き下げは大変評判が良くなかったが,一旦決めたメンツもあってそのままとなっていた。今のところ今年限りの時限処置とのことであるが,今回のような朝令暮改は歓迎できる。

今年は保険代理店情報化元年となろう。パソコンと情報ネットワークの活用が,代理店生き残りのカギになりそうである。丁度良いタイミングである。代理店の皆様は積極的にパソコンとインターネットの導入を図るべきであろう。

筆者もパソコンの買い替えをするつもりである。最近は2年毎に買い換えており,それを6年で償却しろという現行制度はやはり実状に合わない。来年になればWindows98も安定してくると思われるのでその点でも好都合である。

 

 

 

保険とインターネット(96)

本コラムも3年目の春を迎えることになった。恒例により,1月16日保険をキーワードにして,代表的検索エンジンで検索してみた。足掛け3年の保険業界のインターネットに対する取り組みや世間の保険に対する関心がわかる。

CSJインデックスでは,保険で引っかかったホームページが,97年1月12日148件,98年1月10日290件に対して本年1月16日631件となった。一方,NTTDRECTORYでは466件→1,110件→1,766件である。

また,infoNaviでは,699件→1,765件がなんと本年は101,841件と急増している。これは,infoNaviが新しく自動的にホームページを巡回して情報収集を行う,自動収集型のロボットを導入したためである。

筆者の最近よく使う検索エンジンにGOOがある。これも自動収集型のロボットを使用しており,ちなみに保険をキーワードに検索すると,150,606件かかった。これでは,とても,全部は見きれない。

保険に関してインターネット上に莫大な情報の蓄積が始まった。例えば,infoNaviで損害保険をキーワードで検索するとたまたま先頭に来たのが「愛大六法」という愛知大学作成のホームページで保険業法が載っているのが引っかかった。

保険会社と代理店の間がインターネットでつながることで,商品情報や各種ツールの提供のみならず,契約データのやり取りも始まった。また,保険をインターネットで通販する動きもある。本年は保険業界にとってインターネット元年となろう。

前回,パソコン減税に関連して,パソコンとインターネットの活用が,代理店生き残りのカギになることを述べた。筆者グループでは本紙代理店版で「保険代理店の情報化―今やらなければ明日はないー」を連載中である。これもぜひご覧戴きたい。

 

 

 

一桁パソコン(97)

正月にパソコンのサプライ用品調達のため,秋葉原のラオックス「ザ・コンピュータ館(ザ・コン)」を訪れた。最近ちょっとバタバタしていて,しばらくぶりの秋葉原だが,パソコン業界を一望するにはここがベストだ。

ザ・コンは,業界の常識を破って初めて1階を書籍売場にして大成功をおさめるなど,店舗のオペレーションについても業界をリードしており,秋葉原では必ず立ち寄るお店である。ザ・コンを一回りして今年のパソコンを考えてみた。

昨年の夏,アップルコンピュータよりブルーでスケルトンタイプのパソコン,iMACが発売となり,そのスタイルに注目が集まった。SONYのパソコン,バイオとならんで昨年は,日経新製品番付の両小結にランクされた。

iMACは斬新なスタイルだけでなく,価格が20万円を大きく切った点も注目された。ザ・コンでは,次期の発売が迫っているため12万8千円で売られており,これを見るとパソコンの低価格化が,今年の大きなトレンドになりそうである。

アメリカでは,昨年の11月,パソコンの平均価格が初めて1000ドルを割った(PCデータの調査)。この低価格化が,パソコンの家庭への普及を促し,それがアメリカの電子取引の成長につながっているようだ。

ザ・コンでの最安値パソコンは,ソーテックのデスクトップパソコンであった。15インチのモニターとデータ送信モデムがついて99,800円であり,今,筆者がこのコラムを書いている携帯パソコンより相当性能が高い。

ソーテックは,社員の半数以上を開発部門に投入し,生産は大手電気メーカーへ委託する,いわいるファブレスのベンチャーとして有名な企業である。このような企業が,低価格・高性能という結果を出してくれるのはユーザーにとって嬉しい。

 

 

 

無料パソコン(98)

前回の本コラムで一桁パソコンというテーマでパソコンの低価格化について触れたが,2月の初めアメリカでCompaqのパソコン「Presario」を無料で提供するビジネスが始まり,大きな反響を呼んでいる。

Free-PC.comというベンチャー企業が,一定の条件に合致したユーザー1万人に「Presario」を無料で提供とともに,インターネット接続も無料とすると発表した。発表当日とその翌日で予想を大きく超える50万人もの応募があったという。

応募の条件は,常時広告が表示されるとともに,マーケティング目的で,自分のインターネット利用状況がモニターされることを了解することである。ただし,個人データを分離して直接利用はしないと同社は表明している。

パソコンの価格が大幅に低下したため,例え実名が特定出来なくても,ユーザーがどのような広告に反応したかとか,オンラインでどのような商品を購買したかといったマーケティングデータの価値の方が上回ったと事業者が判断したためである。

無料でパソコンを手に入れようという消費者層にマーケティングの価値があるのかといった批判はあるが,この成功を見て同様なサービスを提供する企業が,アメリカでかなり出てきそうで,パソコン大衆化を一層促進することになりそうである。

Free-PC.comは本事業のために3,000万ドルの資金を調達している。アメリカはインターネットバブルといわれるほどインターネットビジネスに資金が集まっているものの,このようなリスクの高いビジネスに大金が集まるアメリカが羨ましい。

最近のインターネットビジネスは,数年の赤字は覚悟の上,相当な金額を先行投資して市場を押えるという,ハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルが主流で,残念ながら保守的な日本企業の出る幕はあまりない。

 

 

 

サイバーインシュアランス(99)

最近,日立製作所が進めておられる次世代保険システムコンセプト「サイバーインシュアランス」構想に関連して,あるデモンストレーションを見る機会があった。今後の保険販売に関して示唆に富む内容なのでご紹介したい。

インターネット上のモール(商店街)に旅行代理店が出店していると考えて見てください。そこを訪れたお客様が海外旅行の申し込みをすると,保険会社より「海外旅行傷害保険」のご案内メッセージが横に表示される。

そこをクリックすると申し込んだ旅行にぴったりのお客様の状況に合わせた保険メニューがいくつか現れる。申込者の趣味・趣向を配慮したオプション,例えば「オアフ島以外は行かない」といったことも選べる。

顧客情報は既にモールで管理されているので,申し込みはメニューから2,3の項目をクリックするだけですむ。顧客データベースから基本データが取込まれ,すぐ申し込み書が表示され,ボタンをクリックすれば申し込みOKである。

もう1つのデモは,人形のお店の例である。ひな人形の申し込みをしたお客様に,その娘さんのための学資保険を勧める例である。保険をあまり意識せずに,自然に保険の販売が可能となるシステムといえる。

小売業では,様々なお客様の生活シーンを想定,テーマ設定して関連販売を行うことがよく行われる。食品スーパーが冬場なべ物コーナーをつくって売場そ及を行うなどである。インターネット上ではかなりスマートな形でこれが可能となる。

このデモはある保険代理店の会合でして頂いたが,代理店としてこれを超えるにはどうしたら良いかといった議論がでた。本構想に関連して保毎より「保険ビッグバンとサイバーインシュアランス」が出版されている。ご一読をお勧めする。

 p100

100回目のコラム(100)

1996年5月27日に始まった本コラムは,お蔭様で100回目を迎える事が出来た。この3年間は,インターネットを中心に,情報ネットワークをビジネスネットワーキングにどう活かすか,様々な夢が実現に向かって走り出した時期であった。

また,この3年間は,保険業界にとっても激動の時期であった。連載開始直前の4月,新保険業法が施行され,12月,日米保険協議が決着した。橋本内閣の金融ビッグバン構想に巻き込まれ,図らずも保険業界がトップランナーに押し出された。

第一回のコラムの横に「最近の損保業界動向をみる」と題して記者座談会が載っている。ヘッドラインに「経営体質転換を迫られるー新規開拓,ハイブリット型展開もー」とある。顧客満足,事業費圧縮と代理店チャネルの再構築がテーマである。

テレマーケティングを代理店チャネルと組み合わせたハイブリット(混成)型展開やコールセンターによる顧客支援が話題となっている。これらは,パソコンの低価格化,インターネットの爆発的拡大もあり,今やいよいよ現実的課題となっている。

ビル・ゲイツ氏が,世界情報サミットで「ビジネスは今後10年間に過去50年に経験してきた以上の大きな変革を遂げて行く」と述べている。最近のビジネスネットワーキングへのインターネット活用の動きをみると,あながち誇張ともいえない。

パソコンと情報ネットワークの活用が,代理店生き残りのカギになる,今年は保険代理店情報化元年といった話を本コラムでした。また,今年は保険会社と代理店の間が,インターネットで繋がり始める。保険業界インターネット元年ともいえる。

保険業界に情報化の波が一気に押し寄せようとしている。次回以降,インターネットを中心に,ビジネスネットワーキングを支える近未来の技術や,その保険業界への適用といったテーマで,やや,まとまった形のお話をしてみたい。