先月に始まった世界金融危機は1ヶ月以上を経過しても、収束する気配はない。市場万能主義に基づく、新自由主義の終焉とも言える。世界恐慌に匹敵する金融危機だと言う学者もいる。

 今回の金融危機は市場は万能であり、限りある資源は市場を通じて最適に分配されるという市場原理主義に基づき、規制を限りなく緩和し、自由に市場に参加することが新たに富を生み出すと信じられてきた。ヘッジファンドは金融工学を駆使し、どんな状況下でも利益を上げることを目標とし、証券会社はサブプライムローンなどの債権を証券化することによってリスク分散を図った。リスクは分散さえすれば、すべてが破綻することはないので、全体では予定調和が取れるはずであった。

 今回の金融危機で、経済システムそのものの信用が揺らいでしまった場合、どんなにリスクを分散しても全体が揺らいでいるので、悪循環に陥ってしまう。その結果、リーマンブラザーズやメリルリンチの証券を買った人はどのくらい損失があるのか確定出来ない。複雑に絡み合った金融商品のどの部分が不良債権であるのかさえ、はっきりしない債権さえ沢山あるという。

 アメリカ発の金融危機であるはずなのに、その被害はヨーロッパの方が甚大である。アメリカは海外へ証券を売りさばくことでリスクを海外に負担させてしまった。幸運にもわが日本はバブルを教訓にして、金融システムはほとんど痛んでいない。円高にもなるであろう。円高も悪くない。世界から日本に金が集まってきている。その金をどれだけ有効に使えるのかが問われているのである。

 

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