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山頭火

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鴉啼いてわたしも一人


『咳をしても一人』は尾崎放哉の代表的な句であり、病弱だった放哉の透き通るような究極の孤独感を表した名作です。これに山頭火が和して詠んだのがこの句です。

山頭火には幸い頑強な肉体があったので、それこそ信じられないくらいの健脚で日本中を行脚しました。その点で、山頭火の句には、放哉の今にも言切れそうなかよわさがなく、むしろがさつで野暮ったい面さえ感じることもないではありません。

しかしこの対照的な二人とも共通であったのは、「孤独」であるという一点でした。戦前のきな臭い時代において(もちろん現代でもそうでしょうが)、それこそ労働もせず仙人のような暮らしをしていた彼らが奇異の目で見られていたのは間違いなく、それを知りながらも皆と同じように出来ない苦しみを二人ともかみしめていたことでしょう。

『咳をしても一人』では、放哉の凝縮された孤独感が、放哉自身の口から『咳』として表に出ているわけですが、この句では山頭火は自らの声を抑え、鴉に代弁させています。その点で、啼いた鴉にどのような心情を託しているのか、を我々に考えさせるのです。
 果たして鴉は山頭火自身なのか、それとも放哉か、はたまた、、、

一度も会うことのなかった放哉と山頭火の、時空を超えた会話の中身は謎のままです。


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