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山頭火

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いつも一人で赤とんぼ


今回は、秋の夕暮れに相応しい一句を。

「夕焼け子焼けの赤とんぼ」といえば、かつて日本の秋の風物詩でした。
 私の故郷でも、秋の夕方にでもなれば、空は赤とんぼの群で夕焼けよりも紅く染まったものでした。それは美しくもどこか哀しいような感情をもよおした記憶があります。
 北国の短い秋をさらに急かすような赤とんぼの行き来が、寒い冬を早く早くと呼ぶようで、心細く切なく感じたものでした。それにしても何故ああまで紅かったのでしょうか。

さて、山頭火です。

山頭火が孤独を好みながらも絶えず孤独から逃れようとしていたのは言うまでもありませんが、それは自然に対しても同じでありました。彼が海よりも山を好んだのも、山の植物も動物も鬱蒼とした感じが、彼の淋しさを紛らしてくれたからではないでしょうか。

そんな山頭火に赤とんぼが一人(擬人法として勘弁して下さい)だけ近づいてきました。
 いつも群飛ぶ赤とんぼなのにどうしたのだろう。仲間とはぐれたのか、それとも一人が好きだと仲間と離れてきたのか。いずれにしてもなんと俺と似たことだ。夕焼けで真っ赤に染まったその中に似合うお前が、一人だけ俺に話しかけるように来てくれた。

俺に構わず飛んで行け、と言いかけて、いやもう少しそばにいてくれたら、と思って口ごもってしまうのです。
 一人になろうとしてなりきれぬ山頭火の矛盾した思いが、秋空の中に溶け込み損ねた赤とんぼに反映されているのです。


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