ビッグ3のひとつであるフォードが今の自動車ラインの原型である、フォード生産方式を完成させたのが1914年である。フォードは生産効率を上げ、フォードの社員が自社の車を買えるように、所得を引き上げた。中産階級でも手が届く価格の車を生産させることを実現させ、自らの社員も中産階級に引き上げ、自社の車の生産を飛躍的に伸ばすことに成功した。

 日本に目を向ければ、日本は2003年から戦後最長の景気拡大を続けたが、生活の豊かさには結びついていない。むしろ社会保障が縮小し、年金問題や少子高齢化については全く手がつけられず、将来の不安ばかりが残ったのではないだろうか?日本企業も生産性を上げ、2008年には企業収益はバブル期を越すまでになった。

 戦後最長の景気拡大を続け、バブル期をほどまでになった企業収益は一体どこへ行ったのであろうか?企業は人件費を抑制するために派遣社員や請負社員を多く雇い、生産性を上げていった。その結果賃金は上昇せず、不安定な雇用形態を強いられる社員が増えていった。要するに企業は増加した収益を労働者にあまり分配していなかった。いざ不況になると派遣社員は派遣切りとなり、正社員も雇用の不安から消費を拡大させることが難しくなった。

 日本の21世紀初頭の景気拡大は振り返ってみれば、北米を中心とした外需に依存した景気拡大だったのである。その間、日本は安心して消費活動が行える経済構造に移行するべきであったのだが、小泉構造改革は自由競争型の経済構造を目指したため、まさに自由競争モデルの崩壊と共に、日本も不況の渦に巻き込まれることになった。

 今日本がなすべきことは中長期的に安心して仕事ができ、将来安心して暮らすことが出来る社会の実現である。企業も株価ばかりを気にするのではなく、自社の社員を大切にし、安心して暮らすことが出来る生活を保障することが大切である。21世紀初頭の経済改革は失敗に終わった。次の改革は国民、政府、企業が一体となり、国民全体が豊かに安心して暮らせる経済構造を実現すべきである。

 

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