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モーツァルトを聴く

怒るモーツァルト

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その5 鬱積した情念、爆発、そして解放(ピアノ協奏曲第20番 K.466)

モーツァルトの像

モーツァルトが初めてつくった短調のピアノ協奏曲、第20番ニ短調。ベートーヴェンとブラームスが非常に気に入って、各々この曲のためにカデンツァを書いたといいます。聴いた者の誰もが心を揺さぶられる力をもつ曲です。

作曲されたのは、故郷ザルツブルグを追い出されるようにして出てきたウィーンで、まさに悠々と羽を伸ばしモーツァルトらしい作風が開花した時。そんな最高の時期に、敢えてサロンには不似合いの短調の激しい曲に挑んだモーツァルト。耳に快い音楽ばかりでなく、生の人間の情念、その暗い部分までえぐり出すような音楽も追求しだしたのです。
 初演時はギリギリまで写譜が間に合わなかったとか。それだけ思いこみと気合いが入ったのでありましょう。

第1楽章は、シンコペーションのリズムでの弱奏の第1テーマが、引き摺るような3連符を伴った低弦で支えられて開始されます(下譜A)。不気味で鬱積した想い。それが爆発して激しい分散和音が何度か下降した後、長調ながらゆるやかで諦観さえ感じられる第2テーマが登場します(下譜B)。やがてピアノが入ってくる時のさりげないメロディーは、展開部でも何回となく現れ、激情を静めようとしますが、なかなか簡単には気持ちは収まりません。それでも最後にはゆっくりと勢いが弱まって消え入るように終止します。

楽譜A(第1楽章第1テーマ)
第20番第1楽章第1テーマ

楽譜B(第1楽章第2テーマ)
第20番第1楽章第2テーマ

第2楽章は、モーツァルトを描いた映画『アマデウス』のラストで流れた哀愁の曲。全ての高ぶる想いをなだめ癒すようにヴェールをかける息の長い旋律が歌い紡がれていきます(下譜C)。三部形式になっており、中間部は短調で情熱的になります(下譜D)。

楽譜C(第2楽章テーマ)
第20番第2楽章テーマ

楽譜D(第2楽章中間部テーマ)
第20番第2楽章中間部テーマ

第3楽章は、ピアノの急速なニ短調の上昇アルペジオのテーマで始まります(下譜E)。興奮して再び猛り狂う感情。交響曲第40番のフィナーレにも似た激烈な楽章です。ロンド形式。時々現実を逃れようとする長調の副主題も手に負えないほどの縦横無尽な悲嘆の噴流。モノローグのような第2テーマ(下譜F)、走り出しながら戸惑っているような第3テーマ(下譜G)、この楽章の中の唯一の明るい第4テーマ(下譜H)がそれぞれ現れても暗さは拭えません。救いが訪れるのは、カデンツァが終わった後でニ長調のコーダに入ってからのこと。第4テーマが満ち足りた様相で現れます。この解放の瞬間のためにこれまでの長い時間があったのだと納得して大団円を迎えるのです。

楽譜E(第3楽章第1テーマ)
第20番第3楽章第1テーマ

楽譜F(第3楽章第2テーマ)
第20番第3楽章第2テーマ

楽譜G(第3楽章第3テーマ)
第20番第3楽章第3テーマ

楽譜H(第3楽章第4テーマ)
第20番第3楽章第4テーマ

曲を試聴されたい方は以下でご確認ください.
(推薦CDとは演者が違う場合もありますがご了承下さい)

ピアノ協奏曲第20番から第1楽章

3つのCDを紹介。演奏者の素養や人生経験が如実に表れてしまう曲。人生の節目節目に自分が共感できる演奏を探してみるのもいいかもしれません。

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1.
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20&24番
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2.
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20&21番
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3.

モーツァルト : ピアノ協奏曲第20番&第21番

 1.はモーツァルトを得意とした伝説のピアノ奏者ハスキルが死の1か月前に録音した一枚。モーツァルトが地上に舞い降りたかのような奇跡的な演奏。

 2.はピアノのグルダ、指揮アバド、オケはウィーンフィルという3つの一流が融合し結晶したCD。自然で飾り気がなく当たり前が一番美しい。

 3.はマリア・ジョアオ・ピリスの独奏ピアノ、アルミン・ジョルダン指揮、ローザンヌ室内管弦楽団他との共演。第21番ハ長調もカップリング。優美さと哀しみの共存。