おかえり.jp 放哉 孤高の詩 一句拝掌(最新の俳句) 愛句連々(過去に紹介した俳句) 放哉年譜

愛句連々

尾崎放哉の俳句をイラストと一緒にご紹介します.



口あけぬ蜆死んでゐる

南郷(みなんご)庵時代の作品。死期に近い放哉の研ぎ澄まされた感性が輝く時代。

人の「生き死に」に対する感覚が妙に軽くなってきたように思える世相に、静かに訴えかけてくれているようなこの句を。

放哉が、自分の体の中から少しずつ、か細いロウソクが短くなってゆくように、生きる力が失われていくことを意識していく中、全ての生きとし生けるものの生死に対して、ある時には過剰に思えるほど敏感になっていきます。
 時には毎日の食事もままならない生活の中で、つつましい朝餉をととのえたのでしょう。今朝はわずかな贅沢ながら蜆(しじみ)の味噌汁です。微熱が続く病の体にも滋養がつくことでありましょう。ありがたくいただいて底に残った貝の中に、口を閉ざした二、三個があったのです。

もちろん鍋の中で煮られるのであるから蜆は皆死んでしまうのではあるが、これらは煮られる前から死んでいたのであろう。ぎりぎりまで生を全うした後に食べられればまだ成仏できるというものであろうが、すでに死んでいたものをまた煮てしまったのでは死人に鞭打つようで哀れなことをしたことだ。思わず手を合わせる放哉。

我々人間が毎日口に入れるもの全ての生死を思っているわけにはいかないかもしれませんが、ここの放哉のように、時には自分の生が、多くの生き物の死によって賄われていることに思いをいたすことも、また大事な「気づき」ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。


★放哉の他の俳句にもご興味のある方はこちらへ → 愛句連々(過去に紹介した俳句)

         


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