アメリカ大統領選挙はアメリカ史上初の黒人大統領が誕生した。オバマ新政権は、リーマンショックに始まった、世界恐慌以来ともいわれている金融危機の中の厳しい船出になることは間違いない。

 リーマンブラザーズが破綻し、AIGは政府によって救済されることが決まったが、ここに来てアメリカのビッグ3まで経営破綻の危機がささやかれている。アメリカの10人に1人は自動車産業と関連があると言われ、ビッグ3がもし破綻すれば金融危機もさらに広がるかもしれない。

 一方でトヨタをはじめとした自動車業界も業績が大幅に悪化してきている。車の売れ行きが悪くなってきているのは、ガソリンが高騰したと言う単純な理由ではない。若者の間で車に対する関心が急速に失われ始めている。

 私は工業高校に勤めているが、今から免許を取る3年生に尋ねても、FFとFRの違いが分かる生徒は10人に1人もいない。パワーステアリングと言う言葉にいたっては、知っている生徒は皆無である。マニュアルとオートマチックのトランスミッションの違いも分からない生徒もかなり多い。今の高校生はオートマチックの車しか見て育っていないからである。

 「より快適に」、「より簡単に」車が乗れるように車業界は努力してきた。一方で車を操縦する楽しみを伝えるような車作りをしてきていなかったため、今の若者の車離れが始まっている気がしてならない。要するに単なる異動の道具になってきているのである。自分の持つ車を「愛車」という。名詞の前に「愛」を付けるのは、愛犬や愛妻など生き物を除けば車とバイクしか無いような気がする。50年後、「愛車」という単語は残っているのであろうか?

 

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