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愛句連々

尾崎放哉の俳句をイラストと一緒にご紹介します.



墓のうらに廻る

これは小豆島南郷庵での作品です。

放哉は南郷庵で小豆島の遅い春を待ちわびながら一生を閉じました。最期には布団から這い出ることもかなわなくなってしまったのですが、この頃はまだ病に苦しみながらも外を歩くことも出来たようです。

さて、この句です。これまでの句を味わってきた方でなければ、これはなんとそっけなく一種滑稽に思えるものかもしれません。しかし「墓のうらに廻る」という何気ない行為を作品として刻み込んだ放哉の心の奥底はいかなるものだったのか。

小生は、「うらに」の「に」に拘ってみたい。「うらへ」ではないのは何故かということです。「へ」という動きのある助詞でないのはどうしてなのか。「に」というある時間留まっていることを暗示することで、誰を弔ったのであろう墓の裏側を、じっと見つめるもう一人の自分を放哉は表していたのではなかったのか。

現世に生きている、という存在感を徐々に失っていく放哉にとって、墓のうら、とは物理的な「裏」ということだけではなく、死者の世界とも感じていたのではなかったか。墓のうらに廻っていたのは、もはや半分程は死んでいるような放哉の魂であり、墓とは現世と黄泉の世界の境界線だったのであろう。そう考えればなんと寒々とする句であることよ。


★放哉の他の俳句にもご興味のある方はこちらへ → 愛句連々(過去に紹介した俳句)

         


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