福岡では多くの県立高校で3月1日に卒業式が行われる。毎年多くの生徒が高校を巣立っていく。

 生徒達にとって高校の卒業式は特別である。小学校や中学校の場合は、多くの生徒は地域のそれぞれの上級の学校に進む場合が多い。高校の場合は大学、専門学校、留学、就職等進路が様々で、中には一生会うことのない生徒もいるであろう。

 クラス担任としての卒業式はまた格別である。クラス担任というのは、そのクラスの生徒のほぼすべての責任を負う、場合によっては親よりも関わりが深い生徒もいる(特に家庭が崩壊している場合)。成績の管理や出席等の管理、保護者との連絡、配布物の配布や回収、その点検作業や、徴収金の回収やイベントの準備等、会議や、その会議のための準備等、担任の事務作業と言えば数え切れない。

 公教育に携わる者は、基本的に同じ給与である。土曜日も日曜日も夜遅くまで指導しても、何ら給与は変わらない。教職員は卒業式のその日までに今いる生徒をどこまで高められるか(どのくらい幸せに出来るか)という気持ちだけで動いている。だから苦労が多ければ多いほど、卒業式の日を迎えることは、生徒にしても教職員にしても、格別な思いがあるのである。

 アメリカでは高校の卒業式(場合によっては大学の学位授与式)のことを、commencementという。commencementは元々は「始まり」という意味である。小学校、中学校、高等学校と進み、教育を終えて社会に巣立っていくという意味であろう。卒業式は教職員にとっては自分の責務を果たす最後の日となるが、生徒達にとってはまさに「始まり」の日でもある。

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