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音符 7. 調性について 音符

ここでは、調性について説明します。例えば「ハ長調」とか「イ短調」とか「嬰ヘ短調」、「変ホ長調」などのことです。現代音楽以外はほとんどの楽曲に主調(その曲全体で中心になっている調性)が示されます。

「長調と短調の違いはあるだろうけれど、あとは#(シャープ)や♭(フラット)で上げ下げしているだけでしょう」と思ってはいませんか。ところが楽曲の調性を選ぶのは作曲家からみれば拍子よりも重要なプロセスなのです。

調性は中心となる音(主音)があって、その並びの音階で決められます。古くは教会旋法や各民族独特の旋法(沖縄の琉球音階もその一つ)などが用いられましたが、主音も各音の間隔もバラバラでした。16世紀くらいからヨーロッパでオクターヴを12等分した十二平均律が発明されて一般的になりました(平均律という言葉は、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」などにありますね)。これにより曲の途中で調性が変わる「転調」を行っても違和感なく、楽曲全体の調を変える(移調という)ことも容易になったのです。

長音階(長調の音階)と短音階(短調の音階)も定まって、後はどの音を主音にするかを選択することになるわけです。理論上はどれを選んでも自由で響きも変わらないはずです。・・・ただそんなに単純ではないので本項があるわけですが。

それでは、調性の説明をする前に、「音名」と「調」の呼び方のおさらいをしておきましょう。まずは「音名」から。

音符音名の呼び方音符

音名

「ドレミファソラシ」は、クラシック音楽ではほとんど登場しません。「ハニホヘトイロ」と「CDEFGAB」を覚えましょう。

実は「ドレミファソラシ(Do・Re・Mi・Fa・Sol・La・Si)」はイタリア語です(フランス語もこれに近い)。かつてイタリアは音楽の中心地だったので音名も最初はそのまま使っていたのでしょうが、今は以下のものを使うのが一般的です。

  • 日本…「ハ・ニ・ホ・ヘ・ト・イ・ロ」が「Do・Re・Mi・Fa・Sol・La・Si」に対応。
  • 西洋…「C・D・E・F・G・A・B」が「Do・Re・Mi・Fa・Sol・La・Si」に対応。英語読みでいいのですが、なぜか未だにドイツ読みをする場合があります。「C(ツェー)・D(デー)・E(エー)・F(エフ)・G(ゲー)・A(アー)・B(ベー)」。但し、ドイツでは「B」が「H(ハー)」になります(ややこしい!)。

ここで、妙に感じたあなたは正しい。なぜ「イロハ…」や「ABC…」の始まりが最初に来ないのでしょうか。諸説はありますが、どうやら「イ」「A」つまり「ラ」の音は、昔から基本の音だったようなのです。そこでそこから字を当てはめていったのでこういう順番になったとか。ただ未だに楽器の音を合わせる調律は「イ」「A」でするのはその名残でもあるのでしょう。音楽の調律に使用される音は440Hz(ヘルツ)の「イ音」であると国際的に決められているのです。

さて、日本語では、各音を半音上げると「嬰」を前に、半音下げると「変」を前に付けます。疑問を持たずにそういうものだと覚えましょう。英語では、半音上げたら後ろに「sharp(シャープ)」、半音下げたら「flat(フラット)」を付ければいいのです。変ホ=E flat、嬰ヘ=F sharpという感じです。

次は、「調」の呼び方です。

音符調の呼び方音符

長調か短調かが決まれば、後は主音を頭に付ければいいのです。主音とは、音階の一番下に来る音で、その音で終止するのが一番しっくり来ます。この主音が、上述した「ハニホヘトイロ」のどれに当たるかで調を決めます。

全部ハ長調やイ短調の曲ばかりだったら調号(♯や♭などの臨時記号)は要らないのですが、主音を他の音に変えると音の間隔がおかしなことになってしまうために、調号が楽譜の最初に書かれてデフォルトとして指定されます。その楽譜では最初に書かれた調号のある音は、何も指定しなくても半音上げたり半音下げて演奏されるのです。

次に、調号の数と調の呼び方について、長調、短調の順に示します。

  • 調号なし…ハ長調、イ短調
  • ♯がつくもの…1つ:ト長調、ホ短調。2つ:ニ長調、ロ短調。3つ:イ長調、嬰ヘ短調。4つ:ホ長調、嬰ハ短調。5つ:ロ長調、嬰ト短調。6つ:嬰ヘ長調、嬰ニ短調。7つ:嬰ハ長調、嬰イ短調。
  • ♭がつくもの…1つ:ヘ長調、ニ短調。2つ:変ロ長調、ト短調。3つ:変ホ長調、ハ短調。4つ:変イ長調、ヘ短調。5つ:変ニ長調、変ロ短調。6つ:変ト長調、変ホ短調。7つ:変ハ長調、変イ短調。

ただ、同じ調なのに2つの言い方があるものがあるので注意しましょう。次の調の組はどっちも同じ調です。下記の左側を一般的に使います。煩雑になるので長調だけを示します。

  • 実は同じ調の組…ロ長調と変ハ長調(ロとハは半音しか離れていないので同じ音になる)。変ニ長調と嬰ハ長調(変ニと嬰ハは同じ音)。

音名上、理屈上はアリですがほとんど使わない言い方もあります。嬰ニ長調、嬰ト長調、嬰イ長調は使わず、それぞれ変ホ長調、変イ長調、変ロ長調にします。

ちなみに英語では、長調は後ろに「major(メジャー)」、短調は後ろに「minor(マイナー)」を付ければ良い。例えば変ホ長調は「E flat major」です。

以上で準備はできました。いよいよ「調性」の話に移りましょう。まずは「調性の制限」について。

音符調性の制限音符

少数の楽器でしたら、調号がいくつ増えて難しくなっても一向に構わないのですが、楽器数が多くなるとメインで使う調性が限られてきます。これは楽器によっては、調性により演奏のし易さが著しく変わる場合があるからです。特に管楽器にはそういうケースが多いのです。調性を制限するいくつかの要因を挙げます。

  • 変化記号の付いた音の変化…♯や♭そのものは変化記号と言いますが、これらの付いた音は管楽器で複雑なバルブ開閉や特殊な運指を伴うために、どうしても素直で澄んだ音が出にくくなります。
  • 移調楽器の存在…説明が難しいのですが、楽譜に書かれた音と実際に出る音が異なる楽器です(例えば楽譜上はハ長調だが実音はイ長調の演奏になるもの[A調の楽器という]等)。例えば、ホルン、トランペット、クラリネットはその代表例です。移調楽器を使う理由は、演奏の難度を上げず響きを損なわないためです。転調への対応のために複数の調をもつ移調楽器もあります。

「移調楽器」という概念は管理人もずいぶん頭を悩ませたものです(つまりは、その楽器が「C」を出したときに何の音が出るかということなのですが)。しかしこれは、鍵盤楽器や弦楽器のようにどの音も平等に鳴らせる楽器以外への対処法としては致し方無かったのでしょう。

管楽器と打楽器が中心の吹奏楽において、変ホ長調や変ロ長調の曲が多いのは、B♭調の楽器(クラリネット、トランペット、ユーフォニウムなど)やE♭調の楽器(アルトサクソフォンなど)、F調の楽器(ホルン)の全部が吹きやすいからです。例えば変ホ長調の場合、譜面上では、B♭調の楽器はヘ長調、E♭調の楽器はハ長調、F調の楽器は変ロ長調で演奏出来るのです。

以上のように調性の制限は主に管楽器の都合によるものが大きいということです。


それでは、ある調性を積極的に選ぶ理由はあるか、という観点からみてみましょう。

音符調性が選ばれる理由音符

楽曲をいくつか聴いてみると、なぜこの調性が多いんだろう?どうしてこの調性を選んだのだろう?と思うこともあるはずです。そこには楽器の特性や主音の位置、そしてその調性での過去の曲の共通イメージなどが影響していると思われます。

  • 楽器の特性…弦楽器は”#が多い方が鳴りやすい”と言われます。演奏の難度のバランスも考慮すると、♯が4つのホ長調あたりが一番鳴るはずです。そういえばヴィヴァルディのバイオリン協奏曲集「四季」の「春」はホ長調です。道理であんなに明るく景気の良い響きがするはずです。
  • 主音の位置…楽曲を下支えし、終止をバッチリ”きめる”のは主音です。この主音が一番力強く鳴るように調性を選ぶこともあるでしょう。バイオリンの最低音はG線の開放弦の「G」「ト」です。ト長調やト短調がバイオリン曲に多いように思いませんか? 例えば、モーツァルトが交響曲の中で短調の曲は第25番第40番の2曲だけですが、調性はいずれもト短調です。弦楽五重奏曲の中で、”悲しみが疾走する”第4番もト短調です。あの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はト長調です。これは決して偶然ではないでしょう。
  • 調性のイメージ…その調性で決定的な名曲がある場合や、複数の作曲家が同様な傾向の作品を残したような場合、それに後の作曲家が影響を受けることがあります。モーツァルトのト短調は上記した通り、激情的な印象を与えます。
   

調性のイメージについては、もう少し例を挙げてみましょう。

音符調性のイメージ例音符

いかがでしょうか。結構納得性があるのではないでしょうか。

最後に、あまり使われない調性について。これらは演奏の難度が上がる、あるいは響きが良くなくなることなどで例が少なくなっています。

  • ロ短調…バッハの管弦楽組曲第2番 、シューベルトの交響曲第8番「未完成 」、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟 」、ブラームスのクラリネット五重奏曲 、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴 」など、「孤独感をはらんだメランコリー」といったイメージがあります。
  • 嬰ヘ短調…ハイドンの交響曲第45番「告別 」やシューマンのピアノソナタ第1番 など。弦楽器は開放弦(指で押さえない)で鳴る音が少なくなるので「くすんだ感じで欲求不満」なイメージになります。
  • ロ長調…ハイドンの交響曲第46番 、ドヴォルザークのスラヴ舞曲第9番 など。弦楽器は響きが良くなるのですが管楽器が鳴りにくくなるので「少し明るすぎてちょっと耳障り」なイメージです。
  • 変ニ長調…ピアノあるいはテンポの遅い緩徐楽章で例が多く、ショパンの「子犬のワルツ 」「雨だれの前奏曲 」、ドボルザークの交響曲第9番「新世界より」の第2楽章(歌詞をつけた「家路」として有名)、ドビュッシーの「月の光 」など。これも変化音が多くなるので全体的に「柔らかく抑制的」な音楽になり勝ちです。変イ長調も似たところがあります。


調性は、近代から現代に至るうちに、作曲家の新たな技巧の追求の中で次第に揺らぎ始め、ついには無調音楽の登場にまで至りました。シェーンベルクが確立した「十二音技法」もその一つです。ここに至って調性や和声という枠を破って、オクターヴの中の十二音を全く平等に扱うことになったのですが、その自由と引き換えに一貫性や形式といったものにとらわれるようになり、理論的かつ無機質な音楽になって、情緒や楽しさのある音楽からは遠のいてしまったことは否めません。

音楽というからには基本的に調和があるべきです。ある程度の制限の中でオリジナリティを追求するという観点から、作曲家は目を背けるべきではないと管理人は思います。その点で「調性」はいつまでも大事にするべきルールであるように思うのです。


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