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山頭火

山頭火

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お骨声なく水の上をゆく


今回は、『草木塔』の「銃後」という章からの句です。

世界的に戦争の種の絶えることない不穏な時代が続きます。今回はそんな不安な世相にちょっとした疑問を投げかける句を一つ。

山頭火は、太平洋戦争の前の不安な時代を生きていながら、ある時期までは殆どそういった世相については触れなかった一面がありました。むしろ避けていたと言ってもいいかもしれません。
 しかしそういう山頭火も、中国での日本軍が関わったきなくさい事件が続く中で、心の中から湧き上がる大きな疑問符を吐き出すような句を作った時期がありました。それも静かに嘆息を虚空に囁くように。誰にも投げかけられぬ問いを発するように。
 この句の、透き通った哀しさはなんでしょうか。
 大陸でお国の為に命を失い、骨になって帰ってきた人が、生前親しかった人と一緒に船に乗って目の前を通り過ぎていきます。もはやどんな言葉もかけることは誰にも出来ません。静かな櫓の音だけが空白の心を埋めていきます。

人は何の為に生き、何の為に死んでゆくのか。「最も不条理な死は兵士の死だ」と言い切った人もいます。この水はもしかすると三途の川へも続いているのかもしれません。そんな哀しい、ただ哀しい、そして不吉な予感を思い起こさせる句ではあります。


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