おかえり.jp 放哉 孤高の詩 一句拝掌(最新の俳句) 愛句連々(過去に紹介した俳句) 放哉年譜

愛句連々

尾崎放哉の俳句をイラストと一緒にご紹介します.



夕べひょいと出た一本足の雀よ

これもまた須磨寺時代の作品。

『暑さ寒さも彼岸まで』とはよく言ったもので、たった一晩で秋の空になって長袖のお世話になるようになります。いよいよ夜長の季節へ。
 今回は秋風が一入(ひとしお)身にしみるような放哉の小さな友人のための句です。

放哉も一日の仕事を終え、ほっと一息。狭い庵のちょっと冷たくなった畳の上に座って戸を開ければちょうど良い具合の月夜と肌に心地よい秋風。穏やかな夕べのひととき。話す人もなく酒もなく粗末で食事は淋しいけれど世捨人となった放哉には至福の時間です。
 そんな月明かりの庭に雀がひょいと顔を出しました。おうおう今宵の友がやってきてくれたか。ぬるい茶をすすりながら愛でるように見てみればなんと一本足ではないか。ぴょこぴょこと動き回るのは可愛いけれど仲間もなく哀れを誘う姿。そう、この雀は放哉自身そのままではないか。

雀は敵に追われて片足を失ったのであろう。自分も薄汚いこの世の中に堪えられず、将来も家庭も捨ててここに来るしかなかったのではないか。そう思っているうちにいつしか放哉は雀と一体化して庭をぴょこぴょこ歩いてみたいと思うのでした。

しかし・・・と放哉は思います。片足の雀は昼間は敵が多く庭を自由に歩くこともかなわない日陰の身なのだ。それでもなんと健気に懸命に生きようとしていることか。この雀ほどの純粋さも失っている自分はこの世の中で一体どんな意味があるというのか。

そうして暫く、己の無意味さと無気力さに言葉を失う放哉。夜長がさらに長く感じられるのでありました。


★放哉の他の俳句にもご興味のある方はこちらへ → 愛句連々(過去に紹介した俳句)

         


☆本ページはリンクフリーです。放哉を心行くまで味わいましょう。