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山頭火

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ひとりひっそり竹の子竹になる


桜前線も北上中、かと思えば花冷えがあったりと、春というのは気候も人の心も落ち着かない季節です。

今回の句は、春にもかかわらずちょっと寂しさも入り交じったもの。竹林の奥深くで暖かい春の空気に包まれてそっと顔を出した竹の子が数時間の間にやがて竹へと成長していきます。誰にも気づかれずに。
 山頭火がこの句を詠んだとき、心の中にいかなる情景を思い浮かべていたのでしょうか。

この竹の子は、もしかすると彼の一粒種の「健」のことではなかったか、と管理人は思うのです。

山頭火は咲野という妻と共にこの子さえも置いてきぼりにして家を出ました。
 まだ幼く父の顔もおぼろげな健が、その後どれほどの思いをしながら母の支えになりつつ成長していったのか・・・後に一人前になった後で、父に仕送りまでするようになったこの一人息子と山頭火の間に、一体いかなる親子の情が通いあっていたのかも余人の知り得ることではありません。

だから、決してここにある「竹の子」は、「ひとり」でいながら「ひとり」ではない。
 周りの竹の葉擦れの音や春の息吹に包まれているのだし、たとえ目の前で見ていなくても遠くから想っている山頭火がいるのだから。


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