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山頭火

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うどん供へて、母よ、わたくしもいただきまする


今回は、晩秋にぴったりのしみじみする一句を。

山頭火の一生は、愛に縁のない一生だったのかもしれません。

人間が成長していく上で、両親の夫婦間の愛情や、自分への愛情が重要であることはいうまでもありませんが、山頭火にはどちらも満足の得られないまま育つほかありませんでした。
 父は地元の名家であることをいいことに妾を何人もつくって何日も家をあけ、母との関係は悪くなるばかり。ついには母は家の井戸に身を投げるという最悪の結果を迎えることになりました。幼い山頭火にはどれだけの心痛を与えたでしょうか。
 いいえ、それどころか山頭火はその痛みを生涯引きずり、自分でも愛情豊かな家庭を築けないまま放浪することになってしまうのです。いかに幼少期の経験が人の一生を左右することか。

山頭火は一時期、川棚温泉に身を落ち着けようと試みますが諸処の事情でかなわなくなります。話がなくなってしまう前に、かつての妻の咲野から小包が山頭火のもとに届きます。

その中に、母の位牌があったのです。

山頭火があてもない放浪の旅を続けていた間に、咲野は自分が会ったこともない義理の母の位牌を守っていてくれたのであったか...
 上座に位牌を置き、手を合わせる山頭火。
 供えるものを探してみたものの、行乞の身には満足なものはない。やっとみつけたうどん一束をみつけ、煮て位牌の前に置く山頭火。

母へ、咲野へ、懺悔と感謝の複雑な感情を胸に秘めながら再び手を合わせる山頭火。
 あまりにも通常と懸け離れた親子、男女の愛情の姿は、人間の業の哀れさえ感じさせる情景です。


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