「外部環境への1視点」(37)ベリサイン社

ソニー損保がいよいよ営業を開始した。営業開始に先立ち9月25日よりホームページを公開した。注目のホームページなのでご覧になった方も多いと思われるが、その左下にある金色の丸いマークに気がつかれたであろうか?

ホームページが確かにソニー損保である旨の身元保証をしているもので、ウエブサーバ向けデジタル証明書発行サービスを主体に事業展開している日本ベリサイン社が発行、最近ではこのマークが電子商取引のホームページのいわばブランドとなっている。

ベリサイン社の説明に「(このサイトは)ベリサインの定める認証手続きに基づき、サイトを運営する企業・組織が確かにそのサイト名称を利用し、インターネット上で唯一無二であることをベリサインにより証明されたサイトです」とある。

相手の見えないインターネットの世界で、不用意に相手に情報を送ったり、情報を受け取ったりするのは危険である。そこで、相手が確かに本人であることを証明する仕組みが必要になるが、これがちょっと複雑な仕組みとなる。

ここでのキーワードは公開鍵方式と暗号である。公開鍵方式とは本人のみが持っている秘密鍵と他者に知らせる公開鍵という対になる2つの鍵を持つシステムで、この両方が揃うことで解読ができるようになる。

これを利用すると本人確認つまり「認証」ができる。「デジタル署名」と呼ばれる仕組みである。具体的には、認証のためにソニーは自分の秘密鍵を暗号化したものを送り、それを顧客がソニーの公開鍵で解読する。

 ただ、認証するにはソニーの公開鍵が間違いなく本人のものであることが証明されなければならない。こうした公開鍵をベリサイン社が第三者認証機関として保管しており、顧客の要求により公開鍵をインターネット経由で発行する。

従来、暗号に対する米国政府の輸出規制のために、日本国内で一般的に使える暗号鍵長は 40ビットまでとなっていたが、銀行、証券、保険、クレジットなど金融部門や医療等に限って、規制が緩和され、現在最高強度の128ビットの利用が可能なった。

AIUが損保業界では初のベリサイン社の128ビット暗号を採用することになった。これにより、1月より業界に先駆けて実施してきていた海外旅行保険インターネット契約のセキュリティがより高度なものにグレードアップした。

AIUの海外旅行保険は、業界初のワンステップ申し込み(申し込み書の記入・押印・郵送が不要)をインターネットで実現したとして本コラムで前にご紹介したが、ソニー損保が今回本命の自動車保険でこれを採用した。かなりのインパクトになりそうである。

「外部環境への1視点」(38)株式手数料自由化

101日より株式手数料が完全自由化となった。米国では197551日のメーデーに自由化が行われ、その後証券業界に大きな地殻変動をもたらしたことは有名であるが、遅れること20数年、日本の金融ビックバンにとって、歴史に残る日になりそうである。

保険業界や銀行のビックバンが、どちらかというと大変だ大変だといった後ろ向きのイメージなのに比べて、証券業界についてはまだまだ伸びる成長分野との認識も強く、極めてアグレッシブで前向きのイメージを感じる。

とくに、インターネットを活用したオンライン・トレーディングが、まさに離陸期を迎えているわが国において、どんぴしゃりのタイミングで手数料の自由化が行われることになり、50社以上が参入するほどの盛況となった。

オンラインの手数料であるが、大手は既存手数料から一定割合を割り引くといった体系が多いが、新規参入側は低価格を武器にしている。例えばソニーが出資して話題のマネックス証券は、100万円まで一律1000円と従来の10分の1以下を打ち出した。

大手は充実した情報の提供をうたって、価格競争を回避する姿勢であるが、どこまで通用するか見物である。低価格路線の新規参入側にも、かなり充実した情報を提供するサイトが出現し始めており、大手も一段の値下げに追い込まれるように思う。

筆者が株式投資を手がけるきっかけは、10数年前のパソコンの購入であった。なんとかパソコンへの投資を株式で取り戻せないかと、BASIC(当時のパソコン用言語)で株価分析プログラムを組んで色々試行錯誤してみた。

投資の手法には、ご存知のようにファンダメンタルズ(業績)を重視する方法とテクニカルといって罫線等による株価は株価に聞く方法に大別される。また、投資の期間で、超短期、短期、中期、長期、超長期に分けるのが一般的である。

筆者の場合、半年ないし1年の中期目標で、ファンダメンタルで絞り込んだ銘柄を、テクニカルで分析して買場を探るといったものなので、日経や会社四季報で業績等をチェック、抽出された銘柄の株価や出来高を手入力しなければならず、結構大変であった。

この辺のデータ、例えば様々な条件を設定して銘柄を抽出するとか、テクニカル分析について色々な手法で自由に検討できるといったサービスが、無料ないし極めて低料金で、しかも即時に、インターネットで提供されるようになってきた。

バブルの歴史的高値からの長期下落局面もほぼ10年になる。あまり当てにはならないが、筆者の判断はそろそろ底値圏、長い間ご無沙汰していた株式投資を、オンライン・トレードで再開すべく各証券会社のサイトをチェックしている。

「外部環境への1視点」(39)介護保険

介護保険について、実施直前になり迷走気味となっている。このままでは選挙を戦えないとの思惑から、5月ごろより実施延期を含め、色々取り沙汰されていた介護保険制度見直しの動きも、11月5日政府案が出されたことで一応の決着を見た。

その内容は@65歳以上の高齢者の保険料を来年4月から半年間徴収せず、その後1年間は半額に軽減するA40から64歳は従来の医療保険料より負担増となる額について、その1年分を国が医療保険者に財政支援するといったものである。

政府案では、このほか、低所得世帯の高齢者を介護する家族に対する現金給付(家族介護慰労金)等が盛り込まれ、厚生省の試算によると、これらの措置に伴う国費は1兆円を超え、これも結局全額赤字国債で、つけを後生に回すこととなった。

筆者の母親が要介護で杉並区より電動ベッドの無償貸与等様々な福祉サービスを受けており、介護保険が始まると保険料に加え、サービスの自己負担分も加わることを覚悟していたので、子供たちには申し訳ないが、とりあえずの先送りは嬉しいなと思ってしまう。

杉並区においても介護保険に対する住民説明会が行われており、説明会に出かけたところ、皆さんの関心も高く、満員御礼で出席できず、急遽追加で実施された説明会に回された。ここでの質問も大部分が今後の負担がどうなるかといった点に集中した。

杉並区の福祉サービスに見るように、今まで無償で提供されていたものが、介護保険導入により負担が急増する。特に、介護の認定の結果自立(介護不要)となった場合は、サービスを取り上げざる得ないケースも出てきて、対応に苦慮している自治体も多い。

このようなことを考えると政治家が心配するのもわかるが、介護の現場である地方自治体から「保険料の徴収猶予は負担と給付の関係をあいまいにするもので、極めて遺憾」(全国知事会)といった強い反発があるのも事実である。

介護保険制度は真の意味での地方自治が試されている。介護移民といった高齢者が充実した介護を求めて転居するといったことも現実の話題となっている。これらを背景に、各自治体で介護をめぐって様々な取組みが始まっている。

杉並区の介護担当課に筆者の知人がいるが、休日返上で意欲的に取り組んでいる姿をみると、やはり今回のどたばた劇は問題のようだ。制度実施に向けての必死の努力が、実施直前に梯子を外されたような形になった。

いずれにしても介護保険制度は始まる。杉並区の報告書には「最小の経費で最大の効果を」とうたっている。自治体にとって未経験の分野に入る。筆者にとっては、この辺で何らかのお手伝いで、地元にお役に立てないか考えている。

「外部環境への1視点」(40)新宿vs渋谷

新宿と渋谷が大きく変わり始めている。新宿は、南口に高島屋を核とした商業コンプレックスがオープン、スケールの大きな回遊路が若者を集める一方、渋谷には、間もなく駅周辺に、約30万平方メートルの巨大なビジネスコンプレックスが誕生する。

筆者は東京生まれの東京育ちで、長年この二つの街には大変お世話になってきた。昭和30年代始め、新宿は歌舞伎町の映画街やジャズ喫茶に代表される若者のメッカ、渋谷は東横デパートに代表されるどちらかといえば、大人の街であった。

その後、新宿西口の淀橋浄水場跡にオフィスとホテルが林立することになり、新宿は急速に大人とおじさんの街に変貌する一方、渋谷は原宿に抜ける公園通りストリート開発の大成功で、若者と女子中高生を爆発的に吸い寄せることになる。

新宿西口副都心開発と公園通り開発は、開発手法は対称的であるものの、わが国の街づくり開発史において特筆すべき成功例であろう。それが今、新宿が若者から大人そして若者へ、渋谷が大人から若者そして大人へと、それぞれこれも対称的な動きが興味深い。

マーケティングの世界で逆マーケティングという手法がある。あまりにも成功したマーケティングを冷やすことをいう。新宿と渋谷のこの例は、街づくりマーケティングにおける逆マーケティングの典型例といえる。人集めに苦労する地方から見ると別世界である。

新宿と渋谷の逆マーケティングは、どちらに軍配が上がるであろうか?筆者は躊躇なく渋谷に上げる。なぜかといえば、偶然が重なったとはいえ、ドンピシャリのタイミングで様々な動きが、情報化をキーワードに渋谷に収斂しつつある。

渋谷は、公園通り開発のあまりの成功に、若者が集まり過ぎて苦悩していた。レベルの高い大人を集めようと文化村を開発する等逆マーケティングに取り組んだ総決算が今回のプロジェクトである。渋谷に無かったホテル・オフィス・コンベンションが一挙にそろう。

一方、若者を惹きつける街渋谷は、数年前よりインターネットビジネスのメッカとなっている。その数は3千とも4千ともいわれ、アパートの2階やマンションの一室で、高性能のサーバーをブンブン回して開発に取り組んでいる。

これらベンチャーのアイディア・技術と大企業の資本・組織力が出会う場が今回渋谷にそろう。渋谷(ビターバレー)をもじってビットバレーと呼んで、日本のシリコンバレーになるべく活動が始まっている。その活動はhttp://www.bitvalley.org/ 参照

今年は、新規公開が爆発的に拡大しそうである。大公開時代の幕開けである。筆者の地元渋谷から、無数の公開企業が生まれることを期待したい。正月ですのでちょっと景気のいい話を一席。正夢になりますように!!

「外部環境への1視点」(41)ASPと保険情報システム

ASPApplication Service Providerの略で、最近インターネットのビジネス利用の方法として、一躍脚光を浴びている。ビジネス用のソフトウエア(アプリケーション)を、インターネットを通じて提供する事業者のことである。

ユーザはブラウザ(インターネット閲覧ソフト)を使って、ASPの保有するサーバにインストールされたアプリケーションを利用する。ユーザサイドとしては、最近ではパソコンを買えば必ず付いているブラウザがあれば、全てOKという仕組みである。

一方、事業者側は、ユーザのパソコン個々にはアプリケーションをインストールする必要がなく、システム変更は自社サーバをいじれば全て済む。インストールやアップグレードにかかる費用・手間がなくなる。

また、ユーザーサイドのソフトは、操作が簡単なブラウザなのでユーザーに対する教育とか研修支援が要らなくなるのも大きい。保険会社が代理店オンライン導入にかけている研修は莫大であり、もし、それが殆どいらなくなるとしたら相当なメリットであろう。

アメリカでは、ASPではないが、ブラウザだけで操作可能な代理店支援システムの提供が始まっている。その宣伝文句に「とっても易しいので代理店主でも扱えます」とある。いずこも代理店は、営業力はあるが、パソコンは苦手ということのようだ。

わが国でもWEBオンラインといわれるサービスが始まり、インターネットで見積書の作成や契約計上ができる。従来、損保VANを経由して行われていたサービスが、インターネットに移行したもので、ブラウザで操作するため、見かけも美しく簡単である。

次のステップは、代理店支援システムの全ての機能が、インターネットに移行されることになろう。これにより、アメリカと同じサービスが代理店に提供されそうに思えるが、実は、日米間に超えなければならない大きな溝がある。

一つは接続環境の問題である。本コラムで前に述べたように、このシステムがスムーズに機能するには、インターネットの常時接続が安く確保される必要がある。ただ、この問題は現在のインターネットの急速な拡大をみると、近々解決されそうである。

もう一つは根が深い。アメリカではインターネット保険取引の標準化が急ピッチで進んでいるが、わが国はシステムを代理店囲い込みの武器に使おうとして、このままでは、どうも各社バラバラのシステムになりそうである。

もし、業界標準化が進み、各保険会社が商品とサービスの競争に注力し、システムをASPにアウトソーシングできれば、代理店システム全体として、莫大なコストダウンとなる。これにより、始めて通販と対等の土俵に代理店が立てるのだがーーー