おかえり.jp 放哉 孤高の詩 一句拝掌(最新の俳句) 愛句連々(過去に紹介した俳句) 放哉年譜

愛句連々

尾崎放哉の俳句をイラストと一緒にご紹介します.



とかげの美くしい色がある廃庭

これは小浜常高寺での作品。

冬の弱々しい日差しは既に消え去り、目に染み入る陽光の季節です。放哉の好きな海の色が灰色から薄い青に変わるこんな頃にこの句は如何でしょうか。

廃庭とは常高寺の庭を指しているのでしょうか、それとももはやかつては栄華を誇った大地主が勢いを失い住む人も絶えて荒れ果てた空しく広い庭でもありましょうか。世の無常を粛々と感じながらぶらり放哉が歩いてみれば、なんと空虚で虚ろな庭であることよ。かつては植木職人に美しく刈り込まれ石職人に美を競わせたこともあったであろうに。
 時が経ちふと朽ち果てた門に触れてみた時、放哉は思わぬ色彩にはっとして目を凝らします。
 灰や茶や黒といった哀しい色が支配するこの空間の中に、何やら原色をまとったものが蠢いている。折から差してきた日の光に虹色に輝く姿は宝石のよう・・・

なんと、それはとかげであったか。

そう思っている間にとかげは木のうろに身を隠してしまいます。それでも目に焼き付いた鮮やかな残像。小さな生きものとはいえ、この死んだような廃庭にかすかな彩りを与える役割を与えられ果たしてくれているのであったか。それまで人の一炊の夢などに感傷していた我が身のなんという小ささよ。そうひとりごちて、合掌する放哉でありました。

庭を後にして仕事に戻る放哉。自分に与えられた天命とはなんなのか。そっと自問しつつ・・・


★放哉の他の俳句にもご興味のある方はこちらへ → 愛句連々(過去に紹介した俳句)

         


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