おかえり.jp 放哉 孤高の詩 一句拝掌(最新の俳句) 愛句連々(過去に紹介した俳句) 放哉年譜

愛句連々

尾崎放哉の俳句をイラストと一緒にご紹介します.



底が抜けた杓で水を呑もうとした

放哉の句は、情景を描写するのではなく、まさに心象風景のみを詠んだものが数多く見られます。そこには放哉自身の存在さえ曖昧になり、ついには心情だけが虚空の中に現れてくるようです。放哉の句には、沈黙や静寂のみならず、息をするだけでも乱れてしまうような一瞬の「間」があるのです。この句も、初見はのんびりした風情ながら、次第次第に放哉の「間合い」に引き込まれる凄みを感じます。

ここで、「呑もうとした」のは放哉自身なのでしょうか。確かに、浮き世で何一つ目的を果たせず、水泡に帰してしまった過去への内省かもしれません。
 しかし、ここで「杓」こそが放哉だと考えたらどうでしょうか。そう、親兄弟や友人達の善意にも報いることが出来ず、何も世の役に立たない存在である放哉こそ、「底が抜けた杓」なのではないか、と。それでも水を汲もうとしてくれる人さえ離れていったとき、「杓」は永遠の記憶の彼方へ置き去られるのでしょう。そういう哀しい予感までよぎる、なんとも淋しい句です。


★放哉の他の俳句にもご興味のある方はこちらへ → 愛句連々(過去に紹介した俳句)

         


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