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【保険業界を斬る】
<家業から企業へ>(2) 紙と鉛筆の事務
経営数理研究所代表 inswatch発行人 長 忠
お蔭様で、読者の皆様から、早速、様々なコメントやご批評、ご要望やご意見を頂いております。今後とも、下記の投稿先にどしどしお寄せ下さい。
投稿先 reader@inswatch.co.jp
今回は、その中で頂いたコメントをご紹介しながら、なぜ、日本の保険業界の事業費(経費)が高いか考えてみたいと思います。
ある読者の方からの投稿です。
はじめまして。7月からこの業界に身をおきました。まだまだかけだしの研修生です。(中略)ところで、前職では、というか世間ではすでにネットを利用した情報交換や加工など社内や顧客の間では当然の手段として定着しており保険の世界に入って、やや驚いております。手書きの申込書、開拓の手法、分析の無いマーケット開拓等。(中略)今までの業界から見ると信じられない世界でした。
数年前、始めて保険代理店の事務所をお尋ねした時に、私も同じ感想を持つととともに、皮肉でなく、どこかで見た懐かしい風景といった思いがしました。実は、私が、1963年に富士製鉄に入社して最初に配属となった、工場の事務所風景でした。約40年前にタイムスリップです。
手書き伝票がベースの紙と鉛筆の事務で、契約書をファイリングして保存、在庫の出し入れを入出庫伝票により、手で消しこみを行っていました。当然間違いが発生し、工場の倉庫に在庫があるとの連絡で取りにきた運転手と、在庫が実際は無くて喧嘩になるなど、トラブルは日常茶飯事でした。
最近、三井海上の新代理店手数料の説明資料を見ていて、思わず絶句しました。新規契約申込書OK率の手数料格差テーブルを見ると、70%が上限でそれ以上であれば満点ということになっています。
実は、保険申込書は複雑過ぎて、通常の人間が正確なものを作成するには無理があります。経験を積んだベテランの職人芸の世界です。ただ、多くはコンピュータで簡単に代替できます。つまり、消え行く職人の世界です。
勿論、三井海上のだけ問題ではなく、業界全般の問題ですが、この原因は、単純化していえば、契約書の入力接点が保険会社になっており、代理店と保険会社の間のやりとりが紙と鉛筆になっているためです。
どこかの工程に不良品が30%以上発生するようだと、多分、世間一般では、その会社は、間違いなく倒産でしょう。これが保険業界で許されてきたのは、規制に守られて、コストプラス適正利潤が通用していたためです。その結果、消費者は、結果的に、高い保険を買わされてきたということになります。
これを、解決する方法は、データの入力接点を代理店、さらには、お客様に持ってくることです。次回はこのことを考えてみます。
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