原油の価格が下げ止まらない。中国の経済の停滞による需要減と、アメリカのシェール革命による石油の増産が主な原因で石油の価格が30ドルを割るような水準が続いている。2年前は1バレル100ドルを超えるような価格であったことが信じられない水準である。イランの経済制裁も解除され、イランの原油も市場に出回るようになった影響もある。

 日本にとってはこの原油安はかなり好都合である。2011年の震災以来、原発が止まり、原発に変わる電力エネルギーの大半を火力発電に依存してきた。その結果、膨大な燃料を海外から購入するようになり、貿易収支も震災以降は一貫してぼうないな赤字を計上してきた。

 一方でアベノミックスは日本に円安をもたらした。単に円安になれば、輸入品の価格はそれだけ高騰し、燃料についてもかなり高くなっていても不思議はないはずで、ガソリンの高いときは180円近くしたが、もし原油価格が高止まりして、円安になっていれば、ガソリンの価格も200円を超え、250円を超える水準になっていたのかもしれない。

 アベノミックスの成果をなかなか実感する前に、円安によるインフレ不況が日本を覆い尽くしても不思議ではなかったはずであるが、幸運なことに、円安の痛みを感じることなく、輸出企業を中心にバブル期を超す史上最高益を出している企業も少なくない。

 あとは、企業が稼いだ利益がどれだけ市場に戻ってくるかが、真のアベノミックスの成果が問われるところであろう。賃金や設備投資により、市場に戻って、企業も個人も少子高齢化社会を迎えるための投資に向かえば、日本全体が潤ってくるに違いない。法人税減税も良いであろう。外形標準課税や内部留保に課税するのも良いかもしれない。個人も企業も利益をため込むのではなく将来の日本のために、有効に投資することこそ、今の日本に求められている。

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